ラウエの条件式とブラッグの条件式が同等であることを証明します。様々な見方で繰り返し説明することにより、条件式の物理的な意味を明らかにします。
1895年レントゲンは高真空のガラス管内の放電現象研究していたが、放電管を黒い紙ですっかり包んで、およそ50〜80kVで放電したとき、その近所においた白金シアン化バリウムを塗った紙が蛍光を出すのを見た。
この蛍光は、重い物体を放電管と蛍光紙の間におくことによって、さえぎることができた。やがてレントゲンは、その蛍光を起こすものが、陰極線の当たっている放電管のガラスから出ていることを確かめた。その本性が解らないので、彼はそれをX線と呼んだ。
レントゲンはX線の性質を研究して次の事実を認めた。
[補足説明1]
レントゲンが1895年11月8日に発見した未知の放射線の性質は驚くべきものだったので、彼はこの後、約7週間、研究室にこもって、この不思議な放射線の性質を徹底的に調べた。
そして陰極線とは本質的に異なることを確認して1895年12月28日付で、有名な論文「放射線の一新種について」をヴュルツブルク物理医学会に発表(第一報)した。
W.C.Ro¨ntgen, “Ueber eine neue Art von Strahlen”, Sitzb. Wu¨rzburger Phys.
Med. Ges., Dec. 28, 1895年;
Wiedemann's Ann. d. Phys., 64, p1〜11, 1898年に再版、また英訳版はNature, 53, p274, 23 Jan. 1896年
この論文の解説を文献12.より引用。
さらに、翌年3月9日に続報(第二報)を発表
W.C.Ro¨ntgen, “Ueber eine neue Art von Strahlen”, Sitzb. Wu¨rzburger Phys.
Med. Ges., Ma¨rz 9, 1895年;Wiedemann's Ann. d. Phys., 64, p12〜17, 1898年
この二つの日本語訳が
物理学史研究刊行会編「物理学古典論文叢書7 放射能」東海大学出版会(1970年刊)に収録されている。
レントゲンはさらなる続報(第三報)を1897年に発表
W.C.Ro¨ntgen, “Weitere Beobachtungen u¨ber die Eignschaften der X-Strahlen”,
Sitzb. Akad. Wiss. Berlin., 1897年;Wiedemann's Ann. d. Phys., 64, p18〜37, 1898年
レントゲンの発見はセンセーショナルな驚きを持って迎えられ、直ちに世界中の研究者が彼の実験を繰り返し、またそれを発展させた。
X線の発見は、その後の物理学の発展に与えた影響の大きさを考えると、1800年のボルタの電池の発見、1820年のエルステッドによる電流の磁気作用の発見、1896年年のベクレルによる放射能の発見、等々・・・に並ぶ画期的な出来事です。X線と放射能は、発見後直ちに熱狂的な研究が開始されて、原子の世界の秘密を解明する原動力となる。
[補足説明2]
X線と放射能の発見は原子の秘密を解明する鍵と成るものでしたが、その研究を進める上で重要な技術が“真空技術”と“動電気学の発展”でした。
特に真空を作る技術は放電現象の研究に不可欠のものですが、真空放電現象は多くの大発見をもたらした。ジョージ・P・トムソンが書いたJ.J.トムソンの伝記の附録に真空ポンプについての興味深い説明がありますので引用しておきます。
動電気学の発展は、真空放電を起こすために、またx線を発生する高速電子流を作り出す高電圧を発生するために不可欠の技術です。
[拡大版]
通常、X線は対陰極物質を陰極線(高速電子流)で叩くことで発生させる。初期のX線発生管は下図に示すような二つの電極を封じた陰極線管で゜“ガスX線管”と呼ばれる。
これは、高速電子流として希薄気体の放電によって生じる気体の電離電子を用い、それを加速して対陰極を叩くものです。
図のTは“陰極”Cからでた陰極線(電子線)が当たってX線が出るところで“対陰極(ターゲット)”と呼ばれる。ターゲットは陰極線(高速電子)によって叩かれ高温となるので、融点の高い物質が用いられる。そのとき、ターゲット物質の原子量が大きいほどX線を出す効率は良くなる。普通、陰極Cを凹面形にして、その中心に対陰極がくるように作られる。
陰極と対陰極間に適当な電圧を与え、管内の圧力を下げて0.001mmHgくらいにするとX線が出始める。しかし、この段階のX線は透過性が弱く、“軟X線”と言われ、手の肉でも不透明なくらいである。
管内の圧力をさらに下げると、放電に必要な電圧がだんだん大きくなり、透過性の強いX線が出るようになる。印加電圧が100kVを超えると、骨もほとんど透明なX線となり、このようなものを“硬X線”と呼ぶ。
[補足説明1]
レントゲンの発見よりもかなり前から様々な人々が放電管を用いた陰極線の研究を行っていたが、彼らがX線を発見できなかったのは放電管の真空度が低く、印加電圧も低かったからです。レントゲンがX線を発見できたのはひとえに高真空・高電圧を用いたことによる。
レントゲンは、薄いアルミ箔を透過させて陰極線を取り出したレーナルトの実験を追試していたのだが、陰極線の本質を解明するためには、できるだけ多量の陰極線を空気中に取り出すことが必要だと考えていた。しかし、レーナルト管のやり方では、入力を僅か増加させるだけで陰極線の取り出し口のアルミ箔が熱で破損してしまった。
そこで彼は、放電電圧を上げてやれば陰極線強度が増し、ガラス壁を直接透過してくる陰極線が得られるのではないかと考えた。そのため、放電管の真空度を上げて、当時としてはかなり大型のリュームコルフ誘導コイルを用いてかなりの高電圧(80kV程度と推定される)を発生させることにしたのである。それは図らずも上記の“硬X線”領域の実験を行うことになり、X線を発見できた。
陰極を螺旋形のタングステンフィラメントとして、これを電流で熱して熱電子を出し、これを印加電圧で加速してターゲットに当てる形のX線管を“クーリッジ管”という。対陰極(陽極)はx線の発生の能率を良くするために、タングステンの様な重い元素でつくらりていており、普通水で冷やされている。[W.D.Coolidge,
Phys. Rev. 2, p409, 1913年]
このクーリッジのX線管では管内の気体は全て抜き去り高真空とする。そうすると、[フィラメントを熱する電流]と、[電子の加速電圧]を調整することで、X線の強さと硬さを独立に変えることができる。
[補足説明2]
“強さ”とは発生するX線光子の数の多・少のことで、対陰極に衝突させる電子の数の多・少に関係する。電子数の多・少はフィラメントを熱する電流を増・減させて実現する。
また“硬さ”とは発生するX線の波長の長・短のことで、硬い(短波長)・軟らかい(長波長)は発生する光子のエネルギーの大小に関係する。それは対陰極に衝突する電子のエネルギーで決まり、これは陰極と対陰極間の印加電圧を増・減させて調整する。
X線を発生させる対陰極に用いる物質が異なると、それから放射される特性X線の波長(振動数)が異なってくる。これは原子の本質を解明する上で重要な情報を与えてくれます。
その性質を明らかにするためにモーズリーが用いたX線管は簡単な操作で、次々と対陰極(陽極)物質を取り替えることが出来るように工夫されていた。
ターゲットを乗せるアルミニウム製台車は、真鍮の糸巻き筒にまきつけた絹の釣り糸によって、前後に動かすことができる。レールに固定した鉄のスクリーンSには細い垂直のスリットがあり、X線束を限定するようになっている。モーズリーが用いたX線管の容積は3リットル余りで、ゲーデの水銀ポンプで排気された。
X線は発見されてすぐに
等々の性質があることが解り、これらはX線を観測する有力な手段となる。
1.、2.の性質は、X線の強度を詳しく測定するのは難しいが、医学的な目的で使用されるレントゲン撮影や、工業的な検査に於いて、その画像を解析することから重要な情報を得ることができる。
特に2.の性質によって得られる、写真看板上のX線回折像は、結晶構造解析において絶大な威力を発揮する。
3.はX線強度の絶対的な値を測定するのに適してる。
4.はピンポイントを通過するX線強度の定量的測定に最も適しており、ごく初期の段階からX線分光器の検出部に用いられて絶大な威力を発揮した。
[補足説明]
かっては、照射線量の測定単位として、標準状態の空気1cm3の中に1CGSesuの正イオンと1CGSesuの負のイオンを作るX線量を1R(レントゲン)と呼ぶことにして定められていた。これはまさに4.の性質を利用したものです。
例えば、クーリッジX線管の加速電圧が100kVで10mAの電子流のときに、ターゲットから1mの所のX線の強さは、0.34R/s=390erg/cm2s程度です。
ただし、現在では、照射線量の測定単位としてC/kgが用いられている。
X線管が発生するスペクトル線の性質は、バークラの一連の実験から定性的には発見されていたのですが、その詳細が明らかになるのはラウエやブラッグの発見(1912、1913年)で可能になった結晶格子によるX線分光学による。
だからラウエやブラッグの発見当時(1912年頃)にはその詳細はまだ解っていなかったのです。
特性X線発見の端緒になったのは、Barklaによる二次X線の研究です。バークラは、種々の対陰極から出るX線をさらに他の物質に当てると、これから2次X線が出ることを見いだし、その2次X線のAl金属板による吸収を測った。
彼は、X線を当てるターゲット物質を原子量が異なる様々な元素に変えて系統的に実験します。そのときAl板の厚さを連続的に変えながらその吸収の度合いを調べたのです。
