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熱機関の効率(冷凍サイクル)

 地球温暖化に伴い暑い夏が続くであろうと予想される昨今、冷房用空調機や家庭用冷凍冷蔵庫は切実な関心事です。ここでは冷凍サイクル(冷凍機と熱ポンプ)について説明します。ガス動力サイクル「熱機関の効率(ガス動力サイクル)」2.)と蒸気動力サイクル「熱機関の効率(蒸気動力サイクル)」4.)については別稿で説明しましたのでそちらを御覧ください。

 絶対温度・エントロピー・熱効率について馴染みの無い方は、先に「絶対温度とは何か(積分因子とは何か)」をお読み下さい。一般的な準備事項については「熱機関の効率(ガス動力サイクル)」1.導入・準備「熱機関の効率(蒸気動力サイクル)」3.準備お読み下さい。また、「冷凍・低温技術の歴史」と「ファン・デル・ワールスの状態方程式(クラウジウス=クラペイロンの式、ジュール=トムソン効果)」に関連事柄を記載しておりますので適宜御覧下さい。

1.成績係数

)成績係数

 熱は高温の物体から低温の物体に流れは自然に起こるが、その逆方向に流すには特別な機構が必要でする。冷凍空間らから熱を奪うことによってその空間を低温に保つ装置を冷凍機という。またより低温の空間から熱を吸収して暖房空間を高温に保つ装置を熱ポンプという。これらの装置は熱力学的なサイクルによって実現される。別稿で述べた動力サイクルの場合は熱効率η(thermal efficiency)によりその性能が評価されるが、冷凍機(対象を冷やす)熱ポンプ(対象を暖める)は次に述べる成績係数c.p.(coefficient of performance)で評価される。


動力熱機関では、熱機関が吸収した熱量に対して、外部にした仕事の割合が大きいほど良い機関であるといえる。

 一方、冷凍機や熱ポンプは、最小の仕事で最大の熱移動を生み出すことが目的なので、成績係数が大きいほど良い機関であるといえる。このとき定義から明らかなように、成績係数は1よりも大きくなり得る。THゃTLの値にもよるが、実際の冷凍機やヒートポンプは成績係数が2〜3で運転されている。
 また、両成績係数間には

の関係がある。ここでc.p.冷凍機は必ず正の値だからc.p.熱ポンプは必ず1よりも大きくなる。

[補足説明]
 私が昔勉強した本では遂行係数(c.p.)と書かれていたのですが、最近の本ではこれを成績係数(COP)と言うようです。以下の説明ではその様に読み替えて下さい。(2013年4月追記)
 読者の方から、工学では遂行係数という言い方はしないと言うご助言を受けて、遂行係数と書いていた所を全て成績係数に置換(2015年5月)しました。ただし図中のc.p.に関しては書き換えが面倒なのでそのままにしています。COPに読み替えてください。

 

)逆カルノーサイクル

 カルノーサイクルは高温と低温の熱浴と等温的に熱のやりとりをする過程を二つの断熱過程(等エントロピー過程)でつないだ全可逆サイクルであった。そのためカルノーサイクルを逆に運転すれば冷凍機や熱ポンプとして働かせることができる。

そのとき、熱力学第二法則により、温度THの高温熱源と、TLの低温熱源の間で作動する冷凍機・熱ポンプとしてはカルノーサイクルは「最も成績係数の良い冷凍機・熱ポンプ」となり、成績係数は熱源の絶対温度で下記の様に表せます。

 これらの成績係数はいずれも温度差が少なくなる(TLがより高く、THがより低く)に従って増加することに注意して下さい。つまり外界と対象物(対象の部屋)との温度差が小さくなれば加える仕事が同じでもより多くの熱を移動させることができる。また、前節で説明したようにc.p.熱ポンプは必ず1よりも大きくなる。これらの結論は、上記のT-s図に於いてH=[四角形1564の面積]L=[四角形2563の面積]仕事w=[四角形1234の面積]であることに注意すれば直ちに了解できる。このあたりの事情は別稿の6.(4)2.を参照されたし。

 

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2.蒸気圧縮冷凍サイクル

 以下の説明のほとんどは単位質量について計算したものです。それを明示するために示量性変数は小文字で記しています。大文字で表した示量性変数は装置全体についての量だと思って下さい。

)理想的蒸気圧縮冷凍サイクル

 液体と気体の相変化を用いる蒸気冷凍サイクルの最大の長所は、圧力を調整すれば二相系の相変化を利用することによって高温過程(2→3)と低温過程(4→1)の両方で等温熱伝導過程を実現できる所にあります。そのため、下記の様なサイクルを構成すれば上記の逆カルノーサイクルが近似的に実現できる事になります。

 ところが、過程(3→4)の断熱膨張過程のタービンと、過程(1→2)の断熱圧縮過程のコンプレッサーを作るのは難しい。それは液体と気体の混合物に対する操作のためタービンブレードの腐食の問題が発生するからです。その当たりは別稿「熱機関の効率(蒸気動力サイクル)」4.(2)1.〜3.で説明した。
 そのため、現実の冷凍機は上記の二つの断熱過程を以下の過程で置き換えて困難を回避する。過程(3→4)の断熱膨張タービンは膨張弁や毛細管の絞り装置で、過程(1→2)の断熱圧縮コンプレッサーは完全に気化した気体状態に対する断熱圧縮コンプレッサーで置き換える。

1→2
 冷媒は状態1で飽和蒸気圧としてコンプレッサーに入り、凝縮器圧力まで等エントロピー(断熱)的に圧縮される。この圧縮過程で冷媒の温度は大気のような高温側熱浴の温度よりも十分高くなる。
 
2→3
 冷媒は状態2の過熱蒸気として凝縮器にはいり、高温熱浴へ熱を放熱して凝縮し状態3の飽和液となって凝縮器を出る。この状態の冷媒の温度は依然として外界の温度より高い。例えば冷媒アンモニアは10.4気圧に加圧すると27℃で凝縮する。
 
3→4
 状態3の飽和液となった冷媒は膨張弁(毛細管)によって蒸発器圧力まで減圧される。この過程は液体が蒸発するときの気化熱と、気化した気体自身が膨張するときのジュール=トムソン効果の両方の理由より冷媒の温度は急速に下がって、冷凍空間の温度よりも低くなる。
 状態4ではまだ乾き度の低い湿り蒸気(霧状の液体を多量に含んだ気体と液体の混合物)の状態である。またこの過程はエンタルピー一定の変化である。ただし、この過程は不可逆過程なので、状態図に変化曲線を書き込むことができず、点線で表示してある。
 
