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3.曲面上の幾何学

 本章で“一般相対性理論”で必須の項目“共変微分”、“曲率テンソル”、“平行移動”を説明します。 
 ここでは、3次元ユークリッド空間の曲面(2次元リーマン空間)の上に導入された座標に対して座標変換を考え、それによって幾何学的な量がどのように変換されていくかを問題にするテンソル解析の解説をします[3.(2)2.[補足説明3]参照]
 そして、テンソルの性質を保持する演算、“共変微分”を定義し、それと曲率テンソルおよび曲面上の平行性に関するレヴィ=チヴィタの平行性との関係を明らかにする。
 相対的最短線としての測地線を考察し、最後に2次元ユークリッド平面における定理“三角形の内角の和は2直角である”の曲面上への拡張である大域的微分幾何学の重要な定理“ガウス・ボネの定理”を証明する。
 本稿と並行して別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」と、「テンソル解析学(絶対微分学)」もご覧下さい。

(1)座標変換
    1.座標変換
    2.座標変換とスカラー
(2)ベクトルとテンソル
    1.反変ベクトル
    2.共変ベクトル
    3.テンソル
    4.テンソルの和、差、積
    5.テンソルの縮約
    6.テンソルの商法則
    7.対称テンソルと交代テンソル
(3)共変微分
    1.共変微分
    2.テンソルの共変微分
    3.共変碑文の性質
(4)勾配・回転・発散
    1.勾配
    2.回転
    3.発散
    4.微分演算子
(5)曲率テンソル
    1.曲率テンソル
    2.曲率テンソルの性質
    3.リッチテンソル
(6)測地線
    1.オイラーの微分方程式
    2.測地線の微分方程式
(7)測地座標
    1.測地座標
    2.直交截線
    3.測地的極座標
(8)ベクトルの平行移動
    1.平行
    2.レヴィ=チヴィタの平行性
    3.平行移動
    4.平行移動で成り立つ性質
(9)曲線の展開
(10)等長変換
(11)ガウス・ボネの定理

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(1)座標変換

.座標変換

 一般に曲面をたがいに独立な2つの径数u1、u2によって、(u1,u2)と表した。そして1組の(u1,u2)に対応して曲面上の1点が定まり、逆の対応も考えられるから、この1組の(u1,u2)を曲面上の点と見て、“曲線座標”という。
 u1,u2を他の径数の一価関数としてそれぞれ

と表して、逆に

と解ける必要十分条件

のもとで新たに曲面の曲線座標として径数を用いる。
 変換(3-1)式の関数行列式と(3-2)式に関する関数行列式の間には

なる関係があるから、それらの要素の間には

なる関係がある。
 このような径数の変換すなわち座標変換によって幾何学的な量がどのように変換されていくかを考える。

補足説明
 ここは別に難しい事を言っているわけではありません。(3-1)式は微小変分に関しては一般に

と書け、(3-2)式は

と書けます。
 (3-3)式はこれらが互いに逆変換の関係になって逆に解けるために必要な条件です。Cramerの公式参照。
 そのとき、(3-4)式は変換行列が互いに逆行列の関係になっていることを示しているにすぎません。(3-5)式は(3-4)式の行列式の積の成分表示を表しているだけです。(高木貞治著「解析概論」§83や、適当な線形代数教科書、あるいは代数・幾何教科書を復習されたし。)
 
 ここで注意して欲しいことは、上記の座標変換係数は(u1,u2)の場所ごとに変化しても良いことです。その点に関して今は何らの制限は課していません。ここでは2次元リーマン空間である曲面を取り扱い、その上に任意に引かれた座標曲線の網目(u1,u2)と、同じ曲面上に引かれた他の座標曲線の網目()を想定しているのですから。

 

.座標変換とスカラー

 曲面上の座標系を(u)からに変えるとき、曲面に接する1次独立な2つのベクトル

は次のように変化する。
 (ここのの様に、ベクトル量は太字の文字を使って表しています。フォントが悪くて解りにくいかも知れませんが、今後その様に読み取ってください。)

ここで

と置けば


 逆変換は

と書くことができる。

 一般に、u の関数 f(u) があって、座標変換によつてその値を変えないとき、f(u) を“スカラー”という。
 つまり、空間の各点で一意に定まる値を持つような量をスカラーと言います。その空間点を定める座標値は座標系が異なれば異なった数の組で表されますが、その座標値の組が異なっても同じ空間点に対しては f は同じ値になると言うことです。

補足説明1
 ここの(3−7)式(3-7')式の意味は非常に解りにくい。先に注意したように2次元リーマン空間である曲面上に任意に引かれた座標曲線の網目(u1,u2)と、同じ曲面上に引かれた他の座標曲線の網目()を想定してください。
 そのとき、ベクトルの組(1,x2)は網目(u1,u2)の座標曲線に沿ったu1方向の接単位ベクトルとu2方向の接単位ベクトルを意味します。また、ベクトルの組()は網目()の座標曲線に沿った方向の接単位ベクトルと方向の接単位ベクトルを意味します。いずれもそれぞれの座標値で測ったときの“単位ベクトル”です。
 これらの間の変換式(3-7)式は丁度、別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」3.(1)で説明する基底ベクトルの組の変換(C)に相当します。だから、このときの変換係数は座標変換の逆変換(3-1')式の変換係数になっています。順方向の変換式(3-2')式の係数では無いことに注意して下さい。何故そうなるかは上記引用文3.(3)をご覧下さい。
 故に、ここでのベクトルの組(1,x2)、あるいは()はいずれも“基底ベクトル”を意味しますので添字は右下に付けています。そして座標曲線の網目(u1,u2)、あるいは()の座標値は正に“反変成分”での座標値を意味します。そのため成分を表す添字は右上に付けています。
 
 
 ここで下記の事柄に注意して欲しい。
 別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」2.(1)では、まず“単位接ベクトル”である“基底ベトクル”a を定義し、そのベクトルの伸びる方向へ座標曲線を伸ばし、その座曲標上にその基底ベクトルの長さを単位として座標値u を記入していった。
 
 ところが、ここでは、まず曲面上に格子状の網目曲線を引き、その網目を構成する曲線に沿って座標値uが記入してある。その座標値の目盛りは場所に依存して変化しても良いが、縦横の座標曲線には隙間無く座標値u が記入されています。そのとき網目上の任意の点において、その縦横の網目線に沿った“接線ベクトル”を引き、その長さを、その網目位置での単位の長さとします。それが本稿での“単位接ベクトル”x です。これが、上記別稿における“規定ベクトル”a に相当します。
 
 
 本稿では、まず曲面上に網目を引き、その座標曲線上の目盛りを与えます。それから“接単位ベクトル”(すなわち“基底ベクトル”)を与えています。
 しかし、上記別稿では、まず“基底ベクトル”(すなわち“単位接ベクトル”)を与えてそれが場所と共に長さも方向も変化するとして、座標曲線が曲線状になり、その座標曲線上の目盛り幅も基底ベクトルの長さの変化に応じて変化していくとしている。

 両者は、“リーマン空間”を表す方法を逆の方向から説明していますが、どちらも全く同じ事を言っています

補足説明2
 “基底ベクトル”双対基底ベクトル”の間の変換と、“基底ベクトル”を別な新しい“基底ベクトル”に変換することを混同しないで下さい。
 基底ベクトルを別な基底ベクトルに変換するとは、曲面上に引いた網目曲線を別な新しい網目曲線に変換すると言うことです。つまり新しい網目曲線に接する“基底ベクトル”にすると言うことです。
 そのとき“基底ベクトル”と常に表裏一体の関係にある双対基底ベクトル”は、変換された新しい“基底ベクトル”に追従して必然的・決定論的に新しい双対基底ベクトル”に変換されます。
 このことについては別項「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分」をお読み下さい。

 

 

例題 曲面の“単位法線ベクトル”は、座標変換によってどのような変換を受けるか。

[解] 単位法線ベクトルの定義に(3-6)式を適用する。


ただし

です。特に座標変換(3-1)式を(3-3)式が正なるものに制限しておけば、“単位法線ベクトル”は座標変換不変です。

 

問題] “第1基本量”ijは座標変換によってどの様な変換を受けるか。
 第1基本量とは“基本計量共変テンソル”の事です。そのことについては別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」2.(6)をご覧下さい。

[解] 第1基本量の定義に(3-6)式を適用する。



行列表示すると(別稿3.(4)参照)

となります。行列表示はやがて破綻しますので、前記の表現になれて下さい。

 

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(2)ベクトルとテンソル

 ここは、別項「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」4.(4)などを参照されながらお読み下さい。

.反変ベクトル

 座標変換

に対して、両辺の微分を考えれば

となる。これと同じ様な変換を受ける量を“反変ベクトル”と言う。つまり、変位ベクトル du反変ベクトルの代表例です。
 一般的に言って、座標変換

によって変換される数の組 (X)(i=1,2) が反変ベクトルです。このとき X1,X2“反変ベクトルの成分”という。成分を表す添え字を右上に付ける。

補足説明
 別稿で説明したように、変位ベクトル、速度ベクトル、運動量ベクトル、電流密度ベクトル、加速度ベクトル、力のベクトル、等々はすべて反変ベクトルです。
 ただし、ここで注意して欲しいのですが、位置座標の組(u)そのもの(3-8)式は、(3-10)式を満たしません。(3-9)式のようにその微分(微小変位)が満たすだけです。そのため、座標値そのものはここで定義する“ベクトル”ではありません。それは、“曲線座標間の変換”とは局所的な空間においてのみ考えることが出来るようなものだからです。

 

.共変ベクトル

 スカラーf(u)をで偏微分すると

となる。これと同じ様な変換を受ける量を“共変ベクトル”という。スカラー f の勾配3.(4)1.で説明)は共変ベクトルの代表例です。
 一般的には座標変換で

のような変換をうける数の組 (Y)(i=12) が共変ベクトルです。このとき Y1,Y2“共変ベクトルの成分”という。成分を表す添え字を右下に付ける。

 スカラーf(u)のそれぞれの変数での偏微分

は(3-11)式によって共変ベクトルの成分で、これらの組を特にスカラーf(u)の“勾配ベクトル”という。これはベクトル解析で出てくるいわゆる勾配ベクトル grad f =▽ f と同じです。つまりスカラー場 f の勾配は共変ベクトルです。

補足説明1
 直交座標系における点の座標成分を x とし、x がスカラー t (時間の様なもの)の関数であるときの微分係数を dx/dt とする。また、直交座標上のスカラー関数 φ(x) の偏微分係数を ∂φ/∂x (スカラー関数のgradの様なもの)とする。
 そのとき、x から直交座標変換で新たな直交座標系 x’ への座標変換

を考える。この座標変換の変換係数 a は普通場所(x)に依存しない定数です。もちろんスカラー t にも依存しません。この逆変換の変換係数は順方向の変換係数の転置行列になります。そのことは別稿「特殊ローレンツ変換から一般ローレンツ変換へ」2.(1)と(2)を復習されればすぐに了解できます。さらにそこの方向余弦の関係式から変換行列は対称行列ですから、結局元の変換行列と同じ事が解ります。つまり

が成り立ちます。
 そこでまず上記変換式の両辺をtで微分します。aはtに関係しませんから、ただちに

が得られます。つまりこれがベクトル(dx/dt)の座標変換公式です。
 次にベクトル(∂φ/∂x

の座標変換を考えます。

つまり、これがベクトル(∂φ/∂x)の座標変換公式です。
 以上の様に、“直交座標変換”の時には、ベクトル(dx/dt)の座標変換公式とベクトル(∂φ/∂x)の座標変換公式はまったく同一で、共変とか反変の違いは生じません
 
 
 ところが、本稿での座標変換の様に“曲線座標間の変換”である場合には

で表すとしますと、上記前半の変換式は

となり、後半の変換式は

となる。つまり曲線座標の変換に伴うの変換法則は異なり、いわゆる“共変変換”“反変変換”の違いが生じる。
 そのとき、座標の次元を分子にもつ微分線要素が共変的に変換され、座標の次元を分母にもつスカラーの勾配の様な量が反変的に変換されると言って良い。
 
