HOME 平行移動)()()()() 2.クリストッフェル記号)()()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()()()() 5.文献

平行移動とリーマン幾何学

 本稿は多田知記氏の文献1.§12〜§23 のほぼそのままの引用です。本稿では“平行移動”の概念によってクリストッフェル記号が導入され、共変微分が説明されています。おそらく、レヴィ=チヴィタの説明(イタリア語なので私には読めませんが)もかくの如くなのでしょう。多田氏の説明はとても解りやすいので紹介します。ただし、さらに解りやすくなるように、章・節番号を振り直して題目を付け直し、内容も少し改変しています。

1.平行移動
 (1)平行移動とは何か
 (2)曲線座標上でのベクトルの平行移動
 (3)変分ベクトルCの定義
 (4)平行移動の例
 (5)共変ベクトルの平行移動によるクリストッフェル記号の定義

2.クリストッフェル記号(接続係数)
 (1)曲線座標間の座標変換とテイラーの定理
 (2)クリストッフェル記号の座標変換式
 (3)クリストッフェル記号の対称性
 (4)クリストッフェル記号と基本計量テンソルの関係

3.反変ベクトルの平行移動

4.共変微分
 (1)ベクトルの共変微分係数
 (2)ベクトルの共変微分係数の座標変換則
 (3)テンソルの共変微分係数
 (4)テンソルの共変微分係数の座標変換則
 (5)計量テンソルの共変微分

5.参考文献

補足説明
 本稿は、別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」4.章と対比しながら読まれる事を勧めます。そこでは、本稿と異なって“基底ベクトルの変化の様子”からクリストッフェル記号共変微分が導入され、本稿とは全く異なった観点で論じられています。
 
 さらに補足しますと、上記別稿の前半部1.章〜3.章の内容は、本稿でもそのまま成り立ちます。多田氏の文献1.では、その前半部§1〜§11で、その事が展開されているのですが、その部分の本稿への引用は差し控えています。本稿でその部分が必要になった場合は、上記別稿の前半部1.章〜3.章から引用します。
 
 もう一度強調しますが、本稿ではレヴィ=チヴィタの1917年論文の意図にそって、上記別稿の後半部4.章に相当する部分が“平行移動”という全く別の見方で論じられています。

 

HOME 平行移動(1)()()()() 2.クリストッフェル記号)()()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()()()() 5.文献

1.平行移動

)平行移動とは何か





 

HOME 平行移動)(2)()()() 2.クリストッフェル記号)()()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()()()() 5.文献

(2)曲線座標上でのベクトルの平行移動




 

HOME 平行移動)()(3)()() 2.クリストッフェル記号)()()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()()()() 5.文献

(3)変分ベクトルCの定義



 

HOME 平行移動)()()(4)() 2.クリストッフェル記号)()()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()()()() 5.文献

(4)平行移動の例









補足説明
 次の段落で、“共変ベクトル”“反変ベクトル”がいきなり出てきて面食らわれるかも知れません。これらの意味については別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」2.をご覧下さい。
 “共変ベクトル”の場合は成分表示の添字を右下に、“反変ベクトル”の場合は成分表示の添字を右上に記すことになっています。

 

HOME 平行移動)()()()(5) 2.クリストッフェル記号)()()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()()()() 5.文献

(5)共変ベクトルの平行移動によるクリストッフェル記号の定義




補足説明1
 ここで、いきなり“クリストッフェル記号”が出てきますが、難しく考えないで下さい。前記のそのような呼び方にしただけです。 Γλμν には3個の添字μ、ν、λがありますが、 μΔν・Aλ(x) に関係する係数である事を明示する為に書き添えられています。
 2次元の場合は2×2×2=8組ですみますが、4次元の場合は4×4×4=64組 の係数が必要になりますので係数Γλμν は64個在ります。式中の係数 Γλμν の添字λμν単にそれぞれを区別するために付けてあるだけです。
 
 ここでは“平行移動の概念”を用いて導入されているので、別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」4.(4)の導入法と同じでは無いのですが、3つの添字で区別する考え方は同じです。

補足説明2
 別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」4.(4)では、基底ベクトルがリーマン空間の中を移動したとき、“規定ベクトルの変化量を表す係数”として、クリストッフェル記号が導入された。
 一方ここでは、リーマン空間の中で1つのベクトルを“平行移動したとき、そのベクトルが同じになるために必要な“変分ベクトルCを表す係数”として導入された。
 クリストッフェル記号の導入法は全く異なりますが、両者は同じものであることがやがて解ります。
 
 ここでは、ベクトルの“反変”成分ではなくて、“共変”成分を用いてクリストッフェル記号が定義されていることに注意して下さい。その様にしたのは、上記別稿のやり方での定義したクリストッフェル記号と一致させるためです。
 そのことは第3章“反変ベクトル平行移動”をご覧頂いた後に、上記別稿でのクリストッフェル記号の計量テンソル表現と比較してみられれば了解して頂けます。

 

