本稿はR.ゼックスル、H.ゼックスル共著(岡村浩、黒田正明共訳)「白色矮星とブラックホール(相対論的宇宙物理入門)」倍風館(1985年刊 原本初版1975年刊、第2版1979年刊)の第2章、第3章からの引用です。
これは、私が教職にあって高校地学を教えなければならなくなったとき、その宇宙分野を教えるに当たって大変助けられた本です。当時、特殊相対性理論も一般相対性理論も真に理解できていませんでしたので、この本の第4章〜第10章の解説はとても解りやすかったのです。
本稿はその前段階の一般相対性理論の初等的説明ですが、とても解りやすく書かれています。これが面白いと思われた方は上記の第4章〜第10章をお読み下さい。高校地学教員にとってありがたい本だと思います。
第2章 一般相対性理論の古典的検証
2−1 赤方偏移
2−2 光の湾曲
2−3 近日点移動
第3章 歪んだ時空
3−1 時計の振る舞い
3−2 原子時計を使った測定
3−3 物差しの振舞い
3−4 光の湾曲と時空の幾何学
3−5 シャピロの実験
3−6 歪んだ空間と直観
3−7 補足:重力場中にある時計−別な見方
END 参考文献
一般相対性理論に基づく正確な説明は別稿「テンソル解析学の一般相対性理論への応用」7.(7)〜(9)を参照されたし。
同様な説明ですが、江沢洋著「相対性理論」裳華房(2008年刊)のp251章末問題[3]を別ページで引用。同じ章末問題[4]の別の導き方はこちらを参照。
恒星表面からのスペクトル線の赤方偏移から、重力場中の時間の遅れを確認することはかなり難しかったことについては、別稿のシアマ文献 p087〜、あるいはp090〜をご覧下さい。
また、“赤方偏移”と “青方偏移”の違いはありますが、ハートル文献§6.3の説明も参照されたし。
§2-1-2
パウンド・スナイダーの実験の詳細をM.T.W文献より引用。[拡大図]
パウンドとスナイダーの実験については、別稿「バークレー力学」p484〜も参照。またメスバウワー効果については、別稿「アインシュタインの公式E=mc2の証明」3.[補足説明6]、あるいはシュポルスキー文献§129“メスバウアー効果”を参照されたし。
上記の事については、§3-1と、§3-7の思考実験を参照されたし。また、上記実験の“青方偏移”の場合の“等価原理”を用いた説明が別稿"のM・ウィル文献p51〜57に在りますので参照されたし。そのとき、“赤方偏移”の場合も同様な思考実験[補足説明]を考える事ができます。また、M・ウィル文献のp57の赤の波線で強調した文章に注意されたし。
上記のNewton理論による屈折角のより正確な計算(0.87”)は別稿「バークレー力学」p487〜を参照されたし。歴史的な経緯については別稿「アインシュタインの公式E=mc2の証明」3.[補足説明8]で引用しているページを参照されたし。ゾルドナーの原論文は Wikisource に在りますので、“Von Hrn.Joh.Soldner 1801
1804”のキーワードで検索すると見つかります。
一般相対性理論に基づく厳密な計算はEinsteinの1916年3月の総説論文E.§22.2.をご覧下さい。
§2-2-1
初期の観測結果についてはシアマ文献 “重力偏差”p125〜を参照されたし。
[拡大図]
上図は印刷が悪いので、1922年皆既日食の別データ図をハートル文献4.より引用。[拡大図]
星の位置を決める写真撮影で、その位置精度を妨げる一番大きな原因は地球大気の乱流の為に生じる屈折率の乱れに伴う“シーイング”と呼ばれる星像の揺らぎです。これは角度にして2〜3秒ほどもあり重力による湾曲と同じ程度の乱れを生じる。
ただしこれは規則性が無く視野の中で無秩序に生じるので、多くの写真があれば平均操作で無くすことができる。比較用に夜間に撮影する写真については沢山の星像を重ね合わせて平均化することでこの揺らぎを取り除いておくことができる。
問題は、皆既日食が数分間しか続かないので、短い時間内に星像の写真を沢山撮影することが難しい事です。シーイング誤差を平均化できるほど多数の星像を得るのは難しい。そのため図10.3の様にずれの方向が色々な方向に生じたり、ずれの大きさそのものも図9の用に真の値からばらつく。ちなみに、1919年5月29日の皆既日食観測では、撮影状態の良い写真は、エディントン隊で2枚、クロメリン隊で8枚しか撮れなかった。
§2-2-2
“準星”(クェーサー)を用いた上記の観測についてはM・ウィル文献第4章p91〜94を参照。