 もう少し補足すると、ベクトルテンソルを記述する座標系が斜交座標系になると“基底ベクトル”“双対基底ベクトル”が異なったものになるために“反変成分”“共変成分”の違いが生じます。このことは別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」で詳しく説明していますのでご覧下さい。

補足説明2
 この当たりは特に解りにくい所なのでもう少し補足します。
 一般的な時空に於いても極小さな領域では(斜交座標にはなるが)直線座標系でもって時空の世界間隔は

で与えられる。このことは2.曲面論(2)3.2.(7)1.ですでに説明したところです。
 このときのijは、その時空世界を特徴づける基本計量共変テンソルと言われるものです。具体例として、
 特殊相対性理論に於ける“ミンコフスキー4次元時空”の時は

となります。
 あるいは、我々にお馴染みの“ユークリッド3次元空間”ならば

になります。
 一般相対性理論で扱う“リーマン4次元時空”に於いては、ijは対角要素以外も 0 ではない一般的な4元テンソルになります。
 
 このとき、前記[補足説明1]で言うところの共変と反変の区別が生じないのは空間を特徴ずける“計量テンソル”ij

のように、対角要素が全て1で、それ以外の要素が 0 の場合です。その場合には座標変換に対する変換則に違いが生じないからです。
 もし、ijがそれ以外のテンソルであったらならば、前記[補足説明1]で言うところの“共変変換”“反変変換”の違いが生じる。
 
《ここで注意》
 特殊相対性理論に於ける“ミンコフスキー4次元時空”の、ijは対角要素以外は全て 0 ですが対角要素が全て1となるわけではありません。つまり1と−1が入り交じっています。
 そのため、ミンコフスキー4次元時空は全空間に渡って一様であり、かつ直交する時空なのですが、その時空に於けるベクトル量やテンソル量に共変成分と反変成分の違いが出てきます。この当たりは別稿「Maxwell方程式系の先見性とベクトルポテンシャル」6.(4)[補足説明3]で注意しました。
 
 あとで解りますが、任意のテンソルの共変・反変“基本計量共変テンソル”ij“基本計量反変テンソル”ijを乗じで縮約することにより、任意に変更することができます。だから、その様にテンソルの添字を上げ下げしてできるij,Tijk,Tjk,・・・・は、いずれも同一の幾何学的・物理学的対象をあらわしています。共変的とか反変的とかは、それぞれを成分で表すときに見かけ上表れる性質に過ぎません。見かけ上のことですが、成分表示を用いないとその物理学を論じることができませんから、やはり重要な違いです。
 
 
《更に注意を続ける》
 ここの “基本計量テンソル” gij と、[補足説明1]に出てきた “座標変換係数テンソル” a∂x’/∂x を混同しないで下さい。両者はまったく異なるものです。
 ij は空間そのものの性質をあらわしており、“ミンコフスキー時空”ではその中での座標系の取り方で変化するようなものではありません。このことについては別項「特殊ローレンツ変換から一般ローレンツ変換へ」3.(3)[補足説明2]参照。
 上記の言い方には少し注意が必要です。gijはその時空の各点での時空の性質を表しているので、ミンコフスキー時空からより一般的な“リーマン時空”になっても、ds2=gijdudu の値がそこでの座標系の取り方で変化するわけではありません。つまり座標が du’du’ に変わっても、ds2=g’i’j’du’du’ が不変に保たれるようにgijが座標変換によってg’i’j’に変わる様なものです([補足説明3]の後半で説明)。そのとき、リーマン時空の別の場所に移動するとそこでのgijは座標の変化に依存して変化します。そういった意味では座標の関数になります。このことについては、別稿「テンソル解析学(絶対微分学)」6.(1)3.[注意]を参照されたし。
 gijはリーマン空間の基底ベクトル(接単位ベクトル)から定まります。基底ベトクル(接単位ベクトル)とは何かが解らないと何のことか解らないと思います。
 
 一方係数テンソル a や ∂x’/∂x は、 gij で特徴づけられる空間の中に取った座標間の変換を表す係数で、変換する座標ごとに異なります。
 例えば“ミンコフスキー4次元時空”“基本計量テンソル” gij は常に

ですが、その空間での座標変換係数を表すローレンツ変換

は、変換先の座標ごとに異なる。
 実際、元の座標系に対して変換先の座標系が速度Vで動いていたり、さらにその運動方向が(V,V,V)方向だったりしたら、変換係数がどの様に変わるのかは別項「特殊ローレンツ変換から一般ローレンツ変換へ」で説明したところです。
 ただし、計量テンソルの表現には[世界間隔の定義の仕方]、[物理量の表し方]、[単位の取り方]などに依存する任意性があります。だから、そこでは“ミンコフスキー時空計量テンソル”を前記とは異なって

の様に表していました(3.(3)[補足説明1]参照)。 

補足説明3 《計量テンソルとは何か?》
 ここは
吉田伸夫著「完全独習相対性理論」§8-2-1“リーマン幾何学の考え方”のほぼそのままの引用です。
 第2章で説明したように、ガウスが微分幾何学の手法を用いて曲面論を展開したとき、3次元ユークリッド空間の内部に2次元の曲面を埋め込むという前提の下で議論を進めた。このとき、当初曲面上の在る点の曲率を定義するときに、曲面のその点に立てた法線を含む面で曲面を切るといった、曲面の外に出る方法論が使われた。それが2.(4)1.の第2基本微分形式であり、そこで定義された第2基本量 L,M,N(h11,h12=h21,h22) という量でした。
 ガウスは、同時に2.(3)3.の第1微分形式というものも考察するのですが、それはどちらかというと曲面の曲がりと言うよりも曲面上の線素の長さを表すための微分形式で曲面上の座標微小変分との関係を与えるものでした。そのとき線素の長さを定めるのに関係する量が2.(3)3.で定義された第1基本量 E,F,G(g11,g12=g21,g22) でした。
 ガウスはこの2つの基本量(2つの基本微分形式)を使って曲面の幾何学を研究していたのですが、2.(9)3.で説明する“ガウスの驚異の定理(Theorem egregium)”を発見する。これは曲面の曲率を定めるのに第2基本量は必要なく第1基本量だけで良いという驚くべき定理でした。つまりガウス曲面に限れば、曲面の外に出なくても、曲面内部で決定できる量(第1基本量)だけを使って曲面の幾何学が議論ができる。
 この考えを更に進めて、外部に3次元ユークリッド空間が存在する事を前提とせず、歪んだ2次元空間だけを議論の対象にするのが“リーマン幾何学”です。つまり歪んだ二次元空間内の長さを測定するだけで、その歪みが議論できるとするのがリーマン幾何学です。
 実際別稿Einstein著「我が相対性理論」§25 や Bornの説明の特にp320 で説明されているように、2次元曲面上に住む2次元人が曲面上の1点から等距離rにある円周の長さを測定するとそれは一般に2πrにならないのですが、円周長が2πrからどれぐらい異なるかでその点での曲面の曲がり具合を知ることができる。また半径rの円の面積はπr2にならないのですが、円の面積がπr2からどれくらい異なるかでその点での曲面の曲がり具合を知ることができます。この当たりのもう少し詳しい説明を吉田伸夫著「完全独習相対性理論」§8-1-2から引用。
 
 
 リーマンは2次元に限らず任意の次元で定式化したのですが、ガウスの曲面論を2次元リーマン幾何学に書き換えることで、リーマン幾何学のやり方を説明すると以下のようになる。
 2.(3)3.

で表された第1基本形式はガウスの曲面論では、曲面が埋め込まれた3次元ユークリッド空間での長さを使って導かれるが、リーマン幾何学の立場からすると、外部のユークリッド空間は存在しないので、(2-10)式は導かれるものではなく線素の定義として議論の出発点となる。曲面上の位置を指定するのに使われるu,vは、ガウスの曲面論ではユークリッド空間X,Y,Z座標を補助する便宜的な変数という扱いだったのに対して、リーマン幾何学では、空間座標そのものとなる(3.(1)2.[補足説明]を参照)
 リーマン幾何学を一般の次元に拡張しやすいように、座標u,vと第1基本量E,F,Gを、次のように表すことにする[2.(7)1.参照]。

 この gij (i,j=1,2)を使うと第1基本形式(2-10)式は、次式で表される。

同じ添字が上と下に表れる場合は全ての次元に渡って和を取るという“アインシュタインの規約”を採用すれば、次の形に簡略化できる。

 (2-48)式がリーマン幾何学において線素を定義する基本式であり、係数 ij長さを決める量であることから“リーマン計量”と呼ばれる。
 リーマン計量が与えられた数学的な空間をリーマン空間という。 j,jの範囲を1〜nまで広げたリーマン計量 gij を与えれば、n次元のリーマン空間が定義される。
 リーマン計量はきわめて難しい概念ですから、別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」2.(4)〜(7)の3次元リーマン計量の説明、さらに同稿4.(3)[例8]最後の文節をご覧下さい。また内山「相対性理論」のp119〜p121〜をご覧下さい。
 
 
 2.(2)3.で(第1基本量を用いて)定義された面積素を表す式

も、リーマン計量で表わすと

となる。根号内部は、リーマン計量を行列と見なしたときの行列式なので、2次元以上にも拡張できる。
 dSの替わりに次元によらず使える体積素の記号dVを用いると

となる。3次元の場合の計算例は別稿2.(7)参照されたし。
 
 
 すなわち ij とはこのようにして導入された量です。このとき、物理的実体である線素の長さは座標の取り方によって変わってはならないのですから、(2-48)式の線素ds2が座標によらないと言う要請を式で表すと

となる。
 ここで、微分演算を遂行すると座標変換に対するリーマン計量の変換則として次式が得られる。

 この式は、リーマン計量が2階共変テンソルであることを示している。ここは別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」3.(4)もご覧下さい。
 このようにして導入されたリーマン時空の計量テンソルは、ミンコフスキー時空に於ける計量テンソルと違って座標変換によって変化しますし、またその成分の値そのものも座標の関数です。そのとき、[リーマン計量][リーマン時空の微小座標変分]の2次微分形式で表される[線素ds2は座標変換に対して不変でなければなりません。
 つまり、リーマン幾何学とは線素を表す2次微分形式の不変式論として空間の性質を論じるものです。“計量テンソル”とは何なのか非常に解りにくいのですが、このようにして導入されたもの以外の何者でもありません[4.(2)2.参照]
。  
 別ページで引用する吉田伸夫著「完全独習相対理論」§8-1-1“ガウスの曲面論”も是非ご覧下さい。また、3.(10)1.[補足説明2]もご覧下さい。さらにアインシュタインの京都講演グラスゴー講演自伝ノートをお読み下さい。

 

.テンソル

 一般に p+q個 の指標を持った 2p+q個 の関数

によって表される幾何学的対象があって、これらの量が座標変換で

なる変換をうけるとき、その対象を“(p,q)型のテンソル”という。これは“反変p階共変q階のテンソル”とも言う。
 (3-13)式右辺は、同じ指数が出てくる文字については和を取るアインシュタインの規約に従った表現です。
 
 例えば(1,1)型テンソルT の場合は

の事です。この場合指標の個数は2個ですから、右辺は 22=4個 の項の和となる。
 指標が p+q個 の場合の右辺は 2p+q個 の項の和となります。もちろん座標がn次元になれば np+q個 の項の和となります。
 例えば一般相対性理論に於ける“4次元リーマン時空”“リーマンの曲率テンソル”jkl は 41+3=44=256項 の和となる。
 
 このとき

をそれぞれ

に関する“テンソルの成分”という。そして a1,・・・,ap あるいは i1,・・・,ip“反変指標”、 b1,・・・,bp あるいは j1,・・・,jp“共変指標”と言う。
 
 反変指標のみを持つテンソルを“反変テンソル”、共変指標のみを持つテンソルを“共変テンソル”、両方の指標を持つテンソルを“混合テンソル”という。

補足説明
 テンソルの定義から明らかなように、反変ベクトル(1,0)型テンソル[あるいは1階反変テンソル]と見なすことができる。
また、共変ベクトル(0,1)型テンソル[あるいは1階共変テンソル]と見なすことができる。
さらに、スカラー f は 0階(次)のテンソルと言っても良い。

