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発電機とモーターの理論

 現代文明は電気によって支えられていると言っても過言ではありません。普段何気なく利用している電気器具も深く考えてみると驚異的な現象だと分かります。なんともすごい性質です。なぜすごいのかを説明します。

1.理想的な発電機と抵抗R

 理想的な発電機とは内部抵抗=0を意味する。本当は負電荷の電子が動くのだが、簡単化のために以下の議論ではすべて正電荷が動いて電流を生じているとして論じる。
 発電機は高校物理で良く出てくる磁場中におかれた平行導線の上を金属棒を引っ張ることにより構築する。なんとも原始的な発電機であるが、発電機としての特性をすべて持ち、抵抗との間に働くつり合い関係をわかりやすく説明するには最適です。

 金属棒abを引く速度vが正電荷をa→bの方向へ押しやる力evBを生じる。この力が正電荷を抵抗Rへ押し込む。しかし抵抗Rが電荷の流れを妨げて、電荷が抵抗の手前に貯まり、そのことが導体棒のb側の電位をあげる。このとき[電磁誘導による誘導起電力]と[電荷分布の偏りによる電位差]を混同しないこと。両者は瞬時につり合って大きさは同じになるが、それぞれを原因として生じる力の向きは互いに反対である
 そのときbとaの間に生じる電位差により、導体棒中に電界E=V/l式(2)が生じる。ただしlは導体棒のab間の長さである。この電界による力eEが正電荷をb→aの方向へ押しもどす。この力とevBによる力が釣り合って定常状態が実現されて式(1)eE=evBが成り立つ。
 一方抵抗の部分ではI=V/R式(3)で定まる電流Iが流れる。この電流により磁場中におかれた導体棒abには速度ベクトルvとは逆向きの力F’=IBl式(4)を生じる。定常状態ではこの力F’と人が引く力Fとがつり合いF’=F式(5)が実現される。 つまり発電機に加えられる力Fが発生する電流Iを決め、棒abを引っ張る速度vがab間の電位差Vを決める。そうして定まったIとVはV=RI式(3)のオームの法則を満足する。

結局、金属棒が動く速度と、金属棒を引っ張る力は抵抗値を通して互い影響しあっている

つまり、棒を引く力Fが大きければ棒の速度vはおおきくなり、力Fが小さければ速度vは小さくなる。また、棒を早く動かそうとすると大きな力が必要になり、棒をゆっくり動かせば力は小さくても良い。

 以下いくつかの特別な場合を考察する。

(1)Rが有限な一定値をとる場合
 式(4)と(5)よりIは棒を引く力Fできまり、式(1)と(2)よりVは棒の速度vで決まる。力Fを大きくしたら電流Iは増大し、速度vを大きくしたら電圧Vが大きくなる。IとVはオームの法則(V=RI)を通じてお互いに関係している。だから式1〜5の連鎖を通じてFはvと関係づけられている。
 このあたりは下図のような手回し発電機と豆電球の実験から体感できる。つまり発電機を早く回す(vを大きくする)ためには力Fを大きくしなければならない。そしてvを大きくする(つまり早く回す)とより沢山の電流Iが流れて豆電球は明るくなる。
(2)R→∞(回路が開いている)の場合
 式(3)よりI=0、そして式(4)、(5)よりF’=0となる。つまり金属棒の質量が無視できるほど軽かったら力をほとんど加えずに任意の速度で動かすことができる。そのときの電圧の大きさは金属棒を引っ張る速度vで決まる。
(3)R=0(回路が短絡している)の場合
 式(3)よりV=0、そして式(1)、(2)よりv=0となる。つまり金属棒を引っ張ろうとすると、瞬時に引っ張る力を打ち消してしまうほどの大電流が流れて動かせなくなる。そのときの電流Iの大きさは引っ張る力Fによって決まる。

 

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2.理想的な発電機と理想的なモーター

 理想的なモーターとは内部抵抗=0を意味する。モーターは高校物理でよく出てくる磁場中におかれた平行導線の上を滑る金属棒で構築する。高校物理で習うように、この金属棒に電流を流すと力が発生して導線上を滑って動く。なんとも原始的なモーターであるが、モーターとしての特性をすべて持ち、発電機とモーターの間の相互作用を理解するには最適です。

