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相対論的力学

 ここでは相対論的な力学に特化して説明します。特殊相対性理論そのものについては別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年」を、また質量とエネルギーの等価性については別稿「アインシュタインの公式 E=mc2 の証明」をご覧下さい。

1.導入

(1)Planckの考察

 プランクはアインシュタインの1905年論文を注意深く読み、その理論の整合性に驚嘆します。そして相対性理論に深く感銘を受け、それが本物である事を確信します。
 しかし、ただ一つ不明瞭で気になる所がありました。それは第U部§10の電子の力学における相対論的な運動方程式の表現です。
 以下に引用するものは、アインシュタインの記したy成分、z成分の式中のβ項を両辺で割り算して消去した相対論的な“本来の形”に直しています。また2.章で説明するPlanckの論文の表現に合わせてμ→m、v→qに変えています。

この方程式は、方向によって非対称な形になっています。
 おそらくプランクはその非対称性が気になって、その原因を考えたでしょう。そして、その非対称性は、アインシュタインがローレン変換を適用するとき、K系に対するK’系の運動方向をx軸に沿う特別な方向とした事に因るのではないかと気づきます。

 それで、以下の手順を試してみることにしました。まず静止K系(x,y,z,t)に対して(vx、vy,v)方向に速度qで移動する座標K’系を考えます。このとき移動座標K’系のx’軸の方向をK系に対するK’系の移動速度ベクトル=(vx、vy,v)=(dx/dt,dy/dt,dz/dt)の方向と一致させます。そのとき、y’軸とz’軸はx’軸に垂直であり、y’軸⊥z’軸で在りさえすれば任意の方向を向いていても良いとします。(下図参照)

 そしてK’系の原点に対して最初静止している質点(電荷e)に対してニュートンの古典的な運動方程式が成り立つとします。そう考えて良い理由は別稿の第U部§10の電子の力学を復習されたし。ちろんそのK’系では電場ベクトル(Ex’,Ey’,E’)のみが存在するとします。
 次にK’系のx’軸に沿って−=(−vx、−vy,−v)で移動するK”系を考えます。そのときx”軸に沿って(つまりx’軸に沿って)移動するときy”軸とz”軸はy’軸とz’軸に平行になるように移動するとします。このK”系の原点は当然最初のK系の原点と常に一致します。(上図参照)
 このとき、K”系の原点は、最初のK系の原点と一致こそすれ、x”軸、y”軸、z”軸の方向は最初のK系のx軸、y軸、z軸とは異なっています。ここまでの作業は別稿3.(5)で説明したアインシュタインの手順とまったく同じです。

 次いで、プランクはそれを最初のK系の軸に一致する三次元の座標回転をして、最初のK系での方程式に変換します。これは運動方程式の左辺はもちろん右辺の力の原因となる電場、磁場(K”系においては磁場も現れている。)もその座標回転操作に伴う値に変換します。
 この最終的に元に戻った変換は最初の座標K系そのものです。だから、そうして得られる運動方程式は、K系において任意の方向速度q=(vx、vy,v)=(dx/dt,dy/dt,dz/dt)で運動する質点(x,y,z)に対する相対論的な運動方程式となる
 [この手順は2章で引用するPlanckの論文p138〜139で説明されている。]

 つまりK’系からK系へのローレンツ変換によりK系で真に正しい力学方程式を見つけようというのです。これには少し面倒な計算が必要ですが、プランクはこの計算をやり遂げて真に正しい相対論的力学方程式を見つけます。それが第2章で説明するものです。 
 プランクのやり方を理解するには、一般的なローレンツ変換の知識が必要ですので、次節で補足します。 

 

(2)一般的なローレンツ変換

 アインシュタインの1905年論文ではK系(x,y,z,t)に対して、K’系(k系)(x’,y’z’,t’)はx’軸、y’軸、z’軸をそれぞれx軸、y軸、z軸に平行に保ったまま、x軸の正方向に速度vで移動するとしていました。この両座標系間を結ぶローレンツ変換はかなり特殊な変換なので“特殊ローレンツ変換”と呼びましたが、ほとんどの現象の相対論的な解析に充分有効で、多くの有益な予言を生み出した。
 所で、前節(1)でプランクが考えた二つの座標系K’系K系間のローレンツ変換はどのようなものになるでしょうか。その答えは、1905年論文のSommerfeldによる再編集版(1913年)にアインシュタインが追記した事柄の中にあります。すなわち

