Max Born著「アインシュタインの相対性理論」講談社(1971年刊)第Y章“アインシュタインの特殊相対性原理”§1〜11(p221〜302)を引用。
ただし、Y章§7〜9は別稿「相対論的力学」3.(2)〜(5) と 「E=mc2の証明」3. and 5. で引用済みのため省略。そこも参照しながらお読み下さい。
左欄に記入の数字は、引用した本のページNo.で、文中引用の便利のため記しています。また、解りやすくするために内容を少し改変し、各節を細分して文節題目を適当に追記しています。
Bornの説明は、ミンコフスキーの4次元世界への導入として、教育的かつ秀逸です。
この本の 第V章“ニュートンの宇宙体系”、 第W章“光学の基本法則”§7〜11、 第X章“電気力学の基本法則” は別稿で引用でしていますので合わせてご覧ください。
ここの節の前半は、別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」1.(3)ですでに引用していますが、とても大事な所なので最初から引用します。
上記の(V章,§7,74頁)はこちらを参照。
[補足説明1]
下図の様に、CB1’に平行な線分A1’Dを引き、CA1’に平行な線分B1’Fを引く。そして、線分A1’Dと線分B1’Fの交点をGとする。また、線分B1’Fと点Aの世界線との交点をHとする。
このとき、線分OE // 線分CB1’// 線分A1’D であり、ct’軸 // 点Aの世界線 // 点Cの世界線 // 点Bの世界線であり、線分A1’B1’ // x’軸です。また、今は二方向へ進む光の世界線CA1’と光の世界線CB1’は直角を成すようにしていますので、∠A1’CB1’=∠A1’GB1’=直角となります。
そのため 直角三角形A1’GH ≡ 直角三角形CB1’G ≡ 直角三角形A1’GB1’ となります。これはとりもなおさずct’軸とx’軸が光の世界線OEに対して等角を成す斜交座標系となることを意味している。
もちろん、等角を成すのは光の世界線CA1’と光の世界線CB1’が直角を成すようにしている場合の話で、そうしなかったら等角ではない別の関係をみたす斜交座標系となります。その当たりは別稿「ローレンツ変換とは何か」3.(4)をご覧下さい。
[補足説明2]
ここの説明は解りにくいので補足する。
文章の前半は、[補足説明1]で説明したように“光速不変の原理”の内で光がどの慣性系においてもすべての方向に同じ速度で伝播するという事実を用いるとx’軸とct’軸が光の世界線に対して対称的に傾いた斜交座標系が得られることを言っている。
文章の後半は、“光速不変の原理”の内でその具体的な光速度がどの慣性系から見ても同じ値cであることを用いると各座標系の目盛りの大きさの関係が導ける事を言っている。
光速度は各慣性系における時計と物差し棒で測られるのですが、それらによって測られる光速度が同じ値になるためには慣性系間の目盛りの取り方に制約が出て来るからです。
それは互いの慣性系からみて相手の時計が遅れ、物差し棒が縮む事を意味しているのですが、それはとりもなおさず“相対性原理”が成り立たねばならない事から出て来ることです。そのことを第2章で説明すると言っている。
以下の(1)(2)節は、もとのBornの説明をかなり改変して引用しています。正しく改変できれていればよいのですが?
