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ミンコフスキーの4次元世界

1.導入

 ヘルマン・ミンコフスキーはアインシュタインの特殊相対性理論に対してミンコフスキー空間と呼ばれる4次元的表示法を考案した。彼は1909年1月12日に45歳で早世しますが、それまでに特殊相対性理論に関係して三つの講演・著述を残した。 

  1. 1907年11月5日にゲッチンゲンの数学会で行った講演「相対性原理」。
     これは彼の没後、1915年に相対性理論誕生10年を記念してSommerfeldの骨折りで出版された。
    H.Minkowski,“Die Relativita¨tsprinzip”, Annalen der Physik, 47, S.927〜938, 1915年
     これは参考文献1に日本語訳6.がある。
  2. 1907年12月21日にゲッチンゲン科学会で行われた講義の記録です。この中で電気力学の4次元定式化が論じられている。
    H.Minkowski,“Die Grundgleichungen fu¨r die elektromagnetischen Vorga¨nge in bewegter Ko¨rpern”, Nachrichten der K. Gesellschaft der Wissinschaften zu Go¨ttingen. Mathematisch-physikalische Klasse., S.53〜111, 1908年
     これは相対論の4次元化を論じるとき基礎となった重要な論文なのですが、頁数が多いので日本語訳がありません。そのため、英訳版を別稿にて引用。ドイツ語版はWikisoure.orgにありますので検索サイトで探してみてください。そこでGoogle Chromeの翻訳機能を使えば日本訳表示可能です。
  3. 1908年9月21日にKo¨lnのドイツ自然科学者医師大会で行った講演「空間と時間」
     これは以下の雑誌にも掲載された。
    H.Minkowski,“Raum und Zeit”, Physikalische Qeitschrift, 10, S.104〜111, 1909年
    H.Minkowski,“Raum und Zeit”, Jahrebericht der Deutschen Mathematiker-Vereinigung, 18, S.75〜88, 1909年
     これは、ミンコフスキーの遺作の中で最も有名なものです。参考文献1に日本語訳7.がある。

 文献2と3.は、1911年にD.Hilbertが編集したミンコフスキーの論文集にも収録されている。この論文集は友であるHilbertがミンコフスキーの早世を惜しんで編纂したものです。
 また文献3.は1913年にA.SommerfeldとO.Blumenthalが編集した相対性理論の論文集にも収録されている。

 これらの論文は極めて難解です。そのため、最初に別稿で引用するBorn「相対性理論」第Y章をお読み下さい。その後で本稿をご覧になり、最後にミンコフスキーの論文をお読みになるのが宜しいかと思います。その際、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」も同時に参照されて下さい。

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2.二次元時空

 この章は文献3.第2章§6“ミンコフスキーの4次元世界”(p47〜57)からの引用です。ただし、少し改変しています。また節題は当方が適当に追記した。

(1)相対論的運動学
(2)二次元時空に於ける世界点・世界線と“尺度曲線”
(3)ローレンツ変換
(4)時間の相対性と因果律
(5)座標値の変換(“尺度曲線”)
(6)長さの縮み
(7)時計の遅れ

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(1)特殊ローレンツ変換と世界距離


下記で言及されている§4は別項「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」2.(5)で引用していますので、そちらをご覧下さい。



この事の証明は別稿2.(8)4.を復習されたし。



補足説明
 s2=x2+y2+z2−u2 によって決まる“平坦な”4次元空間の計量は“擬ユークリッド的”と呼ばれる。これは s2 表れる4つの(実の)座標の2乗が全て同じ符号を持つ“ユークリッド的”な場合と区別するためである。
 また、後(3.(6)4.(1)1.)で解る様に、この本ではミンコフスキー4次元時空の間隔をs2=−x2−y2−z2+u2 で定めている。

 

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(2)二次元時空における世界点・世界線と“尺度曲線”

補足説明1
 ここは解りにくい所なので補足する。まず上式を変形すると

となり、これをグラフにすると下図の様な直角双曲線になる。
 しかしこの式のままでは解りにくいので、下図の様に直交する光の世界線OEOHを取る。これは丁度XU軸を45°回転したものだから、その回転角45°を θ とすると下記の様な(x,u)と(e,h)の変換公式が得られる。これを用いると

 このときA点は常に2eh=1を満足する点ですが、A点(x,u)は常に2−u2=1 を満足する点であることが解る。実際、 h=1/2e を変換公式に代入して計算すると 2−u2 は常に1となることが解る。

