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電磁場の相対性

 この稿は「ファインマン物理 第V巻“電磁気学”」 §13-6 “電磁場の相対性”(p166〜171)からの引用です。ただし、解り易くするためにかなり改変しています。章、節の題目は当方が適当に追記しました。
 電磁気学の公式は単位系により係数が変化します。ここでは高校物理で使用するMKSA有理化単位系(E-B対応系)(SI単位系)で記述しています。Feynmanはさらにμ0=1/ε02 と置き直している。(詳細は別稿「電磁気学の単位系が難しい理由」参照)

1.導入

 

補足説明1
 この稿では簡単化して、[粒子q(負電荷)の速度]と[伝導電子(負電荷)の速度]が同じ値vであるとしている。両者の速度が異なる一般の場合は、5.[補足説明2]あるいは別稿、Purcell「電磁気学」第5章§9を参照。
 
 また、導線(針金)に対して静止している系(S系)から見たとき、たとえ電流が流れて入れも導線(針金)は帯電していないとしている。電流が流れるとき正・負のどちらかに帯電する場合もある(例えば交流電流など)が、ここではS系での条件としてその様にします。
 
 この稿では、+、−の添え字の付いている記号(ρ+、ρ-、ρ+’、ρ-’、v+、v-、v+’、v-’)は、正負の符号も含ませている。それ以外の記号はvのように絶対値を意味したり、 の様に正・負を含ませたり色々です。そのための成分表示のとき符号に注意してください。



 

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2.針金に対して静止した系(S系)から見た場合

)針金の周りの電磁場



 この式については別稿「マクスウェルの応力」3.(1)2.を参照。そこで、B=μ0H=H/ε02と置けば上式が得られる。

 

)粒子q(S系では動いている)に働く力

 

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3.粒子qに対して静止した系(S’系)から見た場合



 動いている物体が縮んで見える事は、別項「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」2.(6)1.「ローレンツ変換とは何か[Einsteinのローレンツ変換導出法(1905年)への補足]」2.(2)3.などを復習されたし。

 

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(1)電荷の不変性



補足説明1
 上記青アンダーライン“まえにみたように”こちらのことを指している。
 
 ここで説明している“電荷の不変性”については別項「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」3.(4)[補足説明5]「相対論的力学」3.(5)を復習されたし。
 そのことの実験的検証についてのより詳しい説明は別稿Purcell「電磁気学」§5-4を参照されたし。
 
 “質量”の相対性“電荷”の不変性(絶対性)については別稿Einstein「わが相対性理論」第2部§19[補足説明1]も参照。そのなかのBornの見積もり計算も参照されたし。

 

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(2)電荷密度の変化



 

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(3)S’系から見たときの針金の電荷密度

.正電荷密度の変化


 正電荷は針金と共に動くので、正電荷の間隔は針金の縮みと同じに生じる。故にS’系から見た正電荷の電荷密度は針金の縮む割合で割った式(13.24)になる。すなわち正電荷の電荷密度は増大する。
 また、正電荷はS’系に於いては左向き(x’軸の負の方向)に動いているから電流 を構成し、針金の周りにビオ・サバールの法則に従った磁場B’を作る。その磁場成分By’は2.(1)と同様に求めることができる。

.負電荷密度の変化


 S系では負電荷の並びは速度vで右方向(x軸の正の方向)に動いている。だから負電荷の間隔は本来の間隔よりも縮んでいる。S’系に移ると負電荷の速度がゼロになるので本来の間隔にもとるのです。
 そのとき、注意して欲しいことは、針金の伸び縮みとは独立に負電荷間隔は伸び縮みすることです。S系からS’系に移ると針金は縮んで見えるが、その縮みに負電荷密度の変化は影響を受けない。そうなることの理由は、別稿「ローレンツ変換とは何か」3.(2)[補足説明4]を復習すれば解ります。

.正・負電荷密度を一緒にする

補足説明1
 別稿「相対論的力学」3.(5)電荷密度ρ電流密度(jx,jy,jzのローレンツ変換公式を導いた。すなわち

であった。これは図の導線中の任意の場所の電流密度と電荷密度をS系とS’系で測定したときの値の関係を与える。
 これをこの稿の場合に当てはめると

であるが、S系での値を上記の変換公式に代入してS’系での表現を求めてみる。
 電流密度は

となり、3.(3)1.で説明したS’系での電流表現と一致する。
 電荷密度は

となり、(13.27)式と一致する。
 つまり、電流密度と電荷密度の(ローレンツ変換共変)変換公式はこの事をあらわしていたのです。

補足説明2
 ここは解りにくいところなのでミンコフスキー時空図で確認します。S系x,ct座標S’系x’,ct’座標で表す。S系から見た電荷密度はx軸と、S’系から見た電荷密度はx’軸と交わる正・負電荷の“世界線”の本数を単位長さ当たりで数えればよい。
 そのとき、x軸とx’軸の単位の長さは、図中に記した双曲線の“較正曲線(尺度曲線)”に従って決定されることを思い出されたし。この図の詳しい説明は別項「相対論的力学」3.(5)[補足説明5]をご覧ください。