 金属棒(1)を引く速度v1は正電荷をa1→b1の方向へ押しやる力ev11を生じる。この力が電流Iを生じ、この電流Iが磁場中にある金属棒(2)に力F2を生じる。そのときF2が金属棒(2)に加わっている負荷F2’にうち勝つだけの大きさがなかったら(2)は動けずv2=0で逆起電力ev22は生じず金属棒(2)に流れる電流Iはどんどん増大する。電流が増大すればやがてF2はF2’に打ち勝っ大きさになり金属棒(2)は動き出す。加速して速くなりv2が増大するにつれて金属棒(2)の内部にはev22の逆起電力が発生してきて電流が流れるのを妨げるようになる。
 このためb2〜b1の導線に電荷が詰まってとどこおり電位が高くなる。そしてb1はa1よりVだけ高電位になり、この電位差が金属棒(1)の内部にE=V/l1の電場を生じる。この電場が力eE1=eV/l1を生じる。これが力ev11とつり合っており定常状態が実現される。
 またそのとき金属棒(2)についてもb2はa2よりVだけ高電位になり、この電位差が金属棒(1)の内部にE2=V/l2の電場を生じる。この電場が力eE2=eV/l2を生じ電流Iを流す。このとき流れた電流Iが力F2を生じて金属棒(2)を右方向へ動かす。金属棒(2)が右方向に動くことにより、ev22の起電力が生じ力eE2=eV/l2とつり合って定常状態が実現される。

 結局、定常状態では前記(A)系列と(B)系列は次の事柄をしめしている。
(A)系列・・・・・電流を仲介にして力12がお互いに影響しあって他を決めている。
(B)系列・・・・・電圧を仲介にして速度12がお互いに影響しあって他を決めている。

 理想的な発電機は加える力を調節して任意のスピードで運転できるから、発電機がどの電圧V、どの電流Iで運転されるかはモーターに接続されている負荷の特性による。
 この辺の事情は下図のような実験をしてみればたちどころに実感できる。手回し発電機でモーターを回すとき、そのモーターの心棒を指でつまんだり離したりしてみると手回し発電機に加えるべき力が変化することが分かる。

 このようにして発電所のタービンに加わる力と家庭のモーターが発揮する力は一体化している。上記の過渡的な現象はほぼ光の伝播速度で互いの状況を伝え合うことにより瞬時に調節されてつり合い状態が実現される。末端の家庭での負荷が増えれば遙か彼方の発電所の発電機の回転数が落ちてしまう。火力発電所では回転数をもとにもどすために蒸気の供給量を増やし、水力発電所では水門を開いて水の流量を増やす。そうして末端での負荷量に関係なく一定の回転数で発電機のローターが回転するように調整している(東日本では50Hz、西日本では60Hz)。
 何百キロメートルも離れた場所にあるものが互いに同期して動き、あの細い金属電線を通じてエネルギーが輸送される。これらを考えると電気現象のもつ驚異のメカニズムと不思議な振る舞いに胸打たれます。
 よくもまあ人類は金属という物質の中に埋もれていたこの驚異的な現象を見つけたものだと思います。現代文明の根幹をなすこの技術も、もとを正せば1800年のボルタの電池の発明に端を発した動電気学に始まる。それまでの摩擦電気による静電気学のレベルに留まっていたのでは決して発見できなかった現象です。改めてボルタの電池の発見の重大さが解る。

補足説明1
 電力は基本的に貯めておくことはできませんので、各瞬間の需要量に合わせて発電機を動かす必要があります。このとき問題となるのは、日本全体で昼間(ピーク時170GW程度)と夜間(最小時90GW程度)ではかなりの電力需要量の差があることです。少量ならば蓄電池などの化学エネルギーに変換して貯めておくことはできますが、現実に生じる需要電力量の差を吸収するにはその様な方法では不可能です。
 ところで、原子力発電は発電量を変化させるのは原理的に難しい。火力発電はかなり調整(特に石油火力)できますが、大規模に変動させるのは経済的ではありません。
 そのため現在は、昼間と夜間の電力差のかなりの部分を水力発電(調整池・貯水池式)揚水発電調整しています。この中の揚水発電は夜間の余った電力で下池から上池に水を汲み上げておき、昼間の需要増大時に上池の水の位置エネルギーで発電するものです。
 今日、揚水発電の発電能力は全電力会社をあわせて30GW(原発30基分程度)程度ですが、汲み上げるために消費する電力の70%程度しか再利用できないので昼夜の電力差を全て揚水発電で調整するのは経済的ではなく、石油・LNG火力発電の発電量調整と組み合わせて供給電力の調整がなされています。
[参考データ http://www.fepc.or.jp/library/data/infobase/pdf/infobase2011.pdf のc-3]

補足説明2 発電機の歴史  電力マップ  揚水式発電所(奥美濃水力発電所)

 

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3.理想的な定電圧電源と理想的なモーター

 理想的な定電圧電源とは出力電圧が任意にコントロールでき、負荷が変化しても出力電圧は常に一定に保たれ電流のみが変化するような電源である。当然内部抵抗はゼロである。一般の電池がこれに近い働きをする。

定常状態では、上記(A)系列と(B)系列はそれぞれ次の事柄を示している。
(A)系列・・・・・電源が供給する出力電圧がモーターの金属棒が動く速度を決める。
(B)系列・・・・・モーターにかかっている負荷の大きさF’が金属棒を流れる電流の大きさを決める。