『(光速不変の原理から言える)K系で見た光の球面波とk系で見た光の球面波の同等性から(t,x,y,z)と(t’,x’,y’,z’)の間に成り立つローレンツ変換公式を導くことができる』

です。このことは別稿2.(5)最後の段落でも注意しました。

 つまり“一般のローレンツ変換”とは一つの座標K系(x,y,z,t)に対して、任意の方向に一定速度で動いている座標K’系(x’,y’、z’,t’)を考えたとき

を満足する斉次線形変換の事です。そのときx’軸、y’軸、z’軸はx軸、y軸、z軸に平行である必要はなくて任意の方向を向いていて良い
 もっと簡単に言えば、時刻t=0においてK系の原点とK’系の原点が一致しているとし、K’系の時間をK系での時刻t=0から同時に測り始めるとしたとき、t=t’=0に二つの座標系の原点を出発した光の球面波がK系に於いてもK’系に於いても同じ速度cでひろがっていく様に見える様にする座標変換のことです。すなわち

を常に満足する(x,y,z,t)→(x’,y’z’,t’)への変換形式です。

補足説明1
 一般の座標変換には、[x軸の方向へ走る座標系への変換]はもちろん、時間的に回転角度が変化するのではない[x軸まわりの一定角度の回転]、[y軸まわりの一定角度の回転]、[z軸まわりの一定角度の回転]等を含めて、三次元座標の直交関係を保ったままの[原点のまわりの任意の一定角度三次元回転]、等々・・・も全て含まれます。それらは全てそれぞれの操作で群を成します。もちろんそれらの群を合わせたものも一つの群を成します。
 そのとき、一定角度の回転操作には時間的変化は含まれていませんので、ローレンツ変換ではあるが、単なる三次元の座標回転変換となる。

 

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2.Planckの1906年3月論文

 相対論的に正しい“力学方程式”を最初に導いたプランクの論文(1906年3月)を紹介する。
 原論文は、下記URLにて閲覧可。これを用いれば自動翻訳サイトの利用可。
http://wikilivres.ca/wiki/Das_Prinzip_der_Relativit%C3%A4t_und_die_Grundgleichungen_der_Mechanik
 
 以下の訳文は文献1より引用した。左端に記入の数字は原論文のページ数です。



補足説明1
 上記の青実線四角で囲った所が1.(1)で述べたことがらです。原論文は電場、磁場の表現にドイツ文字(フラクトゥーア)を用いているが、現代の表記に書き換えて説明する。
 (4)式と(5)式はそれぞれ



となる。

補足説明2
 上記(5)式は以下の手順で求まる。
 1.(1)Planckの考察で述べたK’系(x’,y’,z’)K”系(x”,y”,z”)K系(x,y,z)を考える。そこでの考察のように、K’系(x’,y’,z’)に於いて最初質点(電荷e)は静止の状態から出発すると考える。そのとき電場(Ex’,Ey’,Ez’)のみが存在するとしているので、その座標系における運動方程式はニュートンの古典的な形

が使える。
 これをローレンツ変換

によってK”系(x”,y”,z”)の運動方程式に変換すると

となる。ここまでの作業は別稿3.(5)で説明したアインシュタインの手順とまったく同じです。
 
 ここで、x軸の(x”,y”,z”)軸に対する方向余弦ベクトルを(ax,bx,cx)、y軸の(x”,y”,z”)軸に対する方向余弦ベクトルを(ay,by,cy)、z軸の(x”,y”,z”)軸に対する方向余弦ベクトルを(az,bz,cz)とすると、K”系からK系への変換は単なる空間座標の回転だから、時間に関してはt”=tとなることに注意して

が成り立つ。
 また、逆変換に関しても同じ方向余弦ベクトルの成分が使えて

となる。
 このとき、方向余弦ベクトルの成分に関して

が成り立つ。
 また、速度ベクトルqの定義から明らかなように、上記の方向余弦ベクトルの中でx”軸の(x,y,z)軸に対する方向余弦ベクトル(ax,ay,az)は

と表される。そのためEx”成分は

と表される。
 さらに、方向余弦ベクトル(ax,ay,az)、(bx,by,bz)、(cx,cy,cz)が互いに直交しており、その大きさが1であることと、ベクトルの外積(ベクトル積)の定義より