つまり図の双曲線上の点Aは常にx2−u2=1を満足する点なのです。
 このとき同様にして2−u2=22、x2−u2=32、x2−u2=42,・・・・を満足する双曲線が描けるが、これらの双曲線群がミンコフスキー時空の座標の長さを定める尺度曲線なのです。もちろんこれらの曲線は2eh=22、2eh=32、2eh=42、・・・・を満足する双曲線です。
 そしてこれらの尺度曲線に依って座標値を定めることが、以下に説明されている2−u2を用いて計量するということの意味です。


補足説明2
 上記の結論は以下の事を意味している。

 上記の様に光の世界線に対して共役に取った座標軸UX、U’X’、U”X”、・・・は、x2−u2=x’2−u’2=x”2−u”2=・・・を計量として用いると互いに垂直な座標軸であり、任意の事象の時空値を測定する座標系となる。
 そして、後で解るようにこれらの座標軸で測った座標値はローレンツ変換で結び付けられている。


 

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(3)ローレンツ変換

補足説明1
 ここで上記の“等角をなす”について補足する。別稿「ローレンツ変換とは何か」3.(4)で注意したように、この事は光の世界線直交している場合のみ言えることで、もし光の世界線を直交するように設定していなかったら等角にはならない。


補足説明2
 ローレンツ変換を用いると

が常に成り立つ。そのためx’2−u’2=0なら当然2−u2=0が成り立つ。


 すでに注意したように、この事は光の世界線直交している場合のみ言えることで、もし光の世界線を直交するように設定していなかったら等角にはならない。そのことについては、別稿「ローレンツ変換とは何か[Einsteinのローケンツ変換導出法への補足]」3.(4)を参照されたし。

 

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(4)時間の相対性と因果律





 ここは解りにくいところです。別項ランダウ、リフシュツ著「場の古典論」第1章§2もご覧下さい。

 

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(5)座標値の変換(“尺度曲線”


補足説明1
 ここはミンコフスキー座標の解釈で最も重要なところであると同時に最も解りにくいところです。
 ここでは、A’とB’という特殊な点しか確認していないが、K系とK’系で同じ事象を示すもっと一般的な点PについてK系での座標値とK’系での座標値がローレンツ変換によってどのように結び付けられているかを確認する必要がある。
 この点については別稿江沢文献の2.4.1が解りやすいので参照されたし。そこをご覧になれば解るように、図中の双曲線は、それと各座標軸の交点が同じ座標値であることを示す単なる補助線(“尺度曲線”)以上の意味はない



 これらの式は、別稿江沢文献の2.4.1で求めた式(2.4.2)にx’=1を、あるいは(2.4.1)式にct’=u’=1を代入したものと同じです。

補足説明2
 後で示される第35図について補足する。

 上左図に於いて、直角双曲線の性質より四角形OhAe四角形Oh’A’e’面積は等しいことが言えます。この事は、OE軸とOH軸が直角ではない双曲線に付いても成り立つことが証明できます。例えばこの図の上で考えてみて下さい。
 次に上図右の平行四辺形OxCu平行四辺形Ox’C’u’の面積が等しいことも言えます。なぜなら平行四辺形OxCuの面積は四角形OhAeの面積の2倍であり、平行四辺形Ox’C’u’の面積は四角形Oh’A’e’の面積の2倍だからです。このことは、ABA’B’が双曲線上の点だから対角線AB→対角線A’B’の縮小率の逆数で対角線OC→対角線OC’を拡大していることからも明らかです。つまり、、平行四辺形OxCuから平行四辺形Ox’C’u’への変形はその面積が等しくなるように生じる
 このことが尺度曲線上のOAの長さOA’の長さが等しく、OBの長さOB’の長さが等しいことの意味です。また、それらの値を用いて得られる距離/時間=OA/OB=OA’/OB’=(光速度)常に同じ値になる“光速不変の原理”を示す)ことの意味です。


 

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(6)長さの縮み




ここは別稿江沢文献2.4.2(p61)も参照されたし。

 

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(7)時計の遅れ





ここは別稿江沢文献2.4.2(p62)も参照されたし。

 