吸収金属板の厚さを変えて、それを透過して来る放射線の強度を電離箱を用いて測定する方法は、放射線の性質を調べる最も基本的なテクニックで、別稿で説明したラザフォードのα線、β線の発見(1899年)と同じ発想です。
それらの一連の実験から、様々な元素が、化学的組成とは無関係に、その元素特有な硬さ(透過力)のX線を放出することを発見します。また、特性X線の硬さ(透過力)は、元素の原子量に依存しており、原子量の増大と共に次第に強くなることを発見した。そしてさらに、原子量が十分大きくなると、もう一つ別の、ずっと軟らかい(透過力の弱い)特性X線が現れることを発見した。つまり、2次X線の中に透過性の強い(硬い)ものと、弱い(軟らかい)ものの2種類が在ることを見つけたのです。
ハークラの発見した特性X線は、基本的にX線発生管の対陰極に電子が衝突することで、対陰極を構成する原子の内殻電子(K殻やL殻を構成する)を叩き出して生じる空孔に、より外側の殻の電子が落ち込み、その二つの殻(軌道)のエネルギー差に相当する電磁波がX線として放出されるものと同じです。
つまり水素原子のスペクトル項で説明したのと同じメカニズムなのですが、対陰極を構成する原子が水素よりもはるかに重く核電荷が大きいので遷移する二つの殻(軌道)の間のエネルギー差が大きくなり、X線領域の振動数が高い(波長が短い)高エネルギーの電磁波(光子)が放出されることになる。
バークラの特性X線は、やがてラウエやブラッグによるX線結晶回折現象の発見で可能になった結晶によるX線スペクトル分析の手法により、その詳細が明らかにされていきます。
[補足説明1]
バークラは、その二種類に対して当初A、Bと名付けていたのですが、その当時、次々と発見された可視光波長前後のスペクトル系列のことを鑑みて将来もっと波長の短い特性X線が発見されるかも知れないとして、アルファベットの途中のKとLを用いて、硬い方を“K-X線”、軟らかい方を“L-X線”と名前をつけなおしたのです。
その当たりの事情はバークラ自身が1911年の論文[Phil. Mag., (6)22, p396〜412, Sept. 1911年]のp406で述べている。これは特性X線発見に関する一連の実験の集大成の論文ですが、このp396にバークラ達がそれまでに行った仕事の論文リストがあります。リスト論文の大半はインターネットからダウンロードできますので詳細はそれらをご覧下さい。
[Phil. Mag., 11, p812〜828, June 1906年;Phil. Mag., 14, p408〜422, Sept. 1907年;Phil. Mag., 15, p288〜296, Feb. 1907年;Phil. Mag., 16, p550〜584, Oct. 1908年;等々・・・参照]
結局のところ、短波長側の系列は発見されることは無かったのですが、その後発見された長波長側の特性X線の系列に対して、バークラの命名法が尊重・踏襲されて、続きのアルファベットM、N、O、P、・・・が用いられた。そしてこれが、今日の原子内電子の殻構造におけるK殻、L殻、M殻、N殻、・・・という名前の起源となる。
K、Lに続く系列は、ジーグバーンが“M系列”[Comptes Rendus, 162, p787, 1916年]を発見。さらにドレイセックが“N系列”[Zeit. Phys., 10, p129, 1922年]を発見、そしてドービリエが“O系列”[Comptes Rendus, 183, p656, 1926年]を発見する。そして、それらのスペクトル系列の微細構造が明らかにされる。
それらの発見に伴って、X線スペクトル分析は、原子の理論を検証する実験的な根拠を与え、原子構造解明に絶大な威力を発揮します。X線分光学と原子物理学との関係は、ジーグバーンのノーベル賞(1924年)の功績(X線分光学)説明文に要領よくまとめられています。
[補足説明2]
バークラが特性X線を見つけた時代(1906〜1911年頃)には、X線が波長の短い電磁波であるという考え方はほぼ確立していた。そのため、バークラは[補足説明1]の様に考えたのです。
X線が発見された当初から、陰極線との性質の違いからX線は波長が極端に短い電磁波(紫外線)であるという予想はシュスター、ウィーヘルト、ストークス等によってなされていた。X線がほとんど屈折しないことも、周波数が非常に高い為であると考えられていた。
そして、1899年にはハガとウィンドが、数千分の1mmのスリットによってX線の回折が起こる[H.Haga,C.H.Wind, Wied. Ann.,68,p884〜895
,1899年]ことを見つけており、ゾンマーフェルトは、彼らの実験におけるスリットを通ったX線の拡がりから、X線を電磁波と考えた場合の波長が1.3Å(1.3×10-8cm)程度と推定[A.Sommerfeld, Phys. Z., 2, p59, 1900年]していた。
またバークラ自身も、巧妙な方法を用いた実験(1906年)でX線が横波の電磁波であることを示していた。
[補足説明3]
モーズリーは、バークラの発見したKとLの二つの特性X線系列の波長をX線分光計を用いて詳しく調べた。彼は、そのX線波長と対陰極を構成する元素の原子番号との間に成り立つ単純・明解な関係式を発見する。これは“モーズリーの法則”と言われ、原子を区別し特徴ずけるのは原子量ではなくて原子番号であることを明らかにした。この法則を用いれば任意元素の核電荷を決定することができ、また未知元素を予言することができる。
H. G. J. Moseley,
“The High Frequency Spectra of the Elements. Part T”,Phil. Mag., 26, 1024〜1034, Dec. 1913年
“The High Frequency Spectra of the Elements. Part U”,Phil. Mag., 27, 703〜713,
Apr. 1914年
これは原子物理学における画期的な業績で、別稿「モーズリーの法則(1914年)と周期律における原子番号」にて説明。残念なことに、このすぐ後に起こった第一次世界大戦でモーズリーは若くして戦死してしまいます。
特性X線の研究に於いて最も重要な装置はX線分光計です。それはブラッグ反射を特徴づけるブラッグの条件式を用いた装置ですが、その詳細は4.(1)2.で説明します。X線分光計を用いて得られたX線スペクトルの典型例が下図です。
図中に現れている線スペクトルのピークが特性X線なのですが、多くの実験から特性X線について以下のような事実があきらかになる。
これらの事実は後に原子構造解明に重要な手がかりを与えることになる。
下図は対陰極(陽極)がタングステンのクーリッジ管に於いて印加電圧を様々に変えたときに発生するX線のスペクトル分布を表している。
同様なスペクトル分布を多種類の対陰極物質について調べることにより、連続X線について以下の事が解った。
などの事実が明らかになる。
連続X線は、結局電子と原子核の相互作用によって発生する。負電荷を持つ電子が正電荷を持つ原子核に引きつけられ、急激な加速度変化(減速)を受けたときの加速度運動で生じる電磁放射(“制動輻射”)なのですが、上記の事実を詳しく解析することから、原子の内部構造に関して重要な手かがりが得られる。
物質によるX線の散乱と吸収はかなり複雑な現象です。
入射X線は原子核やその周りを取り巻いている電子と様々な相互作用をするのですが、そのとき生じる散乱や吸収の現象を詳しく調べることで、原子の内部構造や量子的現象が解き明かされて行きます。しかしその当たりの説明はこの稿では全て省略します。
ここで説明する結晶によるX線の回折現象もX線の散乱現象の内の一つです。この稿で対象とするのは、結晶構造を形成する格子点原子に付随している電子がトムソン散乱によってX線を散乱する現象です。この場合には、散乱によって生じる二次電磁波に位相の遅れは無く、また入射X線と散乱X線の間で波長(振動数)の変化が起こらないとして取り扱えます。
結晶の構造や結晶構造群自体は、かなり早い段階から予想され、数学的に議論され確立されていた。それらは結晶を叩いて砕くときに現れる劈開面の様子や結晶が示す複屈折などの光学的性質、さらにイオンや原子価理論に基づくイオン結合・共有結合の性質などから推測されていた。
しかし、3.や4.で説明するラウエやブラッグの理論に基づく実験がなされるまで、それらの構造を直接確かめるすべがなかったのです。X線回折の現象の発見こそがその明確な証拠を与えることになった。ただし、彼らが理論を展開する上で、それまでに得られていた結晶構造に関する知識が大きな助けになったことも確かです。
その当たりの事情は文献2.の 第12章 歴史的展望 “X線回折の発見以前における結晶構造の理論”に概説されているので引用しておきます。
結晶構造の解析に於いて“単位胞(単位格子)”の概念が重要です。単位胞とは、結晶中の空間格子がつくる平行6面体のうち、空間格子の構造単位となる物です。すなわち、それを前後・左右・上下に積み重ねていくと結晶構造が再現できる平行6面体の内で最小のものが“単位胞”です。
そういった単位胞は7つの晶系(14の空間格子)に分類される。
等しくない3軸が互いに等しくない角を挟む。
等しくない3軸の中の1つが他の2つと直交する。
等しくない3軸が直交する。
等しい2軸が120°の角をなし、第3の等しくない軸がこれと直交する。
等しい3軸が互いに等しい角をなす。
3軸が直交し、その中の2つが等しい。
等しい3軸が直交する。
結晶格子のなかに構成される格子面を規定する為に面指数(ミラー指数)なるものを定義する。
