ここは最も大事な所であると同時に最も解りにくいところです。様々な方の説明を参照されて下さい。ランダウ、リフシュツ「場の古典論」第10章“重力場の中の粒子”、藤井文献1979年第4章§19、中野文献1984年第9章、内山文献1978年§1や、藤井文献「世界大百科事典」などと比較してみられたし。
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上記の重力場中の光速は遅くなるという言い方は誤解を招きやすい。重力場中では物指し棒が縮み時計はゆっくり進みますから、その重力場中の物指し棒と時計で測定した光速度は慣性系中を進む光の光速度と同じです。重力場から無限に離れた地点からみて光りはゆっくり進む様に見えると言うことです。それは別稿のシャピロの実験などで実際に確かめる事ができます。
ここはとても解りにくいところですが、別稿「基底ベクトル双対基底ベクトル」2.(6)[補足説明]で説明したa)の立場とb)の立場の違いで言うと、上記の話はa)の立場の話です。このことは別稿「時空のまがりと測地線(測地線方程式とは何か)」4.(4)[補足説明]をご覧下さればさらに良く解ると思います。
119 以下は中野文献の説明も参照されたし。 また、別稿「基底ベクトル双対基底ベクトル」3.(6)[補足説明]と4.(6)も参照。
ここは非常に解りにくい所です。別稿4.(1)〜(3)の特に《第5に重要な事》を参照されたし。Δs2 が不変であると言うことは局所Lorentz系の基底ベクトルに対してリーマン時空(重力場がある時空)の基底ベクトルの長さと方向が場所と共に変化していると言うことです。それにともなって gμν も場所と共に変化します。 Δs2 が両方の時空で同じでなければ成らないからです。別稿「微分幾何学」3.(1)[補足説明3]も参照されたし。
(19.7)式については別稿「微分幾何学」3.(1)[補足説明3]および[テンソルの例2]もご覧下さい。
ここで最も解りにくいのは、別稿「基底ベクトル双対基底ベクトル」2.(6)[補足説明]で説明したa)の立場とb)の立場の違いです。上記の話はb)の立場の話であると了解されればgijの意味も解ると思います。さらに別稿「基底ベクトル双対基底ベクトル」4.(6)の様々な例を検討されて下さい。
以下で説明される“軽量テンソル”については別稿[補足説明1]をご覧下さい。
上記の“幾何学的量gμνに、重力のポテンシャルという物理的役割を賦与した。”について補足します。別稿「基底ベクトル双対基底ベクトル」4.(3)[例8]で説明するようにgμνの変化の様子は時空の歪みと表裏一体だからです。
121 以下は中野文献の説明も参照されたし。
[補足説明1]
上記(19.9)式の導出について補足する。
これはクリストッフェル記号の座標変換式そのものを表しています。別稿「微分幾何学」3.(3)1.で求めた式
を本稿の記号で書き直すと
となります。所では変換前のMinkowski空間におけるクリストッフェル記号です。そのとき別稿4.(4)2.[補足説明1]で説明したユークリッド空間と同様にMinkowski空間のクリストッフェル記号は全空間において 0 に成ります。なぜならMinkowski時空の基底ベクトルは全空間にわたって同一なのですから。
そのため上式は
となります。[この(19.9)式を直接導く方法は中野文献[補足説明(問題3)を参照]
更に補足します。
(19.8)"式は別稿「微分幾何学」3.(6)2.や「等価原理」5.(4)で説明している“測地線方程式”そのものです。そこの導き方と比較されると解るのですが、ここで説明されている内山先生の“測地線方程式”の導き方はとても教育的で秀逸です。
ただし、文中の“Minkowski空間内に任意の曲線座標系uμを設ける。”は正しい言い方では在りません。“リーマン空間の中に設ける。”が正しい。Minkowski空間に設けた曲線座標系のクリストッフェル記号からは、どのように曲線座標が引かれていようとも空間の歪みを表すゼロでない曲率テンソル成分は出てきません(別稿4.(3)[例8]および4.(5)2.[補足説明2]参照)。クリストッフェル記号がゼロでないことが直接空間の曲がり(重力場の存在)を表すわけではありません。重力場が存在したら曲率成分がゼロでないものが導かれるクリストッフェル記号を生じるような座標への座標変換(19.5)式になると言うことです。そうして座標変換された曲線座標は必然的にリーマン空間に引かれた斜交曲線座標となります。
ここはアインシュシタインが最も苦しんだ所です。彼は長い間、ここのところを明確に論じる数学的方法を求めてもがき苦しんだのですから。一般相対性理論の数学で最も難しいところです。
いずれにしても、そのような事ができるのは、最初に出てきたMinkowski空間がリーマン空間の擬ユークリッド的“接空間”だからです。ここが一番解りにくい所ですが、別稿4.(1)〜(3)の特に《第5に重要な事》を参照されたし。
もう一つ補足します。
[測地線方程式(19.8)"式] と [クリストッフェル記号の座標変換式 上記(3-18)式] との関係については、別稿「テンソル解析学」6.(2)5.の説明をここの説明と比較してみて下さい。ここの説明はそこの説明
の逆を行っているのです。二つの説明を比較するとクリストッフェル記号の座標変換の意味が良く解ります。さらに、 [ここの測地線方程式に付いての解説] と [別稿藤井文献§19“測地運動方程式”の解説] を比較してみられたし。
内山先生のここの説明は、極めて難解なEinsteinのグラスゴー講演(1933年)p272の赤線□で囲った説明をもう少し解りやすくしたものです。