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3.テンソル代数学

この章は文献3.第3章からの引用です。ただし、少し改変しています。また(1)(2)(3)(4)節を細分した項の題目は当方が適当に追記した。

(1)指標記号、総和に関する規約、座標の変換
(2)スカラー、ベクトル、テンソル
(3)テンソルの加法・減法・乗法および縮約
(4)テンソルの商法則
(5)相対テンソル
(6)基本テンソル
(7)随伴テンソル(指数の上げ下げ)
(8)双対テンソル
(9)テンソルの微分・勾配・発散・回転

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(1)指標記号、総和に関する規約、座標の変換

.指標記号





 

.総和に関する規約



 

.座標の変換


 行列式については、別稿で引用した行列式の導入行列式行列式の性質余因数Cramerの公式行列式の積を復習されたし。ここはCramerの公式をご覧下さい。

補足説明
 4行4列の行列式の直接計算は面倒なので、1行目に関して余因数展開して確認する。


ここは、行列式の性質の定理7より明らか。ただしそこではで表しているときに注意。

ここは余因数の定理10をご覧下さい。





 

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(2)スカラー、ベクトル、テンソル

1.スカラー

 

2.ベクトル






 

3.テンソル






すなわち、クロネッカーのデルター(単位テンソル)1次の共変・1次の反変の混合テンソルです。

 

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(3)テンソルの加法・減法・乗法および縮約

.加法・減法




 

.テンソルの性質




 

.乗法


 

.縮約・内積



 

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(4)テンソルの商法則

.商法則


 

.商法則の応用




 

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(5)相対テンソル







例1

 α=1については3.(1)3.[補足説明]参照
例2

εkjih は4次(4階)共変相対テンソルεkjih は4次(4階)反変相対テンソルです。“相対テンソル”(テンソル密度)は変換行列式(αやα-1など)が掛かることを別にすればテンソルと同様に変換しますが、普通のテンソルではありませんので“擬テンソル”という言い方がされる場合もあります。
 上記の様に成分が定義されていますのでkjihの指数の全てについて交代(反対称)です。このように定義された相対テンソルのことを“Levi-Civitaのテンソル密度”と呼ぶ。

補足説明
 εkjih は4階共変相対テンソルεkjih は4階反変相対テンソルですから、4×4×4×4=256個の成分からなります。
 そのうちkjihの指数に同じものを含む場合が全て0だということです。それが“その他の場合”として示させているものです。つまり、kjihの指数の全てが互いに異なるもののみが0以外の値を持つ。
 kjihの指数の全てが互いに異なる成分の数はその順列の数4×3×2×1=4!=24個です。その24個の成分の値を次のように決めている。kjihが1234から偶数回の指数の入れ替えでできる成分は+1に、kjihが1234から奇数回の指数の入れ替えでできる成分は−1にする。偶順列とは二つの指数の入れ替えを偶数回(0回も含む)行ったとき得られる順列のことであり、奇順列とは奇数回の入れ替えで得られる順列このとです。
 0以外の値や持つ成分の数は指数の数が4個の1234の場合4!=4×3×2×1=24通りの順列の数ですが、その全てを書き出すと下記のようになります。

これは行列式の計算で習うことだが、以下の説明で行列式のこの性質を用いる。



 

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(6)基本テンソル








 

HOME  導入  2.二次元時空)()()()()()()  3.テンソル代数)()()()()()(7)()()  4.特相対4元)()()  文献   5.等価原理   6.テンソル解析

(7)随伴テンソル(指数の上げ下げ)








 ここは、“基本計量テンソル”を乗じることによって指標を上げ下げして共変・反変の関係を変更できる事を言っている。つまり“随伴テンソル”とは、任意のテンソルに基本計量テンソルを乗じることによって生じるテンソルのこと。

 

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(8)双対テンソル


 上記ソンソルについては3.(5)[例2]参照。
 “随伴という操作”計量テンソルで行ったが、似たような操作を上記のテンソルで行ってみようと言うことです。つまり、それを“双対なテンソルを作る操作”という。

補足説明1]
 そうなることは、εkjih について3.(5)[補足説明]の順列

を参照したらすぐに解る。これは3階テンソルなので行列表示できない。

補足説明2]
 そうなることは3.(5)[補足説明]の順列を参照したらすぐに解る。ただし、2回表れる指数については“アインシュタインの規約”に従って和を取っていることに注意。3組の指標に対して和を取っているので3!で割っている。これは1階のテンソルなので行列表示できる。

