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複素数の積分(ブラジウスの公式)

複素積分を手短に復習する為のページです。別の稿で利用するために作りました。

1.複素積分

)複素関数の積分

 f(z)はある領域Dで連続であるとし、その領域内に2点A、Bをとり、これを一つの曲線Cで結ぶ。曲線Cをn等分し、AからBに向かって純にz1、z2、z3、・・・、zn-1をとり、これらの点で区切られる曲線の各部分の上に、任意の点ζ1、ζ2、・・・・、ζnをとる。そのとき次の和のことを積分路Cに沿ったf(z)の複素積分と呼ぶ。

このとき

と置けば、実数の積分の定義より

が成り立つことが言えるが、実数の線積分が有限確定値に収束することが証明できているので、上記の複素積分も有限確定値に収束することが証明できる。[証明は省略]

 積分路Cが点aを中心とする円の場合、以下の式が成り立つ。

)コーシーの定理

 次は複素積分について最も重要な定理です。

 f(z)が閉曲線Cで囲まれた領域SおよびCの上で正則であれば、常に次式が成り立つ。

これをコーシー(Cauchy)の定理(1825)という。正則であると言うことの意味については別稿のこちらを参照。

[証明]
 実積分に関する二次元のグリーンの定理から

が言える。
 これらの式と、f(z)が閉曲線Cの内部で正則だから、その領域内でコーシー・リーマンの関係式を満足することを用いると

となる。
[証明終わり]

コーシーの定理から直ちに次の定理が導ける。

 f(z)は領域Sで正則とし、S内の二点A、BをS内の二つの連続曲線C1、C2で結ぶとき、閉曲線C1+C2の内部に不正側点が無ければ

である。これは上下端A、Bを固定しておけば、積分路Cが不正側点を通らない限り連続的に変形しても、この積分値が変わらないことを意味している。

 閉曲線が以下の様なものであり、図の斜線の領域と境界曲線上C、C1でf(z)が正則であれば以下の関係式が成り立つ。

 Cの内部に他の閉曲線C1があり、f(z)はCとC1の上及びその中間の領域で正則である場合

Cの内部に有限個の閉曲線C1、C2、C3・・・・があっても同様のことがいえる。すなわち

ただし、CおよびCn(n=1,2,・・・)を回る方向は同一方向に取る。

)不定積分

 関数f(z)は領域Sで正則とし、z0をS内の定点、zをS内の任意点とし、z0とzをS内の連続曲線Cで結ぶ積分路に対して

を考えれば、これはz0、zを与えればCには依存しないからzのみの関数である。これを

と書いてf(z)の不定積分という。そのとき以下の定理が成り立つ。

 f(z)が領域Sで正則で、S内の任意の二点z0、zをとるとき、積分

は積分路に無関係な一定値をもち、F(z)はS内で一価正則関数であり、その導関数はf(z)に等しい。

[証明]

[証明終わり]

F(z)のことをf(z)の原始関数と言うが、原始関数が求まれば定積分の値を求めることができる。すなわち

 関数、f(z)、F(z)がSで正則で、Sの各点で

ならば、Sの二点a、bに対して

である。

 上記の結論を利用すれば

の値が計算できる。すなわち

特に積分路Cが閉曲線をなしてa=bの場合には

となる。この結論は、とても重要で色々なところでしばしば用います。

)コーシーの積分公式

次も重要な定理です。

 関数f(z)が閉曲線Cの上及びその内部において連続で、内部で正則な場合、C内部の任意の点zの値は

で表される。これをコーシー(Cauchy)の積分公式という。

[証明]

[証明終わり]

 とくにCがzを中心とする半径rの円の場合にはζ−z=reiθ、dζ=ireiθdθだから

となる。
 これらはC上のf(z)の値が与えられると、C内の任意点におけるf(z)の値が求められることを示すもので、いわゆる境界値問題の解を与える。

)Goursatの定理

コーシーの積分公式を使うと正則関数f(z)の導関数が簡単に求められる。

 ある領域Sにおいて正則な関数f(z)は、zが領域Sの境界C上の点でなければ、領域S内の全ての点で正則な逐次導関数を有し、それは

で与えられる。ただしζは積分変数でCの上を正の方向(反時計回り)に一周するものとする。これをグルサ(Goursat)の定理という。

[証明]