[補足説明1]
上記の事柄についてより最近の観測結果をハートル文献4.(p260〜264)より引用。
毎年4月11日に太陽の裏を通過する電波源 0116+08 を用いて1974年と1975年になされた。
下記太陽コロナの影響については、M・ウィル文献第4章p94〜95を参照。
§2-2-3
シャピロの実験はシアマ文献“重力偏差”p131で説明されているものですが、これは後ほど§3-5て゜詳しく説明される。
[補足説明1]
図11に記されている事柄が良く理解できない方は、別稿「万有引力の法則への補足」あるいは「化学結合(イオン化エネルギーと電子親和力)」1.をご覧下さい。
ここは解りにくいところです。別稿「ブラックホール近傍の力学」3.(4)2.で“シュヴァルツシルト解”を用いて厳密に論じています。また、そこの[補足説明1]で、本節との関係を詳しく説明していますので、どうぞご覧下さい。
[補足説明2]
ポテンシャルが上記の様に修正されたときの解を、ランダウ、リフシュツ「力学」§15“ケプラー問題”の問題3.から以下に引用。
この当たりについては、原島鮮「力学」p350や、江沢洋「よくわかる力学」p231なども参照されたし。
2-3-3
以下は一般相対性理論による厳密な解です。その導出は別稿7.(9)1.をご覧下さい。
近日点移動の詳しい説明はシアマ文献 第8章を、あるいはM・ウィル文献第5章p99〜105を参照。また、一般相対性理論に基づく正確な説明はEinsteinの1915年11/18論文を、あるいは矢野文献「テンソル解析学の一般相対性理論への応用」7.(9)1.や、戸田文献「相対性理論30講」第26章“水星の近日点の移動” 等々を参照されたし。
[補足説明]
上記の近日点移動量は地球軌道上の基点(春分点)と比較しての移動量です。地球軌道上の春分点は地球の回転軸の歳差運動(約25800年周期)により水星の近日点移動方向とは逆方向に約5025.64±0.50"/100年移動します。これが上記(注意)に出てきた“一般歳差運動”による移動量です。だから、5600"からこれを差し引いた量が水星軌道の本来の近日点移動量で、シアマ文献で言うところの574.10±0.41"です。
上文についてはSommerfeld宛書簡参照。また、以下の説明に入る前に第1章のこちらの図を参照されて下さい。
(3.2)式の最後の式変形には、§2-1で“エネルギー保存則から導いた式”を用いています。何故そこの(2.5)式がここで使えるのかを理解するのは非常に難しい。同じ関係式を§3-7で、別なやり方で導いていますので比較してみて下さい。この二つの導き方の関係については別稿のM・ウィル文献p57の赤波線文章を参照して下さい。
ここは非常に解りにくいところです。別稿の図14.7を用いて説明すると以下の様になる。
恒星表面では時間はゆっくり進み、物指し棒は縮んでいますので、光速度はあくまで一定値cを保持していることに注意。
さらに補足すると、(3.2)式の最後の式変形に関しては、M・ウィル文献第3章[補足説明]の様に“等価原理”と“相対論的ドップラー公式”を用いる方法もあります。
ハーフィール・キーティングの実験の詳細は別稿M・ウィル文献p61〜66をご覧下さい。
[補足説明1]
上記の計算について別稿「Einsteinの特殊相対性理論」2.(6)2.[補足説明3]で引用した戸田先生の説明を再録。
[補足説明2]
少しくどい補足説明ですが、球状質量周りの時空構造をあらわす“シュワルツシルド厳密解”
を用いて前述の地球表面Aと人工衛星高度Bでの時間の進みの違いを導いておきます。
上記のdt,dr,dθ、dφは重力場が存在しない時の時空間の座標成分です。その係数が重力場のひずみを表す計量テンソル成分です。上記の様な形で表現されるのは別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分」3.(6)で説明したとおりです。そこの[補足説明2]を復習して下さい。
上記の解のaは地球質量に対するシュワルツシルド半径です。そして、今は地球重力場のA地点とB地点の空間に静止している時計の時間の進みを比較します。つまり地球に張り付いて地球と共に回転しているのでは無い場合です。上記のdt、dr、dθ、dφは、重力場は存在しない無限遠の時空間に対応する座標成分です。つまり時空間の歪んでいない接(擬)ユークリッド空間に引かれた座標に対する成分です。(擬)と付けたのは、接ミンコフスキー空間だからです。