HOME 平行移動)()()()() 2.クリストッフェル記号(1)()()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()()()() 5.文献

2.クリストッフェル記号(接続係数)

)曲線座標間の座標変換とテイラーの定理





 

HOME 平行移動)()()()() 2.クリストッフェル記号)(2)()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()()()() 5.文献

(2)クリストッフェル記号の座標変換公式

補足説明1
 以下では反変ベクトルではなく、共変ベクトルの座標変換則から出発する。共変ベクトルを用いるのは、本稿1.(5)におけるクリストッフェル記号の定義共変ベクトルでなされているからです。このことについては1.(5)[補足説明2]もご覧下さい。
 
 共変ベクトルの座標変換は反変ベクトルの座標変換の逆変換の変換係数で変換される事を思い出して下さい。このことは別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」3.(1)〜(3)を復習されたし。ただし、そこの座標変換係数を表す文字Aと、本稿でのベクトル成分を表す文字Aを混同しないで下さい。


補足説明2
 以下の(D)、(E)式が成り立つことは、別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」3.(1)〜(3)を参照して下さい。









補足説明3]
 ここでは、“平行移動”を表現する為の係数として“クリストッフェル記号”を導入し、その“平行移動”のときに成り立たねばならない性質から、クリストッフェル記号の“座標変換公式”が導かれた。つまり、ここまでの話には、“クリストッフェル記号”(接続係数)とリーマン空間の“基本計量テンソル”との関係はどこにも用いられていません。
 すなわち、平行移動の概念だけから“クリストッフェル記号”(接続係数)を導入し、平行移動の概念だけから“クリストッフェル記号”の座標変換則が導かれたのです。
 
 この座標変換公式は、平行移動を用いない違ったやり方で求めることもできます。別稿「微分幾何学3(曲面幾何学)」3.(3)1.や、別稿「テンソル解析学(絶対微分学)」6.(2)5.などを参照されたし。そこでは、別なやり方でクリストッフェル記号を定義し、それと基本計量テンソルとの関係式を導いてから、その関係式中の基本計量テンソルに対する座標変換公式を利用してクリストッフェル記号の座標変換公式を求めています。

 

HOME 平行移動)()()()() 2.クリストッフェル記号)()(3)() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()()()() 5.文献

(3)クリストッフェル記号の対称性


例えば、別稿「時空の曲がりと測地線(測地線方程式とは何か)」2.(6) など参照。

例えば、内山龍雄「相対性理論」第X章“一般相対性理論”など参照。


















 

HOME 平行移動)()()()() 2.クリストッフェル記号)()()(4) 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()()()() 5.文献

(4)クリストッフェル記号と基本計量テンソルの関係 (平行移動の方法による導出)

補足説明1
 ここで、“クリストッフェル記号”“リーマン空間”“基本計量テンソル”gijijとの関係を求めます。
 ここで基本計量テンソルがいきなり出てきますが(最初の[補足説明]で説明したように)、ベクトルの反変成分共変成分及びその間を取り持つ基本計量テンソルの定義とその性質に関しては、別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」1.〜3.章の説明がそのまま成り立ちます。そのため、そこの結論を引用して以下の議論を進めます。

補足説明2
 ここで共変成分の平行移動式を用いているのは、もともと1.(5)で導入した“クリストッフェル記号”Γλμνの定義式は“共変成分の平行移動”で定義したからです。
 何故共変成分で定義したのかと言いますと、別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」4.(4)で説明している
“基底ベクトルの変化の様子”から定義したクリストッフェル記号Γλμνと一致させるためです。
このことは第3章をご覧になれば納得して頂けます。

補足説明3
 次で初めてリーマン空間の各点に於ける“基本計量テンソル”gμνとgμνが登場します。その意味は別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」2.(4)〜(6)で説明しています。
 最初[補足説明]で注意した様に、上記別稿の前半部1.章〜3.章は本稿でもそのまま成り立ちますので、そこの結論をそのまま利用します。
 
 “基本計量テンソル”gμνを用いた、下記(2)式が成り立つことは、別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」2.(5)を復習して下さい。
 そこで示したように、在る点のベクトルの長さの2乗はその点でのベクトルの共変成分の内積で表されるのでした。もちろんここでいう内積とはその点での基本計量テンソルを間に挟んで縮約する操作を含みます。 












補足説明4
 上式リーマン幾何学で最も重要な関係式です。また、ここで導いた(5)、(6)式基本計量テンソルが満たす重要な関係式で“リッチの補助定理”といい、4.(5)で用います。これらの関係式は、いずれも“平行移動の方法”を用いて導かれたことに注意して下さい。
 
 上記関係式は、別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」4.(4)1.や、別稿「テンソル解析学(絶対微分学)」6.(2)でも説明していますが、ここと異なる方法で基底ベクトルの変化の定義式から導かれています。

 

HOME 平行移動)()()()() 2.クリストッフェル記号)()()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()()()() 5.文献