上記の(X章,§15,217頁)はこちらを参照。
[補足説明]
上記の説明は込み入って解りにくいが、下記の点に着目すれば理解しやすい。
前出の(γ)式は、上図のC点のx座標値がx’座標上のC’点の座標値x’の
倍になることを意味している。すなわち
である。
これを用いると、OC=OD−CD だから
となる。
時間座標の変換式も(γ’)式を用いて同様に考えれば良い。OF=OG−FGだから
が得られる。
[補足説明]
逆変換も2.(1)[補足説明]と同様に考えれば理解しやすい。
前出の(γ)式は、上図のD’点のx’座標値がx座標上のD点の座標値xの
倍になることを意味している。すなわち
である。
上図でC’D’=vt’となることは世界線C’P(あるいは世界線OC’)のS’座標上での意味を考えれば導けます。同じくF’G’=x’・(v/c)となることは、世界線F’P(あるいは世界線OF’)の意味を考えれば導けます。
これら用いると、OD’=OC’+C’D’ だから
となる。
時間座標の変換式も(γ’)式を用いて同様に考えれば良い。OG’=OF’+F’G’だから
が得られる。
ガリレオ変換〔(29)式、73頁〕はこちらを参照。
[補足説明]
図115の描画手順に関するBornの解説は不十分です。詳しくは別稿「ローレンツ変換とは何か[Einsteinのローレンツ変換導出法(1905年)への補足]」3.(4)をご覧下さい。そこでの説明やこの稿の3.(3)から解るように、最初に設定する反対方向に進む二本の光の世界線を互いに直交させる必然性はありません。
文中の“(227頁)同時の世界点を定義するもの”はこちらを参照
上記の(図41、74頁)は別稿V章7.ガリレー変換のこちらの図です。
[補足説明]
ここの説明は解りにくいが、227頁で説明した図を思い出せば良い。
時間軸の目盛りをct(cm)からt(sec)にすると、図の中の光の世界線(黄土色のV字直線)がx軸に近づいた平べったいV字直線となる。そのためA、Bの世界線との交点A1’とB1’を結ぶ直線がほとんどx軸に平行となりしかもx軸に非常に近づいた線となる。
そのため、S’系のS系に対する移動速度vに関係して変化するt軸の傾き(つまりA、B、C点の世界線の傾き)が少々変わっても、x’軸の傾きはほとんど変化しなくなる。ここは、その事を言っている。
図118については、別稿「ローレンツ変換とは何か[Einsteinのローレンツ変換導出法(1905年)への補足]」3.(4)をご覧下さい。]
(70a)の公式はこちら。文中の(X章,§15,214頁)はこちらを参照。 このことについては、2.(1)[補足説明]、及び2.(3)[補足説明]もご覧ください。
また、物指しの収縮を説明する“ガレージのパラドックス”について、別稿「マイケルソン・モーリーの実験の特殊相対性理論による説明」3.(4)[補足説明]でミンコフスキー時空図を用いて説明していますので参照して下さい。
[補足説明1]
上記の“同じ場所にあるS系の時計が示す時刻”について補足する。
S系で互いに同期している同じ様な時計がS系のx-軸上にビッシリと敷き詰められていると考えている。S’系の原点に在った時計はS’系の移動と共にx-軸上を移動して行く。そのS’系のの時計が時刻ct’=1を示すときに、その時計がちょうど通過するx-座標上の位置に存在するS系の時計が示す時刻ということです。この当たりは別項「ローレンツ変換とは何か」3.(2)[補足説明3]を参照されたし。
同様なことが、図120の世界点QとE’についても言える。時刻t=t’=0に原点に存在したS’系の時計は、S系の時計で計った時刻ct=1のときに、S系のx座標がE’の位置を通過する。そのときx系のその位置を通過するS’系の時計を見る。その時計の時刻ct’は、その位置にあるS系の時計が示しているct=1よりも少ない時刻ct’=1×(OE'/OQ’)を示している。
同じ様にS’系のx’-軸上にもS’系で同期している同じ様な時計がビッシリと敷き詰められている。それを使うと以下のことが言える。
(70a)の公式はこちらを参照。
このことについては、2.(1)[補足説明]、及び2.(3)[補足説明]もご覧ください。
[補足説明2]