補足説明3
 これは2階テンソルなので行列表示できる。
 同じ指数が2回表れるものについては“アインシュタインの規約”に従って和を取ることに注意して、εkjih についての3.(5)[補足説明]順列一覧表を参照しながら、書き記すと

となる。2!で割るのは、“アインシュタインの規約”に従って2組の指標に対して和を取っているからです。

補足説明4
 上記を行列表示すると

となる。

 

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(9)テンソルの微分・勾配・発散・回転


補足説明1]
 ここでは、座標変換の変換係数Ah'は座標xh’やxhに依存しない定数であることに注意。もちろん座標変換係数は、座標系xh'と座標系xhが異なれば変化しますが、座標値そのものには関係しないと言うことです。そのため任意のテンソルをその座標xh'やxhで偏微分したものも、そのまま(共変指数が1つ多い)テンソルになります。
 
 ただし、この様なことが言えるのは、“特殊相対性理論”のローレンツ変換に従うミンコフスキー時空座標の様に変換係数が(Vの関数ではあるが)座標の関数でない場合です。
 第6章で議論する“一般相対性理論”で取り扱う座標変換(変換係数は座標の関数となる)の場合には、“微分”あるいは“微分係数”の定義をもっと拡張(そこでは“共変微分”“共変微分係数”呼ばれる)しないと、座標で偏微分したものが、そのままテンソルの性質を保持することはありません。この当たりは第6章(1)3.第6章(3)、あるいは別稿「微分幾何学」3.(3)を参照して下さい。
 
 だから、以下の議論は特殊相対性理論の範囲に限った話であることを忘れないで下さい。


補足説明2
 ここの説明は解りにくいので補足する。は別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」4.(4)6.で説明した“直積”による操作で生じるテンソルです。つまり、共変ベクトル(∂1,∂2,∂3,∂4)と反変ベクトル(v1,v2,v3,v4)の直積で一つの交代テンソル Tができる事を意味している。すなわち

のことです。
 以下の説明に於いて指数が異なるものが並べて記載されている場合は、常にその様に考えて下さい。

補足説明3
 上記の “Tji が交代テンソル場であれば ∂kji+∂jik+∂ikj は交代テンソル場となる。”の証明は以下のとおり。
[証明]
 まず、jiが3階共変テンソルになることは上記[補足説明2]と同じように考えればよい。次に同形(3階共変テンソル)の三つの成分要素を加えたものは同型(3階共変テンソル)となることは3.(3)1.“加法・減法”より明らか。
 次にこれが交代テンソルになることを証明する。

[証明終]
 ここは何を言っているのか解りにくいと思いますので、4.(2)2.の具体的な例をご覧の後にもう一度振り返られてください。

 

HOME  導入  2.二次元時空)()()()()()()  3.テンソル代数)()()()()()()()()  4.特相対4元()()()  文献   5.等価原理   6.テンソル解析

4.テンソル代数学の特殊相対性理論への応用

この章は文献3.第4章からの引用です。解りやすくなるように少し改変しています。また(1)(2)節を細分した項の題目は当方が適当に追記した。

(1)相対論的運動学
(2)電磁方程式のテンソル方程式化
(3)相対論的力学

 後で出てくるMaxwell方程式の形から解るように、この本は“有利化Gauss単位系”(ローレンツ・ヘヴィサイド単位系)で論じられています。単位系については別稿「電磁気学の単位系が難しい理由」をご覧下さい。

HOME  導入  2.二次元時空)()()()()()()  3.テンソル代数)()()()()()()()()  4.特相対4元(1)()()  文献   5.等価原理   6.テンソル解析

(1)相対論的運動学

1.線素と固有時



[補足説明]
 ミンコフスキー時空は4次元空間であるが平坦で一様な空間です。そのため“擬ユークリッド空間”と言われる。この言い方については2.(1)[補足説明]を参照。

 

2.4元速度ベクトル


 3.(9)節の最初で述べた微分係数の定義を思い出されれば明らかな様に、不変量による微分(時間微分のような)ではそのテンソルの階数は変わらずそのままです。
 つまり反変ベクトル(座標ベクトル)の時間微分はそのまま反変ベクトル(速度ベクトル)になります。



 4元速度については別稿「4元速度(4元運動量、4元電流密度)、4元加速度と4元力」2.も参照されたし。

 