面指数(ミラー指数)(ijk)の格子面とは、単位胞の三つの稜辺をそれぞ i等分、j等分、m等分した点で、原点から最も近い三点を結んだ三角形が作る面のことです。単位胞の三つの辺長がa,b,cの場合、三つの軸をa/i,b/j,c/kの長さに切る点を結んだ面です。
たとえば下図の面は。面指数(ミラー指数)(342)の格子面です。
このとき、一つの軸に平行な格子面の場合は、その軸と面の交わる点は無限遠に在ることになるので、それに対応する指数は0となります。また軸の負側を切る場合は指数の上に横バーを記します
ラウエの理論・及び実験は、結晶格子塊にX線を照射したときに、その背後の蛍光板(写真乾板)に現れる斑点を解析するものですが、そのとき用いられるX線が“連続X線”であることを忘れないでください。
ラウエの理論の説明に入る前に、より簡単な状況を取り扱う。下図の様な最も単純な等軸晶系(立方晶系)の結晶格子による回折を考える。図のようにx,y,z軸方向を取って以下の議論を展開する。
最初に、立方格子の中でx軸方向に並んでいる“直線格子(一次元格子)”だけに注目して、その並びに存在する原子による散乱・干渉を考える。今入射X線の波長をλとし、その進行方向のx軸に対する方向余弦をcosα0とする。また散乱X線の進行方向のx軸に対する方向余弦をcosαとする。
幾何学的関係から明らかなように
の関係を満足する角度αの方向で回折の極大が生じる。ここで三角平面CO1O2と三角平面DO1O2が同一平面上にある必要はないことに注意すれば、干渉極大を生じる方向はx軸を中心線とする円錐面の方向になることが解る。
ここで、原点の位置にx軸に沿って存在する“直線格子”に対して、z軸の負の方向から正の方向へ向かう(方向余弦cosα0=cos90°=0)入射X線を考える。下図はその入射X線の特定の波長λに対するh1=0、h1=1、h1=2、・・・の回折方向を示している。
原点から距離Dだけ離れたz軸に垂直な平面πを考えると、回折円錐曲面がπ平面と交わる点は双曲線の集合体となる。
次に、直線格子がx軸とy軸に平行に並んだ、下図のような“平面格子(二次元格子)”による回折を考える。
この格子に、法線がx軸と角α0、y軸と角β0をなすような平面波が入射したとする。つまり入射X線の進行方向のx、y軸に対する方向余弦が(cosα0,cosβ0)の場合、前と同様に格子点を散乱球面波の源とみなすと、干渉極大が生じる方向は二つの条件式
を同時に満たす角αとβで決まることが解る。
ここで再び、原点に存在するxy平面上の二次元格子に対して、X線がz軸の負の方向から正の方向へ向かう場合の、特定の波長λに対する干渉極大の位置を考える。つまり方向余弦が(cosα0,cosβ0,cosγ0)=(cos90°,cos90°,cos0°)=(0,0,1)の入射X線を考える。
前と同様なxy平面に平行なπ平面上に双曲線の集まりを生じる。そして明らかにこれらの双曲線の交点で上記の条件式が満たされる。つまりそれらの交点の方向が干渉極大を生じるαとβの方向である。
それぞれの双曲線が、h1=0、h1=±1、h1=±2、・・・とh2=0、h2=±1、h2=±2、・・・の回折方向を示している。
ここで、以下の事に注意すべきである。1.(4)〜(5)で説明したように、X線管から放射されるX線は在る限界の最低波長λ0以上の波長領域に連続的に分布する連続X線です。
そのような“連続X線”を二次元格子に入射した場合に、π平面上に出来る干渉点は下図の様な放射状の一繋がりの線分の集合となる。
このとき、1.(4)〜(5)で説明した連続X線の波長に対する強度分布から解るように、それぞれの線分の原点中心に近い部分がλ0による干渉スポットで、そこから外側に放射状に伸びる。線分の輝度は外側に行くにつれて一端明るくなりある波長λmaxで極大となる。それからまた次第に暗くなって消えていくはずである。
その当たりの事情を、λ0<λ1<λ2<λ3<λ4<・・・・の値と共に、上図に示す。
最後に、x、yおよびz軸に平行な3つの直線格子の集まりからなる“空間格子(三次元格子)”を考える。この三次元格子に、法線がx軸と角α0、y軸と角β0、z軸とγ0をなすような平面波が入射したとする。つまり入射X線の進行方向のx、y、z軸に対する方向余弦が(cosα0,cosβ0,cosγ0)の場合、前と同様に格子点を散乱球面波の源とみなして、干渉極大が生じる方向を考察する。
この場合、干渉の極大は3つの条件を満たすことのできる角α、β、γで規定される方向に生じる。
ここでも干渉の次数は3つの数(h1,h2,h3)で決まるのだが、それと同時に新しい事情が出てくる。すなわち、干渉の極大は任意の波長に対して可能なのではなくて、在る特定の波長に対してだけ可能になる。
実際、上記の式から
が得られる。
これは、入射平面波の方向(α0,β0,γ0)が与えられたとき、定まった次数(h1,h2,h3)の干渉極大が得られるのは、上記の式を満たす波長λに対してだけであることを意味している。
この値λを前記の式に代入すれば、その干渉極大の生じる方向の方向余弦(cosα、cosβ、cosγ)が求まる。すなわち
となる。(h1,h2,h3)を“ラウエ指数”という。
その当たりの事情を、前述の原点に存在する三次元格子に対して、X線がz軸の負の方向から正の方向へ向かう場合で説明する。つまり、以前と同様な方向余弦が(cosα0,cosβ0,cosγ0)=(0,0,1)の入射X線を考える。
このとき、z軸に沿った直線格子がつくる回折円錐曲面の角度γは
を満足しなければならない。
そのとき、前述のπ平面上にできる干渉極大の位置は(x,y,z)=(0,0,D)[Dは原点とπ平面との距離]を中心とする同心円(青円)となる。それを二次元格子の作る回折像と重ね合わせると
となる。
このとき波長λの干渉縞が作る青円と重なる位置の二次元格子がつくる干渉(棒状線分)の対応する波長がλと一致するとは限らない。そのため青円と放射状干渉線分が交わった点が無条件に干渉斑点となるわけではない。
ところで、z平面上にできる回折円の半径は入射X線の波長λが変化すると変化するのですが、その変動量はxy平面上の二次元格子の双曲線の変化とは違った変化をする。その当たりは下左図と下右図を比較すると良く解る。
波長λの変化に伴って、回折青円半径が増加する様子と双曲線交点の広がってゆく様子は異なるので、双曲線交点が形成する放射状干渉線分の中のある波長成分と同じ波長の青円弧が重なる場合が生じ得る。そのようにして干渉スポットが形成されれぱ、それはある特定の波長のみが選択さていることになる。
その当たりの事情をπ平面x軸方向(h2=0の場合)の干渉線で確認してみる。
結晶が存在する原点とπ平面との距離をDとすると、原点に存在する平面格子がπ平面上に作る干渉線分のx座標は
となる。
一方、原点に存在するz軸方向の直線格子がπ平面上に作る干渉円のx座標は
となる。
この両式を満足する点が干渉斑点のx座標であり、その斑点の波長λです。つまり
となるλの斑点だけ干渉可能である。これはまさに、前述のλに関する表現式でh2=0、α0=β0=90°、γ0=0°としたものに一致する。
そのときのx座標は
で求まる。
今例として、格子間隔a=1Å=10-8cm、結晶と蛍光板(π平面)との距離D=30cmとしたときの、λ/aとxを計算してみる。(限界波長はλ0=0.1Å=10-9cm程度と考えればよいが、今の計算には直接関係しない)
のようになる。この元表(Excel)はこちら。
下図は、、格子間隔aÅ、結晶と写真乾板(π平面)との距離D=3.5cmとしたときの[蛍光板x軸上の干渉斑点の位置x]とそのときの[干渉波長λ/格子間隔a]の関係を示している。Dがえらく短い様に思う方もおられるかも知れませんが、実際にラウエ達が用いた装置のDは3.5cmと7.0cm程度でした。当時手に入る写真乾板の大きを考慮すると妥当な距離です。
上記表の値が下記グラフの交点を表す。ただし、ここで注意して欲しいことは1.(4)〜(5)で説明したようにX線管から発生するX線スペクトル分布には波長の下限があり、また長波長側もX線強度が小さくなることです。だから実際には在る波長領域の干渉斑点のみが観測できる。
こうして、連続スペクトルの性質を持つX線が空間格子を通過した後は干渉を起こした一連の単色線に分かれて、蛍光板(写真乾板)上に対称的に並んだ干渉斑点の集まりが生じる。もしそれらを直接眼で感じることができるならいろいろな色の斑点が入り交じっているはずです。
このとき波長λは格子定数aよりも小さくなければならない。なぜなら、λ>aのときには h(λ/a)>1となり、前記の条件式は満足されなくなるからです(余弦は1よりも大きくなれない)。[厳密に言うと、格子点が一つおき、二つおき、三つおき・・・同士による干渉斑点が生じる可能性はある。つまり格子間隔が見かけ上2a、3a、4aとなった格子と見なせる場合です。しかし、それらの干渉スポットの強度は一般に弱くなる。[3.(2)4.補足説明1を参照]
一方λ≪aならば、干渉条件は満たされるが、角α、β、γは非常に小さな値となり、干渉の観察は困難になる。
これらの理由によって、X線が結晶で干渉を起こすためには、X線の波長が結晶の原子間距離程度であることが必要です。
前節の議論は以下の点で一般化されねばならない。
1.結晶格子の三辺の長さは一般に異なる。
2.結晶格子の三辺が交わる角度も一般に90°とは異なる。
3.二つ飛び、三つ飛び、・・・の結晶格子点同士の回折干渉も存在する。
4.下図の1や2以外に、3、4、・・・等々の直線格子による干渉も考慮する必要がある。
実際、ラウエは上記の事柄を全て考慮した一般的な理論を展開した。