が成り立つ。“ベクトル積”については別稿を復習されたし。
 
 ここで、(A1)式×ax+(A2)式×bx+(A3)式×cxと、(A1)式×ay+(A2)式×by+(A3)式×cyと、(A1)式×az+(A2)式×bz+(A3)式×czをつくり、上記の関係式を用いて変形すると


となり、(5)式が得られる。

補足説明3
 上記(6)式は、以下の手順で求まる。

 上式を(5)式に代入して

これが、別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)3.(5)[補足説明4]で説明した式です。

補足説明4
 ここで定めた力の定義式はもともとニュートンに由来する。そのことに関しては別稿「楕円軌道の発見と万有引力の法則(「プリンキピア」の説明)」§1、§2をご覧ください。
 そのとき、古典論では質量は時間的に変化しませんので時間微分の外に出せて、(2)式

の様な表現を運動方程式(力の定義)としてきた。そして、別稿「運動の法則」3.で説明したように、この式は力を定義するものであると同時に質量(正確には慣性質量)という量を定義するものと見なせた。
 しかし、相対性理論が明らかにしたように、可秤質量を観測する座標系によって“質量”という属性も変化するものと考えなければならい。そのため、力の定義としては、プランクが指摘したようにニュートンの最初の定義“運動量の時間的変化が力に比例する”に返るべきです。そして、“運動量は慣性質量と速度の積である”とすれば、慣性質量がその運動方向によって異なる非対称的な不条理も無くなる。この形が相対論的に適切な形でしょう。
 このように考えれば別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」3.(5)[補足説明4]で説明した様に

“慣性質量”であると考えねばならない。


補足説明5
 プランクは、今日の“ラグランジュ関数”L“運動ポテンシャル”と呼び、“ハミルトン関数”H“活力”と呼んでいる。
 混乱しないように、現在の呼び方と表記L”“H”に書き直す。また、運動量座標(ξ,η,ζ)を今日的な表現の(px,py,pzにして、ξ2+η2+ζ2=ρ2x2+py2+pz2=p2に置きかえる。
 さらに、力(X,Y,Z)を表すポテンシャル関数U(x,y,z)が存在するとするとして、X=−∂U/∂x,Y=−∂U/∂y,Y=−∂U/∂yとする。
 そうするとプランクの説明は[補足説明6]の様になる。

補足説明6
 [補足説明3]で求めた“相対論的運動方程式”“Lagrangeの運動方程式“

と比較すれば、“ラグランジュ関数”L

でなければならない事が解る。
 実際、(8)式を(7)式に代入すると

だから、確かに相対論的運動方程式

が得られる。
 
 質点に対する“ハミルトン関数(エネルギー)”H


となり、がエネルギーを表すことが解る。“ハミルトン関数”Hについては、別稿「ルジャンドル変換とは何か」5.をご覧下さい。
 ここで

だから、“ハミルトン関数”H“Hamiltonの正準運動方程式”

を満足することは明らかであろう。

補足説明7
 ここの説明だけでは、ラグランジアンLラグランジュの運動方程式、およびハミルトニアンHハミルトンの正準運動方程式が何を意味するのかは解りません。
 この事について、最近の本では例えば村上雅人著「なるほど解析力学」海鳴社(2016年刊)などをご覧下さい。解析力学とは何かを理解するには、この本のように簡単な例を沢山当たってみるに限ります。とても解りやすく説明されています。
 ただし、この本はラグランジュの未定乗数法ルジャンドル変換の説明が少し不足していますので、これらについては当HPの該当稿を合わせてお読み下さい。
 解析力学でハミルトン-ヤコビの偏微分方程式の意味など解りにくいところですが、この本をお読みの後で、ゴールドシュタイン著「古典力学」吉岡書店(1959年刊)などに進まれるとよく理解できます。 

 

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3.相対論的力学

 相対論的に正しい力学方程式は、プランクに続いてN.LewisとC.Tolmanの論文「相対性原理と非Newton力学」(1909年5月)でも示された。これは、今日の多くの教科書で説明されている、“運動量保存の法則”から“相対論的運動方程式”を導くものです。LeweisとTolmanの論文は別稿で引用しておりますので参照されて下さい。
 ここでは、同じやり方ですがBornの文献2第Y章§7〜§9の説明を紹介します。ただし、少し改変しています。これは教育的でとても解りやすい。