4→1
 冷媒は状態4で湿り蒸気として蒸発器に入り、冷凍空間らか熱を奪いながら蒸発していき状態1に至るまでに完全に気体となる。例えば冷媒の液体アンモニアは大気圧では−33℃で沸騰して気化する。冷媒は飽和蒸気(状態1)となって蒸発器を出てコンプレッサーに入りサイクルを完了する。

 上記のT-s線図の過程3→4が膨張弁による絞り過程であるが、これは不可逆過程なのでこのサイクル全体はもはや内的に可逆なサイクルではない。そのため過程3→4をT-s線図上に描く事はできない。図の線はあくまで仮想的なものなので点線で示している。この点線から下の面積は何の意味もない。仮想的なものではあるが状態4のエントロピー値は定まる。ただし過程3→4は断熱膨張ではあるが不可逆な過程なので、可逆断熱過程3→4’よりも右側にずれてエントロピーが増大した点になる。[このあたりの事情は別稿の6.(4)3.の例を参照されたし。]
 単位質量の作業物質(冷媒)についてのT-s線図を考える。過程2→3過程4→1内的に可逆な過程別稿1.(1)4.]とみなせるのでH=[五角形2735'6の面積]L=[四角形1456の面積]仕事win=[(五角形2735'6の面積)−(四角形1456の面積)]となる。
 T-s線図上のサイクルの形は前述の逆カルノーサイクルの様な長方形とは成らないがそれに近いサイクルが実現できる。そのためこの蒸気圧縮冷凍サイクルは4.章で説明するガス冷凍サイクルに比較して高い成績係数を達成できる。今日使われている冷凍サイクルのほとんどがこの方法を用いている

 家庭用の冷蔵庫では冷凍室が蒸発器として働き、そこで熱が冷媒に吸収される。冷蔵庫の背後にあるコイルは凝縮器としてはたらき、そこから熱が台所の空気に放散していく。

 蒸気圧縮冷凍サイクルに用いられる4つの構成要素は定常流れ装置であり、サイクルを構成する4つの過程は全て定常流れ過程として解析できる。そのため別稿1.(4)2.で説明したように

が成り立つ。そのとき冷媒の運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの変化 dk.e.+dp.e. は、仕事と熱伝達の項に比べて通常小さく、それゆえ無視できる。そのため単位質量当たりの定常流れエネルギー方程式

となる。ここでhinとhoutは各装置に入るときと出るときの単位質量当たりの冷媒が持つエンタルピーを意味し、qとwは作業流体(冷媒)がその装置を移動する中で受け取る熱量と外に対してする仕事を意味する。さらにこのとき、凝縮器と蒸発器については仕事をしないのでw=0となり、コンプレッサーは断熱的に働くと仮定できるのでq=0となる。

 そのため、単位質量の作業物質(冷媒)についてのp-h線図における過程2→3過程4→1は等温・等圧の下での熱の放出と吸収なので、各過程の線分の長さがやりとりした熱量に対応する。すなわちH=h2−h3=[線分23の長さ]L=h1−h4=[線分41の長さ]となる。また過程1→2について仕事win=h2−h1=[線分67の長さ]となる。これらの関係を考慮すると成績係数は以下のように表される。

ここで、理想的な場合にたいしては1=[圧力p1における冷媒1kgの飽和蒸気のエンタルピー]2=[圧力p3における冷媒1kgの飽和液のエンタルピー]です。

 

)数値例

[例1]
作業流体として冷媒HFC-134aを用いる。0.14MPa(約1.4気圧)と0.8MPa(約8気圧)の間で運手なされる理想的な蒸気冷凍サイクルを考える。冷媒の質量流量を0.05kg/sとして以下の問いに答えよ。

 (1)冷凍空間から単位時間に除去される熱量
 (2)圧縮機への入力動力(単位時間当たりの仕事率)
 (3)外部環境に排出される熱流量
 (4)成績係数
 (5)絞り弁を等エントロピータービンで置き換えた場合の成績係数

 理想的な蒸気圧縮冷凍サイクルでは、冷媒は蒸発器の圧力で飽和蒸気としてコンプレッサーに入り、等エントロピー的に圧縮される。また冷媒は凝縮器の圧力で飽和液として凝縮器を出て行く。
 絞り弁での過程3→4はいわゆるジュール=トムソン過程なので等エンタルピー過程と見なせる。そのとき、液相から気相への相変化を伴っていて体積や温度が大きく変化しても断熱的な過程なのでエンタルピー一定の過程と見なせることに注意されたし。
 そのため別表の冷媒HFC-134aの蒸気表からh1〜h4は以下のようになる。

(1)
 冷凍空間から単位時間に除去される熱量は

となる。
(2)
 コンプレッサーへの入力動力は定義式から

となる。
(3)
 冷媒から外界に排出される熱流量は

(4)
 この冷凍機の成績係数は、その定義式より

すなわち、この冷凍機は1単位の仕事を消費するごとに冷凍空間から3.96単位の熱エネルギーを除去する。
(5)
 絞り弁等エントロピー(断熱膨張)タービンで置き換えた場合過程3→4sは等エントロピー(断熱)過程となるのでタービン出口の状態4sにおいて

が成り立つ。[乾き度については別稿3.(2)参照
 そのため膨張タービンは

の動力を生み出す。これを再利用すると、冷凍機への入力動力は1.8kWから1.47kWへ減少する。
 また冷凍空間から単位時間当たり除去される熱流量は

となる。そのため冷凍機の成績係数

となり、3.96から5.07へ約28.0%増加することになる。 

蒸気圧縮冷凍サイクルの数値例を 別ページ1別ページ2 で引用。

 