テンソルの例1
 3.(1)1.(3-5)式で説明した“クロネッカーのデルタ” δ

となるので、δ“(1,1)型の混合テンソル”です。

テンソルの例2
 “第1基本量”ij3.(1)[問題]の考察から

です。故に ij“2階共変テンソル”あるいは“(0,2)型テンソル”であることが解る。
 これを“基本テンソル”と言う。あるいは“基本計量共変テンソル”と呼ぶのが最も解りやすいかも知れない。

 

.テンソルの和、差、積

 2つ以上のテンソルに対して、次の加法・減法定理、乗法定理が成り立つ。

定理
(1) 同じ型のテンソルの、または同じ型のテンソルです。
(2) 2つのテンソルのはまたテンソルです。
   例えば(p,q)型テンソル(r,s)型テンソルの積は(p+r,q+s)型テンソルとなる。

[証明]
(1)
 2つの同種のテンソルRijk と Sijk のそれぞれの成分から

なる Tijk と Uijk を考える。それぞれのテンソルの座標変換したものを

とすると

となるので、和、または差は同じ型のテンソルとなる。

(2)
 例としてテンソルRijk と Sm の積 Tijlkm を考える。

それぞれのテンソルを座標変換したものを

とすると

となるので、確かに(2+1,1+1)型テンソルとなることが解る。
[証明終]

 

.テンソルの縮約

 いま(1,2)型テンソル Tijk において i=k とおけば、Tij は共変ベクトルです。何となればテンソルの変換式

に於いて k=i とおいて指標 i について総和をとれば

となる。このように、反変指数共変指数を同一にして総和を取ることによって (p.q)型 テンソルから (p-1、q-1)型 テンソルが得られる。これを i と k に関する“縮約”という。

補足説明
 例えば、共変ベクトル反変ベクトル との(別項4.(4)6.“直積”を参照)をつくれば v という(1,1)型テンソルが得られる[3.(2)4.[定理]の(2)参照]。ここで指標 i と指標 j に関して“縮約”すれば vスカラーとなる。これは第1章や第2章で何度も出てきた内積に相当するものです。
 ここでも v と w“内積”と呼ぶことにする。つまり内積縮約の一種です。

 

.テンソルの商法則

 前々項の[定理]と前項の結論より、 Rhij と Skl とがテンソルであるとき、その2つの積を ij について縮約してできる Rhijij=Th もまた1つのテンソルの成分となります。そのとき逆について以下のことが成り立つ。

定理
  ij (2,0)型と h (1,0)とがテンソルの成分であるとき、 hijij=Th で表される h は(1+0,0+2)=(1,2)型テンソルであることが証明できます。
 今は特定な階数のテンソルについて説明ししているが、任意の階数のテンソルに付いても同様な事がが言えます。これを“テンソルの商法則”という。

[証明]
 座標変換によって変換されたテンソルをそれぞれ

とすると

となる。ここで

はテンソルであるから

となる。
 これと前記の式を一緒にすると

となる。ここでSbcは任意のテンソルであるから

となり、Rhijもテンソルです。
 もっと任意の階数のテンソルに付いても同様に証明できる。
[証明終]

補足説明
 商法則が何を言っているのか解りにくいので補足します。
 例えばn次元座標系(多様体)上の各座標値(u)に対して数値の組 Tij が定まり、任意の反変ベクトル を用いてつくった v=Tij共変ベクトルの成分ならば、 Tij はテンソルの成分であると言うことです。
 つまり、階数の低いテンソル(今の場合反変ベクトルvと共変ベクトルv)から階数の高いテンソルを定めることができると言うことです。
 
この商法則の使い方として、例えば別稿6.(4)の水色背景色の説明文や、3.(2)[問題3]3.(5)1.などを参照されて下さい。

 

.対称テンソルと交代テンソル

テンソルの例3
 テンソルTij

を満たすとき、それぞれ i,j に関して対称、および交代であると言う。それぞれの Tij“対称テンソル”および“交代テンソル(反対称テンソル)”と言う。

 対称テンソル交代テンソル(反対称テンソル)については別項「対称テンソルと反対称テンソルの独立成分の数」も参照されたし。

 

  

例題1 一般的な任意のテンソルTij に対して

を作るとき、Sij“対称テンソル”、Aij“交代テンソル(反対称テンソル)”であることを証明せよ。

[解]

となることより明らか。

補足説明
 上記の 対称テンソルij交代テンソルij の和を作ると

となりますから、任意の テンソルT は 対称テンソルS と 交代テンソルA の和の形に書けます。

 

例題2 テンソルijkl

を満たせば

が成立する事を示せ。

[解]

同様にして

となる。
 ここの性質は重要です。3.(5)2.や、別稿「テンソル解析学」6.(1)など参照されたし。

 

問題1] テンソルijk

を満たせば、Tijk 0 テンソルであることを証明せよ。

[解] 条件式を用いると

と変形できるのでTijk 0 テンソルです。

 

問題2] 任意のテンソルを Aijk とするとき

対称テンソル

交代テンソルであることを示せ。

[解] 順番を入れ替えれば

となる。同様な手順を繰り返せば

と変形できる。つまり、Sijkの任意の2つの指数の順番を入れ替えてもテンソルは同じだからSijkは対称テンソルです。
 Tijkの指数 i と j に関して

となる。他も同様にして

と変形できる。つまり、Tijkの任意の2つの指数の順番を入れ替えるたびに符号が反転するのでTijkは交代テンソルです。

補足説明
 ここは何を言っているのか解りにくいが、[例題1]で説明した2階テンソルについて成り立つ事情が3階テンソルについても成り立つと言うことです。3階テンソルの三つ添字の並び方の順列組合せは3×2×1=6通り(2階テンソルは2×1=2通り)あるので6項の和や差が必要になるというだけです。このことを強調するためには

の様に書いたほうが良いかも知れません。また、[例題1]では1/2を掛けていますが、ここでも1/6を掛けても事情は変わりません。
 もちろん、同じ事が3階反変テンソルについても言えます。

 

問題3] 3.(2)3.[テンソルの例2]で説明した2階共変テンソルij に対して

で定義される ij“2階反変テンソル”であることを証明せよ。

[解] gia、gaj、δの座標変換によって変換されたテンソルをそれぞれ

とする。3.(2)3.[テンソルの例1]で説明したように、“クロネッカーのデルタ”δ(1,1)型の混合テンソルであるから、条件式を用いると

となる。
 一方 gia3.(2)3.[テンソルの例2]で示したように2階共変テンソルだから

となる。これと前式を比較すると

となるので、 ij“2階反変テンソル”であることが解る。これは3.(2)6.[テンソル商法則]を適用すれば証明するまでもない。

補足説明
 あるいはもっと簡単に次の様にしても良い。いまあるベクトルの反変成分をakとし、これにgikをかけ、 k について和を取り縮約すると

となる。この両辺に gil を乗じて i について和を取り縮約すると

となる。ところで a はまったく任意の共変成分と考えて良いので3.(2)6.[テンソル商法則]から g2階テンソル反変成分でなければならない。

 今後は ij3.(2)3.[テンソルの例2]ij との対応を考慮して“基本計量反変テンソル”と呼ぶことにする。

 

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(3)共変微分

 “共変微分”テンソル解析学で最も解りにくい所であると同時に、最も重要な所です。一般相対性理論において、ミンコフスキー時空リーマン時空に拡張するときに是非とも必要になる概念です。

.共変微分

 “基本テンソル”の変換式

の両辺を uk で偏微分すると

を得る。
 同様に gkj,gik の変換式をそれぞれ u,u で偏微分すると

を得る。
 ここで、2.(8)2.[定義]の(2-61)、(2-62)で導入したクリストッフェルの3添字記号



を得る。
 (3-17)式の両辺に gkl を乗じて k について総和をとり、(3-16)式と3.(2)[問題3]の結論を用いて


を得る。これは、クリストッフェル3添字記号の座標変換式ですが、別稿「テンソル解析学(絶対微分学)」6.(2)5.で説明する様に測地線方程式を利用しても求めることもできます。いずれにしても、(3-18)式は重要な式で、あとで共変微分係数の定義式を導くときに繰り返し使用します。
 また、この座標変換式はクリストッフェルの記号テンソルの成分ではないことを示している。この事は重要な意味を持ちますが、それについては藤井文献(1979年)§15-4をご覧下さい。

 スカラーから作られる勾配ベクトルは例外的に1階共変テンソルに成りますが、一般にベクトルやテンソルの成分をその座標について偏微分して得られる偏微分係数はテンソルの成分とはならない。
 たとえば反変ベクトル変換式

について偏微分すると

が得られるが、これは、テンソルの成分ではないことを示している。

 そこで、上式を次のように変形してみる。



 ここで

と表せば、(3-19)式は

と書ける。
 これは(3-20)式で定義された (1,1)型テンソルの成分であることを示している。つまり、この形の微分であればテンソルを微分したものもまたテンソルとなる。したがって、(3-20)式で定義された 反変ベクトル に関する“共変微分係数”と言うことにする。
 
 共変微分係数du を乗じて j について総和をとって縮約したものを

で表し、反変ベクトル du 方向への“共変微分”と言うことにする。

[補足説明]
 “共変微分係数”“共変微分”の表し方には、別稿「テンソル解析学(絶対微分学)」6.(3)1.[補足説明]の様に、色々な流儀があります。それこそ文献によって千差万別ですから他文献と比較されるときには注意して下さい。
 また、“共変微分とは何か”を別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変微分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」4.(5)で説明しておりますのでご覧下さい。

 同様に、共変ベクトル に関する“共変微分係数”

で定義する。そのとき、 i,j ば、(0,2)型テンソル[2階共変テンソル]となることが証明できます。(詳細は3.(3)[問題1]参照)
 
 このとき、共変微分係数du を乗じて j について総和をとって縮約したものを

であらわし、これを共変ベクトルdu 方向への“共変微分”という。

補足説明
 “共変微分”の事を“絶対微分”“共変微分係数”の事を“絶対微分係数”と呼ぶ事もあります。“テンソル解析学”の事を“絶対微分学”という場合がありますが、要するにこの“共変微分学”の事です。この当たりの議論については別稿「テンソル解析学(絶対微分学)」6.(3)も参照されて下さい。

 

.テンソルの共変微分

 前項のベクトルの共変微分の考えを一般的なテンソルに拡張することができる。

 例えば(1,2)型テンソルkij に対しては

となり、(1,3)型テンソルが得られる(3.(3)[問題2]参照)。これを(1,2)型テンソルkij“共変微分係数”という。ここで、右辺第2項、第3項、第4項で総和を取る指数aはそれぞれの項ごとに異なった指数添字記号を用いても良いことに注意されたし。
 
 一般に(p,q)型テンソルに対しても に関する“共変微分係数”が考えられ、共変階数が1つ多くなった(p,q+1)型テンソルが得られる。このことは[例題2]、[問題1]、[問題2]、[問題3]を比較検討すれば確かめることができます。
 また、“共変微分”は、微分した座標変数のduを乗じて j について総和を取って縮約していますから、微分前のテンソルと同型の(p,q)型テンソルです。

 

.共変微分の性質

 共変微分に関しては、次の定理が成り立つ。

定理 テンソルの和、差およぴ“共変微分”については、通常の微分と同じ法則が成り立つ。

[証明]
 和と差については明らかです。
 積については以下のように証明できる。例えばテンソル Th と Sjk の積は(1,3)型テンソル3.(2)4.[定理]参照)です。(1,3)型テンソルに対する共変微分(その形は3.(3)[問題2]などから推測できる)を実施すれば

となる。この証明に於いて、“通常微分”“ライプニッツの公式”を用いているが、この方法は任意階のテンソルの積に対して拡張できるので任意階数のテンソルの積に対しても同様な関係が成り立つ。
 つまり、“共変微分”に対しても“ライプニッツの公式”が成り立つ
[証明終]

 

 