)相対論的な座標変換則と速度変換則

 後に繰り返し使う“ローレンツ変換”“相対論的速度合成則”を復習する。

.ローレンツ変換

 互いに他に対して等速度運動をする二つの座標系S、S’を考える。

 S’系S系のx軸に沿って、その正方向に速度vで動いているとする。そのときS’系のx’軸、y’軸、z’軸はS系のx軸、y軸、z軸と平行を保ったまま移動するとする。
 またS系に固定された時計で計った時間をt、S’系に固定された時計で計った時間をt’とする

 そのとき、S’系のx’軸、y’軸、z’軸に固定された三本の物差し棒とS’系に固定された時計で測った、在る物体(可秤質点)の座標・時刻(x’,y’,z’,t’)と、その同じ物体をS系のx軸、y軸、z軸に固定された三本の物差し棒と、S系に固定された時計で測った座標・時刻(x,y,z,t)の間の関係を定めるものがローレンツ変換で以下のようになる。
 ここでは、S系座標物差し棒とS’系の座標物差し棒が重なった瞬間から、それぞれの座標系に固定された時計の時間を計測するものとしている。つまり、重なった瞬間をt=t’=0とする。

これを逆に解くと

となる。
 このとき(70b)(70a)−vに置きかえて、ダッシュ’のついた文字とついてない文字を入れ替えたものになっていることに注意。
 逆変換の導出については別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」2.(5)[補足説明1]を復習されたし。

補足説明
 上記の変換式は(x,t)(x’,t’)の変換式の分子が対称的な形になっていませんが、(x,y,z,ct)←→(x’,y’,z’,ct’)とするとローレンツ変換は

逆変換は

となり、対称的な形になります。
 このようにすると、ctの次元は長さの次元となり(x,y,z)と一致します。そのためローレンツ変換の対称性を強調するには、こちらの形の方が見通しが良い。
 
 しかし、“空間”“時間”は互いに移り変わることはありませんし、本来まったく異なる物理量です。そのためローレンツ変換の物理的意味を説明するときには、空間と時間の違いを残した前記の形の方が便利で解りやすい。
 そのためこの稿では前述の表現を用いることにします。

 

.速度の変換則(相対論的速度合成則)

 前節で説明したS’系のx’軸、y’軸、z’軸に固定された三本の物差し棒とS’系に固定された時計の時刻t’で測った、在る物体(可秤質点)の速度を(ux’,uy’,u’)とし、同じその物体をS系のx軸、y軸、z軸に固定された三本の物差し棒と、S系に固定された時計の時刻tで測った速度を(ux,uy,u)とする。
 そうすると、(ux,uy,u)と(ux’,uy’,u’)の間には以下の関係が成り立つ。

 この関係式はローレンツ変換式を用いれば求められる。証明は別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」2.(7)あるいは2.(8)3.を復習されたし。

 

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(2)相対論的力学

以下はBorn文献2第Y章§7(p262〜273)より引用。

.相対論的運動法則探索の指針





補足説明1
 最後の文節で述べられている“質量は測定を行う人の基準系により、系内における物体の速度に依存する。”は別稿「アインシュタインの公式 E=mc2 の証明」1.論述から予想される事です。

 

.古典的運動量保存則の復習




 

.相対論的運動量




補足説明2
 (β)式は、相対論的な“運動量保存則”(α)から導かれたものであることに注意されたし。



補足説明3
 この“質量保存則”(γorδ)は、別項「アインシュタインの公式 E=mc2 の証明」証明したことを考慮すると、“エネルギー保存則”と言っても良いものであることに注意されたし。

補足説明4
 この“相対論的運動量”(79)式は、“運動量保存則”(α)“質量保存則”(γorδ)(すなわち“エネルギー保存則”がローレンツ変換しても、そのまま成り立つとして導かれた。

 

.相対論的運動方程式

補足説明5
 前項で求めた(79)式“相対論的運動量”を、この項の最初の式“運動量の変化は力積に等しい”に適用すれば、第1章のプランクの稿で説明した相対論的に正しい運動方程式

が得られる。この項の前半はそのことを言っている。

 