)実際の蒸気圧縮冷凍サイクル

 実際の蒸気圧縮冷凍サイクルでは、理想的な場合に想定したようにはいかない。その当たりを以下順番に説明する。
 理想サイクルでは、冷媒は蒸発器を飽和蒸気として出て行きコンプレッサーに入る。しかし実際の場合冷凍空間の温度も外界の温度も変動するため運転状況が変動してこの条件を達成するのは難しい。そのためその変動を考慮して、系はコンプレッサーの入り口においてわずかに過熱されるように設計される。このことによって冷媒がコンプレッサーにはいるときに完全に気化された状態が達成される。
 コンプレッサーから膨張弁の間は、そこに設置されている凝縮器の熱交換を効率良くするためにパイプラインは一般に非常に長く、流体摩擦によって生じる圧力降下が生じる。ライン内の圧力降下は蒸気の比容積を増加させる。定常流れ仕事は比容積に比例して増加するするので、このことはコンプレッサーに要求される動力を増加させる。また凝縮器内の熱伝達は等温的にはいかず凝縮器出口に近づくにつれて温度が下がり、圧力も下がる傾向がある。
 理想的サイクルのコンプレッサーは内的に可逆な断熱過程であるが、実際の圧縮過程は摩擦(不可逆過程)の影響に伴うエントロピーの増加が起こるし、また圧縮に伴って温度が上がるとき外部に熱が漏れてエントロピーの減少が生ずる。
 理想的な場合には、冷媒はコンプレッサー出口の圧力で飽和液として凝縮器を出るようにしたいのだが、運転状況が変わるため、それをいつも実現することは難しい。そのため冷媒は絞り弁に入る前にいくらか過冷却された完全な液体として入るように設計される。このことは冷媒はより低いエンタルピーで蒸発器に入り、冷凍空間からより多くの熱を吸収できることを意味する。
 蒸発器においても凝縮器と同様に流体摩擦により圧力減少や温度降下が生じる。

[例2]
 作業流体として冷媒HFC-134aを用い、冷媒の質量流量を0.05kg/sとする。0.14MPa(約1.4気圧)、-10℃の加熱蒸気として冷凍機のコンプレッサーに入り(状態1)、0.8MPa(約8気圧)、50℃まで圧縮されて凝縮器内にはいる(状態2)。凝縮器内で26℃、0.72MPaまで冷やされる(状態3)。その後絞り弁で0.15MPaまで絞られる。各構成要素をつなぐパイプ何での熱伝達や圧力降下は無視できるとして以下の問いに答えよ。

 (1)冷凍空間から単位時間に除去される熱量
 (2)圧縮機への入力動力(単位時間当たりの仕事率)
 (3)外部環境に排出される熱流量
 (4)成績係数
 (5)コンプレッサーの断熱効率

 別表の冷媒HFC-134aの蒸気表からh1〜h4は以下のようになる。そのとき絞り弁での過程3→4はいわゆるジュール=トムソン過程なので等エンタルピー過程と見なせる。

(1)
 冷凍空間から単位時間に除去される熱量は

となる。
(2)
 コンプレッサーへの入力動力は定義式から

となる。
(3)
 冷媒から外界に排出される熱流量は

(4)
 この冷凍機の成績係数は、その定義式より

すなわち、この冷凍機は1単位の仕事を消費するごとに冷凍空間から3.84単位の熱エネルギーを除去する。
(5)
 コンプレッサーの断熱効率は

で求められる。ここで、状態2sにおけるエンタルピーは、状態1と状態2は断熱変化で結ばれているのでエンタルピーが変化せず

とおけるので、P2s=0.8MPaの蒸気表のエントロピー0.9606kJ/kg・Kの値を比例計算で求めるとh2s=281.05kJ/kg(T2s=46.9℃)となる。そのため

となる。この問題は[例1]とほぼ同じ状況ですが以下の点が異なる。

  1. コンプレッサーは等エントロピー的ではなくて不可逆過程の摩擦熱が生じる。
  2. コンプレッサー入り口で僅かに過熱されて過熱蒸気となる。
  3. 凝縮器出口で僅かに過冷却されて過冷液となる。
  4. 蒸発器内で摩擦に伴う僅かな圧力降下がある。
  5. 凝縮器内で摩擦に伴う僅かな圧力降下がある。

そのため冷凍空間から除去される熱量は7.13→7.88kWへ約10.5%増加する。しかし、コンプレッサーへの入力動力も1.80→2.05kWへ約13.9%増加するので、冷凍機の成績係数は3.96→3.84へ低下する。

 

)冷媒

.歴史

 ジエチルエーテルは最初(1834年ヤコブ・パーキンス)に用いられた冷媒であるが、1850年代に初めて商業的に成功した蒸気圧縮冷凍システムもこれを用いている。これに続いて、アンモニア、二酸化炭素、塩化メチル、二酸化硫黄、ブタン、エタン、プロパン、イソブタン、ガソリン、クロロフッ化炭素(CFC chlorofluorocarbon)が登場してきた。また空気も1844年のジョン・ゴーリーのガス冷凍機以来かなり早くから用いられていました。

 この中でアンモニアは有毒にもかかわらず、重工業では盛んに用いられたし、いまもそうです。アンモニアの長所は
  ○低価格
  ○望ましい熱力学的特性を持ち、成績係数が高い(エネルギーコストが安い)
  ○高い熱伝達率(熱交換器が小さくてすみコストがかからない)
  ○漏れの検出がしやすい(その強烈な臭い故に)
  ○オゾン層に影響をあたえない
などがあげられる。一方その欠点はその毒性です。そうは言っても、初期において軽工業や一般家庭で用いられていた二酸化硫黄、塩化エチル、塩化メチルなども極めて毒性が高い冷媒です。
 
 私が子供の頃、昭和30年代(1950年代後半)ですが、田舎町の駅前商店街の中に氷屋さんがありました。夏に町に出かけると、両親はよくそこでアイスキャンデーを買ってくれました。その店先(当時の道路は未舗装)はいつも打ち水がされていて、中からトントントン・・・というコンプレッサーの音が聞こえていました。そして四六時中氷を作っていて、氷屋のそばにいくとかすかなアンモニアの臭いがしたような記憶があります。
 当時は夏になると町の氷屋で仕入れた氷を自転車の荷台に載せて住宅地の各家庭の氷り冷蔵庫用に売り歩く商売がありました。軒先でのこぎりでブロック状に切り分けて売ってくれるのです。魚屋や八百屋が自転車や大八車で行商していたように冷蔵庫用の氷りもそのようにして売られていました。のどかな遠い昔の思い出ですが・・・・。