今、a1、a2、a3なる三つの基本ベクトルで決定される結晶格子の各点に散乱の中心となる原子があるとする。
今この単位格子(単位胞)が、a1の方向に(N1-1)個、a2の方向に(N2-1)個、a3の方向に(N3-1)個積み重なった結晶塊を考える。つまり下図のようにa1の方向にN1個、a2の方向にN2個、a3の方向にN3個の散乱原子が存在すると仮定する。
このとき、各格子点の座標は
で与えられる。ここでl,m,nは0,1,2,・・・なる整数です。
今s0の方向で入射したX線が、上記の各格子点に存在する原子に依って散乱されるとする。s0は入射方向の単位ベクトルです。
sは観測する方向を向く単位ベクトルですが、sの方向へ進む散乱X線の干渉を考える。
最初に、[原点]と[位置rの格子点]からの散乱波の距離Rの位置における干渉を考察する。ここでRは結晶塊と蛍光板(写真乾板)との距離を表す。
上図に於いてA→O1→EとB→O2→Fのs方向へ伝播する二つの散乱波の位相差δは
となる。式変形の途中で内積の分配法則[別稿「ベクトルの内積と外積の成分表示」1.(2)を参照]を用いた。ここで、三角平面CO1O2と三角平面DO1O2が同一平面上にあるとは限らないが、その場合でも上記関係式は常に成り立つことに注意。
まず最初に、A→O1→Eの方向へ進む波の距離Rの点における振幅は、以下のように表される。[別項「偏光とは何か」2.を参照]
ここで Ψ(s) は散乱波の強度因子です。それは入射光の偏光状態と、散乱波の進む方向sに依って変化[別稿「線形振動子による電磁波の放出」3.を参照]しますが、全ての格子点からの散乱波について共通であると考えて良い。
また分母の 1/R の項は、散乱光が球面波の為に距離と共にその強度が減少することを表している。これも結晶を構成する全ての格子点について共通であると考えて良い。
次に、B→O2→Fの方向へ進む波の距離Rの点における振幅を求める。これは原点からの散乱波を表す式に位相差δを加えたものになる。すなわち
となる。
これは、原点から
だけ離れた格子点から散乱された波の、距離Rの位置に於ける、振幅を表す。
蛍光板(写真乾板)の位置における波の振幅A(s)は、各格子点からの散乱波を位相差を考慮しながら全て足しあわせればよい。すなわちl について0からN1-1まで、mについて0からN2-1まで、nについて0からN3-1までの全ての格子点について加える。そうすると
となる。
前項最後の式より、s方向に散乱されたX線が干渉して生じる強度I(s)=|A(s)|2は
となる。
この中の関数は
の様に変化するので、強度I(s)変化の様子は
のNをN1、N2、N3とした関数の積となる。
このことより、散乱X線は以下の三条件式を同時にを満足する方向sでのみ強く干渉することになる。
これが干渉斑点が現れる方向sと波長λを定める式で、これを“ラウエの条件式”という。その方向における干渉波の強度はN12・N22・N32に比例する。
ここで、(h1,h2,h3)を“ラウエ指数”と言いますが、この指数の意味や上式の幾何学的な解釈については5.(2)をご覧下さい。
[補足説明1]
上記の条件式を満足するのは主極大値です。厳密に言うと、主極大値の間には結晶格子の周期性からくる副極大値がたくさん生じる[前図参照]。これは、2つおき、3つおき、4つおき、・・・の格子同士が干渉するために生ずる極大ですが、その当たりのメカニズムについては別稿「回折格子による光の干渉縞」2.を参照されたし。そのとき、N1,N2,N3が十分大きくなると副極大の大きさは極めて小さくなるので、干渉点として考慮する必要はなくなる。
[補足説明2]
ここで、h1,h2,h3は干渉次数です。
s0,sは入射方向と散乱方向を表す単位ベクトルで、“方向余弦”による成分表示では
となる。
また、a1,a2,a3は結晶単位格子の三辺を構成するベクトルで、成分表示では
となる。
[補足説明3]
内積を成分表示で表すと、“ラウエの条件式”は
となり、ラウエの論文中の(7)式に一致する。
3.(1)1.を復習すると解るように、(7)式のそれぞれは、ベクトル(s−s0)と稜ベクトルa1、a2、a3の内の一つとの内積が波長の整数倍になる時に、ベクトルsの方向に干渉斑点が現れることを表している。そのとき三つ式を同時に満たすような方向sと波長λはまれにしか存在しません。そのまれに起こった場合には、3.(1)3.で説明したように、ある特別な波長λが選択されているのです。
[補足説明4]
ラウエの理論と実験結果は、
W. Friedrich, P. Knipping und M. Laue, “レントゲン線による干渉現象”, Sitzungsberichte der (Kgl.) Bayerische Akademie der Wissinschaften, p303〜322, 1912年
に発表された。後に Annalen der Physik, (4)41, p971〜988, 1913年 にも再録されている。
これは、日本化学会編「化学の原典 3 構造化学T」学会出版センター(1974年刊)p1〜12に日本語抄訳が収録されていますので引用しておきます。
当時の状況については、
アーミン・ヘルマン著「アインシュタインの時代 −物理学が世界史になる−」地人書館(1993年刊)p45〜50
ミヒャエル・エッケルト著「原子理論の社会史 −ゾンマーフェルトとその学派を巡って−」海鳴社(2012年刊)p60〜69
あるいは文献4.を参照されたし。
W. Friedrich と P. Knipping は下記のような装置を用いてラウエの理論を確かめる為の実験を行った。
下写真は実際に用いられた実験装置とラウエの葉書。[拡大版はこちら]
彼らは、結晶から出るX線は蛍光放射線と考えていたので、バークラの研究結果にしたがって大きな原子量の元素を含む結晶を用いることにした。容易に手にはいる結晶として、最初に硫酸銅(U)5水和物を用いた。
彼らが最初に用いた暫定的な装置は、前述のものより原始的なものであったが、結晶・乾板の配置等は類似している。
硫酸銅(U)5水和物の結晶は三斜晶系に属するのであるが、(110)面にほぼ直角にX線を照射した。写真乾板は前図のP2とP4の位置に結晶から40mmの位置に置いた。乾板P2は一様に黒ずんだ程度であったが、乾板P4には、入射X線が直進した点の外側に規則的な斑点が認められた。[下写真]
この斑点が硫酸銅(U)5水和物の結晶構造に由来するものであることを確かめるために、結晶を細かく砕いて小さな紙箱に詰めて、同じ条件で繰り返してみた。そうすると斑点が消えたので、この斑点の原因は結晶構造に由来することが確認できた。
[補足説明1]
粉末状結晶に“単色X線”を照射すれば、別ファイルで説明するメカニズムに従ってデバイ・シェラー環なる干渉縞が生じる。しかし“連続X線”を照射した場合には、そのような干渉縞や干渉斑点は生じない。
予備実験の後に前図に示す本格的な装置を作って硫酸銅(U)5水和物結晶の実験を繰り返した。
この装置を用いると、予備的な装置では明瞭でなかった斑点が鮮明に映し出された。そして写真乾板P4とP5には下図の様なパターンが得られた。
この二つのパターンの大きさとそれぞれの乾板までの距離が比例していることから、これらの斑点を生じた光線は結晶から直進し、かつ結晶から平行光線として射出したことが解る。
三斜晶系の結晶では、解析が難しいので、次に等軸晶系の結晶である閃亜鉛鉱[硫化亜鉛 ZnS]の結晶を用いた。それは結晶面に平行に研磨された10mm×10mm×5mmの結晶が用いられた。
[補足説明2]
当時はまだ解っていませんでしたが、今日知られている硫化亜鉛の結晶構造は下図の様なものです。
入射X線が立方体面(001)に垂直になるように結晶は設置された。
つまり、結晶の三つの稜をx軸、y軸、z軸と一致させ、z軸方向へX線を入射させた。そのとき
となる。
これは3.(1)で説明した立方格子のz軸に沿ってX線が入射する場合と同じだから、そこで説明した4回対称性のパターンが現れるはずです。実際に、P4またはP5の写真乾板に表れたパターンは下左写真のようなものであった。パターンに現れた4回対称性の事実は結晶が等軸晶系の空間格子からなることを示す見事な証拠を与えた。
ただし、ラウエ達が実験した時点では、閃亜鉛鉱が等軸晶系であることは予想されていたが、それがどのような立方格子かは解っていなかった。
ラウエは[3.(1)3.で求めた式]を用いて、h1,h2,h3の整数値が小さい干渉点について、λ/aの値と斑点の(x,y)座標を計算した[上右図]。
実際
だから、3.(1)3.の結論を用いると
となる。
ここで、結晶から入射X線の方向(z軸方向)へ距離Dだけ離れた写真乾板(π平面)上にできる、方向余弦(cosα,cosβ,cosγ)方向の斑点の(x,y)座標は
となる。
実際に、これらの式を使ってh1=0〜10,h2=0〜10,h3=1〜10についてD=3.5cmの場合を計算してみると別ファイル表の様になる。その内の一部(h1=0〜10,h2=0〜10,h3=1のみ)を書き出したのが次表です。
この中でh2=0の場合の干渉スポットのx座標値が3.(1)3.の例で求めた値に一致していることを元の表で確かめてください。
[補足説明3]
これらの表はExcelファイルをhtmlに変換したものです。このときExcl2003以前のバージョンを用いれば関数もhtmlファルに書き出せます。新しいバージョンのExcelではそれは出来ないようですが、これは古いバージョンのExcelで書き出しています。
これをダウンロードされてExcelに読み込むと関数を自由に編集出来ます。もちろんxls形式で再保存するとExcelファイルにもどります。距離Dを色々変えて試してみてください。