となるが、右辺第二積分において,z及びz+hからCに至る最短距離をρとすれば

となる。ここでCにおける|f(z)|の最大値をMとし、Cの周長をLとすれば

となる。そのため右辺第二項は

となるので

が言える。
 同様な論法で二次導関数を求めることができる。すなわち一次導関数を用いて

となる。ここでρを前と同じ意味に用いれば

となるので、Cにおける|f(z)|の最大値をMとし、Cの周長をLとすれば

であることが証明できる。これから前と同様にして

が得られる。
 ここで、さらに数学的帰納法を用いれば一般的に

が成り立つことが証明できる。
[証明終わり]

 これはf(z)が正則ならばf'(x)、f"(x)、・・・の連続性と正則性が保障されることを意味する。実関数ではf(x)が微分可能でもf'(x)、f"(x)、・・・の連続性や微分可能性は必ずしも保障されなかったことを思えば、f(z)の正則性はかなり強い条件であることが解る。
 また、上記のGoursatの定理を用いれば、1.(2)で述べたコーシーの定理の逆であるモレラの定理が証明できる。

)Moreraの定理

 関数f(z)がz平面上の領域S内において連続であり、かつS内の任意の閉曲線Cに対して常に

が成り立てば、f(z)は領域Sの内部の至る所で正則である。これをモレラ(Morera)の定理という。

[証明]

[証明終わり]

)留数の定理

 Cauchyの定理には、関数f(z)が領域Sで正則・有限であることが必要であったが、領域内に不正則点がある場合を考察する。

 関数f(z)は0<|z−z0|<Rで正則とする。z0では正則でも不正則でもよい。z0を中心とし半径r(0<r<R)の円周Cの上を性の向き(反時計回り)に一周する積分路に対し

のことをf(z)のz=z0における留数(residue)という。

 f(z)がz0点においても正則である場合は、その点の留数はRes=0である。
 留数の値を求めるのは一般に必ずしも容易ではないが、f(z)が特に

の形で、g(z)はz0も含めて|z−z0|<Rで正則ならば簡単に求めることができる。その場合f(z)はz0n位の極をもつといい、z0をf(z)のn位の極という。
n=1のときにはCauchyの積分公式によって

n=2、3、・・・のときにはGoursatの定理によって

となる。これによって極z0における留数を計算することができる。

 関数f(z)は閉曲線Cの内部に有限個の特異点z1、z2、・・・、znをもちそれ以外ではCの周および内部で正則であるとき、その各特異点における留数をR1、R2、・・・、Rnとすれば

となる。ただしCは正の向きに一週するものとする。これを留数の定理という。

[証明]

[証明終わり]

 

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2.ブラジウス(Blasius)の公式(1910年)

 以下の議論は、速度ポテンシャル流線関数についてコーシー・リーマンの関係式が成り立つ二次元・非圧縮性・完全流体の渦無し流についのてものです。
 二次元流体の中に任意断面を持った柱状体をとる。柱状体の単位長の部分をとり、それの側面をC’で表す。柱状体断面の周縁上の任意点を出発点として、反時計回りに周縁曲線の長さsを測るものとする。 周縁曲線の線素をdsとし、この表面に働く圧力をpとする。
 ここで、さらに定常流であるという条件を付け加える。その場合柱状体表面は流線に一致する。

)第一公式

 二次元・非圧縮性・完全流体の渦無し・定常流中に静止している物体を考える。そのとき、物体表面の閉曲線C’と物体を取り囲むように流体中に取った任意閉曲線Cの間に特異点が存在しないか、あるいはもし特異点が存在したとしても、その留数の和がゼロになる場合には、物体に働く共役複素合圧力X−iYは、物体を取り囲む任意閉曲線Cに沿って下記の積分を実行することで求まる。

ただし、(dw/dz)は物体を取り囲む様に取った流体中の任意平曲面C上の点z=x+iyにおける複素共役速度u−ivです。これをブラジウス(Blasius)の第一公式と言う。

.コーシーの定理を用いた証明

 柱状体の周囲をC’として、柱状体に働く圧力を合計した(X,Y)を求める。ただしXは合圧力のx成分、Yはy成分である。点zにおける圧力をpとする。また線積分は反時計回りに実施する。そのとき線分要素に立てた外向き法線のベクトル成分を(sinθ,cosθ)とすると