補足説明6
 この項の後半で(80)式を求めているが、普通この式は、“相対論的な運動方程式”の時間微分を実行して求める。つまり

となる。
 ここで、x軸を速度vの方向に取ると、y=dy/dt=0、vz=dz/dt=0、v2=(dx/dt)2 なので、上式は

となる。このことは、別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」3.(5)[補足説明4]ですでに説明した。
 
 ただし、Bornの説明の様に、代数計算によって導くのも教育的です。ここの手順については、上記別稿[補足説明2]で引用した江沢先生の説明も参照されたし。
 
 何度も注意したように、“相対論的な運動方程式”を無理に古典的な形(F=ma)に対応させて比較してもあまり意味はない。しかし、運動方程式を積分して実際の運動の様子を調べる時には、この形は便利です。 

補足説明7
 質点に成される[仕事]は、[力]×[距離]で表される。質点が力(Fx,Fy,Fzを受けながら微少な距離(dx,dy,dz)だけ動いたときに質点に成される仕事dWを上記の運動方程式を用いて計算してみると



となる。従って

は、質点のエネルギーを意味することが解る。
 このことはアインシュタインの1905年6月論文ですでに証明されていることですが、本来の相対論的な運動方程式からもスッキリと導かれる。このとき、1905年9月論文の結論を鑑みて、このエネルギー表現には深い意味が存在することを読み取らねばならない。

 

.相対論的質量





文中のアブラハムの理論〔X章、§13、207頁、(69)式〕については別稿引用を参照されたし。

 

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(3)エネルギーの慣性

以下はBorn文献2第W章§8(p273〜277)より引用。














補足説明
 Born文献2では、この後p277〜284まで別稿「アインシュタインの公式 E=mc2 の証明」3.、および5.で引用した説明が続く。ここは別稿で引用したので省略する。

 

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(4)質量(エネルギー)と運動量

以下はBorn文献2第W章§9(p284〜288)より引用。世にある解説書で解りにくいところが明快に説明されています。


 文中のローレンツ変換に対して2−c22=Fが不変量となる”は、別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」で繰り返し証明(2.(4)[補足説明3] or 2.(8)4. or 1917年文献の附記1.)しましたので、そこを復習して下さい。

補足説明1
 世にある解説書で、運動量pとエネルギーEが座標xと時間tと同様なローレンツ変換に従うと説明しているものもありますが、正確には運動量pと質量m(v)が座標xと時間tと同様なローレンツ変換に従うです。
 エネルギーEは定数2の違いを気にしなければ質量m(v)と等価ですからその様に言っても良いかもしれませんが、本来時間tに対応するのは質量m(v)です。
 あるいは3.(1)1.[補足説明]の形のローレンツ変換を用いると、ctに対応するのはE/cであると言うべきです。この形にすると、E/c運動量の次元となりの次元と一致するので、より適切かもしれません。
 
 しかし、、“運動量”“質量”は互いに移り変わることはありませんし、本来まったく異なる物理量です。その為ここでは、(px,p,p,E/c)←→(px’,p’,p’,E’/c)ではなくて、(px,p,p,E/c2)←→(px’,p’,p’,E’/c2)の表現を用いることにします。




上記(70a)、(70b)式についてはこちらを参照

補足説明2
 逆変換(88a)、(88b)式(88c)式との関係は、(x,y,z,t)←→(x’,y’,z’,t’)の逆変換(70b)式(70a)式の関係と同じです。
 逆変換式を求めるには、別稿2.(5)[補足説明1]と同様に、(88c)を未知数p、E/c2の二元連立方程式と見なして解けばよい
 また、逆変換式は(88c)式のvを−vに置きかえてダッシュ’の有る無しを付け替えてもよい
 
 さらに補足すると、(88c)式が成り立てば、これを用いて(87)式の左辺の量がローレンツ変換不変であることは直ちに言えます。それは2+y2+z2−c22がローレンツ変換に対して不変であることを証明した手順と同じです。




