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独り言1

 長々と流体力学関係のHPを作ってきましたが、このことを書き始めた切っ掛けはカルマン渦列の安定配列のメカニズムを説明したいと思ったことでした。カルマン渦列はとても有名ですが、安定配列の決定理由をわかりやすく解説した本やHPは少ない。若い頃読んだ友近先生の「流体力学」にそれが解説されていたのを記憶していましたので、いつかそれを解りやすく紹介したいと思っていました。
 しかし「カルマン渦列(動的安定性解析)」をいざ作り始めて見ると渦とは何か、流体力学とは何かが自分自身良く解っていないことを痛感しましたので、若い頃読んだ流体力学関係の本を読み直すことにしました。結構時間がかかりましたが、読んでいる内に流体力学のやり方がやっと解ってきました。その過程でラグランジュの渦定理こそ古典的な流体力学理論の中心をなすものだと思えてきました。それでカルマン渦列を説明する為の準備として作ったのが「二次元・非圧縮性・完全流体の力学(ラグランジュの渦定理とは何か)」です。
 その準備が整ったのでやっと「カルマン渦列(動的安定性解析)」を完成できました。また、この過程で必要になったので「グリーンの定理[積分定理の王]」を作りました。
 カルマン渦列を作っているときにカルマンの「飛行の理論」を読み直して見ると、どうもカルマンは渦列の配列よりも渦抵抗のメカニズムを解明したことを自慢したかったようです。しかし、このことに重きを置いて説明している流体力学の教科書はほとんどなくて、大半が付け足り的にカルマンの得た結果を紹介しているだけです。
 良く考えれば流体の抵抗メカニズムを解明することこそ流体力学の最大の課題なのに、渦抵抗に関する説明がちゃんとなされていないのはいかにも残念です。それでついでに友近先生の本に解説されているその部分をもう少し解りやすく説明しようと思い立ち「渦抵抗(カルマン渦列と抗力)」を作りました。これを作るのは結構難儀しましたが、やっと自分なりに理解できたような気がします。

 

 せっかく流体力学を勉強し直したのだから、若い頃からの最大の疑問、アスペクト比と揚力/誘導抗力比の関係を説明するHPも作ろうと思い立ちました。
 それでカルマン渦列の次に「人力飛行機を実現する原理(アスペクト比と揚力/誘導抗力比)」を作り始めたのですが、初期の流体力学や翼理論に関係した本を調べていく内に、翼理論を理解するには歴史的な説明も是非必要だと思えてきました。もともと「人力飛行機を実現する原理」の中の一章として作り始めたのが「翼理論の芽生え」です。ニュートンから始まってリリエンタール、ラングレー、ライト兄弟と調べながら書いて行く内にどんどんページ数がふくれあがってきて、「人力飛行機を実現する原理」の中に収まり切れなくなったので、その部分だけを切り離して「翼理論の芽生え(リリエンタール、ラングレー、ライト兄弟の飛行)」としました。
 しかし、これも作っている内に、その中のライト兄弟の部分、特にライト・フライヤー号のエンジンの話がどんどん脹れあがってきたので、この部分だけを切り離して別ページ「ライト・フライヤー号(1903年)のエンジン」としました。
 それで、やっと元の「人力飛行機を実現する原理」の続きに取りかかれたのですが、これが思いの外厄介で二次元翼理論を説明する部分のページ数がだんだん脹れあがってきました。なぜふくれあがったかと言いますと、等角写像の説明に図が有れば解りやすいと思ったからです。特に写像図や流線図が有れば理解しやすいので何としても沢山図を入れたかったのです。
 しかしこの部分を作るのに以外と手間取りました。図はMathematicaのHomeEdition8を用いて描いたのですが、迎え角を持った翼周りの流線図をどうやって描いたらよいか解らなくて、描く方法を見つけるのに時間がかかったからです。
 以前は大学在学中の娘の名義で買ったMathematicaのStudentEditionを使っていたのですが、パソコンを作り替えたのでMathematicaを再インストールしようとしてパスワードリクエストすると、娘がすでに就職していたためにStudentライセンスが切れていて再インストールできないことが解りました。Mathematicaの一般バージョンは30万円近くして我々アマチュアにはとても手が出ないと思っていたのですが、HomeEditionが7万円程度で入手できることが解って購入しました。それでやっと図が描けて今はとても重宝しています。
 二次元翼理論を作っている過程で、「運動量モーメントの定理(角運動量の定理)」」と「複素数の積分(ブラジウスの公式)」が必要になったのでこれらを途中で作ったのですが、このページ数がまた増えてきたので結局この部分を切り離して別稿にしました。そんなこんなでやっとできたのが別稿「二次元翼理論(等角写像とジューコフスキーの仮定)」です。