 同じ事ですが、S’系の座標軸を直交させて表示すると下図になる。S’系から見た状況を検討するには、こちらの方が解りやすい。

 これらの図上で、ct値が異なるがx軸に平行な線上で見ると針金は常に帯電していない。また、ct’値が異なるx’軸に平行な線上で見ると針金は常に帯電している。

 

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(4)粒子q(S’系では静止)に働く力


 E’を求める§5-5(p57)の手順はこちらを参照。そこの式で、針金の単位長さ当たりの電気量をλ=ρ’[C/m3]×1[m]×A[m2]と置けばよい。“ガウスの法則”はこちらを参照。

 3.(3)1.で述べたように、S’系から見ると粒子qの位置に磁場B’も存在する。しかし、S’系で静止している粒子qには力を及ぼさない。

 

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4.両系で働く力はほぼ等しい




 ここはの説明は難しい。同じ粒子qでも見る座標系によってその質量は変化します。またそれに働く力も座標系によって変化します。同じ現象の二つの見方が、観測座標系の相対速度に無関係に同じ物理的結果を与えるということは、同じ運動量変化を与えることだと考えなければいけないとファインマンは言っている。
 つまり、ファインマンは座標系の相対速度に垂直な方向の“横運動量”S系から見ても、S’系から見ても変わらない事を言っている。座標系の相対的運動の方向に垂直な運動量成分はローレンツ変換不変です。これは別稿「相対論的力学」3.(4)[補足説明2]で証明しています。


 ここの意味を理解するのは難しい。S系で動いている粒子qに磁場Bが働く時間間隔とS’系で静止している粒子qに電場E’が働く時間間隔は、粒子に取って同じ時間間隔でなければならない。S系の粒子(動いている)の時間はS系の観測者に取ってゆっくり進む様に見えるのだからΔt>Δt’で無ければならないといっている。つまりS系に静止している時計で計った時間間隔Δtは少し長めに取る必要がある。。

補足説明1
 ここの議論は、力が働いた最初の極短い瞬間についてしか言えないことに注意。横方向の運動速度を持つとS’系に対して粒子が静止しているという最初の条件は成り立たなくなる。ローレンツ変換の中のS系とS’系の互いの相対速度vも変化してしまいます。
 力の変換則については5.[補足説明3]でもう少し詳しく説明します。

 

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5.電磁場の相対性



補足説明1
 アインシュタインは1905年論文で電磁場が観測系に依存して変化する変換式を相対性理論に基づいて求めている
 S’系はS系に対して、S系のx軸の正方向に速度vで移動しているとする。そのとき任意の場所における電場と磁場をS系とS’系で観測した時の値は下記の変換公式で関係づけられる。
 ダッシュの付いていないものがS系から、ダッシュの付いたものがS’系から見た電磁場成分です。

 アインシュタインはGauss単位系で表していますが、Gauss単位系では磁場としてのどちらを用いてもよい。本によってはHをBに置きかえて表示しているもの(例えばPurcell「電磁気学」)もあります。
 
 この稿で用いているMKSA有理化単位系(E-B対応系)にすると下記の様に成ります。

 今まで考察してきた図13-12の状況での粒子qの位置の電磁場成分は下記の様に成ります。

その為、上記変換式は

となり

だけが残ります。
 2.(1)3.(3)1.3.(4)で求めている、図13-12粒子qの位置の電磁場成分表示式

を代入してみると、

となり、アインシュタインが求めた電磁場の(ローレンツ変換共変の)変換式を確かに満たしている。

補足説明2
 この稿では、[粒子q(負電荷)の速度]と[伝導電子(負電荷)の速度]が同じ値vで、しかもS系から見た導線(針金)は帯電していない場合を論じてきた。そのとき、S系は導線に対して静止しており、S’系は粒子q(あるいは伝導電子)に対して静止しているとしてきた。
 補足として、S系から見たとき導線はすでに帯電しており、S’系における粒子qはx’軸の正方向に速度u’を持っている場合を考察する。S系S’系相対速度はvであるとしているので、S系からみた粒子qの速度u相対論的速度合成則に従う。
 S系から見た導線(針金)の電荷密度をρ電流密度を(jx,jy,jzとし、S’系から見た電荷密度をρ’電流密度を(jx’,jy’,jz’)とすると、別稿「相対論的力学」3.(5)あるいは3.(3)4.[補足説明1]で確認したように両者の関係は