 初期に用いられた冷媒には引火性や毒性の強い危険なものが多かったので、安全な冷媒の開発は大きな課題でした。フリジデァー社(ゼネラルモーターズの子会社の冷蔵庫メーカー)の要請に応じて1928年にゼネラルモーターズ研究所が最初に開発したのがCFC-12です。その後何種類ものCFC族の冷媒が開発され、それらに対してフレオン(freon)という商標が与えられた[日本では慣用名フロン(flon)が一般的]。そのなかでも冷媒として特に優れていたのがCFC-12です。CFC-11とCFC-12の商業的生産はゼネラルモーターズとデュポン(E.I.du Pont de Nemours and Co.,Inc.)の合弁会社キネチック・ケミカルズ社(Kinetic Chemicals, Inc.)により1931年に開始された。
 これらCFC(chlorofluorocarbon)族メタン系:CFC-11(CFCl3沸点24℃)、CFC-12(CF2Cl2沸点-30℃)、エタン系:CFC-113(CClF2CCl2F沸点48℃)、CFC-114(CClF2CClF2)、CFC-115(CClF2CF3)]は優れた性質
  ○熱に強い
  ○燃えない
  ○他の物質と反応しにくく腐食性もない
  ○毒性がほとんど無い(中には毒性の強いものもある)
  ○油をよく溶かす
  ○容易に気化・液化する
  ○安定しており・壊れにくい
のために、冷蔵庫やエアコンの冷媒、化粧品や殺虫剤等のスプレー製品の噴射剤、エレクトロニクス製品の洗浄やドライクリーニングの洗浄剤、スポンジや断熱材を形成するときの発泡剤として多方面で大量に使われ始めた。
 
 ところが、やがてこれらのCFC族は大気圏のオゾン層を致命的に破壊する事が解ってきた。その可能性を最初に指摘したのはカリフォルニア大学のローランドモリナ(1974年)です。彼らの指摘は理論的な解析と実験的な検証により次第に間違いのない過程と認められるようになった。そして1983〜1985年頃には南極上空に大きなオゾンホールができている事が発見(J.C.Farman, B.G.Gardiner, and J.D.Shanklin,“Large losses of total ozone reveal seasonal ClOx/NOx interactions.”,Nature, 315,207〜210, 1985年: http://www.ciesin.org/docs/011-430/011-430.html)されて、CFCの野放図な生産・拡散はオゾン層を破壊して生物に重大な影響を与えることが明らかになってきた。またCFCは地球温暖化を引き起こす強力な温室効果化ガスであることも解ってきた。
 そのためCFCの生産は2010年までに全廃されることになった。同時にオゾン層を破壊するハロン(臭素Brを含むフッ素化炭化水素)や四塩化炭素(CCl4)、111-トリクロロエタン(CH3CCl3)なども全廃されることになった。
 ローランドモリナは、窒素酸化物のオゾン層破壊(1970年)やオゾンホール形成に関する研究で功績のあったクルッツェンとともに1995年にノーベル化学賞を授与されている。
P.J.Crutzen, “The influence of nitrogen oxides on the atmospheric ozone content.”, Quarterly Journal of the Royal Meteorological Society, 96, p320〜325,1970年
M.J.Molina, and F.S.Rowland,“Stratospheric sinks for chlorofluorocarbons: chlorine catalyzed destruction of ozone.”, Nature, 249, p810〜812, 1974年
http://nobelprize.org/nobel_prizes/chemistry/laureates/1995/press.html
Molina_nobel_lecture_1995
Rowland_nobel_lecture_1995(http://www.eoearth.org/view/article/156270/)
 オゾン層の発見、成因の解明、人類による破壊についてはこちらの引用文を参照
 
 CFCの環境破壊性が明らかとなったので、その代替としてHCFC(hydrochlorofluorocarbon)族メタン系:HCFC-22(CHClF2沸点41℃)、エタン系:HCFC-123(CHCl2CF3)、HCFC-141b(CH3CCl2F)、プロパン系:HCFC-225ca(CF3CF2CHCl2)、HCFC-225cb(CClF2CF2CHClF)]やHFC(hydrofluorocarbon)族エタン系:HFC-134a(CH2FCF3)、HFC-143a(CH3CF3)、HFC-152a(CH3CHF2)]が開発された。
 HCFCは水素を含むので大気中で分解されやすく成層圏まで達しにくいためオゾン層を破壊する力は弱い。しかし、やはりオゾン層に影響し、強力な温室効果ガスであるのでこれらは2030年までには全廃されることになっている。
 またHFCは水素とフッ素と炭素の化合物で、塩素や臭素を含まないのでオゾン層を壊さないが一般に分解しにくく寿命が長い。上記の[例1、2]で述べたHFC-134a(CH2FCF3)などはその代表的なものです。これはオゾン層は壊さないが、温室効果は二酸化炭素の1600〜3200倍といわれるもので、今後も長く使い続けていけるかどうかは解らない。
 このことに関しては経済産業省作成の「日本における冷媒HFCをめぐる状況と今後の課題について(2009年6月)」が詳しい。
【2022年9月追記】上記の経済産業省の資料は何年かごとに更新されているためリンクが切れてしまうので、2021年6月版をダウンロードして紹介します。こちらは2020年分の取り組み進捗状況資料です。
 
[2016年10月27日追記]
 代替フロン規制の状況 朝日新聞の記事(2016年10月)を引用。

 

.必要条件

 冷媒に要求される一番に重要な事柄は蒸発器における蒸発温度と圧力、および凝縮器における凝縮温度と圧力が適切であることです。

 蒸発器において冷凍・冷却空間から効率よく熱を吸収するには冷媒の温度は冷凍・冷却空間よりも5〜10℃程度低い温度で相変化を起こす必要がある。その温度での飽和蒸気圧も冷凍システムへの空気の侵入を防ぐには1気圧程度かそれ以上であることが望ましい。例えばアンモニアの1気圧下での沸点は-33.4℃なので-20℃程度の低温を得るのに適している。
 ただし、熱ポンプの場合には、熱は冷凍システムよりも一般に高い温度(大気温度が多い)の媒体から抽出されるので、冷媒の最低温度はかなり高くできる。もし冷凍システムの冷媒を使うなら、その蒸発圧力を高く設定できる事を意味する。