重力場rAにおける固有時の進みをdτA、重力場rBにおける固有時の進みをdτBとすると
となります。
このとき、A地点とB地点の時計は静止しているとしていますが、A地点の時計が地球に張り付いていて地球表面の回転運動で動いており、B地点の時計がGPS衛星の中に設置されていてGPS衛星の公転速度で動いているとしたときの時計の進みを比較するには§3-2-3[補足説明1]の須藤先生の説明をご覧下さい。そこでは“シュワルツシルド計量”を用いて議論されています。
§3-2-3
上記“ヴェソとルヴィンのロケットを用いた実験”の詳細は別稿M・ウィル文献p65〜71、及びハートル文献§10.1も参照されたし。
ご覧下さい。
[補足説明1]
現在利用されているGPSシステムには高空を飛行する人工衛星に積まれたセシウム原子時計が使われている。GPSが正しく作動する為には、人工衛星の飛行高度でのセシウム原子時計の一般相対性理論による遅れ(無限遠に対しては遅れだが、地表に対しては進み)の効果を織り込むことが必須です。
このことについて、須藤先生の説明を以下に引用。
(1.41)式のもう少し簡単な計算は先に引用した戸田先生の計算法でやれば良い。ここのやり方と比較して見れば解るのですが、重力場方程式の解であるシュワルツシルド計量には特殊相対性理論による効果と一般相対性理論による効果が両方含まれています。つまり、両方の計算法を比較して見れば、一般相対性理論は特殊相対性理論の拡張であることが読み取れると言うことです。このことに付いては別稿「ブラックホール近傍の力学」3.(4)2.[補足説明1]もどうぞご覧下さい。
私は、一般相対性理論そのものの検証と言っても良いと思います。なぜなら重力場の効果を考慮しないと、実験が示す時間の遅れは導けないのですから。この効果による遅れは特殊相対性理論の段階に留まる限り決して出てきません。
3-3-036
図19のa)とb)二通りの解釈はとても解りにくいところです。別稿「時空の曲がりと測地線(測地線方程式とは何か)」4.(4)[補足説明]、別稿2.(6)[補足説明1]、さらに別稿M・ウィル文献p57〜58[補足説明]をご覧頂ければイメージがつかめるかも知れません。
正確な時空図と光の世界線について、別稿「時空のまがりと測地線(測地線方程式とは何か)」4.(4)[補足説明]をご覧下さい。
(3.12)式の定積分は積分公式
を用いると(3.13)式となる。[表2はこちら]
ここの“距離が36km増えたことに対応する。”の意味は§3-3の図19のb)の解釈でと言うことです。実際は縮んでいるはずです。いずれにしても太陽近くでは時空の歪みを合算するとこの程度の距離歪んでいると言うことです。このことの意味についてはM・ウィル文献2.第6章をご覧下さい。
この一連の実験の詳細はM・ウィル文献第6章p119〜147をご覧下さい。光線湾曲ではなく時間の遅れに対しても、太陽コロナの影響はあります。M・ウィル文献ではその点も説明されています。
[補足説明1]
上記バイキング探査機を用いた実験の詳細をハートル文献4.より引用。
[補足説明2]
シャピロの実験は{光の赤方偏移}、{光の湾曲}、{近日点移動}に付け加わる《第4の検証法》だと言って良い。それは[重力場中では時間の経過が遅れる事を実証する実験]だからです。
ところで、現代では極めて精密な時計“光格子時計”が発明されて、重力場中で時間の遅れる効果は直接測定できる様になった。それは僅か数mの高度差でもその時間の遅れが検出できる程精密なものです。このことについてはこちらを参照。
上記(3.19)式の表現は、(3.2)式の表現とは TA と TB の関係が逆になっているように見えますが、(3.2)式の TA と TB は(3.19)式を変形した式
の 1/TA と 1/TB にそれぞれ相当することに注意して下さい。
つまり、(3.2)式のTA と TB はそれぞれの時計がカウントする“カウントの数”を意味し、(3.19)式のTA と TB はそれぞれの時計がカウントとする“カウント間の間隔時間”を意味しています。
[補足説明]
上記の思考実験とは異なりますが、別稿M・ウィル文献p51〜57に“等価原理”を用いた“青方偏移”の説明が在りますのでご覧下さい。特にp57の赤の波線で強調した文章に注意されたし。
あるいは、ハートル文献§6.3の説明も参照されたし。ただし、そこでのτA、τBとここのTB、TAの意味の違いに注意。
この稿を作るに当たって、下記文献を参考にしました。感謝!