上記“特殊相対性理論より導かれる関係”については別稿「アインシュタインの公式E=mc2の証明」を参照。

補足説明3
 上記文中の(90)式は特殊相対性理論が予言する公式として極めて重要です。公式E=mc2に勝るとも劣らない深い意味を持つ。
 別稿の5.補足(1)“ド・ブロイの仮説”で述べたように、 ド・ブロイ1924年に特殊相対性理論から導かれる[運動物体のエネルギー]を光量子とのアナロジーで[振動数]に対応させ,一般の粒子もエネルギーE=hν、運動量p=E/c=hν/c=h/λを持つとした。つまり運動量p=mvの粒子は波長λ=h/p=h/mvの波と見なせるとした。
 この仮説は光量子のみならず、全ての物質が波動性を持つとするもので、後にシュレーディンガー“波動方程式”を発見して量子力学を完成(1926年)する基礎となった。
 この当たりについてジョン・グリビン著「シュレーディンガーと量子革命」青土社(2013年刊)からp117〜120p133〜134、及びp136〜139を引用。

補足説明4
 また、(90)式は粒子の生成・消滅がからむ素粒子・高エネルギー物理天体物理を論じるときに、基礎となる公式です。この事については4.(4)(5)で更に詳しく説明する




 この事については4.(4)で更に詳しく説明する。

補足説明5
 上記(91)式は別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」3.(3)1.ですでに求めております。そこでは光の波動説に従って求めたのですが、そこの“光束”光量子説“光子”と見なすこともできるからです。
 
 このとき、さらに以下の事に注意されたし。(91)式は、S系でみた光子のエネルギーεと、同じ光子をS系に対して速度vで動くS’系から見たときのエネルギーε’の関係を表しているのですが、アインシュタインの光量子説に従ってそれぞれのエネルギー表現ε=hνε’=hν’を適用すると

となる。これは別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」3.(2)2.波動説に従って求めた“Doppler効果の公式”と同じです。
 つまり、光のドップラー効果は波動説のみならず、光の粒子説でも完璧に説明できます。この事は、前記別稿2.(10)3.3.(3)1.[補足説明6]などで何度も注意しました。

 

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(5)電荷密度と電流密度

以下もBorn文献2第W章§9(p288〜291)より引用。

補足説明1
 別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」3.(4)[補足説明5]で説明したように電子のもつ“電荷(電気量)”はローレンツ変換に対して不変です。また電子の“数”も当然ローレン変換に対して不変です。
 だから電荷密度に関してはローレンツ変換によって(92)式の様に変換することになる。

補足説明2
 上記(92)式は、S系で静止している電荷密度ρ0を、S’系から見たらどう見えるかという式と同じです。S’系に於いて電荷密度ρはx’軸の負方向へ−vで動いている事になります。つまり

となります。
 
 もし、電荷密度ρ0S系において、最初から速度ベクトル(ux,uy,uzで動いている場合、S’系から見た電荷密度ρは、S系における電荷速度の(S’座標の移動方向に沿った)成分xにも依存して、以下のようになる。

こうなることは、別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」3.(4)[補足説明2]で説明した。
 
 このとき、注目している電荷密度ρは、S’系に於いて(速度ベクトル(ux,uy,uzをローレンツ変換した)速度ベクトル(ux’,uy’,uz’)で動いている。つまり

となることに注意されたし。

補足説明3
 (93)式は、S系で静止している電荷密度ρ0を、S’:系から見たらどう見えるかというのと同じです。つまり、前文節のS系で静止している(ux,uy,uz)=(0,0,0)の場合の電荷密度を、S’系から見ると速度(ux’,uy’,uz’)=(−v,0,0)で動いているように見える。もちろん、ここではS系に対するS’系の移動方向をS系のx軸の負方向と考えて−vで置きかえています。
 そうして求めても、それは他でもない移動する電荷密度つまり“電流密度”を表している。

補足説明4
 ここで、座標xと時間tと同様なローレンツ変換に従うのは、電流i電荷eでは無くて電流密度電荷密度ρであることに注意して下さい。
 本文中でも説明されているように、電荷(電気量)電荷の数はローレンツ変換に対して不変です。しかし電荷密度ρはローレンツ変換とともに変化します。この事は別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」3.(4)[補足説明5]で注意しましたが、とても大事なことですから決して忘れないで下さい。


上記(70a)、(70b)式についてはこちらを参照




 この図については江沢別稿“ミンコフスキー空間”の説明を参照されたし。また、ここで説明されている事柄については、Purcell「電磁気学」第5章§9も参照されたし。