例題1
 3.(2)3.で説明した[テンソルの例1“クロネッカーのデルタ” δ と、[テンソルの例2“第1基本量” ij共変微分係数を求めよ。

[解] 最初にクロネッカーのデルタの共変微分を求める。(3-25)式を参考にすると

であることが解る。クロネッカーのデルタ成分がすべて定数のテンソルですからこうなることは当然です。

 次に第1基本量(基本テンソル)の uk に関する共変微分係数を求める。

したがって、“基本計量共変テンソル”ij共変微分に対して定数のようにふるまう。

補足説明1
 このことを用いると、重要な公式がさらに導ける。
 3.(2)[問題3]で説明した

の両辺を uk で偏微分したものに上記の公式を用いれば


が得られる。
 すなわち、基本テンソルの商に相当する2階反変テンソルij の uk に関する共変微分係数に付いても以下の関係式が成り立つ。

したがって、“基本計量反変テンソル”ij もまた共変微分に対して定数のようにふるまう。

補足説明2
 2番目の関係式 ij,k=0 は、2.(8)2.で説明した“クリストッフェル(Christoffel)三添字記号”の定義から直接求めることもできる。

 また、3番目の式 ij,k=0 は、 gillj=δ の両辺で uk に関する共変微分を実行して、3.(3)3.[定理]と1番目、2番目の式を用いればただちに求まる。

以上をまとめると以下のようになる。

[定理]

ここで、右辺で総和を取る指数 a はそれぞれの項ごとに異なった指数添字記号を用いても良いことに注意されたし。
 gij や gij の成分は一般に座標 uk の関数ですから、このように共変微分が常に0となることはとても重要です。このことを示す下の2式を“リッチ(C.G. Ricci)の補助定理”という。

 

例題2
 反変ベクトル“2回の共変微分係数”k=vjk を求めよ。

[解] v を1回共変微分した v,j3.(3)1.(3-21)式で示したように(1,1)型テンソルとなるから、これをもう一度共変微粉するときには、ベクトルの共変微分(3-20)式ではなくて、3.(3)2.で示したテンソルの共変微分(3-25)式を用いなければならない。
 そのためv,j共変微分は次のようになる。

すなわち

となる。

補足説明
 v,jk(1,2)型テンソルであることが以下のようにして証明できます。それは[問題2]で証明するのと全く同様なやり方を繰り返すことです。そこのhij に関する証明を Th に対する証明に置き換えて得られる関係式 に於いて Th を v,j に置き換えればよい。
 v,j は Th と同じ(1,1)型テンソルであることが3.(3)1.の(3-21)式ですでに証明されているからその置き換えは可能です。指数添字も置き換えに応じて入れ替える。
 そうして得られる

は v,j,k(1,2)型テンソルであることを示している。

 

問題1
 共変ベクトル に関する共変微分係数 2階共変テンソルの成分であることを証明せよ。

[解] 共変ベクトルの変換式

の両辺を u について微分すると


となる。すなわち

と置くと

となるので、 v の u に関する共変微分係数(0,2)型テンソル(2階共変テンソル)の成分であることが解る。

 

問題2
 (1,2)型テンソル hij のukに関する共変微分係数hijk(1,3)型テンソルの成分であることを証明せよ。

[解] Thij は(1,2)型のテンソルだから、その変換式は

と書ける。
 この両辺を uk について偏微分する。[拡大表示





 これを整理すると

となるが、これは

と置くと

となるので、 Thij の uk に関する共変微分係数hijk(1,3)型テンソルの成分であるとが解る。

 

問題3
 共変ベクトル2回の共変微分係数を求めよ。

[解] [例題2]と同様にすればよい。そのとき v を1回共変微分した vi,j3.(3)[問題1]で証明した様に(0,2)型テンソルとなるから、これをもう一度共変微粉するときには、ベクトルの共変微分(3-23)式ではなくて、3.(3)2.で示したテンソルの共変微分(3-25)式を用いなければならない。
 そのためvi,j共変微分は次のようになる。

すなわち

となる。

補足説明
 vi,i,k(0,3)型テンソルであることは、3.(3)[例題2][補足説明]で説明した方法で証明できます。それは3.(3)[問題1]で証明した vi,j(0,2)型テンソルであることを用いて[問題2]で行ったのと同様な手順を繰り返すことです。
 そうすると最終的に

が得られる。これは vi,j,k(0,3)型テンソルであることを示している。

 

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(4)勾配・回転・発散

 ここは、別項「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」3.(2)などを参照されながらお読み下さい。

.勾配

 スカラー f の共変微分は、3.(2)2.で説明した様に通常の微分と一致するから(3-11)式によって

と置いて得られる共変ベクトルスカラー“勾配ベクトル”という。スカラーに対する共変微分は普通の微分と同じになることに注意されたし。
 このベクトルは3.(2)2.で説明した様に“共変ベクトル”の一種です。

 

.回転

 共変ベクトル共変微分係数

3.(3)[問題1]で示したように(0,2)型テンソル(2階共変テンソル)の成分となる。
 今、これと、 i と j を交換したものとの差

を考えれば、3.(2)4.[定理]により、これも1つの(0,2)型テンソル(2階共変テンソル)となる。これは i と j を交換すると符号が変わる交代テンソルです。これを 共変ベクトル v“回転”という。
 このとき、クリストッフェル記号の対称性のため共変微分回転は普通の微分の回転となることに注意されたし。

 共変ベクトル v がスカラーfの勾配ベクトルであるときは、常に

が成り立つ。よって次の定理が得られる。

定理  共変ベクトル v がスカラーの勾配ベクトルである必要十分条件は、その回転零テンソルであることです。

 これはデカルト座標のベクトル解析で重要な定理でしたが、それがもっと一般のリーマン座標系に対して拡張できると言うことです。

 

.発散

 3.(3)1.(3-21)式で説明した様に、反変ベクトル 共変微分係数

(1,1)型テンソルです。
 ここで j=i と置いて総和をとり縮約して得られる

は1つの成分のみからなる“スカラー”です。これを反変ベクトル v“発散”という。共変微分の発散ということで“共変発散”という場合もある。

[補足説明]
 クリストッフルの記号

であるが、ここで“h=iと置いて縮約”したものは


となる。時空では g<0 なのでではなしにを使う。上記(2-49)式については別稿「余因子行列と逆行列の関係」1.(4)参照。
 一般のn次元の証明は別稿「6.テンソル解析学(絶対微分学)」(2)4.参照。

 そのため、 反変ベクトルv発散

と表すことができる。

[補足説明]
 当然のことですが、テンソルに対しても共変発散を考える事ができる。詳細については別稿「テンソル解析学(絶対微分学)」6.(7)3.を参照

 

.微分演算子

 スカラー f に対して、その勾配ベクトル f, の長さの平方は

で与えられる。
 さらに他のスカラーφに対して

をつくれば、(2-11)式で示したように、このスカラーは2つの共変ベクトル f, と φ, とのつくる角に比例する。
 ここでこれらのスカラー量

と置いて“ベルトラミ(E. Bertrami)の第1微分係数”と言うことにする。

 スカラー f の勾配ベクトル f, (これは共変ベクトル)をさらに共変微分して得られる共変テンソル f,=f,ij (これは3.(3)[問題1]で証明した様に2階共変テンソルです)に対して、 gij を乗じて i,j について総和を取り縮約した

を考え、これを“ベルトラミの第2微分係数”と言うことにする。
 このとき、3.(4)2.[定理]より f,ij=f,ji であり、gij= gij=0 (3.(3)[例題1]リッチの補助定理)だから

と書ける。つまり、ベルトラミ第2微分係数反変ベクトルijf, (下記[補足説明1]参照)の発散と見なせて、以下に述べるように“スカラー”となります。

 ベルトラミ第2微分演算は、デカルト座標系に於ける div grad=△(ラプラスの演算子)あるいはミンコフスキー時空座標に於けるダランベール演算子に相当する。

補足説明1
 gijf,反変ベクトルとなることを示しておきます。
 3.(2)[問題3]で説明した様に gij は2階反変テンソルです。また3.(2)2.(3-11)式で示した様に f, は共変ベクトルです。そのため両者の成分の積に於いて i に関して総和を取り縮約した gijf,

となり、反変ベクトルになることが解ります。
 一般に共変ベクトル f,基本テンソルの逆行列テンソルすなわち“基本計量反変テンソル”ij を乗じて i について総和を取り縮約すると反変ベクトルになります。
 この当たりの議論の意味が解りにくい所ですが、別稿4.(4)5.や、さらに別な稿2.(4)などを参照して下さい。

補足説明2
 ダランベール演算子については別稿3.(2)[補足説明4]に於ける

などを復習されて下さい。
 ミンコフスキー時空に於ける基本テンソルの逆行列テンソルすなわち“基本計量反変テンソル”ij の成分要素は場所的に変化しない定数でしかも対角要素以外は0となります。
 しかし一般相対性理論では gij は座標の関数となり、対角要素以外も 0 とはなりません。対称テンソルにはなりますが、16個の成分の内で10個が独立な座標の関数となります。そのために、単純な座標の偏微分ではなくて、共変微分なるものを考えなければならなくなります。
 いずれにしても、別稿最後の[補足説明3]で引用した、ミンコフスキーの業績に関するアインシュタインの説明をかみしめて下さい。

 

 

例題

を証明せよ。

[解]

 

問題1
を証明せよ。

[解]

 

問題2] 曲線の線素が

であるとき

を証明せよ。

[解] 条件式より

が言える。
 これを用いると、まず

が言える。
 同様に、上記条件の値を(3−35)式に代入すれば

が得られる。
 これは(3-34)式からも得ることができる。

ここでは2.(8)[問題1]で求めた、クリストッフェルの記号の表現式を用いている。
 あるいは、[問題1]の結論を用いてもよい。

 

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(5)曲率テンソル

.曲率テンソル

 反変ベクトル2回共変微分係数hjk3.(3)[例題2]参照)に対して、 j と k を交換した vhkj との差を取れば

を得る。

 ここで

と置き、“リーマン(G.F.E. Riemann)・クリストッフェルの曲率テンソル”、あるいは簡単に“曲率テンソル”と言うことにする。
 これは2.(9)2.で説明した(2-72)式と同じものですが、この曲率テンソルは共変微分演算の交換関係からも定義することができると言うことです。
 ただし、この曲率テンソルの定義記号に関しては注意すべきことがありますので、別稿「テンソル解析学(絶対微分学)」6.(5)1.[補足説明]をご覧下さい。

 これを用いれば、(3-36)式は

と表すことができる。
 3.(3)[例題2][補足説明]で証明した様に、左辺は(1,2)型のテンソルです。また、右辺の v(1,0)型テンソル(反変ベクトル)ですから、3.(2)6.で説明した“テンソルの商法則”により hijk は(1+0,2+1)=(1,3)型のテンソルの成分であることが解る。
 同様な関係式が共変ベクト ルv 2回共変微分係数についても成り立つ。

 また混合テンソルhij などの2回共変微分係数についても成り立つ。

(3-39)、(3-40)式の証明は[問題1]でする。
 一般に Rhijk は恒等的に0ではないから共変微分はその順序に関係することが解る。つまり共変微分の順番を変えたときの違いが、空間の歪みに関係する。そのことから空間の曲率テンソルが規定されると言うことです。
 これらの関係式を“リッチの公式”と言う。

補足説明
 ここは何が言いたいのか解りにくいが、ベクトルやテンソルを微分したとき微分の順序、つまり j と k 、k と l の順番が重要だと言っている。
 そのとき、空間が歪んでいない平坦な空間(つまり Rhijk=0 )の場合には微分の順番を入れ替えても同一の微分係数が得られます。だからもし微分の順番を変えたものとの差を作ってみてそれが零に成らなければ空間が歪んでいることが解ると言うことです。
 そのとき、その差には空間の歪みを表す Rhijk が、元のベクトルやテンソルとの積の形で、いつも同じよう表れる。これは驚くべき事で、大発見と言ってよい。
 このことは“一般相対性理論”で重要です。そのことについては別稿《フライシュ文献4.の説明》を参照して下さい。

 

.曲率テンソルの性質

 定義(3-37)式からリーマン・クリストッフェル曲率テンソルhijk は次の性質を満たすことが解る。

さらに次の関係式も成り立つ。

証明は以下の通り。

 リーマン曲率テンソルに基本計量共変テンソルha を乗じてaに付いて総和をとり縮約したものを

と置く。これは2.(9)2.で説明した(2-78)式と同じものですが、そこと同様に“第1曲率テンソル”と呼ぶことにする。

 このようにすれば、(3-41)、(3-42)式は

となり

が成立する。
 ここで、(3-44)(3-46)hijk の内の hとi 、あるいは jとk の指数入れ替えに対して“交代(反対称)”であることを示しており、(3-46’)hijk(hi)と(jk) をセットで入れ替えた場合には“対称”であることを示している。3.(2)[例題2]参照。