となる。[ベルヌーイの方程式流線方程式は別稿を参照]

 ここで物体表面C’が一つの流線となる条件が必要だが、物体表面C’が流線でありさえすれば流れが必ずしも定常である必要はない。例えば空間に固定された境界の場合、非定常な流れでも物体表面が流線となる条件は満足する。
 しかし、二次元・非圧縮性・完全流体の渦無し流の場合、非定常なBernoulliの方程式の定数は流体全体で共通だが時間の関数F(t)となり、さらに∂Φ/∂tの項が付け加わる。F(t)は閉曲線の線積分では消えてしまうので問題にならないが、(∂Φ/∂t)は一般に閉曲線上で場所の関数となる。ここでは(∂Φ/∂t)=0が成り立つことが必要なので、今後は定常的な流れに限って議論する。

 上記の結論を用いて共役複素合力X−iY(物体に働く圧力の合力の複素表示)を求めると

なお、ここで利用した複素速度ポテンシャルと共役複素速度については別稿で説明した。
 これは難しい事を言っているわけではない。実関数を用いたばあいに、物体に働く圧力の合計値は物体表面の圧力をベルヌーイの定理を用いて(1/2)ρ×(流速)2に変換してそれを物体表面に渡って積分すれば良いのだが、複素積分を用いる場合は(共役複素速度)2を用いればよいと言うだけです。
 複素積分を用いる威力は、次に述べるように、その積分路を物体外部の任意の平曲面(二次元だから閉曲線だが)に置き換えられると言うところにある。

 流体中に湧き出し点、流入点、渦度などが存在すると(dw/dz)2が∞となり、その点は特異点となる。しかし、その様なものが無い場合には、物体表線C’と物体を取り囲む様に流体中に設定された任意閉曲線Cの間の領域Sにおいて(dw/dz)2が有限・正則な関数であるとしてよい。
 上記の線積分は、物体表面の閉曲線C’に沿ってなされるものであったが、もし物体表面を構成する閉曲線C’と任意閉曲線Cで囲まれた領域Sにおいて関数(dw/dz)2が有限・正則であれば、1.(2)で証明したコーシーの定理によってC’についての積分をCに沿っての積分に置き換えることができる。

 同様に、領域S内に特異点が存在しても、それらの特異点における関数(dw/dz)2留数の和がゼロであれば1.(6)留数定理によって、やはり同じ様にCの周りの積分に置き変えることができる。
 そのため、ブラジウスの第一公式が証明されたことになる。
[証明終わり]

.運動量の定理を用いた証明

 上記の証明はコーシーの定理を用いるものでしたが、別稿「渦抵抗(カルマン渦列と抗力)」2.(3)で求めた運動量の定理を用いても導けます。
 二次元の運動量の定理は二次元・非圧縮生・完全流体の運動方程式から導かれたものでした。だからdiv=0を満たす必要があります。しかし、渦無し、つまりrot=0である必要はありませんし、領域内部に渦糸の様な特異点を含んでいても成り立ちます。また非定常な流れに対しても成り立ちます。
 一方コーシーの定理正則関数に対して成り立つものです。別稿「カルマン渦列(動的安定性解析)」3.(2)1.で説明したように正則関数であることの必要充分条件はコーシー・リーマンの微分方程式が成り立つことでした。このとき別稿「二次元・非圧縮性・完全流体の力学」4.(2)で説明したようにコーシー・リーマンの微分方程式こそ、二次元・非圧縮性・完全流体の渦無流速度ポテンシャル流線関数の間に成り立つ関係式です。
 そのため、元もと二次元の運動量定理と複素関数論のコーシーの定理から導かれたブラジウスの定理は密接な関係があります。しかし、次の[別証明]を見れば解るように運動量の定理はブラジウスの定理よりもより一般的に成り立つものです。運動量の定理に、物体が静止していることと、流れが渦無し、定常流である制限を付け加えるとブラジウスの定理を導けます。