実際のところ、Einsteinは1912年秋のGrossmannとの共著論文の段階では測地線方程式を導けていません。これを導いたのは1914年10月論文のB.§7.に於いてです。しかしこの段階でも重力場方程式は導けていません。それを発見するのは、さらに後の1915年秋です。その過程を述べているのが、上記グラスゴー講演の赤線□で囲った説明に続く文章です。
[補足説明2]
我々は物質(エネルギー)の存在により歪んだ時空(リーマン時空)に住んでいます。そのため、もし現実の時空を計測するための座標線を引くことができれば別稿「基底ベクトル双対基底ベクトル」4.(1)〜(3)で注意した《第5に重要な事》が生じるはずです。別稿「基底ベクトル双対基底ベクトル」2.(6)[補足説明]で説明したb)の立場。
しかし、それを実行するのは難しい。その代わりに、別稿4.(4)2.[補足説明2]で注意したような観測で、時空の歪みを確かめることになる。別稿「基底ベクトル双対基底ベクトル」2.(6)[補足説明]で説明したa)の立場。
その時空の歪みは極僅かなので、それを確かめることは極めて困難でしたが、確かに大質量の星の側を通過する光線は時空の曲がりによる屈曲を示すし、大質量星からやってくるスペクトル線は時間の遅れの効果の為に赤方偏移することが観測された。
最近ではGPS衛星の運用で重力場中を移動する衛星搭載原子時計の遅れが考慮されています。あるいは、重力場中の場所移動による時間の遅れの変化が光格子時計により直接観測できるようになった。
さらに、時空の歪みが大きい中性子星やブラックホールなどの連星が合体するときに生じる時空歪みの変動が光速度で周囲に伝わる現象(重力波)を直接観測することに成功した。更に直近では時空の穴(ブラックホール)を直接認識できる様になった。
我々の住んでいるリーマン時空は重力場の存在と表裏一体の歪んだ時空です。そのとき、我々がその重力場の中で自由落下する状況になれば、我々の周囲は歪んでいないミンコフスキー時空となり、そのなかの時計の進みは本来のものとなり、物指し棒の長さも本来の長さになります。
ただし、ミンコフスキー時空として認識できるのは極狭い領域のみです。たとえ自由落下している時空であっても周囲の広い範囲を見れば重力場を消すことはできず時空の歪みを消しさることはできません。周囲は必然的に歪んだ時空になっています。
いずれにしても、時空の歪みは極僅かなので、それを認識するのは簡単ではありません。ボルンが「相対性理論」第Y章の最後で述べている様に、“特殊相対性理論が確立されてもニュートンの絶対空間の概念は揺らいでおらず、ある意味で特殊相対性理論は電気力学を含めた全物理学を、ニュートン以来、力学が置かれていたのと同じ状態に追い込んだと言って良い。”
何が難しいかというと、Einsteint自身が「自伝ノート」第5段落で述懐しているように、“時空(座標と言っても良い)が様々な物理現象を直接に測り定める絶対的な計量的意味を持っているという思い込みから自らを解き放つこと”です。
Einsteinが偉大なのは、特殊相対性理論の発見により、その事の可能性に気付いたことです。彼は1905年に特殊相対性理論を作り上げてからすぐに(1907年頃)特殊相対性理論が完全ではなく内部矛盾を抱えていることに気付きます。そのことは、1916年著書「わが相対性理論」§21〜23、1921年ブリンストン大学講演第3回講義、1922年講演、1933年講演などで繰り返し語っています(このことは別稿3.で説明した)。
ところで、我々が住んでいる現実の時空(リーマン時空)の歪みはあまりにも極小なので、観測や実験に拠ってその事を予見することはできません。特殊相対性理論が抱える論理的な内部矛盾に気付くことによってのみ見通せた事です。つまり一般相対性理論は純粋に理論的思考のみによって論理的に導きだされた。これは多くの解説書で指摘・強調されていることです。
これがEinsteinが大天才であると言われる理由です。また、多くの専門家が一般相対性理論は物理理論の中で最も雄大・壮麗で美しい理論であると言う理由です。これが如何に革新的で斬新なものであったか、インフェルトがその著書「アインシュタインの世界」p88〜90で語っています。
さらに補足します。別稿「微分幾何学」3.(11)[補足説明]で述べた様に、非ユークリッド幾何学について深く考察を進めていた数学界の大天才Gaussは現実の空間が歪んでいるかもしれないと予測していた可能性があります。Gaussの弟子であるRiemannもそうであったかもしれません。このことについては別稿[補足説明1]のリーマン講演第V部の解説をご覧下さい。
しかし、彼らには空間と一緒になって時間も歪むと言う認識はもとよりありませんし、時空の歪みを論じる為の“特殊相対性理論”もありませんでした。そのため、彼らは時空の構造を論じるきっかけも手段も持っていませんでした。だから、彼らにとっての空間の歪みは、しょせん頭の中の数学的概念でしか無かったと思います。このことについては別稿[補足説明2]をご覧下さい。
Einsteinは一般相対性理論を築く上で、GaussやRiemannが作り上げていた数学におおいに助けられたのは事実ですが、Einsteinが発見した一般相対性理論は、やがて観測・実験に拠って実証される現実の時空世界を完璧に説明する理論だったのです。
[補足説明3]
上記で述べた“我々は物質(エネルギー)の存在により歪んだ時空(リーマン時空)に住んでいます。”は、別稿で引用したゼクスルのp5〜6の説明や、M・ウィル文献p41〜44などで説明されています。この事は別稿「時空の曲がりと測地線(測地線方程式とは何か)」でさらに踏み込んで説明していますので、どうぞご覧下さい。