ここでのxyzの座標の取り方から解るように、この表の値は写真乾板を裏側から見た(x,y)座標値ですが、左右・上下が対称的ですから表側から見た図と解釈してよい。
このとき、1.(4)〜(5)で説明したようにX線管がから発生するX線スペクトル分布には波長の下限があり、また長波長側もX線強度が小さくなる。だから実際にはある波長領域の干渉斑点のみが観測できる。
その様にして[計算された干渉パターン]と[実際の干渉パターン]をつき合わせると、写真乾板に現れた斑点は範囲λ/a=0.038〜0.15のパターンと考えられる。
[補足説明4]
実際の所、ラウエがどのような方法で計算したのか良く解りません。W.L.Braggが論文
“The Diffraction of Short Electromagnetic Waves by a Crystal”, Proc. Cambr. Phil. Soc. , Vol.17, p43〜57, 1913年
のp44〜45で説明している様に、ラウエは、写真画像から(x,y)座標を読み取って、それから逆にλ/aとh1、h2、h3を計算して図中に記されている値の見当をつけていったのかも知れません。
この論文のp44〜45でW.L.Braggが説明している例は、前記の表中でh1:h2:h3=1:5:1=2:10:2 (または=5:1:1=10:2:2)の場合です。
同様に、表中から対応する斑点を探すと上図中のA点はh1:h2:h3=9:0:3、B点はh1:h2:h3=9:1:3、C点はh1:h2:h3=5:1:2=10:2:4、D点はh1:h2:h3=3:2:1、E点はh1:h2:h3=5:3:1、F点はh1:h2:h3=4:1:1=8:2:2、G点はh1:h2:h3=3:3:1、等々・・・の斑点に対応することが解る。
いずれにしても、そのようにして観測値とつき合わせると、波長範囲λ/a=0.038〜0.15のX線による干渉パターンである事が解る。
ラウエはそのとき、硫化亜鉛の[結晶密度]、[式量]、と当時解っていた[アボガドロ数]から、単位胞の格子定数をa=3.38×10-8cm(次の[補足説明5]参照)と計算した。
この値a=3.38×10-8cmを用いると、パターンに現れたX線の波長はλ=1.3×10-9〜5.2×10-9cmであると推測される。
[補足説明5]
彼らは閃亜鉛鉱の結晶格子を単純立方格子と考えたために単位胞の格子定数a=3.38×10-8cmとしてしまったが、実際は面心立方格子でa=5.43×10-8cmが正しい。
このことを明らかにしたのはW.L.Braggです。彼は、上記の1913年論文でそのことを指摘しており、後の論文
W.H.Bragg and W.L.Bragg, Proc. Roy. Soc., A, Vol.89, p286, 1913年,および p473, 1914年
でより厳密・正確な説明をしている。
つぎに、X線を閃亜鉛鉱結晶の八面体面(111)や菱形十二面体面(110)に直角に入射させた。
その場合、下図の様なパターンが得られた。
これは、結晶の3回転軸の方向からX線が入射したことになるのだが、まさにそれに対応する3回対称性のパターンが得られた。
ラウエの理論は複雑なために結晶の正しい構造を決定するのはかなり難しいのですが、結晶によるX線の回折現象を発見し、X線の本質と結晶格子の実在を同時に実証したことは偉大な業績です。
W.L.Bragg(息子)はラウエの論文を読み感銘を受けますが、ラウエの理論は理解するにも応用するにも難解なもので、彼はもう少し簡単に解釈できないものかと思考をめぐらします。そうして有名な“ブラッグの条件式”(次節参照)を見つけます。
下記が、ラウエの条件式とブラッグの条件式の対応関係を説明した最初の論文です。
W.L.Bragg, “The Diffraction of Short Electromagnetic Waves by a Crystal”,
Proc. Cambr. Phil. Soc. , Vol.17, p43〜57, 1912年
これはブラッグ父子の一連の業績の出発点となった有名な論文です。
W.L.ブラッグ(息子)は、結晶の中に存在する原子は幾つかの方向の面(ブラッグ平面と呼ぶ)上に並んでいると考え、それらの格子面に対して反射の法則を適応すれば回折像の方向が求められることに気付きます。
これが“ブラッグの条件式”と言われるもので、高校物理で習うように
と表されます。
[補足説明1]
W.L.Braggの上記論文では、幾何光学の一般的慣習に従って入射角(inciden angle)、反射角(reflex angle)を上図の角度φで定義しており、ブラッグの公式も 2d・cosφ=nλ の形で説明しています。
しかし、この稿では、高校物理の教科書やブラッグ父子が後の論文で採用した表現形を用います。すなわち、上図の角度θを入射(視射)角、反射(ブラッグ反射)角として 2d・sinθ=nλ の式で議論を進める。
この稿ではφとθの混同を避けるために、以下ではθの事を“入射角”ではなくて“視射角(glancin angle)”、また“反射角”ではなく“ブラッグ反射角”と呼ぶことにする。
W.L.Braggの上記論文を読まれるときにはこの事に注意されてください。
このとき注意すべきは、結晶中の格子面の方向によって、格子面aに隣接する格子面bの散乱体原子が上図のように上下にそろって並んでいるわけではない事です。その当たりは下図の例を見れば直ちに了解できる。
一般的には下図の様に、b面上の散乱体原子はa面上の原子の真下にあるわけではないし、原子間距離もa面とb面では異なる。
そのとき
となるので、b面上の散乱体原子の位置はb面上に有りさえすればどこにあっても良いのです。また格子面上の原子間隔もa面上の間隔と異なっていてもよい。このことが言えるからこそブラッグ反射は格子面からの反射と見なせる。このとき更に、以下の事柄に注意すべきです。
1枚の格子面だけからのブラッグ反射は微弱です。そのため実際に観測される回折X線は多数の格子面からの散乱が重ね合わされたものです。
また、入射X線の反射格子面となす角θ(視射角)はX線の回折する方向を規定するのみならず、その方向で干渉が生じて強度が強まるための波長も規定する。つまりある定まった波長のX線は特定の視射角でないとブラッグ反射は起こらない。
そのとき、格子面によって強め合う散乱は、隣り合う格子面からの散乱波との行路差が波長の整数倍であれば、視射角θとは違う反射角θ’においても原理的には生じるが、反射角θ以外の方向のそれらの強度は一般に小さいので無視できる。だからブラッグの条件式は格子面に対する視射角とブラッグ反射角が等しい反射について成り立つと考えればよい。
3.(1)3.のラウエの理論において、様々な波長を含む連続X線を結晶に当てたとき、その中の特定の波長のX線のみが斑点として現れることを説明しましたが、ブラックの理論においても結晶中の各々の格子面は、その面のブラッグ条件を満たす特定波長のX線のみを選択して反射します。
そのため波長の選択に関しては同様な事柄が言えます。ラウエの理論(ラウエの条件式)とブラッグの理論(ブラッグの条件式)は結局同じことを言っているのですが、ブラッグの理論の方がより直感的で解りやすい。
ブラッグの方法では、波長の定まった単色の特性X線に注目します。ブラッグの条件式は視射角=ブラッグ反射角を規定するのみならず、入射線の格子面となす角(視射角という)も波長に応じて特定の角度にならなければならいことを言っていた。つまり、特定の波長の単色X線は特定の視射角でないとブラッグ反射は起こらず、そのとき常に視射角=ブラッグ反射角が成り立たつ。
W.H.Bragg(父)は、結晶面への視射角がθのときに検出器の方向角が2θとなるような装置[下左図参照]を開発して、視射角を連続的に変えながら散乱X線の強度変化を測定する方法を考案した。
下左図装置で視射角θ(電離箱は2θになるように調整)を変えながら回折X線の強度を測定すれば、X線管から放射されるX線のスペクトル分布を求めることが出来る。そのため、この装置はX線スペクトロメーター(X線分光計)と呼ばれる。これはX線管の対陰極(陽極)から放射されるX線スペクトルの詳細を研究する上でとても重要な役割を果たした。
Braggは対陰極の金属と、印加電圧を適切に選ぶことで、特定X線の強度が大きく現れる連続X線を用いて、多くの結晶の構造を解明した。
この装置を用いるときに、バークラが見つけたように、X線経路に適当な吸収板を挿入してある特定X線が特に残るように調整することも可能です。また、単色X線を得る更に良い方法は、コンプトンが行ったようにX線経路の途中にもう一つ結晶を配置して、その設置角度を調整することで特定X線の一つを選び出すことです[上右図]。
こういったX線分光計の基本概念は1913年にW.H.Bragg(父)によって開発された。下写真は上左図の装置の実物です。
回折X線の検出には当初電離箱と検電気が用いられた。ブラッグの装置では電離箱にSO2ガスや臭化メチルガスが封入されており、電離箱のアースを切断すると入射するX線により電離が進み電離箱の電位が上昇してくる。一定の入射時間で上昇する電位をWilson tilted electroscope(一種の箔検電気)で測定することでX線強度の変化を追跡した。ブラッグの装置の詳細については文献1.のpdfファイルをダウンロードされて、その第3章をご覧下さい。
検出器として電離箱以外にガイガー計数管、比例計数管、シンチレーション検出器、半導体検出器などが用いられることもある。いずれにしても、これらの検出器は回折X線の強度を容易に定量測定することを可能にし、研究の進展に絶大な威力を発揮した。