[別証明]
 別稿「渦抵抗(カルマン渦列と抗力)」2.(3)に於いて次の様な運動量の定理を証明した。任意の動きをする物体が存在して、その物体を取り囲む境界面Cと物体を取り囲む境界面Cと、その間の領域Sに付いて成り立つ法則です。ある瞬間の時刻tにおける境界面は空間に対して固定されている。面C、Cの法線ベクトルは領域Sの外側を向くとする。
 内側の境界面Cは時間と共に動いていくが、運動量の定理を適用する各瞬間においては、境界面Cも空間に対して静止していると考える。物体表面の流体速度ベクトルが、その瞬間に静止している検査境界面Cを出入りする運動量に関係すると考えればよい。

 ただし、物体が動いている場合は物体表面の速度ベクトルと、物体表面に位置する流体の速度ベクトルは一致しない。物体表面に沿った方向の速度ベクトル成分だけの違いが存在する。今は粘性のない完全流体を考えているので、その様な物体表面の滑りが存在するとして良い。
 このとき次式で表される運動量定理が成り立つ。

ここでCについての積分値の符号がCの積分値のそれと反対になっているのは、dSに関する線積分はCと同じ反時計回りに実施するのですが、面の法線ベクトルが物体内部を向くからです。それぞれは次の意味を持つ。

[左辺]
 第1項 領域S内に時刻tにたまたま存在する物体の運動量の時間的変化
 第2項 境界Cを単位時間に通過する運動量成分
 第3項 境界Cを単位時間に通過する運動量成分
[右辺]
 第1項 領域S内の物体に働く体積力の合力
 第2項 境界Cを通して領域Sに働く圧力の合力
 第3項 境界Cを通して境界Sに働く圧力の合力(これの反作用が物体に働く圧力の合力となる)

 この運動量の定理は流体中で任意の運動をする物体に対して成り立ち、物体周囲の流れは非定常であっても良かった。
 しかし、今は物体は流れの中で静止しており、周囲の流れも定常的な場合を考えているので上記の項の中で左辺第1項、左辺第3項はゼロと見なせる。また今は重力の様な体積力は考えていないので、右辺第1項は省略できる
 さらにCをC’、CをCと表し、右辺第3項をその反作用力である物体に働く圧力の合力であらわす


となる。ここで、複素積分を用いるために共役複素力X−iY=Fx−iFyを導入すると上式は


と表される。これはブラジウスの第一公式そのものです。
[別証明終わり]

 面白いのはコーシーの定理を用いなくても、(dw/dz)2のC上での積分値がC’上での積分値と同じになることです。それも結局非圧縮性・渦無し・定常流の場合だからです。

.応用例

 この定理を別稿「渦抵抗(カルマン渦列と抗力)」1.(3)2.で説明した、無限遠に置いて一定速度Uをもってx軸の正方向に流れている一様流中に置かれた半径aの円柱のまわりの流れに適応して、円柱に働く合力を計算してみる。

 この静止円柱が受ける合圧力(Fx,Fy)に対してブラジウスの第一公式を用いると

となり、いわゆるダランベールの背理のFx=0、Fy=0が簡単に導ける。

 同じく別稿「二次元翼理論(等角写像とジューコフスキーの仮定)」3.(4)で説明した、循環を伴った半径aの円柱周りの流れに適応して、円柱に働く合力を計算してみる。

 流れの中に静止している円柱に働く合力を(Fx,Fy)とするとブラジウスの第一公式により

となり、実関数の積分で求めたのと同じ結論、Fx=0、Fy=ρUΓが導ける。
 ここの積分経路は別稿の実関数の積分で用いた円柱表面である必要は無い。また、積分自体もコーシーの定理から導かれる積分公式を用いればきわめて簡単に実施できることに注意されたし。
 この結論はMagnus効果(1852年)を説明するものです。

 

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(2)第二公式

 二次元・非圧縮性・完全流体の渦無し・定常流中の物体に働く原点のまわりのモーメントは、物体を取り囲む任意閉曲線Cに沿って下記の積分を実行すれば求まる。

ただし、物体表面の閉曲線C’と物体を取り囲む任意閉曲線Cの間に特異点が存在しないか、あるいはもし特異点が存在したとしても、その留数の和がゼロになる場合としている。これをブラジウス(Blasius)の第二公式と言う。