3.反変ベクトルの平行移動

補足説明1
 ここで、以下の関係式を用いる。

 これらはリーマン空間の基本計量テンソルを乗じて縮約することで、“共変成分”“反変成分”に変換できる事を示している。詳細は別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」2.(4)を参照して下さい。






 ここのやり方は、別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」4.(4)4.で用いた考え方と同じです。
 そこでは“基底ベクトル”の係数から“双対基底ベクトル”に対する係数を求めたのですが、ここでは“共変ベクトル”の係数から“反変ベクトル”に対する係数を求めた。

補足説明2
 この章の結論をご覧頂ければ、1.(5)[補足説明2]で注意したこと、すなわちクリストッフェル記号の定義に、反変ベクトルではなくて、共変ベクトルを用いた理由がお解りになったと思います。共変ベクトルを用いたのは、それ以前(1869年)にクリストッフェルによって定義されていたクリストッフェル記号の意味と同じになるようにするためです。
 
 つまり、元々のクリストッフェル記号は基底ベクトルの変化を表す係数”として導入されたのですが、本稿で説明してきたように、“平行移動した共変ベクトルにもどすための変分ベクトルを表す係数”と同じなのです。
 
 これは1916年にレヴィ=チヴィタが気づいたことで、これはリーマン空間の性質を論じるのに新しい見方を提供した。

補足説明3
 クリストッフェル記号(接続係数)Γ平行移動への関わり方が、共変ベクトルの場合と反変ベクトルの場合でなぜ異なるのかは解りにくい所です。
 別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」4.(4)1.では基底ベクトルの変化の様子からクリストッフェル記号(接続係数)が導入されているのですが、その場合の双対基底ベクトルでの定義式4.(4)4.との違いを、ここの(1)式と(2)式の違いと比較検討してみて下さい。上記の違いの意味が明瞭になると思います。

 

HOME 平行移動)()()()() 2.クリストッフェル記号)()()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分(1)()()()() 5.文献

4.共変微分

)ベクトルの共変微分係数

.ユークリッド空間での微分係数


 

.共変ベクトルの共変微分係数


補足説明
 上記の(x+Δx)は、1.(2)〜(3)で出てきたベクトルAに対するベクトルBの成分では在りません。ここのベクトル成分A(x+Δx)はリーマン空間内に分布している任意のベクトル場A(場所と共に変化)の場所 x+Δx における成分値を意味します。
 1.(2)〜(3)で出てきたBi≡A(x+Δx)は、場所 x におけるベクトルAと同じ成分Aを x+Δx の位置で持つベクトルの事でした。ここの性分A(x+Δx)はそこのベクトルBの成分とは関係ありません。



共変微分係数”の表現方法については別稿「テンソル解析(絶対微分学」6.(3)1.[補足説明]を参照されたし。

 

.反変ベクトルの共変微分係数



 

4.補足

補足説明1

 ここでは“平行移動”の概念を仲介にして共変微分が導入されていることに注意して下さい。
 
 “基底ベクトル”の変化を仲介にして共変微分を導入した別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」4.(5)34.(5)5.とは導入方法が異なりますが、平行移動の概念を仲介にしても同様な結論が得られるということです。

補足説明2

 

HOME 平行移動)()()()() 2.クリストッフェル記号)()()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)(2)()()() 5.文献

(2)ベクトルの共変微分係数の座標変換則







補足説明
 共変微分係数がソンソルとなることの証明法は、別稿「微分幾何学(曲面幾何学)」3.(3)などで用いた方法と同じです。

 

HOME 平行移動)()()()() 2.クリストッフェル記号)()()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()(3)()() 5.文献

(3)テンソルの共変微分係数












 

HOME 平行移動)()()()() 2.クリストッフェル記号)()()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()()(4)() 5.文献

(4)テンソルの共変微分係数の座標変換則




 

HOME 平行移動)()()()() 2.クリストッフェル記号)()()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()()()(5) 5.文献

(5)計量テンソルの共変微分



 

HOME 平行移動)()()()() 2.クリストッフェル記号)()()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()()()() 5.文献

5.参考文献

この稿を作るに当たって、下記文献を参考にしました。感謝!

  1. 多田知記著「新版 相対性理論への数学的第一歩(共変微分の易しい説明)」プレアデス出版(2011年刊)§12〜§23
  2. Levi-Civita, Tullio (1917), “Nozione di parallelismo in una varieta qualunque e consequente specificazione geometrica della curvatura Riemanniana”, Rend. Circ. Mat. Palermo 42: 173-204
    “リーマン曲率の多様性とその結果としての幾何学的仕様における平行性の概念”
  3. E.B. Christoffel, “Ueber die Transformation der homogenen Differentialausdru¨cke zweiten Grades”,
     Journal fu¨r die reine und angewandte Mathematik 70: p46〜70, 1869年
    “2次微分形式の変換について”
HOME 1.平行移動)()()()() 2.クリストッフェル記号)()()() 3.反変ベクトル平行移動 4.共変微分)()()()() 5.文献