 (3-44)、(3-45)、(3-46)が成り立つことは、すでに2.(9)2.で第2基本量の性質を用いて証明した。また(3-44)、(3-46)については2.(9)3.[補足説明1]でも、リーマン曲率テンソルと基本テンソルの定義式から直接証明しました。
 しかし、大事な所なので、(3-46’)も含めた4式を、別なやり方で証明[問題2]します。

 

.リッチテンソル

 リーマンの曲率テンソルhijk(1,3)型のテンソルであるから h=k とおいて縮約して得られる

もまた(0,2)型のテンソルです。これを“リッチのテンソル”と言う。
 [問題3]で証明するように、リッチテンソル対称テンソルです。
 ここで、縮約する指数の組み合わせについて、別項「テンソル解析学(絶対微分学)」6.(5)1.[補足説明]で説明した定義表現の違いに伴う違いがありますので文献ごとに注意が必要です。平川浩正「相対論」4.(8)も参照されたし。

 さらにリッチテンソルij に基本計量反変テンソル gij を乗じて i と j についての総和を取って縮約して得られるスカラー

“曲率スカラー(スカラー曲率)”と言う。

 リッチテンソル Rij が基本計量共変テンソル gij に比例するような空間を“アインシュタイン(A. Einstein)空間”と言う。

 

 

例題1 リーマンの曲率テンソルhijk に対して

が成り立つことを証明せよ。この関係式を“ビアンキ(L. Bianchi)の恒等式”という。

[証明] 共変ベクトル共変微分i,j“リッチの公式”を適用する。
 まず

が成り立つことが(3-40)式([問題1]参照)と同様にして証明できる。
 この指数添字 j,k, を循環的に入れ替えれば、次の3個の公式

が得られる。このとき、左辺の第1項と第2項の意味をよく考えて循環的に入れ替えると、第2式の左辺第2項と第3式の左辺第2項が上記の様にならねばならない事に注意されたし。
 次に“リッチの公式”(3-39)式

の両辺を u共変微分すれば、3.(3)3.[定理]が成り立つので

が得られる。ここで j,k, を循環的に入れ替えれば3個の公式

が得られる。このとき、左辺の第1項と第2項の意味をよく考えて循環的に入れ替えると、第2式の左辺第2項と第3式の左辺第2項が上記の様にならねばならない事に注意されたし。
 以上6個の公式の辺々を加えれば

が得られる。
 ここで第1項は(3-42)式によって 0 である。また v は任意の共変ベクトルだから第2項が常に 0 であるためには

でなければならない。
[証明終]

 

問題1“リッチの公式”(3-39)、(3-40)式を証明せよ。 

[解] 最初に、(3-39)式を証明する
 3.(3)[問題3]の結論を適用した式を変形すれば下記の様に証明できる。

 次に、(3-40)式を証明する
 まず、3.(3)[問題2]より Thij,k(1,3)型のテンソルです。そのとき3.(3)2.テンソルの共変微分(3-35)式を参照すると、(1,3)型テンソルの共変微分 Thij,kl は以下のように成る。[拡大版


 上記の指数添字 k と l を入れ替えれば、全く同様にして、

が得られる。
 両者の差をつくると下記の様に大半の項が互いに打ち消し合う。

ここで、総和をとる指数添字 a と b に関しては、項ごとで a と b を交換した表記にしても良い事と、クリストッフェル記号について
,等々・・・
が成り立つ事を用いていることに注意されたし。
 最後まで残る項のみを書き出すと以下のようになる。[拡大版



故に

が成り立つことが示せた。

 

問題2] (3-46)式

を証明せよ。 

[解] (3-44)〜(3-46’)式が成り立つことを一気に証明する。[拡大版





 最後の表現式で、指数添 字 h と i を入れ替えれば符号が反転して(3-46)式が成り立つことが解る。同様に、 j と k の入れ替えで(3-44)式が、 hi と jk をセットで入れ替えると(3-46’)式が得られる。また、 i,j,k を循環的に入れ替えた3個を加えると(3-45)式が得られる。

補足説明1
 上式は2.(8)2.

式を考慮すると
変微粉
となります。これは2.(9)3.[補足説明1]で求めた式と同じです。指数文字の割り当てが錯綜していますので注意深く吟味して下さい。
 また、この稿の定義は別稿「テンソル解析学(絶対微分学)」6.(5)1.[補足説明]で説明した(B)の場合ですから、(A)で定義している本[例えば平川文献4.(8)の(4・52)式]とは符号が逆になっていることに注意して下さい。このことも、指数文字の置き方が錯綜していますので注意深く吟味して下さい。

補足説明2
 [問2]の事柄はテンソルRhijkが満たす式に付いての証明です。
 ところでテンソルが示す等式は座標変換に関して不変です。だからある特別な座標系で成り立つことが証明できれば、どんな座標系でもそれは成り立つ。故に任意の1点Pにおける局所Lorentz系で成り立つことを証明しておけば良い。(藤井1979年p102,p120、内山1978年p86)
 局所Lorentz系では計量テンソルgijの座標uに対する編微分係数は

と考えるとができる。もちろん今考えているのはリーマン空間だから、局所的にしかLorentz時空にできないので、gijの座標uの二次以上の編微分係数は0になるとは限りません(このことの意味は別稿4.(5)3.[補足説明]参照)。
 つまり、座標の一次の編微分係数はすべて0(計量が局所的に定数で空間が平坦)にできるが、二次以上の編微分係数は残ります。そのため、前記証明の最後の式は

となります。
 この形なら、(3−46)(3−44)(3−46’)が成り立つことは容易に見取れる。また(3−45)もijkを循環的に入れ替えた3つを加えれば直ちに証明できます。

 もちろん元の式について確かめても良いのですが、その場合は項の数が多いので大変です。

補足説明3
 (3-44)、(3−46)、(3−46’)、(3−45)式を用いればリーマンの曲率テンソル Rhijk の成分要素4×4×4×4=256個の内で独立な成分は20個であることが証明できます。このことに付いては別稿「時空と重力」§18[補足説明]や、別稿「対称テンソルと反対称テンソルの独立成分の数」3.をご覧下さい。

 

問題3] “リッチのテンソル” ij は i と j について対称であることを証明せよ。

[解]拡大版

 

問題4] 重要な関係式

を証明せよ。

[証明]
 3.(5)[例題1]で証明したビアンキの恒等式をh=kとおいて縮約すると

が得られる。同じkでも共変微分の添字とは縮約できないことに注意されたし。
 上式にgijを乗じてさらに縮約する。

[証明終]

補足説明
 ここの共変微分が絡んでいる項の縮約は、3.(2)4.のテンソルの“乗法定理”3.(2)5.“縮約”、そして3.(3)3.“ライプニッツの定理”3.(3)[例題1]“リッチの補助定理”を用いて得られる下記の関係式に依る。
 つまり、“リッチの補助定理”は基本計量テンソルを共変微分は常に0になると言っていたのですが、これと“ライプニッツの定理”を組み合わせると、“任意のテンソルに対する[基本計量テンソルを乗じて指数を上げ下げする操作][共変微分]は交換可能”です。これはとても重要な性質です。

 

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(6)測地線

.オイラーの微分方程式

 曲面上の2点x(u11,u12),x(u21,u22)を結ぶ曲線

の弧の長さ s は

で与えられる。

 曲線の両端P,Qを固定し、曲面上を少し変化させたときの曲線を C’ とすれば、その方程式は

で与えられる。
 ここで ε は絶対値が十分小さい定数で、λ(t)は径数 t についての C からの変位を表す微分可能な関数である。そして両端は変化しないから

をみたす。
 C’ の弧の長さ s’ は

で与えられる。
 故に、2点P,Qを結ぶ曲線の弧長の変化量 s’−s=δs は

となる。ここで、O(ε2)は、展開に於けるεの2次以上の無限小の項を表す。
 元々の弧長Cの長さが最小の極値であるためには、εの係数が0でなければならないから

を満足しなければならない。これを測地線に対する“オイラーの微分方程式”という。

 

.測地線の微分方程式

 (3-50)式より

となるから、オイラーの微分方程式




となる。これを“測地線の微分方程式”と言う。
 2径数の場合を具体的に書くと

となります。つまり、2元連立2階常微分方程式です。
 もちろん、一般相対性理論の4次元リーマン時空では4元連立2階常微分方程式に成ります。

 2.(14)2.に於いて、測地的曲率が 0 であるような曲面上の曲線を測地線といった。そして測地線である条件(2-136)式はちょうど上の(3-54)式と一致する。よって次の定理を得る。

定理 曲面上の2点を結ぶ測地線弧 は、それらの2点間の最短曲線弧を与える。

補足説明1]
 別稿で引用した説明の様に一般相対性理論では、上記の測地線の微分方程式は自由な質点がたどる軌跡の方程式となる。それはニュートン力学で与えられる直線の方程式の拡張となっている。

補足説明2
 2元連立2階常微分方程式(3-54)式で

と置けば(3-54)式は

となり、u,v,w,zに関する1階の連立常微分方程式(つまり4元連立1階常微分方程式)となる。
 常微分方程式論により、初期条件 u(0),v(0),w(0),z(0) を与えれば、つまり曲面上の1点 0 とそこでの単位接ベクトル v0

を指定すれば、この形の連立微分方程式はs=0の近くで一意の解を持つことが証明されている。
 また解曲線(u(s),v(s))に対応する曲面上の曲線(u(s),v(s))に対してsが弧長に成っていることも確かめられる。

 

 

例題1 直円錐面 x2+y2−z2=0 上の“測地線の微分方程式”を求めよ。

[解] 直円錐面の径数表示は

となる。(図3-2参照)

 これから

が得られるので、第1基本量は2.(2)3.(2-9)式により

となる。
 これから、2.(8)[例題]および[問題1]に依って

となる。他は0となる。
 故に“測地線の微分方程式”(3-54)式は

第2式から

を得る。

 

例題2  u2+v2+w2=1 を満たすu,v,wを用いて作った2次微分式

を線素とする曲面の測地線は、uとvとの間の1次式であることを証明せよ。

[解]  u2+v2+w2=1 を微分すると

であるから、これを線素を与える式に代入して

を得る。したがって第1基本量は

となるから、2.(8)[例題]および[問題1]に依って

となる。
 故に、sを径数とする測地線u=u(s),v=v(s)の微分方程式は

となる。
 ここで、測地線をvを径数として、u=u(v)とすれば

であることに注意して、上記の(1)、(2)式より

を得る。

 

問題1] u曲線が測地線であることの条件は

であることを示せ。

[解] 2.(14)1.の(2-135)式と測地線の定義kg=0より、u曲線が測地線であるための条件は、du2/ds=0であることを考慮すると

となる。
 ここで、2.(8)[問題1]に依って

となる。

 

問題2] v曲線が測地線であるための条件は

であることを示せ。

[解] 前問と同様に

 

問題3] 半径aの球面

の上の“測地線の微分方程式”を求めよ。

[解] 

となる。
 故に“測地線の微分方程式”(3-54)式は

第2式から

を得る。

 

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(7)測地座標

.測地座標

 曲面上の1点Pとその点における曲面の接方向を与え、それらを初期条件として測地線の微分方程式を解けば、ただ1つの測地線0 が決まる。次に C0 上の各点を通り、これに直交する測地線も同様にして決まるから、C0 の適当な領域を取れば、互いに交わることのない測地線群によってその領域を単純に覆うことができる。

 そして C0 上の径数を v ,C0上の点から出る測地線に沿って測った長さを径数 u に取れば、 u,v はこの領域における座標系を定める。定め方から径数曲線は直交するから、線素は

と表すことができる。
 次に、この線素を与える式を変形してみよう。曲線は測地線であるから、その測地的曲率 kgは 0 である。そのときv=一定であるから、(3-55)式と2.(2)3.(2-9)式より