W.H.Braggが作った初期の実験装置[拡大版はこちら]
ブラッグのX線回折装置の別写真
上記の装置を用いた最初の研究成果の報告が下記論文です。
W.H.Bragg and W.L.Bragg, “The Reflection of X-rays by Crystals”,
Proc. R. Soc. Lond., A, Vol.88, p428〜438, 1913年
日本化学会編「化学の原典 3 構造化学T」学会出版センター(1974年刊)p13〜23に日本語抄訳が掲載されていますので引用しておきます。
これも、ブラッグ父子の一連のX線結晶解析の出発点となった有名な論文ですが、“対陰極から放射されるX線は連続スペクトルの上に特性スペクトル線が重なったものである”ことがこの中で見事に実証されている。
この線スベクトルの発見は結晶解析を極めて強力なものにした。実際ブラッグ父子は線スベクトルを用いてダイヤモンド、ZnS、FeS2、CaF、CaCO3などの結晶構造を次々と解明していく。
また、線スペクトルの発見はモーズリーの仕事に繋がり、その後の原子構造解明において極めて重要な働きをすることになる。
[補足説明2]
X線が結晶の性質を明らかにすることができるだけでなく、結晶の方もX線の複雑きわまる本質を明らかにする革命的な手段を与えてくれたのです。『この相互に明らかにしあうという関係は、最も感銘深いできごとの一つであり、それによって物理学は人々を納得させることができるのです。』と後年フォン・ラウエは述べている。
[補足説明3]
モーズリーとダーウィンは、ブラッグ父子と連絡を取りながら、また彼らから重要な情報、助言を受けながらではあるが、ブラッグ父子とほぼ同様な結論を見つけていきます。モーズリーとダーウィンは、ブラッグ父子の上記4月7日付け論文から三ヶ月後の1913年7月に、彼らが得た結果を発表します。それが
H.G.J.Moseley and C.G.Darwin, “The Reflexion of the X-rays”, Phil. Mag., Vol.26(6), p210〜232, 1913年
です。ちなみにCharles Galton Darwinは、進化論で有名なチャールズ・ダーウィンの孫、天文学・潮汐学で有名なジョージ・ダーウィンの息子で理論物理学者です。
これはある意味ブラッグ父子の結果を追認するものでしかなかったのですが、モーズリーはこの仕事を通じてX線スペクトルの中に本質がある事を確信します。そして彼は、線スペクトルを放出する対陰極元素と線スペクトルの関係の解明に向かいます[別稿「モーズリーの法則(1914年)と周期律における原子番号」参照]。一方、ブラッグ父子は線スペクトルを用いた結晶の構造解析の方向へと別な道を進みます。
ローレンス・ブラッグは、当時の状況を『X線分光学は新しい世界を開いた。それは拾って下さいといわんばかりに金塊がごろごろしている金床の沖積層のようなものだった。』と述懐していますが、まさにその通りのことがこの後生じます。
[補足説明4]
ローレンス・ブラッグは後の講演の中で『父はX線管と電離箱の操作に大層優れていました。当時、X線管がどれほど粗雑なものであったかは考えられないほどです。たとえ、どんな短い時間でも、X線管に1ミリアンペア以上の電流を通すことはできませんでした。対陰極が熱くなり過ぎるのです。放電させてガス分子を放電管の壁に打ち込み、それからパラジウム小管を加熱して水素ガスを拡散純化させるのですが、そうすると管が軟らかくなってしまいました。ウィルソンの金箔検電気を用いた電離測定も大変な技術を要しました。そして父は研究における全ての技術を完全にマスターしていました。』と述べている。[G.M.キャロー著「ウィリアム・ヘンリー・ブラッグ」アグネ(1985年刊)p91]
前述の論文
W.L.Bragg, “The Diffraction of Short Electromagnetic Waves by a Crystal”,
Proc. Cambr. Phil. Soc. , Vol.17, p43〜57, 1912年
を参考にしてブラッグの理論を説明する。
W.L.Braggは、まず干渉斑点は結晶格子中に出来る様々な格子面による反射で生じる事に気付きます。つまり、そのような反射について4.(1)1.で説明した関係式
が成り立つのですが、この式は視射角が定まれば、干渉斑点を生じる方向に反射される光は特定の波長のX線のみが選択されることを示しており、特定の方向に特定波長の干渉スポットが現れることが旨く説明できるのです。
また干渉スポットの強弱が変化するのは、反射面の単位面積当たりの原子密度が変化するからだと考えることができる。
上記の考察を数学的に進めるに当たって、ブラッグは、PopeやBarlowの行った考え方に従って、閃亜鉛鉱(ZnS)は、ラウエが考えたような単純立方格子ではなくて、3.(3)3.[補足説明2]で説明したような構造であると仮定します。つまり亜鉛とイオウの原子がそれぞれ面心立方構造をなしており、それらが互いに入り交じった構造であると考えます。そして亜鉛とイオウは二次波の散乱体として等しく働くとします。
下図の様に座標軸を取り、隣り合う原子の間隔を2aとする。
X線はz軸の負側から正側へ進行するとしている。
[補足説明1]
この稿の議論の範囲では上記の様に格子間隔を2aとした面心立方格子とする必要はない。そのため以下では格子定数aの単純立方格子が積み重なった“等軸晶系(立法晶系)”(等しい三軸が直交)と考えて議論します。
干渉斑点の現れ方の違いを論じるときに、単純立方格子か面心立方格子かの違いが重要になりますが、この稿ではその当たりの説明まで踏み込みません。その当たりは後ほど紹介するブラッグ父子の原論分をお読み下さい。
このように座標軸を取ると、xz平面上の原子の座標はp,qを整数値として(pa,0,qa)と表される。全く同様に、yz平面上の原子の座標はr,sを整数値として(0,ra,sa)と表される。図中のA点とB点は
となる。
このとき、前記のブラッグ反射を起こす任意の反射面は原点Oとxz面上の点A、yz面上の点Bの三点を結ぶ三角形の面とすることが出来るので、数値pqrsの組で表すことが出来る。
今pqrs平面に垂直な単位ベクトルをeとし、その方向余弦を(l,m,n)とすると
が成り立つので
となる。
符号の正負は、ベクトルeの方向が下図の場合を想定して、平方根を取るときに適当な方を選んでいる。このとき、pqrs面を表す単位ベクトルeの方向としては下図と反対向きに取ることも出来るが、その場合には上記結論の正負符号を逆にしなければならない。そのときどちらの方向を選んでも最後に得られるベクトルsの方向余弦の表現は同じになります。
ここで、下図の様に入射してブラッグ反射するX線を考える。
図から明らかな様にcosγ=cos2θであり、(−s0・e)=cosφ=(s・e)となる。また三つのベクトルs0,s、eは全て同一平面上にある単位ベクトルであるから([s0×s]・e)=0 となる。ただし(A・B)は二つのベクトルAとBの内積を、[A×B]は外積を表すとする。これらの関係式については別稿「ベクトルの内積と外積の成分表示」参照。
これらの関係式を成分表示すると
となる。
これらの関係式より
となるので
が得られる。
この方向の干渉で選択されている波長はブラッグの条件式 2d・sinθ=nλ より求まる。今は、n=1の一次の反射のみを考えればよい。面間隔dは隣り合う面がz軸を切る座標が解れば直ちに求まる。面心立方格子の場合には隣接する反射面がz軸を切る間隔Δzは2aであるが、今はより一般的に考えてΔzをそのまま用いると
が得られる。
[補足説明2]
ここで得られた式に於いて
によって“ラウエ指数”に置き換えれば、3.(3)3.でラウエの理論により得られた
と全く同じであることに注意されたし。
反射方向を3.(1)で説明した、z軸方向に距離Dだけ離れた写真乾板
に射影してみよう。このとき特定なpq値を持つpqrs面による反射を考える。例えばp=1a、q=3aとして、下図の様にrやsを様々に変えてみる。
上左図はsを4aに固定してrを−∞・a〜∞・aまで変化させたとき、上右図はrを2aに固定してsを−∞・a〜∞・aまで変化させたときにできる様々な反射面の様子を表しています。
これらの図から明らかなようにp=1a、q=3aを固定して、rとsを任意に動かしたときできる様々な反射面は、結局ベクトルOAが表す直線を含んだ面をベクトルOAの周りに回転させたものになる。
それらの様々な反射面でブラッグ反射されたX線が上記の写真看板上のどこに干渉斑点をつくるか計算してみる。
それは
によって計算できる。
そのとき前述の図を詳しく見当すれば明らかなように、ベクトルOAを中止として回転する面のブラッグ反射X線が写真乾板に交わる点の(x,y)座標は、上記の式をsまたはrを媒介変数とする関数と見なしてグラフを描いてみればよい。このとき、例えばsを媒介変数としたときrは任意の値に変化させてもグラフは同じになることに注意してください。
pとqの値を様々変えたグラフを描いてみると下図のようになる。この図は3.(3)3.で説明した例と同じ単純立方格子結晶からz軸の正方向へD=3.5cm離して設置した写真看板上に現れるものです。ただし乾板の裏側から見ている。
例えば、sを固定してr→∞にすると反射面はベクトルOAを含みxz平面に垂直な面になります。その場合には
となり、確かにグラフの位置になります。