 そして、やっと本題に帰って書き終えることができたのが「人力飛行機を実現する原理[プラントルの揚力線理論](アスペクト比と揚力/誘導抗力比)」です。プラントルの揚力線理論は三次元翼理論の初期における最も重要な成果ですが、我々素人にも解りやすく説明してくれる本はなかなか無い。後に書かれた本は新しい成果を付け加えなければいけない為か、時代が下がるにつれて古い成果の説明は簡略化されて要点のみがダシガラの様に説明されていているだけです。その最も面白いところの旨みというかエッセンスが伝わってこない。
 それに引き替え参考文献1.に挙げたプラントル・テーチェンスの本は、多くの図や写真を用いて新しい理論を何とかして旨く伝えようという熱意に満ちており、その説明も味わい深い。プラントルの真面目で謹厳実直な性格がうかがえます。驚くべきことは、この中に載っている流線図や写像図がきわめて正確に描かれている事です。今でこそコンピュータを用いた図形処理ソフトが利用できますが、プラントルの時代にここまで正確な図を描くには大変な労力を要したと思われます。今日の目から見ると古くさい面もありますが、結局一番古い文献が一番丁寧で解りやすい。

 この時代の成果を報告したゲッティンゲン航空研究所の技術報告書
Ergebnisse der Aerodynamischen Versuchsanstalt zu Gottingen ,T〜W; 著者:Ludwig Prandtl 、等
や、プラントルの揚力線理論の発表論文が収録されている
Vier Abhandlungen zur Hydrodynamik und Aerodynamik
はGoogleBooksで全文が見られます。
 ドイツ語なので読んだわけではないのですが、興味深い図が多く収録されているので図を見るだけでも当時の状況がうかがえます。是非御覧になられて下さい。

 

 ここで作ってきた流体力学に関する事柄は、昔大学を出て最初に勤めた職場で勉強したことに関係しています。以前に作った「潮汐力」、「海流(吹送流)の西岸強化」、「共振(共鳴)長崎湾のアビキ−」などはその頃学んだことが元になっています。
 その職場で津波などの長波を防ぐ防潮水門や防潮堤の研究に少しだけ関わった事など思い出します。その研究は有る重工業メーカーが東北地方の津波被害を想定して建設が計画されている工事を受注するための基礎研究だったのですが、それから40年後の2011年3月11日(金)、津波が現実のものとなったわけですから感慨深いものがあります。
 そのころ読んだ本の中にあったカルマンの渦列に関する説明が記憶の中にありましたので、いつかこれを解りやすく説明したいと永い間思っていました。退職して時間が取れたので、この一年間、閑を見つけては少しづつ流体力学を勉強し直しながら作りました。いろいろHPを作ってみて初めて、若い頃流体力学に対して何となく感じていたモヤモヤが晴れました。この歳になっても解らなかったことが理解できたことは嬉しい。

 飛行機の事に関係してですが、先日宮崎に就職している娘に会いに行った帰りに鹿児島県知覧町にある知覧特攻平和会館に行ってきました。知覧にはいつか行きたいと思っていたのですがやっと願いが叶いました。そこに展示してある遺品は涙無しには見られません。ただただ戦争のない平和な世界であることを強く思うのみです。
 それにしても昨年読んだ
マクスウェル・テイラー・ケネディ著「特攻(空母バンカーヒルと二人のカミカゼ−米軍兵士が見た沖縄特攻戦の真実)」ハート出版(2010年刊)
は高校生諸君に是非読んで欲しい本です。二人のカミカゼとは安則盛三中尉と小川清少尉のことで、彼らは鹿児島湾を挟んで知覧の対岸にある鹿屋から出撃しました。
 知覧で四式戦闘機「疾風(ハヤテ)」の本物を見たのですが、その大きさに驚きました。同じ場所にある三式戦闘機「飛燕」や「零戦」に比較して一回り大きいのです。この機体の来歴・詳細については良く知っていたのですが、これほど大きいとは正直意外でした。ハヤテは2千馬力級のエンジンを積んだ当時の大型最新鋭機だったのですね。

[2018年5月追記]
 知覧で保存されていた「飛燕」U型改試作17号機は2015年9月〜2016年10月に川崎重工業により修復復元されて、現在はかがみはら航空宇宙博物館で展示されています。

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