となる。また、2.(8)[問題1]から

である。
 そのため u曲線の測地的曲率g2.(14)1.の(2-135)式から

となるので、結局

となる。これは E が u だけの関数であることを示すものであるから

と置いて新しい径数を用いる。これを改めて と書けば(3-55)式は

と書ける。線素のこのような型を“測地形式”と言い、座標系(u,v)を“測地座標”と言う。

 

.直交截線(チョッコウセッセン)

 2つの測地線 u=u1 と u=u2 (u1<u2) の間にはさまれた測地線(v=一定のu曲線)の弧長 s は(3-56)式によって

となるから、次の定理を得る。

定理1 測地線0直交する測地線上で、C0 から一定の距離にある点の軌跡は、C0 から出る測地線族に直交する曲線群となる。この曲線群を“直交截線”(チョッコウセッセン)と言う。

 

.測地的極座標

 曲面上の1点Oにおいて曲面に接するすべての方向に出る測地線を考えれば、適当な領域において、互いに交わらない。
 これらの測地線をu曲線に、その直交截線をv曲線にとれば、点O を含む適当な領域に1つの座標系が導入される。

 そのとき、線素の形は(3-55)式の様になる。したがって u をに取り直せば、線素の型は(3-56)式となる。そのときの座標系(u,v)を“測地的極座標”という。前項[定理1]によって、v曲線(u=一定)は、点O から測地的距離が一定な点の軌跡となる。このような曲線を“測地円”という。

 測地的極座標系では、v=0 と v=v1 との間に挟まれた弧の長さは

で与えられる。
 任意の v に対して u→0 とすれば、0 に近付くから

である。故に

を得る。

 点Oにおいて2つの測地線 v=0 と v=v1 のなす1 に対して弧長sは

で与えられる。これを u について展開すれば(3-57)式を用いて

を得る。ここで O(u2) は u について2次以上の無限小の項をまとめて表したものである。したがって

を得る。
 以上をまとめると次の定理が得られる。

定理2
 曲面上の適当な領域において測地座標系がとれて、“第1基本形式”が(3-56)式のように ds2=du2+G(u,v)dv2 と書け、係数が

を満たすようにすることができる。
 同様に適当な領域において測地的極座標がとれて、“第1基本形式”が(3-56)式と書け、係数が(3-58)式を満たすようにすることができる。

 

 

例題1 測地座標u,v を用いて測地線の直交截線(v曲線)の“測地的曲率”(kg“ガウスの全曲率”K を求めよ。

[解] 測地座標をu=u1(=一定)、v=u2としておく。(3-56)式よりE=1,F=0であるから2.(8)[例題][問題1]によって

となる。u==u1=一定に対して

であることに注意して、測地線の微分方程式を求める。そして、2.(14)1.の(2-135)式から、直交截線(v曲線)の“測地的曲率”(kg


となる。

 次に、2.(9)2.の(2-72)(2-78)式と(2-82)式から

が得られる。これを2.(9)3.の(2-83)式に代入して

が得られる。

 

例題2 “ガウスの全曲率”K が 0 である曲面の“測地形式”を求めよ。

[解] 問題の曲面上に測地的極座標をとれば線素は(3-56)式によって

と表すことができる。そのため“ガウスの全曲率”K は[例題1]によって

と表される。仮定に依ってK=0だから

を得る。
 ここで、[定理2]によって

だから

となる。よって

となるから、この曲面の線素は

となる。

 

問題1] “ガウスの全曲率”

である曲面の“測地形式”を求めよ。

[解] 仮定により

となるが、この形の微分方程式は、別稿「調和振動子」2.(2)により、

の形の解を持つことが解っている。
 ここで[定理2]より A(v)=0、B(v)=a がただちに求まるので

が得られる。

 

問題2] “ガウスの全曲率”

である曲面の“測地形式”を求めよ。

[解] 仮定により

となる。このとき

であることを考慮すれば、前問と同様にして、上記の微分方程式は、

の形の解を持つことが言える。
 ここで[定理2]より A(v)=0、B(v)=a がただちに求まるので

が得られる。

を得る。

[補足説明]
 ここの[例題2][問題1][問題2]の“測地形式”を持つ曲面が具体的にどの様な曲面かは、それぞれ3.(10)の[問題1]、[問題2]、[例題]をご覧下さい。 

 

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(8)ベクトルの平行移動

.平行

 曲面上の 反変ベクトル v3.(2)1.参照)の共変微分3.(3)1.の(3-22)式参照

は、曲面が特に平面の場合平行座標系を取れば2.(8)2.の(2-61)式と g の定義より

となる。つまり、“平面の場合”の平行座標系では共変微分普通の微分となる。

 いま、ベクトル v+dv とが平行であれば =一定、すなわち dv=0 であるから

である。
 このことを“曲面の場合”に拡張して 共変微分 δv=0 を満たすとき、 ベクトル v+dv とは互いに“平行”であると言うことにする。そのとき共変微分 δv は1つの反変ベクトルであるから δv=0座標系に関係しない幾何学的意味を持っている。つまり曲面上に貼り付けた網目状の曲線座標系が変わっても同様に成り立つということ。

 

.レヴィ=チヴィタの平行性

 このベクトルの平行性について直観的な意味を考えてみる。
 曲面 (u(i=1,2) 上の接ベクトル(i=1,2)によって点 P(u) で曲面に接する反変ベクトル v

で表すことができる。

 また、曲面上の1点 Q(u+du) において曲面に接するベクトル v+dv は2次以上の無限小を省略して、2.(8)5.“ガウスの方程式”(2-69)式を用いると

と表せる。ここで、δvベクトル共変微分3.(3)1.(3-22)式参照]を表す。

 したがって、このベクトル v+dv を点P(u)における接平面上に正射影すれば、法線ベクトル e の方向の成分が消えて

が得られる。
 このベクトル v’と P(u) における との差がベクトル

であり、これが “共変微分”δv の幾何学的意味です。

[定義]
 したがって、 共変微分 δv=0 であることは、P で曲面に接するベクトル v と Q で曲面に接するベクトル v+dv の P への接平面上への正射影したベクトル v’ とが互いに平行になると言うことです。これがレヴィ=チヴィタ(Levi-Civita)の与えた平行性の直観的な意味です。
 共変微分 δv=0 によって定義されるベクトル平行性“レヴィ=チヴィタの平行性”という。

 

.平行移動

 曲面上の曲線C:u=u(t) とこれに沿って定義された曲面上のベクトル v(t) が

を満たすとき、(t) は曲線Cにそって“平行ベクトル場”を作ると言う。

 C上の1点 u0=u(t0)(i=1,2) におけるベクトル v0=v(t0) を与え、これを初期条件として常微分方程式(3-62)式を解いて、C上の任意の点における解 (t) が得られる。このベクトルはCに沿ってベクトル v0 を平行に移動したベクトルである。
 このとき図3-6の様に、曲面上のベクトル“平行移動”はその道に関係する。

 例えば、曲面上で径数曲線によって作られる微小平行四辺形 PQRS の頂点を

の様に取るとすると、道PQR を通って平行移動して得たベクトル VPQRと、道PSR を通って平行移動して得られたベクトル VPSRとの差は、3.(5)1.の(3-36)式と(3-37)式により(つまり“リッチの公式”(3-38)式により)

となる。
 ここの証明から、共変微分の微分の順序の入れ替えが、ベクトルの平行移動に於けるベクトル偏差とどの様に関係するのかが良く解ります。

 このことを用いれば、一般的に曲面上の微小な単純閉曲線に沿って、ベクトル v“平行移動”で1周させたとき、始めと終わりのベクトルの差は

となり、曲率テンソルhijk で表すことができる。
 つまり、曲面上の小さな閉曲線に沿ってベクトルを“平行移動”によって一周させてみれば、一周したベクトルの前後の違いから曲面の曲がり具合が決定できると言うことです。

補足説明1]
 ここで何が言いたいのか解りにくいが、ここの結論は“一般相対性理論”で重要です。そのことについては別稿《フライシュ文献4.の説明》を参照して下さい。

補足説明2
 L. Infeld は“アインシュシタインの思い出”の中に、プリンストン高等研究所でのアインシュタインとレビィ=チヴィタの交流の様子を書き残しています。とても興味深い思い出話なので別稿で引用しておきます。

 

.平行移動で成り立つ性質

定理1 曲線Cに沿っての“平行移動”によって、ベクトルの長さ、および2つのベクトルの間の角は不変である。

[証明] ベクトル v,w曲線C:u=u(t) にそって平行移動すれば

である。
 そのため、 の長さを || として、3.(3)[例題1]“リッチの補助定理”を用いれば

が言える。つまり、 || は不変となる。まったく同様にして、 の長さを || とすると || が不変であることが証明できる。
 そのため、 のなす角を θ とすれば、2.(2)3.の(2-11)式と、平行移動であることの条件式を用いれば

であることが言える。故に θ も一定である。

[証明終]

定理2 曲線が測地線であるための必要十分条件は、その接線ベクトルがその曲線(測地線)に沿って“平行に移動”すると常にその曲線の接線ベクトルとなることである。

[証明] 曲線Cが測地線であるとき、径数sに対して3.(6)2.測地線の微分方程式(3-54)式によって

が成り立つ。
 ところが

は測地線の“単位接線ベクトル”であるから、測地線の接線はその測地線に沿って平行であるといえる。
 つまり、3.(8)2.“レヴィ=チヴィタの平行性の条件”

の様にして成り立っていると言うこと。
[証明終]

 以上の2つの定理より次の定理が得られる。

定理3 測地線に沿って“平行に移動”するベクトルは、測地線と常に一定の角をなす。

 

 

例題 ua曲線(a=1 または 2)の単位接線ベクトルが与えられた曲線Cにそって“平行”であるための条件は、Cが方程式

を満たすことである。

[解] 接平面上のベクトル v基本ベクトル

の1次結合

で一意に表され、その長さは

である。
 いま を u1曲線 、または u2曲線 の単位接線ベクトルと考えれば、それぞれ v1=0,v2=0 の場合となるから、その成分は

となる。曲線C:u=u(t) にそって“レヴィ=チヴィタの意味で平行”であれば3.(8)3.の(3-62)式によって

を満たす。そこで

(1)a=1,b=2の場合
 v2=0であるから(1)式を(2)式に代入して

を得る。
 そこで、i=2(=b)(a=1)とすると、δ12=0から

が得られる。
 次にi=1(=a)の場合には、上の条件より

が得られる。

(2)a=2,b=1の場合
 同様にして

が得られる。よって求める条件は

である。

 

問題1] 曲面上の曲線 u=u(t) に沿って“平行”なベクトルの共変成分 v

を満たすことを示せ。

[解] 3.(3)1.共変ベクトルの“共変微分”の定義(3-24)式と、3.(8)2.ベクトルの“平行性”の定義から明らか。

 

問題2] 曲面上の線素が

の形をしているとき、ua曲線(a≠0) の接線は ub曲線 に沿って“平行”であることを示せ。

[解] u1曲線の接線がu2曲線にそって平行であることを示す。u1曲線の単位接線ベクトルの成分は(1,0)であるから、3.(6)2.測地線の方程式(3-54)式より

である。
 ところで、問題の条件式より、g11=g22=1,g12=coswだから

となる。同様に

が言える。
 u1とu2を逆にして考えれば同様のことがいえるので、ua曲線(a≠0) の接線は ub曲線 に沿って“平行”であることが言える。

 

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(9)曲線の展開

.展開

 曲面:S上に1つの曲線C:u=u(t) が与えられているとき、C上のすべての点で曲面に接する接平面を考えれば、径数 t に関する接平面群が得られる(図3-9)。

 そのとき、これらの接平面群は1つの“包絡面”を作り、その包絡面は C にそって元の曲面に接している。さらにその包絡面は2.(13)で述べた“線織面”(センシキメン)となるので、そこで述べたように包絡面は“可展面”となり平面上に展開することが出来る。
 この様に、曲面上の曲線に沿って包絡面を作り、これを平面上に広げれば、曲線は平面上の曲線となる。この平面上の曲線を、曲面上の曲線“展開”という。