全く同様にして、各反射面を規定するrとsの値で定まるベクトルOBを回転軸とする反射面によって反射されたX線が写真看板上に生じる干渉斑点の(x,y)座標のグラフを描くことができる。そのときrとsを様々変えると様々な楕円が描ける。そのグラフは下図の様になる。
このとき、例えば4.(2)1.で最初に考えた反射面
すなわち1113面によるブラッグ反射X線が写真乾板上につくる斑点の位置は、前記二つのグラフの(p,0,q)=(1,0,1)の楕円と(0,r,s)=(0,1,3)の楕円の交点となります。
全く同様にして、(p,0,q)の楕円と(0,r,s)の楕円の交点がpqrs面のブラッグ反射X線の干渉斑点です。これらの交点から生じる斑点群が、まさにラウエの理論で現れた干渉斑点群です。
[補足説明3]
その当たりの対応関係をW.L.Braggは前記論文のp51で説明しています。この論文の最後に掲げられている図がそのことを端的に示しています。
また、文献1.の第12章でも説明されていますので、pdfファイルをダウンロードされてご覧下さい。
[メカニズム1]
X線管から放射されるX線は1.(4)〜(5)で述べたように在る最短波長を下限とした連続X線と特性X線からなります。そのとき長波長側もその強度が次第に小さくなるので、実際にはある波長範囲のX線のみが結晶に入射することになる。
さらに、写真乾板に生じる干渉斑点は、それらの入射X線の内でさらに特定の波長が選択されている。そのため写真乾板上には在る波長範囲の斑点のみが現れる。
だから、斑点の強度は入射X線のスペクトル分布強度に依存する。
[メカニズム2]
4.(2)1.で説明したように、ブラッグ反射面上での原子の分布密度は面ごとに変化している。そのため分布密度の多・少が干渉斑点の強度に関係する。
[メカニズム3]
さらに、同じ立法格子でも単純立法格子、体心立方格子、面心立方格子の違いにより、同一方向を向く面同士の間で反射波の位相差が半波長になって消し合う場合が生じる。そのために斑点が現れたり現れなかったりする。
前項で説明した楕円の交点に干渉斑点が現れる・現れないを解析して結晶構造の詳細を解読することができる。
W.L.Braggは下記論文2.でラウエ写真の斑点の強弱からKClやNaClなどの構造を明らかにしています。
また、W.H.Braggが開発したX線スベクトロメーターを利用することで、ブラッグ父子はブラッグ反射した特性スペクトル線の現れ方の違いから、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ダイヤモンド、方解石、閃亜鉛鉱、蛍石、黄鉄鉱などの結晶構造を次々と解明していきます。ブラック父子のそれらの研究成果は下記論文をご覧下さい。
これらは Proceedings of the Royal Society of London の公式サイト
http://rspa.royalsocietypublishing.org/content/by/year
や、Philosophical Transaction の公式サイト
http://rstl.royalsocietypublishing.org/content/by/year
から全て無料でダウンロードできます。
[補足説明4]
このX線結晶解析の方法は、やがてキニン、ストリキニン、インシュリン、デオキシリボ核酸(DNA)、ミオグロビン、ヘモグロビン、等々・・・の生体分子、生体高分子の構造を明らかにするのに絶大な威力を発揮します。そして生命の神秘を解き明かす原動力になっていく。
“ラウエの条件式”と“ブラッグの条件式”の同等性について、結晶が“等軸晶系(立法晶系)”(等しい3軸が直交)の場合については4.(2)1.ですでに証明しています。それを今一度繰り返すと下記の様になる。
[証明]
4.(2)1.で説明したようにブラッグ反射面の垂線の方向余弦が(l,m,n)の場合、そこでのpqrs値を用いると
と表せた。
そのときのブラッグ反射が起こる方向の単位ベクトルsの方向余弦と、そのとき選択される波長λは、pqrs値を用いると
となった。
一方ラウエの理論によると、単純立方格子によってラウエ斑点のできる方向の余弦sと選択波長λは“ラウエ指数”(h1,h2,h3)を用いて表すと
となる。
両者を比較すると
が対応しているので
の方程式を解けば互いに対応づけることができる。
任意の整数の組(h1,h2,h3)に対して、上記の方程式を解けば整数の組pqrsを決める事ができる。このとき未知数がpqrsの4個に対して式3個だからpqrsの解の組は一意に定まらないように見えるが、(h1,h2,h3)を互いに素な最小整数の組に約分しておけば一意に定まります。
また逆に任意の整数値の組pqrsで定まる面に対応する整数値(h1,h2,h3)は必ず存在する。
依ってラウエ斑点とブラッグ反射による斑点は全く同じ事柄を示している。
[証明終わり]
この対応関係によって前記のブラッグ反射面に垂直な単位ベクトルeの方向余弦を書き直すと
となる。
ここでは“等軸晶系(立法晶系)”を考えているので、反射面に垂直な単位ベクトルeの方向余弦(l,m,n)と、“面指数(ミラー指数)”(ijk)のブラッグ反射面との関係は下図の様になる。
原点Oから反射面におろした垂線の足をHとし、距離OH=dとする。そのとき原点OからHを向く単位ベクトルがeである。反射面上の任意の点Pの位置ベクトルをrとすると、ベクトルの内積の定義より (e・r)=d だから lx+my+nz=d が成り立つ。これが格子面を表す方程式です。
この式でy=z=0、z=x=0、x=y=0を次々に代入して得られる x=d/l、y=d/m、z=d/n は、格子面がxyz軸を切る点の座標値です。一方、格子面の“面指数(ミラー指数)”(ijk)の定義から、格子面が座標軸を切る点は x=a/i、y=a/j、z=a/k である。これらの両式から l=id/a、m=jd/a、n=kd/a が得られる。すなわち
となる。
これより、格子面(前図青色着色面)を表す方程式は
となる。
また隣り合うブラッグ反射面の面間隔dは
となる。これをeの成分表示に代入すると
となる。これを前記のeの表現式と比較すると
となる。
ここで“面指数(ミラー指数)”(ijk)は互いに素な最小整数だったから
はラウエ指数の最大公約数です。このNを“反射の次数”と呼ぶことにすると、ラウエ指数を反射の次数で約したものが、ブラッグ反射面のミラー指数に等しいとなる。
[補足説明1]
上記Nがブラッグの条件式
の反射次数nに一致することは以下のようにして証明できる。
前項の議論を“斜方晶系”(等しくない三軸が直交)に拡張するのは容易です。繰り返しになりまずが、計算式で証明してみます。
今、下図の様に結晶格子の三稜に沿って直角座標軸xyzを取る。
ここで、3.(2)4.[補足説明3]で求めた“ラウエの条件式”(7)を、今の場合に適用すると
となる。ここで、s0は入射したX線の方向を表す単位ベクトル、sはラウエ斑点が生じる方向を表す単位ベクトルです。
今、ベクトルs0とsがx,y,z軸となす角をそれぞれ(α0,β0,γ0)と(α,β,γ)とすると、上式はO点原子によるs方向を向く散乱波とA、B、C点原子によるs方向を向く散乱波との光路差が、それぞれh1λ、h2λ、h3λであることを示している。つまり格子点A、B、Cで散乱する波は、Oで散乱する波よりも、それぞれh1λ、h2λ、h3λだけ光路が短い。光路差はバラバラで異なるが、それらの差はいずれも波長の整数倍なので、s方向に散乱された光は干渉して輝点となる。
図の例はh1=−4、h2=−3、h3=−2 の場合を示している。h1、h2、h3がいずれも負であるから、格子点A、B、Cで散乱する波は、Oで散乱する波よりも、それぞれ4λ、3λ、2λだけ光路が長いことになる。
まず最初に(7”)式から
が得られる。これはラウエの条件式を満足する方向の干渉斑点で選択されている波長を表している。
次に(7”)の両辺を二乗して和をとると
となる。ここで2θはベクトルs0とsがなす角度を表す。
一方、前記のラウエ斑点が生じる方向はある結晶面による反射と考えることができるが、その反射面がミラー指数(ijk)によって定まる面だということが、次のようにして証明できる。
いま、原点を通るそのような反射面上の点P(x,y,z)は二つのベクトルs0とsの先端からの等距離のはずです。そのため
が成り立つ。
この式はベクトル(s−s0)と原点を通る反射面上の任意の点Pの位置ベクトルrの内積が0で在ることを示しているが、これは、ベクトル(s−s0)がベクトルrに直交していることを示しているので、ベクトル(s−s0)は反射面に垂直であることを表している。つまり、今考えている面はブラッグ反射面となる。
ところでベクトル(s−s0)は“ラウエの条件式”(7”)を用いると
となるので、ベクトル(s−s0)の方向を向く単位ベクトルeは
となる。これは、いま考えているブラッグ反射面に垂直な単位ベクトルです。
ここで、今考えている原点を通るブラッグ反射面に平行で、しかもそれに最も近い隣接する反射面を考える。その面上の任意の点P’の位置ベクトルをr’=(x’,y’,z’)とする。この面と原点における反射面との距離をdとすると、ベクトルの内積の定義より
が成り立つ。これは原点に隣接するブラッグ反射面を表す方程式でもある。この方程式でy’=z’=0、z’=x’=0、x’=y’=0を次々と代入してみると、この面がx’,y’,z’軸を切る点の座標は
であることが解る。ところでこのブラッグ反射面が“面指数(ミラー指数)”(ijk)で定義される結晶面である場合
が成り立つ。
これらの両式を等値すると