 また、凝縮器における冷媒の温度・圧力は熱が放出される媒体に依存する。冷却に水を使用する大型の工業用冷凍システムでは20℃程度、家庭用冷蔵庫の様に台所の空気を冷却に用いる場合は40℃程度よりも低くすることはできない。その温度での飽和圧力は当然臨界圧より十分低くなければならない。また、コンプレッサーの製造と装置の安全性を考慮すると精々10気圧程度以下が望ましい。例えばアンモニアの飽和蒸気圧は25.7℃で10気圧、50.1℃では20気圧です。

 上記以外で冷媒に求められる性質はCFCで述べた場合と同じで
  ○無害である
  ○非腐食性
  ○不燃性
  ○化学的に不活性
  ○安い
  ○高い蒸発エンタルピー(質量流量を小さくできる)
等である。

 

)熱ポンプ

.蒸発器の熱源

 前述の蒸気圧縮冷凍システムは熱を吸収する部分を外界に、熱を放出する部分を室内にすれば、そのまま熱ポンプ(暖房器)となる。通常の熱ポンプの成績係数は1.5〜4の範囲にある。

最近は可変速モーターなどを使用してより高い成績係数が得られている。そのため室内を暖房するのに、電熱ヒーターや石油・ガスストーブの様にエネルギーを不可逆的に直接熱エネルギーに変える場合(成績係数1以下)に比べると遙かにエネルギー効率が良い。そのとき熱を吸収する外界のエネルギー源は空気、水、土が考えられるが、それぞれ以下の様な事情がある。

[空気]
 屋外大気を熱源とする場合に問題となるのは着霜である。冬季に室内を25℃程度の快適温度に保とうとするとき屋外大気温度は5℃以上であることが望ましい。大気温度が5℃程度以下に下がると熱を吸収する蒸発器内部の媒体の温度は0℃以下であることが必要になり、湿気の多い気候では蒸発器のコイルに霜が積み重なり熱伝達が阻害される。コイルの着霜を取り除くためには熱ポンプを一時的に冷凍機として働かせればよいが、頻繁にそのような事をしていたのでは熱ポンプの成績係数は1以下に割り込む可能性がある。1.(2)で説明した理想的な逆カルノーサイクルの熱ポンプでは成績係数は1以下になることはないが、現実の熱ポンプでは1を割り込む事もある。
 そのため屋外大気を熱源とする熱ポンプは、極寒期には多くの場合電熱ヒーターや石油・ガスストーブのような補助的な暖房システムが必要となる。電熱ヒーターや石油・ガスストーブはエネルギーをそのままジュール熱や燃焼熱で熱に変えてしまうので、原理的に成績係数は1以下ですが1に近い値は常に確保できるからです。
 
[水]
 熱源の水は通常地下から汲み上げられた温度5〜20℃の井戸水が用いられる。この場合は空気のような着霜の問題は無く、高い成績係数が達成できる。しかし大量の地下水が容易に利用できなければいけないので手軽に実行するという訳にはいかない。
 
[土]
 熱源として土を利用する場合には、地熱が比較的安定する地中深くまで管を長く伸ばす工事が必要で簡単に利用すると言うわけにはいかない。

 

.暖房器と冷房器

 熱ポンプ(暖房器)と冷房機は同じメカニズムなので、一つのシステムに可逆弁を設けて、冬には熱ポンプ(暖房器)として、夏には冷房器とし使用することができる。

 作動原理から明らかなように一般的に、熱ポンプは暑い時期に冷房の負荷が大きく、寒い時期に比較的暖房の負荷が小さい暖かい地方(冬季の最低温度の平均が5℃以上)では有利である。逆に暖房負荷が大きくて、冷房負荷が小さい寒冷な地方には向かない。

 

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3.蒸気圧縮冷凍サイクルの改良

 いままで説明した蒸気圧縮冷凍サイクルは、単純で安価で信頼性が高くほとんどの冷凍・冷却目的に十分適応できる。実際、家庭用電気冷蔵庫や冷房用空調機は10年以上にわたってメンテンナンスフリーで堅実に働く驚くべき信頼性を持っている。
 しかしながら工業用の大型冷蔵庫では単純さやメンテナンスフリーよりも効率が最大の関心事となる。また、温度差が大きな特殊な冷凍に対しては単純なサイクルでは不十分なので工夫が必要です。

)カスケード冷凍システム

 いくつかの工業的応用ではもっと低い温度での冷凍を必要とする。この場合単一の蒸気圧縮冷凍サイクルでは温度差が大きすぎて、かなり無理をした温度差・圧力差での運転が要求され効率が悪くなる。
 これを改良するには冷凍サイクルを多段階で行うカスケード冷凍サイクル(cascade refrigeration cycle)とすればよい。下図は中間温度で熱交換器を介して連結された二段カスケード冷凍サイクルを示している。この中で熱交換器は、上段サイクルAに対しては蒸発器として、下段サイクルBに対しては凝縮器として働く。

 熱交換器は良く断熱されて、運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの変化は無視できるとすると、下段サイクルの流体から奪われた熱は上段サイクルの流体に伝わった熱に等しいとおける。そのため、それぞれのサイクルを流れる流体の質量流量比は

となる。さらに成績係数は

となる。上図に示される様にコンプレッサーに加えなければならない仕事が節約でき、また冷却能力も増加する。ただし、熱交換器で効率的な熱伝達が行われるためには二つの流体間に温度差が必要だから、実際のカスケード冷凍システムでは二つのサイクルはいくらか重なる。
 図のサイクルではAB二つのサイクルで用いられる冷媒は同じと仮定されている。しかし、熱交換器では流体は混合されないので冷媒は異なっていても良い。その場合にはそれぞれの温度領域に最も適した冷媒が使えるのでもっと効率のアップが可能になる。その場合には、それぞれの流体ごとの飽和曲線を用いなければ成らないのでT-s線図は異なったものとなる。 

 

)カスケード冷凍システムの数値例

[例3]
 作業流体として冷媒HFC-134aを用いた、0.14MPa(約1.4気圧)と0.8MPa(約8気圧)の圧力範囲で運転される二段カスケード冷凍システムを考える。熱交換は0.32MPaのもとで働く向流式熱交換器で行われるものとする。そのとき実際にはA側は少し低温(0.32MPaより少し低圧)でB側は少し高温(0.32MPaより少し高圧)でなければならないが、その当たりは無視する。圧縮行程は等エントロピー(断熱)的で、冷媒は蒸発器圧力の飽和蒸気としてコンプレッサーに入り、凝縮器圧力の飽和液として凝縮器を出るものとする。上段サイクルAの質量流量は0.05kg/sとして以下の問いに答えよ。