 文中の(X章、§11)は別稿で引用したこちらを参照して下さい。図103、図105もそこで説明されています。また、上記の事柄については、別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」3.(1)と、そこの[補足説明7]も参照されたし。

 

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4.相対論的力学の応用

 この章で、文献3第13章の説明を紹介します。ただし少し改変しています。これはとても教育的で解りやすい。
 文献3では電磁気学単位としてCGSGauss単位系を用いています。さらに磁場としての代わりにを用いています。Gauss単位系ではは一致しますが、そのことについては別稿「電磁気学の単位系が難しい理由」5.(3)2.をご覧下さい。

 

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(1)運動方向にかけた一定電場による荷電粒子の加速






 

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(2)横方向の電場による加速




補足説明1
 古典的なNewton力学ではこの事を説明できませんが、特殊相対性理論ではy方向に加速されて速度が増大すると粒子の慣性質量が増大します。そのため力が働いていないx方向の運動量が保存するためには速度vxは減少しなければならないのです。(もちろん、最初に持っていた速度ベクトルの方向に力のベクトルが作用する場合にはvx=0で在りつづけますので、力のベクトルの方向と加速度ベクトルの方向は一致します。)
 
 このことは、最初の速度ベクトルの方向と、その物体(エネルギーの塊)に作用する力のベクトルの方向が一致しないときには、作用する力のベクトルの方向とその力によって生じる加速度ベクトルの方向が一致しないことを意味します。
 特殊相対性理論では、力のベクトルの方向と一致するのは運動量ベクトルの時間的変化を表すベクトルdp/dtであって、加速度ベクトル(速度ベクトルの時間的変化を表すベクトルdv/dt)ではありません。
 
 このことは、一定の力を加えたとき、速度は光速度cに近づくが、加速度はだんだん減少していきやがてゼロになることに対応します。特殊相対性理論では一定の力Fを加えたときに増大し続けるのは運動量pであって速度ではありません。
 
 これらは特殊相対性理論が予言する驚くべき結論ですが、もちろん v≪cの場合には古典的なNewton力学の様相に一致します。


 上記積分は公式集(岩波全書「数学公式T」p110など)を参照されたし。

 

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(3)磁場中の荷電粒子の運動







 

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(4)重心系とエネルギー閾値

 素粒子の生成と消滅に関して、エネルギー閾値が存在する。また、γ線(光子)は自由空間で可秤粒子に変化することはできない。これらは、特殊相対性理論が予言する事柄のなかでも特に重要です。





 

.光子によるπ0中間子生成のエネルギー閾値






 

.運動する粒子から取り出すことのできるエネルギー





 

.反陽子生成の閾値




 

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(5)光の粒子性

 光の粒子性を証明したコンプトンの実験は、特殊相対性理論の検証実験としても重要です。

.コンプトン効果


 文中に記されているX線の波長(振動数)測定は、X線を結晶格子でBlagg反射させて、電離箱などを用いて行う。詳細は別稿「X線結晶解析におけるラウエの条件式とブラッグの条件式」を参照。
 また、X線の散乱現象そのものについては、別稿の[補足説明2]を参照。




補足説明1
 最後の式のλ’−λ≡Δλは、入射X線の波長に関係しないことに注意されたし。
 ここで、h/mc(m=電子の静止質量)は“電子のコンプトン波長”と呼ばれ

となるのだが、入射光子の波長に関係なく一定の値になる。
 その為 (λ’−λ)/λ≡Δλ/λ〜(コンプトン波長)/λ 程度となる。この比率は、入射光子の波長が短い(高振動数・高エネルギー)ほど大きくなり、その波長変化を明瞭に観測することができる。

補足説明2
 コンプトン(Bulletin Nat. Res. Council., No.20, p16. 1922年)は、モリブデンMoの特性X線Kα(λ=0.708×10-8cm=70.8×10-12m)を黒鉛(炭素の結晶)に当ててθ=π/2に散乱された散乱X線波長λ’を測定した。測定値はλ’=73.0×10-12mでしたからλ’−λ=2.2×10-12mとなる。一方θ=π/2の場合の理論値はλ’−λ=h/mc×(1−cos90°)=“電子のコンプトン波長”=2.426×10-12mですから、観測値は理論値と良く一致する。
 