.コーシーの定理を用いた証明

 物体に働く力による原点のまわりのモーメントMを求める。物体の表面C’の線素dsに働く力は

となる。これらの力による原点のまわりのモーメントはxdY−ydXである。したがって物体全体に働くモーメントMは

となる。
 一方、(dw/dz)は共役複素速度u−ivだから(dw/dz)2zdzを計算してみると

となる。
 上記の二式を比較してみると、Mを求める積分の被積分部は(dw/dz)2zdzの実数部に等しいことが解る。したがって

となる。
 この場合にも、前節と同様にコーシーの定理を用いて、C’に関する積分を物体を取り囲む任意の閉曲線Cに関する積分に置き換えることができる。
[証明終わり]

. 運動量モーメントの定理(角運動量の定理)を用いた証明

[別証明]
 別稿「運動量モーメントの定理(角運動量の定理)」3.角運動量の定理を証明した。任意の動きをする物体が存在して、その物体を取り囲む境界面Cと物体を取り囲む境界面Cと、その間の領域Sに付いて成り立つ法則です。ある瞬間の時刻tにおける境界面は空間に対して固定されている。面C、Cの法線ベクトルは領域Sの外側を向くとする。
 内側の境界面Cは時間と共に動いていくが、角運動量の定理を適用する各瞬間においては、境界面Cも空間に対して静止していると考える。物体表面の流体速度ベクトルが、その瞬間に静止している検査境界面Cを出入りする角運動量に関係すると考えればよい。

 ただし、物体が動いている場合は、その周りの流れは非定常流となり、物体表面の速度ベクトルと、物体表面に位置する流体の速度ベクトルは一致しない。物体表面に沿った流れの成分だけの違いが生じる。今は粘性のない完全流体を考えているので、その様な物体表面の滑りが存在するとして良い。
 このとき次式で表される運動量モーメントの定理(角運動量の定理)が成り立つ。

ここでCについての積分値の符号がCの積分値のそれと反対になっているのは、dSに関する線積分はCと同じ反時計回りに実施するのですが、面の法線ベクトルが物体内部を向くからです。それぞれは次の意味を持つ。

[左辺]
 第1項 領域S内に時刻tにたまたま存在する物体の角運動量の時間的変化
 第2項 境界Cを単位時間に通過する角運動量成分
 第3項 境界Cを単位時間に通過する角運動量成分
[右辺]
 第1項 領域S内の物体に働く体積力によるトルクの合力
 第2項 境界Cを通して領域Sに働く圧力のトルクの合力
 第3項 境界Cを通して境界Sに働く圧力のトルクの合力(これの反作用が物体に働く圧力のトルク合力となる)

 この角運動量の定理は流体中で任意の運動をする物体に対して成り立ち、物体周囲の流れは非定常であっても良かった。
 しかし、今は物体は流れの中で静止しており、周囲の流れも定常的な場合を考えているので上記の項の中で左辺第1項、左辺第3項はゼロと見なせる。また今は重力の様な体積力は考えていないので、右辺第1項は省略できる
 さらにCをC’、CをCと表し、右辺第3項をその反作用力である物体に働く圧力の合力であらわす

となる。二次元の場合はスカラー量と見なせるのでMと置くことにする。上式はさらに変形できて

となる。
 上記の被積分関数は

の実数部に等しいので、公式は証明された。
[別証明終わり]

 ここでもコーシーの定理を用いなくても、(dw/dz)2zのC上での積分値の実数部が、C’上での実関数の積分値と同じになる。それも領域Sにおける流れが非圧縮性・渦無し・定常流だからです。

 

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3.参考文献

 二次元、非圧縮性・完全流体の渦無し流れの解析でブラジウス(Blasius)の公式(1910年)を利用したいのでこのページをつくりました。ここで注意して欲しいことは、[複素関数論のコーシーの定理と、[二次元・非圧縮性・渦無し・定常流で成り立つ運動量の定理角運動量の定理は密接な関係があることです。
 利用したのはいずれも若い頃読んだ本ですが、その内容をすっかり忘れていました。数学理論はすぐに忘れてしまうので、物理理論の背景となっている数学を手短に復習するためのページです。

  1. 竹内端三著「函数論(上)(下)」裳華房(1971年刊の新版)
  2. 岡本哲史著「複素函数」ダイヤモンド社(1968年刊)
  3. 田中明雄著「応用数学(函数論、ラプラス変換、フーリエ変換、不規則波)」槇書店(1968年刊) 
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