 (1)下段サイクルBの冷媒の質量流量
 (2)冷凍空間から単位時間に除去される熱量
 (3)圧縮機への入力動力(単位時間当たりの仕事率)
 (4)カスケード冷凍機の成績係数

 別表の冷媒HFC-134aの蒸気表から求めたh1〜h8を上図に示している。そのとき7→8と3→4の変化は等エンタルピーの条件を用いている。
(1)
 下段サイクルBを流れる冷媒の質量流量は、熱効交換器におけるエネルギー保存則から

となる。
(2)
 冷凍空間から単位時間に除去される熱量は、最下段の蒸発器の吸収する熱流量だから

となる。
(3)
 入力動力は二つのコンプレッサーの入力動力の合計に等しいから

となる。
(4)
 成績係数

となる。
 この例題の設定圧力(従って設定温度)は[例1]と全く同じである。単段のものを二段カスケードシステムにすることにより、成績係数は3.96→4.46に増加している。カスケードの段数を増やせば成績係数をさらに大きくすることができる。しかし、熱交換器における熱伝達が理想的には行かないのでむやみに増やしてもその効果は期待できるほどにはならない。

 

)多段圧縮冷凍システム

 カスケード冷凍システム全体で同じ冷媒を用いるときには、各段の間にある熱交換器をもっと熱伝達性の良い混合室(フラッシュ室)で置き換えることができる。このようなシステムを多段圧縮冷凍システム(multistage compression refrigeration system)という。下図は二段圧縮冷凍システムを示している。

 このシステムでは、液体の冷媒が最初の膨張弁でフラッシュ室の圧力まで膨張させられる。この圧力はコンプレッサーの中間圧力と同じである。この飽和蒸気(状態3)は低圧コンプレッサーからの加熱蒸気(状態2)と混合され状態9で高圧コンプレッサーに入る。これは一種の再生過程である。
 一方、フラッシュ室の飽和液(状態7)は第二の膨張弁を通って蒸発器の圧力まで減圧されて蒸発器に入る。そこで冷凍空間から熱を奪い取り、最後は飽和蒸気(状態1)になる。
 このシステムの圧縮過程は中間冷却を伴う二段圧縮と似ていて、コンプレッサーへの入力仕事は減少する。ただし、この場合は二つのサイクルで質量流量が異なるので、T-s線図上での面積の解釈には特に注意が必要です。

 

)多段圧縮冷凍システムの数値例

[例4]
 作業流体として冷媒HFC-134aを用いた、0.14MPa(約1.4気圧)と0.8MPa(約8気圧)の圧力範囲で運転される二段圧縮冷凍システムを考える。冷媒は凝縮器を飽和液として出て行き、フラッシュ室の運転圧力0.32MPaまで絞られる。この瞬間蒸発過程の間に冷媒の一部が蒸発し、その蒸気は低圧コンプレッサーを出る冷媒と混合される。その混合物は、次に高圧コンプレッサーによって凝縮器圧力まで圧縮される。
 フラッシュ室内の液体は蒸発器圧力まで絞られてね蒸発器内で気化するときに冷凍空間を冷却する。冷媒は蒸発器を飽和蒸気となって出て行き、二つのコンプレッサーはいずれも等エントロピー(断熱)的であると仮定して以下の問いに答えよ。

 (1)冷媒がフラッシュ室圧力まで絞られるときに気化する割合
 (2)蒸発器を流れる冷媒の単位質量当たりに対して冷凍空間から除去される熱量
 (3)コンプレッサーへの入力動力(単位時間当たりの仕事率)
 (4)二段圧縮冷凍機の成績係数

 別表の冷媒HFC-134aの蒸気表から求めたh1〜h9を上図に示している。そのとき5→6と7→8の変化は等エンタルピーの条件を用いている。
(1)
 冷媒がフラッシュ室の圧力まで絞られるときに気化する割合は、単に状態6の蒸気の乾き度のことであるから

となる。
(2)
 蒸発器を流れる冷媒の単位質量あたりに対して冷凍空間から除去される熱量は

となる。
(3)
 コンプレッサーへの入力仕事は

によって求めるが、状態9のエンタルピーh9は混合室におけるエネルギー保存則から求められる。すなわち

となる。この値から蒸気表を読み取ると、状態9におけるエントロピーs9

となる。状態4と状態9のエントロピーは同じだから0.8MPa、s4=s9の蒸気表を読み取ってh4=271.00kJ/kgとなる。これらの値を代入すると

となる。
(4)
 成績係数は

となる。
 この問題の圧力・温度範囲は[例1]や[例3]と同じである。成績係数4.49[例1]単段冷凍システムの3.96よりかなり増大するが、[例3]二段カスケード冷凍システムの4.46とはそれほど変わらない。ただし熱交換器よりも簡単なフラッシュ室と混合室に置き換えることができるメリットはある

 

)1台のコンプレッサーによる多目的冷凍システム

 例えば家庭用冷凍冷蔵庫では冷凍温度(-15℃)と冷蔵温度(5℃)の様に二つの温度で冷却することが要求される。この場合、異なる温度(つまり異なる圧力)ごとに別々の絞り弁とコンプレッサーを用いれば良いが、そのようなシステムは大きくなり経済的でない。もっと実用的で経済的な方法は、蒸発器から出る蒸気を1台のコンプレッサーに送り込み、それをシステム全体に対する圧縮過程とすることである。そして最初に冷蔵空間で使用するためにより高い圧力(したがってより高温)まで絞り、次に冷凍室でさらに低い圧力(より低温)まで絞るのである。下図はそのようなシステムの概略図とT-s線図である。

 T-s線図を検討すれば、そのようにした方がより少ない入力仕事で、より多くの熱の吸収(冷却)ができることが解る。

 

)気体の液化(リンデ・ハンプソンサイクル)

 気体の液化は冷凍の重要な分野です。それは、極低温における多くの重要な科学的、工学的な過程は液化された気体によって行われるからです。空気からの酸素と窒素の分離、ロケットの液体推進燃料、低温における材料研究、超伝導、等々・・・
 そして気体を液化するとき重要なのは実在気体の性質、とりわけ臨界点の存在とジュール=トムソン効果です。このあたりは別稿「冷凍・低温技術の歴史」と「ファン・デル・ワールスの状態方程式(クラウジウス=クラペイロンの式、ジュール=トムソン効果)」で詳しく説明しておりますのでそちらを御覧下さい。
 ここでは、気体の液化サイクルとして、最も基本的で重要なリンデ・ハンプソンサイクルを説明します。下図はその概念図とT-s線図です。