 このとき、炭素原子の最外殻電子のイオン化エネルギーは11eV程度であることから、以下のことに注意されたし。
 入射光量子が可視光の場合そのエネルギーは1.6〜3.3eV程度です。一方、実験に用いた様なX線ではそのエネルギーはhν〜17keV程度となり、最外殻電子の結合エネルギーの1000倍以上になります。そのため散乱される電子はほぼ自由電子であると見なす事ができる。
 
 コンプトンが成功できたのは、ひとえに電子の結合エネルギーよりも遙かに高いエネルギーの(波長の短い)X線を用いたからです。実際、上記の例ではコンプトン波長は、([補足説明1]で述べたことから)入射光波長の1/30程度になりますから、波長の変化を観測できたのです。

補足説明3
 一般的な散乱角を含めたコンプトン効果の詳細は、Comptonの論文 Phys. Rev., 21, p483〜502, p715〜, 1923年; 22, p409〜413, 1923年、等々・・・、やComptonの著書「X-Rays and Electrons」(1926年刊)第\章(これはnetから無料ダウンロード可)、あるいは 文献5第4章§3 や 文献6§124〜§128 などを参照されたし。
 上記論文中の Phys. Rev.,21, p483〜502,1923年 は下記URLからもダウンロード可
https://www.aip.org/history/exhibits/gap/

補足説明4
 コンプトン効果は光の粒子性を証明する実験として有名ですが、これは相対論的な力学方程式の正しさを証明する実験と見ることもできます。
 
 散乱光子と反跳電子の方向の関係や電子が得る運動量の大きさを実験的に確かめる事ができます。そのことから、運動量保存則とエネルギー保存則は、前記の相対論的な運動量保存則とエネルギー保存則でなければならないことが確認できます。光を粒子であると見なすだけで他の部分を非相対論的な力学で計算すると、Δλ=λ’−λは相対論とは異なった式になります。
 
 コンプトン効果が発見(1921年)された時代には、相対論的な運動方程式の正しさは、それまでに繰り返し行われた電子加速実験から、確認済みの事柄でした。そのため、普通このことはあまり重視して説明されませんが、この効果は特殊相対論的力学理論を確認する意味に於いても重要です。
 この事については別稿「コンプトン効果(1922年)と相対論的力学」で説明しておりますのでご覧下さい。

 

.逆コンプトン効果






    これは宇宙空間での高エネルギーγ線発生過程として重要です。

 

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(6)文献3. 第13章末問題と解答

 これらの問題を見れば、特殊相対性理論は素粒子・高エネルギー物理や天体物理で必須であることが解ります。













 

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(7)粒子加速器


 McMillanの論文はこちらで引用

 

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5.参考文献

  1. 物理学史研究会編「物理学古典論文叢書4 相対論」東海大学出版会(1969年刊)
    3. M.Planck著「相対性原理と力学の基本」の訳文を引用。この中の9.Lewis、Tolman著「相対性原理と非Newton力学」は別稿で引用
  2. M.Born、W.Biem著(瀬谷正男訳)「アインシュタインの相対性原理」講談社(1971年刊)Gauss単位系
     原本は1964年に発刊。1920年発刊の初版の改訂版です。Y章、Z章はかなり書き換えられています。本稿の第3章は、この本の第Y章§7〜9に依存しています。
     この本の第V章第W章§7〜11第X章第Y章§1〜6、10〜11and§8の一部は別稿で引用。
  3. Kittel、Knight、Ruderman著「バークレー物理学コース1 力学(上巻)(下巻)」丸善(1975年刊)
    本稿の第4章“力学的応用”は、この本の第13章に依存しています。
  4. メラー著「相対性理論」みすず書房(1951年刊)
     この本は少し難しい。本稿をご覧の後に第V章“相対論的力学”を読まれると理解が深まります。
  5. 荒木源太郎著「原子物理学」倍風館(1964年刊)第4章3.コンプトン散乱
     20世紀前半の原子物理学の発展を概観するには最適です。また章末の文献表は貴重です。
  6. E.シュポルスキー著「原子物理學T」東京図書(1965年刊)
     第9章§124〜§128でコンプトン効果が説明されています。
  7. ジョン・グリビン著「シュレーディンガーと量子革命」青土社(2013年刊)
     これからp117〜120p133〜134、及びp136〜139を引用。
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