座標系の移動方向に関して、その方向の長さの縮みは時間の伸長と丁度逆の関係になっている。そのため[座標系の移動方向の長さ]-1×[時間]-1の次元を持つ任意の量(座標系の移動方向の成分についてのもの)は、ローレンツ変換に対して不変となる。
この事は、その様な物理量のローレンツ変換公式の中で、出会でしょう。
[補足説明]
上記の「時計のパラドックス」について、別稿で引用した江沢文献2.4.3.に解りやすい説明が有りますのでご覧下さい。またBornのp348の説明はこちらを参照。
Y章,§2,228頁以降 はこちらを参照。また、ローレンツ変換式(70a)はこちらを参照。
[補足説明]
上記の式変形をミンコフスキー時空図(2.(1)[補足説明]や2.(3)[補足説明]を参照)で確認する。
解りやすくするため、縦軸を ct、ct’ ではなくて t、t’ にしています。また、図中のvxとvx’、uxとux’、cとc’は長さを意味します。混同しないように、x’t’系の座標値に ’を付けていまが、1[s]=1’[s]、v[m]=v’[m]、c[m]=c’[m]=300000000[m]です。
uxとux’の速度成分変換公式(速度合成則)は、図中の長方形や平行四辺形の相似関係から明らか。
uyとuy’の関係については、yt平面に対するy’t’平面のミンコフスキー図がxt平面に対するx’t’平面の様に斜めに歪まないので下記の様になる。下図の拡大版はこちら。
図を検討すればuyとuy’の変換式がvとuxに依存する理由が解ります。
uzとuz’の関係についても同様です。
p262〜273;別稿「相対論的力学」3.(2)で引用。
p273〜277;別稿「相対論的力学」3.(3)で引用。
p277〜281;別稿「アインシュタインの公式E=mc2の証明」3.で引用。
p281〜284;別稿「アインシュタインの公式E=mc2の証明」5.で引用。
p284〜288;別稿「相対論的力学」3.(4)で引用
p288〜291;別稿「相対論的力学」3.(5)で引用
ここはミンコフスキー時空の説明とは関係ないのですが、Bornの説明は教育的で興味深いのでついでに紹介します。
ここの内容は、別稿で引用したEinsteinの説明(ドップラー効果、光行差、フレネルの随伴公式)やSommerfeldの説明(ドップラー効果、光行差、フレネルの随伴公式)を参照されながらご覧下さい。
ミンコフスキーの場の方程式についてはこちらを参照。
下記の(W章,§7,118頁)はこちらを参照。また、ローレンツ変換(70a,232頁)はこちらを参照。
文中のフレーネルの随伴公式(44)はこちらを参照。また(142頁)はこちらを参照。
ドップラー効果の普通の公式(41)(123頁)はこちらを参照。
(91)式と、ここの内容については、こちらを参照。
イーヴスとスティルウェルの1938年論文はこちらを参照。また、メスバウワー効果についてはこちらを参照。
速度の加法法則(77a,b)はこちらを参照
下記の変換公式(88)はこちらを参照。
下記の(W章,§10,139頁)はこちらを参照。
この事についてはこちらを参照。
この事についてはこちらを参照。
新版の訳はこちらですが、最後の部分は旧版の訳を引用しています。
[補足説明1]
文中の(第V章,§6,68頁)はこちらを参照。
また、上記の“特殊相対性理論はニュートンの絶対空間を追放していない”という言葉の意味についてはアインシュタイン著「我が相対性理論」(1917年刊)の第2部21章、あるいは矢野健太郎著「相対性理論」第5章§1をご覧下さい。
[補足説明2]
ここに引用したBornの解説は、ミンコフスキー時空の導入として教育的かつ秀逸です。しかし、ミンコフスキーの4次元世界が物理的に何か新しい事実を生み出すわけではありません。
そのため、アインシュタイン自身はミンコフスキーの考え方を最初あまり評価していなかったようです(Pais文献7章p193)。ところが、一般相対性理論の考察を進める過程でその重要性に気付き、後に高く評価するようになります。(例えばアインシュタイン著「我が相対性理論」(1917年刊)の第1部17章の最後の段落、あるいは「自伝ノート」のこの記述を参照)
Bornはこの本を書くに当たって、一般相対性理論を常に念頭に置いています。そのため別稿で引用する第V章やここに引用した第Y章はそのことを強く意識した構成になっています。そのため、一般相対性理論への準備として引用。