 前節3.(8)2.で見たように、Cに沿って曲面Sに接するベクトル場v(t) が“レヴィ=チヴィタの意味で平行”であるというのは、点(u)における接平面に、近接する点(u+du)のベクトルv+dv を正射影したとき接平面上にできるベクトルが、点u(t)におけるベクトルv(t) と普通の意味で平行である事であった。
 先に述べたベクトル場v(t)は(ui(t))における接平面上のベクトルであった。ところで、曲面Sと上記包絡面とは曲線Cに沿って接しているから、ベクトル場v(t)は包絡面に接するベクトル場でもある。そのためベクトル場v(t)は包絡面上でもCに沿って“レヴィ=チヴィタの意味で平行”である。したがってこの包絡面を1つの平面に“展開”すれば、Cがうつされた曲線に沿って普通の意味で平行なベクトル場である。以上をまとめると次のように言える。

“レヴィ=チヴィタの意味で平行”なベクトル場が曲面上の曲線に沿ってあったとき、この曲線上のすべての点における接平面族の包絡面(可展面)上で“レヴィ=チヴィタの意味で平行”で、包絡面を平面上に広げたとき、この平行なベクトル場は、平面上で普通の意味で平行なベクトル場となる。

 展開によって、曲面の曲線上の1点における径数曲線の接ベクトル

も平面上のベクトルとして展開される。この様に展開された曲線とベクトルxは、連立微分方程式

を平面上で解いたときの解として得られる。

 

.例

 半径a、中心Oの球面上の小円C上の1点Aで、C に垂直な接ベクトル v を考える。

このベクトルを C に沿って球面に接しながらレヴィ=チヴィタの意味で平行に移動させて C を一周させる。再び帰ってきたときの接ベクトル v’ を求めてみる。
 C に沿っての接平面族は C で球面に接する直円錐面を包絡する。直円錐面の頂点を V とし、∠VOAを θ とする。円錐面を平面に展開すると、Cは半径 a tan θ で中心角 2πcos θ の扇形の弧となる。

C を平面に展開したときの長さは2πasinθだから、扇形の頂角は

となる。 v’ は普通の意味で平行であるから、v’ と半径VA’のなす角は 2πcos θ となる。よって v’ は元の球面上において を2πcos θ だけ回転したベクトルとなることが解る。

 

 

例題1 曲面上の測地線“展開”直線であることを示せ。

[解] 測地線をui=ui(s)とすれば、それは3.(6)2.の(3-54)式により

を満たす。そして、その展開は(3-63)式の連立微分方程式

を解いて得られる。
 (2)式を微分したものに(3)を代入し、さらに(1)式を用いれば

が得られる。
 この解は

となる。これはa,bを定ベクトルとする直線の方程式です。

 

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(10)等長変換

.等長変換

 2つの曲面Sと曲面線素をそれぞれds2とすると、Sとの間に1対1連続な写像φがあって、対応点における線素が常に等しいとき、すなわち

であるとき、φを“等長写像”という。
 このような対応が付けられる2つの曲面を“等長”である、あるいは、互いに他の上に“展開可能”であるという。
 例えば、合同な平面は等長であるが、合同でなくても、平面と円柱面、又は円錐面は等長である。

定理 2つの曲面が“等長”ならば、対応点における2つの曲面の“ガウスの全曲率”は等しい。
 これが、(2-83)式で説明した“ガウスの驚異の定理(Theorem egregium)”の元々の形です。

[証明]

 したがって、線素を

とおけば

であるから

となる。ところが、2.(9)3.の(2-83)式で見たように“ガウスの全曲率”は第1基本量gijとその2階までの偏微分係数で表されるから、対応点におけるガウスの全曲率は等しい。
 すなわち、ガウスの全曲率Kは等長変換(等長写像)で不変に保たれる。つまり、曲面を(伸縮することなく)任意に変形しても(つまり曲げたりたわましたりしてその曲面形状を変えても)、曲面上の任意の点のガウス全曲率 1/R1・R2 は変化しないと言うこと。この大定理はガウスの曲面論の大論文(1827年)§12で発表された。詳細は文献8.をご覧下さい。
[証明終] 

補足説明1
 ここは何を言っているのか解りにくいので補足します。
 2.(9)3.[定理]で説明したように、ガウスの全曲率は、第1基本量およびそれらの偏微分係数だけで表せるのでした。だから、uの関数としてのgij(u,vの関数としてE,F,G)が値を変えない、つまり長さを変えない、範囲で空間の曲面に変形を施しても、ガウスの全曲率は不変であると言うことです。
 さらに、3.(6)1.で測地線を説明したとき、測地線とはその曲線に沿って積分した距離sが、その近傍の曲線に沿って積分した距離に対して極値を取る(つまり積分の変分を0にする)ような曲線でした。だからある曲線が曲面上の測地線であるという性質も曲面の等長変換で不変に保たれます。
 ガウスの曲率や、測地線の様に、曲面の“等長変換(等長写像)”で保たれる曲面の性質があるのだと言うことです。
 
このことは、ガウス自身が自分の1827年論文を概説したゲッチンゲン学報(1827年11月5日)で明確に説明しています。

補足説明2
 4次元ミンコウスキー時空におけるローレンツ変換は等長変換の一種です。
 ここで、吉田伸夫著『思考の飛躍(アインシュタインの頭脳)』新潮社(2010年刊)より引用


 “計量テンソル” gijの意味については、3.(2)2.[補足説明3]を、あるいは別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分」2.(6)をご覧下さい。また、引用文下段の中程の説明については別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分」4.(3)をご覧下さい。

 

 

 ガウスの全曲率が定数に等しい曲面を“定曲率曲面”と言う。定理によれば、2つの曲面が等長で1つの曲面が定曲率ならば、他方も同じように定曲率曲面である。球面や、次に述べる擬球面などは定曲率曲面の例である。

例題 “ガウスの全曲率”

である曲面は、擬半径 a の“擬球面”“等長”であることを示せ。

[解] 3.(7)[問題2]において、K=−1/a2 である曲面の線素は測地座標を用いると

となることが示されている。そこで擬半径 a の“擬球面”の線素を求めこれが上記の線素と等しいことを示せば良い。
 擬球面はxy平面上の追跡線tractrix(犬曲線)をz軸のまわりに回転してできる回転面である(図3-12)。追跡線とは、図3-11 のように、その上の任意の1点Pにおける接線が接点Pとz軸との交点Qによって切り取れられるとき、切り取られる線分PQが常に一定(≡aとする)である曲線の事です。これは最初Sに居た猟犬が、z軸上を逃げる獲物を、獲物との距離を一定(=a)に保ちながら追跡する軌跡なので追跡線と呼ばれている。

 xz平面上の追跡線の勾配は

と表される。接線が z軸 の正方向となす角を t とすれば、この微分方程式は以下のようにして解ける。

 故に、xz平面上の追跡線

で与えられる。
 これを z軸 の回りに回転してえられる回転面、すなわち擬半径 a の“擬球面”の方程式は

となる。θ は z軸 のまわりの回転角です。
 したがって擬球面の線素dsは

となる。

なる対応をつければ

となるから

となり

を得る。

補足説明
 球面の全曲率K=1/a2 は至るところ正で一定です。これに対して追跡線(犬曲線)を z軸(漸近線)のまわりに回転してできる曲面は、至るところ負で一定の全曲率K=−1/a2 を持つ。全曲率が一定な球面になぞらえて、これを擬球面と呼んでいる。
 E.Beltoramiが非ユークリッド幾何学のモデルとして使用したのでベルトラミの擬球とも呼ばれる。実際、ボリア(Johann Bolyai, 1802〜1856)とロバチェフスキー(Nicolai Ivnovitch Lobatchevski, 1793〜1856)が見出した非ユークリッド幾何学は、測地線を直線とみれば、この擬球の上の幾何学と同等であることが示される。非ユークリッド幾何学がユークリッド幾何学と同じく矛盾を含まない幾何学であることは、このようにユークリッド幾何学の中に非ユークリッド幾何学のモデルを作って示された。
 ところで、発表されることは無かったが、ガウスもこの曲面を反球面と名付け、非ユークリッド幾何学との関係に気付いていたようです[別ページの補足引用2の 2)参照]。

 

問題1] ガウスの全曲率 K が 0 である曲面は、局所的に平面と等長であることを示せ。

[解]  3.(7)[例題2]において、K=0である曲面の測地形式は

であることが示されている。
 これは平面上での極座標による線素の式と同一であるから、局所的に平面と等長である。

 

問題2] ガウスの全曲率 K が性の定曲率 1/a2 (a:定数)である曲面は、半径 a の球面と局所的に等長であることを示せ。

[解] 3.(7)[問題1]において、K=1/a2である曲面の測地形式は

となることが示されている。
 これは、半径aの球面の線素の式と同一であるから、局所的に球面と等長である。。

 

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(11)ガウス・ボネの定理

.グリーンの定理とモンジュの公式

 微分幾何学には、曲線、曲面または空間の1点の近傍に関する性質、いわゆる小域的性質を研究の対象とする小域の微分幾何学と、曲線、曲面または空間自身の全体としての性質を研究の対象とする大域の微分幾何学がある。
 この節で述べる“ガウス・ボネ(Gauss-Bonnet)の定理”は、微分積分学の“グリーンの定理”の1つの応用であって、曲面の大域の微分幾何学を代表する定理です。
 具体的には、この定理はユークリッド平面幾何学の基礎的定理“三角形の内角の和は2直角に等しい。”や、球面幾何学の定理“球面三角形ABCの面積はその球面過剰、すなわちS=a2(A+B+C−π)[a:球の半径、A、B、C:頂角]に比例する。”の拡張になっている。
 まず、微分積分学に登場してくるグリーンの定理に注意しよう。

定理1 xy平面上で有限個のなめらかな曲線の弧からなる単純閉曲線 C によって囲まれた有限な閉領域を D とする。D上でx,yの関数、P,Q,∂P/∂y,∂Q/∂x が連続であるとする。
 C に沿っての線積分を、 D の内部を左に見るような向きにするとすれば

が成立する。これを“グリーンの定理”と言う。

[証明] 証明は別項「グリーンの定理[積分定理の王]」2.(1)を参照されたし。.

 

定理2 曲面S上の単連結な領域 D において直交する径数曲線がとれるものとする。 D の曲線C が u曲線 となす角を θ とし、曲線C、u曲線、およびv曲線 の“測地的曲率”をそれぞれ kg、(kgu、および (kgv とすれば

が成り立つ。これを“モンジュの公式”と言う。

[証明] 証明は2.(14)[例題1]を参照されたし。

 

.ガウス・ボネの定理

定理3 C2級の曲面 上に、m個の C2級曲線 C1,C2,・・・,Cm からなる単純閉曲線 C によって囲まれた、向きのついた単連結有界な領域をDとする。C2級曲線弧の接合点における2つの曲線弧のなす内角をa1,a2,・・・,amとすると

が成り立つ。これを“ガウス・ボネの定理”という。

 ここで、s は D 向きに従うように C に向きを付けたときの弧長、 kg は C の測地的曲率、 K はガウスの全曲率は C の向きにしたがって1周する線積分、dσ は D の面素

を表す。

[証明]
(1)Dが1つの測地座標近傍の中に入る場合
 測地座標をu,vとすれば、線素は3.(7)1.の(3-56)式によって

と書ける。
 測地座標の径数曲線は直交するから、u曲線の接線方向からCの接線方向へDの向きにしたがって測った角をθとすれば(図3-14)、2.(14)[例題1]と同様に考えて

が得られる。
 u曲線は測地線であるから、(kg)u=0である。(3-65)式に上記の関係を代入すると

が得られる。
 次に、3.(7)[例題1]の(3-59)式、(3-60)式によってガウスの全曲率Kは

となる。
 こごで、グリーンの定理(3-64)式において、P=0,Q=と置けば、(3-67)式によって

となる。
 この左辺は(3-68)式によって

と表される。したがって

を得る。

(2)Dが1つの測地座標近傍の中に入らない場合
 Dを有限個の単連結な部分領域 D1,D2,・・・,Df に細分し、その各々が1つの測地座標近傍に入るようにする。 D1,D2,・・・,Df にはDとおなじ向きをつけ、それぞれの範囲 C1ゃ,C2’,・・・,Cf’ には D1,D2,・・・,Df のそれぞれにしたがった向きをつける(図3-15)。