 補給ガスが前のサイクルを通ってきた液化されていないガスと混合され(状態2)多段コンプレッサーに送られる。そこで状態3まで圧縮される。この圧縮過程は中間冷却することによって等温過程に近づけられる。
 高圧となった気体は、冷却媒体か、別の冷凍システムにより状態4間で冷やされる。その気体は、前のサイクルでまだ液化されていないガスによって再生型向流式熱交換器でさらに状態5まで冷却される。
 次に絞り弁によるジュール=トムソン過程で状態6まで膨張冷却されて、飽和液と飽和蒸気の混合物になる。その液相(状態7)は目的の生産物として集められ、蒸気は(状態8)は再生型向流式熱交換器内で絞り弁に向かう高圧ガスを冷却した後に、最後には新しい補給ガスと混合されてサイクルが繰り返される。

補足説明
 この形式の空気液化装置により、安く大量に純粋酸素を得ることができるようになり、転炉における製鋼法に革命的な進歩をもたらしたことはよく知られています。また、同時に得られる液体窒素は極低温を得るための冷媒として多方面で利用されている。
 
 空気を液化するリンデ・ハンプソンサイクルの具体的な形状については「冷凍・低温技術の歴史」1.(3)1895年をご覧下さい。また、液体空気から液体酸素と窒素ガスを分離する装置については「冷凍・低温技術の歴史」1.(4)1902年をご覧下さい。
 ちなみに窒素ガスのジュール・トムソン効果によって冷却可能な領域は下図の様になります。[拡大図

 この図から明らかなように、空気は常温で400気圧程度まで加圧してもジュール・トムソン効果により冷却可能です。しかし、別稿「ファン・デル・ワールスの状態方程式」5.(3)〜(4)で説明するように水素ガスやヘリウムガスはもっと低温(水素で-50℃以下、ヘリウムで-233℃以下)にあらかじめ冷却しておかないと、ジュール・トムソン効果による冷却効果は生じません。逆に温度が上昇します。
 
 アンモニア液化の場合の具体的な計算例についてはこちらを参照。この引用文中の最初に書かれている液化量xを導く式は解りにくいところなので別ぺーで説明しています。これは、ある読者の方から教えてもらったある大学院の入試問題を解く過程で理解できました。この別ページ中のp−h線図のエンタルピーの変化に関しましては、 「熱力学関数の性質」3.(3)3.[補足説明1]「電気化学ポテンシャルと熱力学第三法則」4.(3)1. などをご覧下さい。

 

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4.ガス冷凍サイクル

 すでに説明したようにカルノーサイクルに対する逆カルノーサイクルは冷凍機・熱ポンプの働きをした。またこの稿で説明した蒸気圧縮冷凍サイクルは、基本的に逆向きに運転された蒸気動力サイクル(ランキンサイクル)と同じです。そのためガス動力サイクルを逆向きに運転することにより冷凍サイクルを構成することもできる。そのようなものをガス冷凍サイクル(gas refrigeration cycle)という。中でも最も基本的なのが逆ブレイトンサイクルです。

)逆ブレイトンサイクル

 ブレイトンサイクルについては別項「熱機関の効率(ガス動力サイクル)」2.(6)を御覧下さい。下図は逆ブレイトンサイクルの原理に基づくガス冷凍サイクルの概念図とT-s図です。

 外界の温度をT0、冷凍空間の温度をTLとする。気体は過程1→2で等エントロピー(断熱)的に仕事を加えられながら圧縮される。状態2の高温・高圧の気体は外界に熱を放出しながら一定圧力の下でT3=T0まで冷やされる。続いてタービン内で等エントロピー(断熱)的に外に仕事をしながら膨張して冷やされる(過程3→4)。冷却された気体が冷凍空間から熱を吸収し温度がT1=TLまで上昇してサイクルを完了する。
 実際のサイクルでは圧縮も膨張も等エントロピー過程ではないし、熱伝達に温度差が必要なのでT3>T0やT1<TLであるが、ここでは理想的な場合を考えている。
 T-s線図において、[四角形1456の面積]=[冷凍空間から除去される熱量][四角形1234の面積]=[正味の入力仕事]を表す。この面積の比がサイクルの成績係数である。

 

)ガス冷凍サイクルの長所と短所

[長所]
 最初に実用化されたガス冷凍サイクルは1844年ジョン・ゴーリーが作った空気冷凍サイクルです。空気を用いた冷凍機・熱ポンプには大きな長所がある。それは冷媒が安全で毒性がないことである。空気は燃えず腐食性もなく手軽に利用できた。そのため初期の特に帆船時代の海上輸送用の冷凍サイクルにはその安全性から盛んに利用された。
 このサイクルを構成する装置の構造が簡単で軽くできる。また、冷媒を大気とすると開いたサイクルで運転することもできる。そのため現在では航空機用の冷暖房空調機として広く使われている。
 さらに、このサイクルに再生を組み込むことにより、気体の液化極低温装置に適用できる。

上図は再生式ガス冷凍サイクルを示している。再生により、高圧の気体はタービンで膨張する前にさらに温度T4(状態4)まで冷やされる。タービン入り口温度が低くなることにより、自動的にタービン出口温度(サイクル最低温度)も低くなる。この操作を繰り返すことによって超低温が達成できる。今日この方法は、空気・水素・ヘリウム等の気体液化装置に幅広く用いられている。このような再生の手法が有効なのは前記の気体が常温から極低温まで液化することなく気体のままで存在するからです。詳細は別稿「冷凍・低温技術の歴史」参照されたし。

[短所]
 最大の欠点はカルノーサイクルや蒸気圧縮冷凍サイクルと違って等温的な熱交換・熱伝達ができない事である。そのため成績係数はかなり低くく経済的でない。この決定的な短所のためにガス冷凍サイクルはほとんど使われなくなり、今日の冷凍設備の大多数は蒸気圧縮冷凍サイクルを用いている。その当たりの事情はT-s線図を比較検討すれば直ちに了解できる。