3.4元加速度ベクトル



 4元加速度は反変ベクトルである4元速度ベクトルのスカラー(時間)による微分であるから。当然反変ベクトルとなる。
 4元加速度については別稿「4元速度(4元運動量、4元電流密度)、4元加速度と4元力」4.も参照されたし。

 4元速度4元加速度直交関係については「4元速度(4元運動量、4元電流密度)、4元加速度と4元力」5.(5)4.も参照。

ここは「4元速度(4元運動量、4元電流密度)、4元加速度と4元力」4(3)3.を参照。



 

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(2)電磁方程式のテンソル方程式化

.電磁ポテンシャル



これらの電磁ポテンシャルについては別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」参照。

補足説明1
 (−Ax,−Ay,−Az,φ)で定義する4元量がローレンツ逆変換と同じ変換を満たすことは証明が必要です。そのことは、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」3.(1)を参照して下さい。ただし、そこではローレンツ変換に従う“4元反変ベクトル”として定義しています。
 また、ここの“4元共変ベクトル”との関係は、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」3.(1)[補足説明5]を参照して下さい。そこと同じ共変ベクトルなのに、そこでは正負の符号が反対になり、φに c が掛かっています。そうなるのはミンコフスキー時空の計量テンソルの定義がここと違うからです。


補足説明2
 共変ベクトルの回転が交代共変テンソルになることは、3.(9)を参照されたし。
 また、3.(7)“随伴テンソル”で説明した様に、共変⇔混合⇔反変の関係は“基本計量共変テンソル”ij あるいは“基本計量反変テンソル”ij を乗じて上げ下げしたい添字について縮約することで任意に変更できます。その当たりは別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」4.(4)5.の説明を参照して下さい。
 また、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」5.(2)[補足説明1]5.(2)[補足説明2]は重要です。同じ交代(反対称)共変テンソル“電磁場テンソル”でも、そちらの定義では電場の項に c が掛かっていますが、それは微分の第4成分の定義がここと違って1/cを含ませていないからです。



補足説明3
 上記の“電磁場テンソル”“共変テンソル成分表示” Fji を行列表示すると

となる。

 

.マクスウェル方程式系の4元化(その 1 )





補足説明1
 ここでまず、“Fji が交代テンソル場であれば ∂kji+∂jik+∂ikj は交代テンソル場となる。”3.(9)[補足説明3]で証明した。
 このとき注意して欲しいのですが、これは3階共変テンソルなので2階テンソルの様に“行列表現”で表すことはできません。また、“テンソル方程式”4.(2)3.ji=s の様に列ベクトル(演算子)と行列の積の形で表すこともできません。
 このテンソルは4×4×4=64個の成分を持ちます。その(k,j,i)成分 Tkjiji+∂kj+∂ik であるということです。そして、上記のテンソル方程式は、その全ての成分が 0 であることを示している。
 
 また上記の“4次元のテンソル方程式の右辺が 0 ならば、このテンソル方程式はローレンツ変換不変な式である。”についてですが、3.(2)の後半で説明したように、テンソルが 0 である事はどの座標から見てもかわりませんから、マクスウェル方程式はローレンツ変換不変になります。
 
 さらに、“方程式がテンソル形式で表されていたらローレンツ変換に対して不変である。”についてですが、それはもともとテンソルとは座標変換(あるいは座標逆変換)と同じように変換されるものだからです。そのとき、テンソルやベクトルの物理方程式中での関係で、共変と反変の区別が出てきたのでした。この当たりは別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」4.(1)〜(4)の説明をご覧下さい。

補足説明2
 上記のkji=∂ji+∂kj+∂ik についてもう少し補足します。これは64個の成分を持つと言いました。その指数を全て並べてみると

となります。このとき、同じ指数を持つ成分(図でピンク背景を持つもの)は、kjiが交代テンソルであることから全て 0 になります。そのため残るのは24成分となります。

残った24成分のなかで、任意の二つの数字を入れ替えただけのものは符号が逆転するだけですから、もとのテンソル方程式の形(右辺が0となる)としては独立では無いので取り除けます。図で水色の背景を持つものがそうです。結局残ったものを書き出すと以下の12成分になります。

この中で黄色の背景を持つものは左端の添字を循環的に入れ替えたものです。もとのテンソル方程式の形から明らかなように、これらは左端と同じになります。結局独立な成分は左端の指数を持つ4個だけになります。これが最初のMaxwell方程式の4式です。
 これは1234の4個の数字から順番を考慮することなく3個を選ぶ組み合わせの数 43=4×3×2/3×2×1=4 です。