 仮定により、各 D(i=1,・・・,f) は測地座標近傍に入るから(1)により各D

が成り立つ。ここでαijはDの周C’上の2つの弧の接合点における内角を表す。
 この関係は i=1,・・・,f に対して成り立っているから f 個の関係式を加えると

となる。
 kg は曲線の向きと領域の向きによって定まり、曲線の向きが反対であれば絶対値が等しく符号だけが異なる。
 Dvの細分に用いた分割曲線は、接する小領域の境界として、向きが反対となるように向きづけられるから、このような境界上で kg は互いに消し合う(図3-16)。

したがって、D の境界 C の部分の積分だけが残るから

となる。
 次に、

を求める。 D1,D2,・・・,Df の角点(頂点)となる点の個数を v 個、そのすち C上にあるものを m個 とする。 D1,D2,・・・,Df の隣接する2つの頂点間の曲線弧(辺)の全体をe個とする。Dkの頂点の個数と辺の個数は一致するから、Dの内部の辺は2つの小領域に共通である。は各頂点についての総和であり、各々の小領域の頂点の個数の総和は 2e−m個 だから

である。さらに、Dの内部にある頂点の周りの内角の和は2πであり、C上の1頂点で接する小領域のこの頂点での内角の和は、Cにおけるこの点でのDの内角となる。したがって

である。
 (3-71),(3-72),(3-73)式を(3-70)式に代入して

が得られる。
 Dの曲線弧を辺として曲線多角形に分割したとき、頂点の数 v 、辺の数 e 、面の数 f の間には

の関係がある(証明は別稿「キルヒホッフの法則(電気回路における)」2.を参照)。一般に

とおいて、χ(D) を C2級曲線 による分割によってできた図形Dのオイラーの特性数(標数)と言い、分割の仕方にかかわりなく決まる数です。今は単連結で有界な領域ですからχ(D)=1です。
 (3-75)式により(3-74)式は

となる。
 ここで、

を曲面上の D における積分曲率と言う。
[証明終]

補足説明
 ある読者の方から教えていただいた“オイラーの特性数(標数)”についての補足です。
 Dが単連結で有界なハンカチの様な領域ならχ(D)=1ですが、Dがスカートの様な穴が1つ開いた領域のときはχ(D)=0、Dがズボンの様に穴が2つ開いた領域ならχ(D)=-1、Dがセーターの様に穴が三つあいた領域ならχ(D)=-2となります。

 それぞれの図形で頂点の数 v 、辺の数 e 、面の数 f の数を数えてみられたらそうなることが解ります。図では簡単な分割例を示していますが、もっと細かく分割しても同様です。
 同じ読者の方からガウス・ボネの定理に関係した面白い論文を教えていただきました。これを読むと“ガウス・ボネの定理”の本質が良く解ります。別ファイルで引用紹介していますのでご覧下さい。特に最後の付録は興味深いので下記に引用。



 

 

例題1 曲面上の m個 の測地線弧からなる曲線Cで囲まれた単純閉領域 D を“測地的多角形”という。各頂点における内角を a1,a2,・・・,am とすれば

が成立することを示せ。

[解] Cは測地線弧をつないだものであるからC上ではkg=0です。そのため、[定理3]の(3-66)式により

が得られる。
 特にm=3の場合は、次のガウスの定理が得られる。

定理4 測地三角形ABCの“積分曲率”は、三角形の頂点A,B,Cにおける内角を同じ記号A,B,Cで表すと

で与えられる。
 これは測地三角形の内角の和が、全曲率を三角形上で積分した値のみに依存すると言う驚くべき定理です。これはGaussが1827年に発表した論文『曲面の研究』に載っており、これを“ガウスの定理”と言う。

 

問題1] (3-75)式は分割の仕方に関係なく成り立つ事を証明せよ。

[解] 別稿「キルヒホッフの法則(電気回路における)」2.の証明より明らか。

 

問題2] “ガウスの定理”を利用して、次の定理を証明せよ。
 (1)平面三角形の内角の和は2直角に等しい。
 (2)球面三角形の面積は球面過剰A+B+C−πに比例する。
 (3)擬球面上の測地三角形の面積は角不足π−(A+B+C)に比例する。
もちろん、これらの三角形は全て測地線を辺とする“測地三角形”のことです。

[解]
(1)平面のガウスの全曲率K=0 だから、ガウスの定理により

となる。

(2)球面のガウス全曲率K=1/a2(=一定) だから、球面上の測地三角形の面積を F とすれば、ガウスの定理により

となる。
 球面上の大円を辺とする測地三角形(例えば赤道と2つの子午線で囲まれた下図の様な三角形)を計算してみると確かに上記の関係式を満たしている。

つまり、この例ではφが二直角(π)からの余剰となる。
 また、図中に示す3つの大円からなる三角形A’B’C’に対しても同様なことが言えるのだが、その三角形の大きさを縮小して面積Fを零に近づければ三角形の内角の和とπとの偏差 A+B+C−π=F/a2 は(a=一定ならば) F→0 とともに限りなく 0 に近付くことも、この式は示している。

(3)擬球面のガウス全曲率K=−1/a2(=一定) だから、擬球面上の測地三角形の面積を F とすれば、ガウスの定理により

となる。
 擬球面上に測地三角形を描くのは難しいが、(2)の例と同様な関係を示している。

補足説明
 ここで説明されているように、現実の空間に3地点を取り、それらを光学的に見通してそれらの地点の間の内角を測定し、その和がπよりどれだけずれるかで、現実の空間が球面的か、ユークリッド的か、擬球面的かが判定できる。
 実際、ガウスはホーヘンハーケンブロッケンインゼルスベルクの山頂に設置した三角点標識からなる大三角の内角を測量してこのことを確かめようとした。しかし、それらの内角の和とπとの差は観測誤差の中に埋もれていて確認できなかったようです。(ガウス『曲面についての一般研究』(1827年)§28参照)
 ガウスは現実の土地測量に深く関わっていたし、非ユークリッド幾何学の思索を深く進めていました。そして実際に測量する地表は球面上の三角形で測量していくわけですから、地球の球対称の重力場に拠って現実の空間が球対称的に歪んでいるかもしれないと思っていたのでしょう。その様に考えると後のアインシュタインの一般相対性理論的な思想を持っていたわけですから、驚くべき先見性ですね。このことに付いては別稿p121[補足説明2]もご覧下さい。

 一般相対性理論による地球重力場に伴う空間の曲率を利用して計算したこの角度偏差は10-15rad程度

ですから、これは現代の観測技術を持ってしても検出不可能です。ただし、現在では太陽重力による太陽系レベルの大きさの空間の歪みならば検出可能です。別稿の“光の湾曲”や、“シャピロの実験”などをご覧下さい。
 いずれにしても、測量士は地表面を離れることなく、三角形の内角を測定したり、円周の長さと半径の長さを測定して比較することで、表面の幾何学が球面かどうかを知ることがてきる。つまり測量士が居る空間の曲率を、その空間内の測定から計算できるのです。
 そのとき、実際は光線が曲がって進んでいるために内角の和がπではないのかも知れません。また物指し棒の長さがそれを置く方向によって延び縮みしている為に円周の長さと半径の長さの比が2πに成らないのかも知れません。しかし、そういった光線の曲がりや、物指し棒の伸び縮みこそが空間が歪んでいることの表れなのです。(この言い方は誤解を招きやすい。このことの正確な意味は別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変微分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」4.をご覧下さい。)

 

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END(参考文献)

 この稿を作るに当たって、下記文献を参考にしました。感謝!
 引用したテキストでは、練習[例題][問題]の解答は省略されるか略解が示されているだけです。そのため、文中の[解]は私が解いたものが多いのですが、勘違いしているのではないかと疑問に思う所も多くて、今後時間を掛けて改善するつもりです。
 テンソル解析の(特に共変微分が絡んだ)計算は指数添字の取り扱いがとても面倒で、私は何度も計算間違いをしました。また、問題を解く過程で“アインシュタインの規約”の有り難さをイヤと言うほど実感しました。未踏の領域を切り開いていったアインシュタインの苦労は大変なものだったでしょう。

  1. 前田儀郎著「幾何学X・Y(微分幾何学」玉川大学通信教育部(1969年初版刊)3章“曲面上の幾何学”
  2. 石井俊全著「一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する」ベレ出版(2017年刊)第5章、第6章
  3. 矢野健太郎著「近代数学新書 相対性理論」至文堂(1967年刊)第6章“テンソル解析学(絶対微分学)”
  4. ダニエル・フライシュ著(河辺哲次訳)「物理のためのベクトルとテンソル」岩波書店2013年刊)§6-3_p210〜219を引用
  5. 平川浩正著「相対論(第2版)」共立出版社(1986年)4.“Riemann幾何学”
     この第4章に、本稿で説明した内容が要領良く簡潔にまとめられています。別稿で引用していますのでご覧下さい。接続係数、共変微分、測地線の導入は本稿の方が解りやすいのですが、本稿と比較することでそれらを違った面から見ることが出来ます。接続係数と共変微分の記号表現が本稿と少し違いますので注意して下さい。
  6. W.Pauli著(内山龍雄訳)「相対性理論(上)(下)」筑摩学芸文庫(2007年刊)第U編 数学的準備
     原書は1921年刊です。上記訳本の元本は1974年に講談社から刊行されたもの。この第U編は熟読する必要があるように思います。
  7. L・インフェルト著(武谷三男、篠原正瑛訳)「アインシュタインの世界」講談社(1975年刊)
     第T部のp47〜53p84〜87p88〜90を別ページで引用。
     第U部“アインシュタインの思い出”は貴重です。アインシュタインの人柄が良く解ります。p244〜251を別ページで引用、この中にレヴィ=チヴィタのことが書かれています。
  8. 寺坂英孝、静間良次著「数学の歴史 19世紀の数学 幾何学U」共立出版(1982年刊)第3章“微分幾何学”
     この本にガウスの大論文『曲面についての一般研究』(1827年)の日本語全訳があります。原論文はネットからダウンロードできますがラテン語なのでこの本をご覧いただくのが良いと思います。
  9. 矢野健太郎 訳・解説「現代数学の系譜10 リーマン幾何学とその応用」共立出版(1971年刊)
     この本に収録されている第2論文がRicciとLevi-Civita共著論文『絶対微分学の方法とその応用』(1901年)の日本語全訳です。
     正直なところ私にはとても難解な論文で、あらかじめ現代の微分幾何学の教科書を学んでから読まないと何が言いたいのか良く解りません。
     アインシュタインやグロスマンがこの論文こそ彼らが求めていた数学だとよくもまあ気付いたものだと思います。この中に引用されている関連論文を読み込んでいかないと、そのことを感じとるのは難しかったと思います。おそらく彼らは、この論文に触発されて関連論文をさかのぼって調べていったのでしょう。そうしてクリストッフェルやリーマンを知ったのでしょう。京都講演グラスゴー講演の内容を深読みするとその様に読み取れます。
     この事は1913年のEinsteinとGrossmannの共著論文のGrossmannが担当した部分からも推測出来ます。彼らは最初に Ricci と Levi-Civita の上記論文を知り、この中に引用されているクリストッフェルの1869年の論文に取りかかったと思われます。
     ところで、Levi-Civitaの“平行移動”の論文が出てくるのは1917年ですから、その意味においても“共変微分”は、まだまだ解りにくい概念だったと思います。
     いずれにしても、アインシュタインは1912年10月の段階で、この微分幾何学によって全ての困難が解決できると確信していたようで、猛烈な集中力でこの数学理論の習得に取り組んでいます。その悪戦苦闘の様子をSommerfeld宛の書簡(1912年10月29日付)に書き残しています。
  10. 吉田伸夫「完全独習相対性理論」講談社(2016年刊)
     この本より§8-1-1“ガウスの曲面論”§8-1-2“ガウス曲率と驚異の定理”§8-2-1“リーマン幾何学の考え方”を引用。
  11. E.B. Christoffel, “Ueber die Transformation der homogenen Differentialausdru¨cke zweiten Grades”,
     Journal fu¨r die reine und angewandte Mathematik 70: p46〜70, 1869年
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