が導ける。ところで、これはベクトル(h1/a1,h2/a2,h3/a3)とベクトル(i/a1,j/a2,k/a3)が同じ方向をむいており、さらにベクトル(h1/a1,h2/a2,h3/a3)の長さがベクトル(i/a1,j/a2,k/a3)の長さの
倍であることを表している。各ベクトルの成分表示が直交座標系におけるものであることに注意すると
が言える。
この関係式を前述の式に用いる。
となる。ここで
と置くことにすると
となり、“ブラッグの条件式”が得られる。
ここで、“ラウエ指数”(h1,h2,h3)と“ミラー数”(i,j,k)との間には
なる関係があるので、この場合にもラウエ指数を反射の次数で約したものが、ブラッグ反射面のミラー指数に等しいことが証明できた。
最も一般的な“三斜晶系”(等しくない三軸が互いに等しくない角を挟む)について証明する。
三斜晶系の場合には、単位格子は三っの稜ベクトルa1、a2、a3で表される平行六面体となる。そのとき三稜は互いに等しくない角を挟む。
ここでは、前章で用いたような直角座標の成分表示では不便なので、3.(2)4.で求めたベクトル公式
に立ち返る。s0は入射したX線の方向を表す単位ベクトル、sはラウエ斑点が生じる方向を表す単位ベクトルです。
今、ベクトルs0とsがベクトルa1、a2、a3となす角をそれぞれ(ξ0,η0,ζ0)と(ξ,η,ζ)とすると、上式はO点原子によるs方向を向く散乱波とA、B、C点原子によるs方向を向く散乱波との光路差が、それぞれh1λ、h2λ、h3λであることを示している。つまり格子点A、B、Cで散乱する波は、Oで散乱する波よりも、それぞれh1λ、h2λ、h3λだけ光路が短い。
次図はh1=−4、h2=−3、h3=−2 の場合を示しているのだが、h1、h2、h3がいずれも負であるので、格子点A、B、Cで散乱する波は、Oで散乱する波よりも、それぞれ4λ、3λ、2λだけ光路が長いことになる。
ここで、OA、OB、OCの延長上にあって、OA’=h2h3a1、OB’=h3h1a2、OC’=h2h3a3 を満たす三つの格子点A’、B’、C’を考える。上図の例ではh1=−4、h2=−3、h3=−2 だからh2h3a1=6a1、h3h1a2=8a2、h1h2a3=12a3 となる。
A、B、C点と同様に考えると、このA’、B’、C’点で散乱する波はO点で散乱する波よりも、それぞれ OA’(cosξ−cosξ0)=h2h3a1(cosξ−cosξ0)、OB’(cosη−cosη0)=h3h1a2(cosη−cosη0)、OC’(cosζ−cosζ0)=h2h3a3(cosζ−cosζ0) だけ光路が短い(図の例では長い)。
ところが前記の式を用いると
となるので、この三つの光路差は全てh1h2h3λに等しい。それゆえに、A’、B’、C’点で散乱する三つの波には光路差が無いことになる。
ここで4.(1)1.で述べた注意を思いだすと、これらの散乱波は全てA’B’C’がつくる平面(A’B’、B’C’、C’A’の三辺を含む面)で反射した波と見なすことができる。しかも、この散乱波はラウエの条件式を満たしている。
ところで、A’B’C’面の“面指数(ミラー指数)”(ijk)は、その定義より
となるので、
と置けて
が言える。
つまり、一般の格子結晶の場合にもラウエ指数を反射の次数で約したものが、ブラッグ反射面のミラー指数に等しい。こうして“ラウエの条件式”と“ブラッグの条件式”の同等性が証明できた。
[補足説明1]
ミラー指数が(ijk)であるような格子面群だけを考えると、O点に隣接する格子点A、B、Cは、O点を通る格子面から、それぞれi、j、k枚目の格子面上にある。下図の例は(i,j,k)=(4,3,2)の場合。
それゆえに、最近接格子面の点A”、B”、C”で散乱した波の、O点での散乱波に対する光路差はh1λ/i、h2λ/j、h3λ/kとなる。ところでA”、B”、C”で散乱した波は全て同一のブラッグ反射面で反射した波とみなせるので、“ブラッグの条件式”からこれらの光路差は全てnλに等しい。そうなることは4.(1)1.を参照されたし。
従って
となるので、上記Nがブラッグの条件式
の反射次数nに一致することが言える。
[補足説明2]
ミラー指数が(ijk)が小さな面が、その面に含まれる格子点の密度が大きくなる。また、小さなミラー指数で指定される面が結晶の自然の境界面として現れる。
ここでは、ベクトル解析に依って証明してみる。結晶を、a1、a2、a3なる三つの基本ベクトルで決定される空間格子とする。この格子を今後“実格子”呼ぶことにする。
これに対して、次の定義で導入される三つのベクトルb1、b2、b3を基本ベクトルとする空間格子を考える。これを“Ewaldの逆格子”と呼ぶことにする。
定義から明らかなようにb1はa2、a3に、b2はa3、a1に、b3はa1、a2に垂直である。またそれらの大きさは(ai・bi)=1(i=1,2,3)によって定まる。例えば六方格子の実格子と逆格子の関係はこのようになる。
“実格子”から“Ewaldの逆格子”を求める計算はかなり面倒です。その詳細は別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分の関係」2.(2)[補足説明1]を参照して下さい。
別稿「ベクトルの内積と外積の成分表示」で説明した内積と外積の意味と、(a1・[a2×a3])等々・・・は三つの基本ベクトルa1、a2、a3を三稜とする平行六面体の体積であることを思い出せば、それぞれの基本ベクトルは他方の基本ベクトルにより
の様に表せる。
これらの関係を用いると実格子点の位置を表すベクトル
は以下の様に表せる。
全く同様にして、逆格子点の位置ベクトルを表すベクトル
は以下の様に表せる。
が言える。
ここで以下の二つの定理が成り立つ。
[定理1]
逆格子点の位置を示す
なる位置ベクトルを考えると、このベクトルhは、もとの実格子における“ミラー指数”(h1h2h3)の格子面に垂直である。
[証明]
“ミラー指数”(h1h2h3)なる実格子面はミラー指数の定義により結晶軸と(a1/h1,a2/h2,a3/h3)なる点で交わる。従って
なる二つのベクトルはこの面に含まれる。
そのとき、これらのベクトルとベクトルhとの内積を取ると
となるので、ベクトルhが“ミラー指数”(h1h2h3)なる実格子面に垂直であることが言える。
[証明終わり]
[定理2]
h1,h2,h3が互いに素ならず公約数を持つときには、これをnとする。そのとき
とすると、“ミラー指数”(ijk)で与えられる実格子面の面間隔dは
で与えられる。
[証明]
eを原点よりベクトルhの方向に取った単位ベクトルとすると、この方向に垂直な平面は、その平面上での位置ベクトルをrとすると以下のベクトル式を満足する。
dは言うまでもなく、原点からこの面に下した垂線の長さである。このような格子面の内で最小のdを有するものを求めれば、それが“ミラー指数”(ijk)の実格子面です。
いま、一つの実格子点を
なる位置ベクトルで表すと、この点を通ってベクトルhに垂直な格子面へ原点より下した垂線の長さdは
で与えられる。ここでi,j,kは互いに素である。従ってl,m,nを適当に取るとき、括弧内は任意の整数を表し得る。0ならざる最小の整数は1であるから
となる。
[証明終わり]
“ラウエの条件式”を“Ewaldの逆格子”を用いて解釈し直すと下記のようになる。
ここでh1,h2,h3は整数値を取るラウエ指数ですが、それと逆格子の基本ベクトルb1、b2、b3からつくられるベクトルh=h1b1+h2b2+h3b3は逆格子点の位置ベクトルを示している。そのため、上式はベクトルs/λとベクトルs0/λの差が原点Oから逆格子点Mへ向かうベクトル h=h1b1+h2b2+h3b3 に等しい事を表している。
このとき、逆格子の一つを原点Oに取り、それから−s0/λなるベクトルの先端をL(“伝播点”と呼ぶ)とする。Lを中心として半径1/λの球面(“Ewald球”と呼ぶ)を描く。
一般にこの球面は原点以外の逆格子点と交わらないが、特別の場合としてこの球面が原点以外の逆格子点Mと交われば、原点よりその点Mへ向かうベクトルがhとなる。その場合前記の“ラウエの条件式”を満たした反射がベクトルsの方向へ起こり、そのとき選択されている波長λはEwald球の半径の逆数となる。
結晶格子に対する入射方向s0が定まっていればEwald球の中心点Lは入射光線の波長λの変化と共に下図ピンク色矢印に沿って移動する。そのとき、新たな“伝播点”L’、L”、・・・を中心とした“Ewald球”が交わる逆格子点M’,M”,・・・、その方向s’,s”,・・・、干渉波長λ’,λ”,・・・が新たに選択しなおされる。
[定理1]により、ベクトルhは“ミラー指数”(h1h2h3)なる実格子面に垂直であったから、図から明らかなように、ベクトルs0とベクトルsはちょうど“ミラー指数”(h1h2h3)なる実格子面による鏡面反射の入射ベクトルと反射ベクトルを表している。
また[定理2]と、図から明らかなように
となり、“ブラッグの条件式”が得られる。ここでのdは、“ミラー指数”(ijk)なる実格子面の面間隔です。
このようにしてラウエ理論とブラッグ理論の同等性が証明される。
ラウエ理論とブラッグ理論の簡単な説明が高校物理で出てきますが、ここを生徒に説明するとき私自身いつも納得できていないと感じる所でした。ここでは高校生でも理解できるようにできるだけ丁寧に説明しました。中に用いられている数学も高校数学レベルです。
インターネットの発達により、今日X線回折の初期論文の多くを、我々の様なアマチュアでも手に入れて読むことができます。また文献1、3、4などの古典的・基礎的文献のpdfファイルも無料で入手可能です。適宜ダウンロードされてご覧下さい。