補足説明3
 4.(2)1.で述べたように電磁ポテンシャル(−Ax,−Ay,−Az,φ)は4元共変ベクトルだから(φ1,φ2,φ3,φ4)=φ と置ける。そのとき3.(9)で説明したように、共変ベクトル場を微分したものを下記の様に組み合わせたものは4元の“回転”と呼んで交代(反対称)2階共変テンソル場となるのでした。ここで取り上げたMaxwell方程式中の電磁場テンソル(4.(2)1.[補足説明3]参照)は、まさにその例です。


 このとき、これを用いて[補足説明2]で説明した指数の組み合わせからなる3階共変テンソルを作ってみれば、それは恒等的に0となることが解ります。もちろんそれが交代(反対称)テンソルであることも簡単に読み取れます。実際、


が直ちにいえる。同様に交代(反対称)テンソルであることも簡単に読み取れます。一例を挙げると

 いずれにしても、この結論は、マクスウェルの方程式

そのものを表している。
 つまり、電磁ポテンシャルが基本的な物理量であり、電磁場がここ節の最初4.(2)1.で述べた式により定められるものならば、マクスウェル方程式中の上記二つは、電磁ポテンシャルによる電磁場の定義式から演繹的(数学的)・恒等的に直接導かれる。この立場では、物理的に意味があるのは次項で述べる2つの式(第2の組)だけということになる。(吉田伸夫著「完全独習相対性理論」講談社のp125参照)
 
 もちろん上記2つの方程式が無意味だと言うことではなくて、最初の電磁ポテンシャルによる電磁場の定義式そのものが上記2つの式が示しているEとHの間で成り立つ物理法則を表していると言うことです。つまりMaxwell方程4式中の上記2つは電磁ポテンシャルによる電磁場の定義式に置き換えられる。
 ここの話は、別稿「Maxwell方程式形の先見性と電磁ポテンシャル」1.で説明した、Maxwellが“Treatiseの§615”に書き残した深謀遠慮に関係します。



補足説明4
 上記の ji双対なテンソル *kh については3.(8)[補足説明4]をご覧下さい。ji交代共変テンソルですから、 *kh交代反変双対テンソルになります。
 具体的に書いてみると

となりますが、この形にすると、共変ベクトル(演算子)の列ベクトルと反変テンソルの行列を乗じて縮約した“行列表現”ベクトル方程式が表せます。

 

.マクスウェル方程式系の4元化(その 2 )


補足説明1
 ここの計算は行列の積の形で表してみると解りやすい。すなわち

であるが、


すなわち

である。このとき

となる。
 ここで注意して欲しいことは、上記の計算を


のようにすると

となることです。
 つまり(F(Fはまったく異なったものになります。そしてこれらは対称テンソルでもなければ交代テンソルでもありません。

補足説明2
 さらに補足します。ここで導いた電磁場テンソルの共変成分表現と反変成分表現は別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」5.(2)[補足説明1]で導いた反変テンソル、あるいは5.(2)[補足説明2]で導いた共変テンソルとちょうど符号が逆になっています。また第4列目と第4行目に c や 1/c の違いがあります。これらは、いずれもミンコフスキー時空の“基本計量テンソル”の定義の違いから生じることです。
 以下の4元ベクトルの表現の違いもそこから生じます。



このことに関しては3.(7)を参照。


“これがローレンツ変換不変である”と言うことの意味は別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」5.(2)[補足説明1]を参照。

 

.電荷保存則







 

.ローレンツ力





補足説明
 4元力の反変表現と共変表現をまとめておくと

となる。

 

.電磁エネルギー運動量テンソル





 ここでは、4元表示したMaxwell方程式を用いて一気に計算しています。一気に計算している分明快なのですが、その分何をしているのか解りにくい。別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」6.では、スカラー方程式とベクトル方程式を別々に計算して最終的に統合しています。そちらの計算の方が解りやすいと思います。






補足説明1
 ここで注意して欲しいのですが、jiji“対称テンソル”であり、 jiji“交代(反対称)テンソル”ですが、 は対称テンソルでも、交代(反対称)テンソルでもありません。
 そのため、成分計算を行列演算のやり方で実行するときには、その当たりを見極めながらする必要があります。

補足説明2
 更に補足しますと、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」4.(4)7.で注意したように基本計量テンソル