(1)F’が有限な一定力の場合。
 eV/l=eE=evBが成立するまで電流Iの増大が続き、Fを増大させる。この式が実現される速度vになったら電流の増大は止まる。定常状態が実現されたとき電流IはF=IBlの力を発生し、負荷F’とつり合っている。
 このとき電源が供給する電圧が大きければそれに応じてモーターの運転速度vは増大する。また負荷F’が大きければ電流Iを増大させることにより、その運転速度vを保とうとする。このあたりの事情は下図の実験をしてみれば、たちどころに理解できるであろう。
(2)F=0(負荷がかかっていない)場合
 負荷がゼロの場合は逆起電力がeV/l=eEを打ち消す速度までvが増大すれば定常状態が実現される。そのときF’=F=0だから流れる電流Iはほとんどゼロに近い。そのとき注意すべきことは負荷がゼロだからといっても金属棒の速度vが無限大になるのではないことである。eE=evBを実現する速度vになったら速度の増大は終了して、その後は一定の速度で移動する。そのときのvは定電圧電源が供給する電圧Vによって決まる。つまりv=V/(Bl)となるvである。 
(3)F→∞の場合
 金属棒は電源が供給する出力電圧Vに対応した速度vで動こうとする。そのため力F’に対応した力Fが発生できるようにI→∞まで増大する。その際、下手をするとモーターは焼き切れ、電源もパンクしてしまう。

 

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4.理想的な定電圧電源と現実のモーター

 現実のモーターとは内部抵抗があるモーターを意味する。この内部抵抗はモーターのみならず配線中の抵抗、電源中の抵抗等をすべて含んだものとして考えればよい。それを下図のRで表す。

 上記の関係式から解るように、モーターにかかる負荷の力F’が電流を決め、そのが電池が供給する電圧と一緒になって式V=VE+RIを通して、モーターの動く速度を決める

上式を変形していくと

 上左グラフから解るように理想的なモーターの場合と違って発揮できる力の最大値に限りがあり、流れる電流にも最大値がある。そしてモーターの速度vは負荷の大きさF’により変動する。負荷がゼロのとき最大の速度で動く。このとき電流はほとんど流れない。
 モーターの特性関数を表すグラフ(上左グラフ参照)中の(1)(2)(3)の番号は前出の図中の対応する番号の電圧分布に対応する。

 (1)は電流がほとんどゼロの状態で、電圧降下は抵抗Rの中ではほとんど起こらず金属棒中のみで生じる。このときが金属棒中の電圧降下は最大でこれによるeEの力につり合う逆起電力evBも最大にならねばならぬ。そのため金属棒は最大の速度で移動する。しかし電流がほとんどゼロだから発生する力は最小で、外に対する仕事はほとんどなされない。このときエネルギーはほとんど消費されない。

 (3)は電流が最大に流れる状態で金属棒は最大の力を発揮する。しかし移動速度は最小で、金属棒中ではほとんど電圧降下は起こらない。ほとんどの電圧降下は抵抗Rの中で生じる。発揮する力は最大でも金属棒はほとんど動けないので外に対する仕事はほぼゼロで、大半の電力が抵抗Rの中でジュール熱として消費される。このときエネルギー消費率は最大になる。

 (2)は、消費されるエネルギーのうち、一部は外に対する仕事に、一部は抵抗Rのジュール熱に消費されることを表している。トータルのエネルギー消費率も(1)と(3)の中間である。

 Rがゼロに近づくと共に直線の傾きは負で大きくなり、グラフの直線は垂直に立ってくる(上中グラフ参照)。Rがゼロのとき垂直になる。そのときにはvは電源の供給する電圧Vでほぼ決まり、負荷F’の大きさにはほとんど依存しなくなる。そして電流Iの変動でF’の変化をささえる(上右グラフ参照)。これは前述の3.理想的な定電圧電源と理想的なモーターの場合に近づくことになる。

(A)電源電圧V=一定の場合
 電源電圧Vを一定にして負荷F’を変化させるとモーターの速度vが変化する。このあたりの事情は模型モーターの実験で体験できる。(下図参照)
(B)負荷F’=一定の場合
 負荷F’を一定にして電源電圧Vを変化させるとモーターの速度vが変化する。これもよく体験するところである。(下図参照)
(C)負荷が速度に依存して変化する場合
 電車を動かすような一般の場合、負荷F’は速度vとともに変化していく。例えば電車の速度が増せば空気抵抗は速度vやv二乗の関数で増大する。そのとき負荷の特性に応じた負荷曲線が描ける。
 電源電圧を変化させると、モーターの特性関数と負荷曲線の交点の位置が移動していく。その交点から電車の速度は決まってくる。この関係が実際に電動機を使って様々な仕事をさせるとき重要になる。(下図参照)
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