となる。
 導線の中心から距離rの位置にある粒子qの場所のそれぞれの系から見た電磁場、つまりS系から見た(Ex,Ey,Ez)、(Bx,By,Bzと,S’系から見た(Ex’,Ey’,Ez’)、(Bx’,By’,Bz’)を求めるには、それぞれの系から見た電荷密度電流密度に、“ガウスの法則”“アンペール(ビオ・サバール)の法則”を適用すれば良い。

 粒子qの位置の電磁場は

となる。
 これらは、当然のことであるが前述の電磁場の変換式

を満たしている。実際


となる。
 それぞれの系から見たときの電磁場が粒子q(ここでは>0とする)に及ぼす力を求めると

となるが、zzには以下の関係がある。



 これらの関係式は、S系での力の表現式に速度変換式、電荷・電流密度変換式を適用しても得られる。もちろん、下記の様に電磁場変換式を用いても良い。


 zzの関係はv→−vに変えてダッシュの有る無しを付け替えるとと互いに入れ替わるので相対性原理を満たしていることが解る。また、u’→0、u→vとすると、どちらの表現も前出の(13.30)式に一致する。もちろん、(u≪c、u’≪c、v≪c)のときには z≒Fzとなる。

補足説明3
 各座標系における“力”Fとは、“運動量”pの各座標系における時間的変化率に対する名称に過ぎない。(このことに付いては「相対論的力学」4.(2)[補足説明1]参照)
 
《S’系の移動方向と垂直な方向に働く力の変換式》 
 この場合の変換式は前記の様に

であったが、前述の力の定義に留意するとこれはローレンツ変換を用いて直接導ける。
 実際、S’系の移動方向に垂直な運動量成分はローレンツ変換に対して不変であるから

となる。pz=pz’に付いては「相対論的力学」3.(4)[補足説明2]を参照されたし。
 S’系はS系のx軸の正方向へ速度vで動いており、時刻t=t’=0のとき両座標系の原点がすれ違う。今考察している任意の時刻に、着目している物体はS’系から見てx’軸の正方向に速度u’=dx’/dt’を持っとしている。
 ここで注意して欲しいのですが、物体のS’系での速度がx’軸成分以外を持つ任意の速度ベクトルに対してもpz=pz’は成り立ちました。だから証明の過程を検討すれば解るように、S’系での物体の速度は任意の速度ベクトルq’を持つとして良い。そのx’軸成分(今はu’としている)のみが変換式に効いてくるのです。
 
《S’系の移動方向に平行な方向に働く力の変換式》 
 今までは物体がS’系に於いて持つ速度成分をx’軸方向に限って論じてきたが、ここでは一般的な速度ベクトルq’の場合について証明する。以下の式中のq’はS’系における物体の速度の大きさ

を意味する。
 S’系における粒子のエネルギーE’を運動量ベクトルのx’成分xで偏微分すると

となる。この式については、別稿「相対論的力学」2.[補足説明6]のPlanckの証明を復習されたし。これは“Hamiltonの正準運動方程式”そのままです。
 これを運動量ベクトル成分pxのローレンツ変換に適用する。ここでのはS系に対するS’:系の移動速度を意味し、定数であることに注意して

が得られる。いままでの議論では(dx’/dt’)=u’としていたことに注意。
 この式を用いると

となる。すなわち、S’系の移動方向と“平行に働く力”はローレンツ変換に対して不変です。この事はPurcellの「電磁気学」5章§8p207でも証明されています。まったく同じやり方です。

 

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6.まとめ


補足説明1
 最後に、第13章の最初の部分を引用して、もう一度磁場Bの意味を確認する。



 単位がこうなることは別稿「電磁気学の単位系が難しい理由」5.(3)1.を参照されたし。 

 

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7.参考文献

 たいていの電磁気学の本で説明されていますが、この稿をつくるとき参考にした本を挙げておきます。

  1. ファインマン、レイトン、サンズ著「ファインマン物理学 V 電磁気学」岩波書店(1969年)
    MKSA有理化単位系(E-B対応系)、この稿は、この§13-6“電磁場の相対性”(p166〜171)から引用した。ファインマンは簡潔に説明してるので、正しく理解するにはかなり補足の説明が必要です。
  2. Edward M. Purcell著「バークレー物理学コース2 電磁気学(上巻)(下巻)」丸善(1970年刊)
    Gauss単位系、この中の第5章“動いている電荷の場”を別稿で引用。
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