を任意のテンソルに乗じることで、反変・共変を変換することができるのでした。
 実際に、そうなっていることは4.(2)3.[補足説明1]で求めた




に、基本計量テンソルを乗じて確かめる事ができる。

例として実際に一つ計算してみると

となります。他も同様にして計算できます。




 ただし、ここでも F と F は互いに異なったji成分〜を持つことに注意して下さい。

補足説明3
 上記の計算を別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」5.(2)6.(4)の計算と比較するときは、“基本計量テンソル”の定義がここと違っていることに注意して下さい。









補足説明4
 上記のことについては、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」6.(4)[補足説明1]を参照されたし。両辺の左側から“基本計量反変テンソル”ji を乗じて縮約するだけです。その際、ミンコフスキー時空の ji は定数ですから ji による指標を上げる操作と微分演算子 ∂ は交換可能であることに注意されたし。
 ただし、行列表現でji と縮約したり、微分演算ベクトル  と縮約するときは の違いや ji=Tij に気をつけて行う必要があります。  以下で、jiを導いておきます。4.(2)6.[補足説明2]で電磁場テンソルに対して行ったのと同様な手順に従えばよい。すでに求めた ji から




となる。このとき ji,Tji は“対称テンソル”ですが、 ,T は対称テンソルでもなければ交代(反対称)テンソルでもないことに注意して下さい。
 これらの表現は、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」6.(4)と少し違いますが、それは計量テンソルの定義の違いによる。



 

.エネルギー保存則と運動量保存則

前項の最後で導いた(1)式と(2)式の意味を考える。

補足説明
 ここの4.(2)6.から7.への説明は見通しが悪い。
 別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」6.で、古典的な(つまり相対性理論以前の)電磁気学から出発して、ここと逆の順番で同じことを説明していますので、ご覧下さい。また、ランダウ、リフシュツ「場の古典論」第4章§32、§33も最小作用の原理から出発して見通しよく説明されていますので会わせてご覧下さい。
 ただし、これらの参照先は“非有利化Gauss単位系”を用いて展開されていますので、式の中にが表れてきます。また“基本計量テンソル”の定義がここと異なっています。その当たりに注意してお読み下さい。

 

HOME  導入  2.二次元時空)()()()()()()  3.テンソル代数)()()()()()()()()  4.特相対4元)()(3)  文献   5.等価原理   6.テンソル解析

(3)相対論的力学

補足説明1
 “方程式がテンソル形式で表されていたらローレンツ変換にたいして不変である。”についてですが、もともとテンソルとは座標変換(あるいは座標逆変換)と同じように変換されるものだからです。
 ただし、そのときテンソルやベクトルが物理方程式の中でどの様に関係するかで、共変と反変の区別が出てきます。この当たりは別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」4.(1)〜(4)の説明をご覧下さい。




















 

補足説明2
 ここの説明はある意味解りにくいので別稿「相対論的力学」「運動方程式のローレンツ変換不変性」を参照されて下さい。ここと比較しながら読まれると理解が深まると思います。

 

HOME  導入  2.二次元時空)()()()()()()  3.テンソル代数)()()()()()()()()  4.特相対4元)()()  文献   5.等価原理   6.テンソル解析

5.参考文献

  1. 物理学史研究会編「物理学古典論文叢書4 相対論」東海大学出版会(1969年刊)
    6.Minkowski「相対性原理」、7.Minkowski「空間と時間」
  2. H.Minkowski,
    “Die Grundgleichungen fu¨r die elektromagnetischen Vorga¨nge in bewegter Ko¨rpern”,
    Nachrichten der K. Gesellschaft der Wissinschaften zu Go¨ttingen. Mathematisch-physikalische Klasse., S.53〜111, 1908年 英語訳を別稿にて引用
  3. 矢野健太郎著「近代数学新書 相対性理論」至文堂(1967年刊)
    このページは、この本の第2章§6、第3章、第4章のほとんどそのままの引用です。ただし、少し改変しています。
  4. M.Born、W.Biem著(瀬谷正男訳)「アインシュタインの相対性原理」講談社(1971年刊)Gauss単位系
     原本は1964年に発刊。1920年発刊の初版の改訂版です。特にY章はミンコフスキーの4次元世界の考え方を大幅に取り入れており、本稿の導入として有益です。第V章第W章§7〜11第X章第Y章を別稿で引用。
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