 ガス冷凍サイクルは等圧過程での熱交換のために、冷媒の温度は冷却しようとする物体よりもかなり冷たくなり、熱を与えるべき外部環境よりもかなり熱くなる。そのため熱伝達の不可逆性が大きくなり、ガス冷凍サイクルは、逆カルノーサイクルや蒸気圧縮冷凍サイクルよりもより多い入力仕事で、より少ない冷却しか行うことができないのである。

 

)空気冷凍サイクルの数値例

[例5]
 作業流体として空気を用いたガス冷凍サイクルを考える。冷凍空間の温度を-18℃、熱を放出する外界温度を27℃とする。コンプレッサーの圧力比は4、冷媒の質量流量は0.05kg/sとして、サイクルは理想的に働くとして以下の問いに答えよ。、

 (1)サイクルの最高温度と最低温度を求めよ
 (2)単位時間当たりに冷凍空間から除去される熱量
 (3)成績係数

 これは理想的なサイクルなのでタービンとコンプレッサーはともに等エントロピー(断熱)的に働き、タービン入り口の温度は27℃、コンプレッサー入り口の温度は-18℃とおける。
(1)
 空気は理想気体と見なして空気の状態量表を用いると、圧力比は4だから

となる。ただし、表にない値は比例計算で求めている。 したがってサイクルの最高温度は106℃、最低温度は-71℃となる。
(2)
 単位時間に除去される熱量は

となる。
(3)
 理想的なガス冷凍サイクルの成績係数の公式を用いて

となる。[例1]の蒸気圧縮冷凍サイクルは高温側は31.33℃(0.8MPa)、低温側は-18.8℃(0.14MPa)で働くものであったから、ほぼ同程度の温度差で働く冷凍サイクルである。そのときの成績係数は3.96であったから、上記の2.05それに比較するとかなり悪い

 

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5.吸収式冷凍システム

 太陽熱、地熱、コージェネレーションやプロセス蒸気プラントからの廃熱の様に、いずれ捨てられてしまう100〜200℃程度の温度の熱源がある場合に、経済的に魅力がある冷凍法に吸収式冷凍システム(absorption refrigeration)がある。これは蒸気圧縮冷凍システムの圧縮用コンプレッサーの働きを低温熱源の熱エネルギーを用いて代替するものです。成績係数は大きくできないが、もともとの熱エネルギーが環境に豊富に存在したり、捨てられる運命にあるものの再利用であるから経済的に十分成り立つのである。

)アンモニア-水冷凍システム

 アンモニア・水の冷凍機は、フランス人のカレー(Ferdinand Carre)によって1859年に特許が取られた。それから数年以内にこの原理に基づく機械が、主に製氷と食品保冷のために米国で建設されるようになった。

 この機械の概念図は下図の様なものです。この中の波線で囲まれた部分が低温の冷媒ガス(アンモニア)を圧縮して、高圧・高温の状態にするコンプレッサーの働きをしている。この部分を除けば他は今まで説明した蒸気圧縮冷凍サイクルと全く同じです。

 波線で囲まれた領域の中で起こる事を説明する。まず蒸発器を出たアンモニアの飽和蒸気は吸収器に入り、そこで水に溶解し水と化学反応をおこしてNH4OHとなる。これは発熱反応で熱が放出されるが冷却水で冷却される。水に溶けるアンモニアの量は温度に反比例するので、たくさん溶かすためには吸収器を冷却する必要がある。
 アンモニアを十分溶かしたアンモニア水はポンプで高圧に圧縮されて発生器に送り込まれる。この発生器に入ったアンモニア水は、様々な低レベル熱源(150〜200℃程度)により過熱される。アンモニア水の温度が上がると溶けきれなくなったアンモニアが水から放出される。アンモニアを豊富に含んだ蒸気は精留器に通されアンモニアと水に分離され、水は発生器に戻される。
 高圧の純粋なアンモニア蒸気は、凝縮器に入り、後は普通の蒸気圧縮冷凍サイクルと同じメカニズムで低温冷却空間を冷却する。
 一方、アンモニアの溶解量が減った熱いアンモニア水は再生器を通って、ポンプを出たばかりのアンモニアが濃い水溶液に熱を伝えながら膨張弁にはいる。その膨張弁で吸収器の圧力(蒸発器の圧力と同じ)まで絞られて吸収器へ入り次のアンモニアの吸収に備える。

 

)吸収式冷凍システムの成績係数

 吸収冷凍システムの成績係数は次のように定義される。

ここで、Qgenを見積もるのは難しいので以下の様な方便を取る。
 まず低レベル熱源から供給される熱Qgenがカルノー熱動力機関の高温部(絶対温度Ts)に伝達されて、動力仕事が取り出された後に低温熱源(絶対温度T0)に放出されたと考える。そのとき、カルノーサイクル動力機関の効率をηCarnotとすると

となる。このときカルノーサイクルの出力仕事 WCarnot=ηCarnot・Qgen を全て逆カルノーサイクルの冷凍機に供給して冷凍空間(絶対温度TL)を冷却して高温環境(絶対温度T0)に熱を放出すると考える。
 この逆カルノーサイクル冷凍機の冷凍機としての成績係数を仲立ちにして考えると

となる。上記の二つの機関を合わせたものが、今考えている吸収冷凍サイクルが理想的に働いた場合と同等であると考えることができる。それ故に吸熱冷凍サイクルの成績係数は理想的に運転された場合でも

を超える事はないであろうし、理想的に実行できた場合は、この値に近づいて行くであろう。
 例えば、熱源の温度がT=393K(120℃)、冷凍空間の温度がTL=263K(-10℃)、環境の温度がT0=298K(25℃)の場合には成績係数は

となる。これはあくまで理想的な場合で、通常の吸収冷凍システムの成績係数は1よりも低くなる

 

)長所と短所

[長所]
 最大の長所は、捨て去られるか拡散により霧散してしまう運命にある低レベル熱源(150〜200℃)の熱エネルギーを利用できる事である。このように無駄に捨てられている熱源のある工業に隣接して設置すれば、経済的なメリットが出てくる。
 また、もう一つの長所は圧縮行程が気体ではなくて、液体に対してなされる事である。定常流れ仕事は比容積に比例するので、吸収式冷凍システムにおける入力仕事は非常に小さくなる。発生器に供給される熱エネルギーの1%程度である。そのためこの機械的仕事は通常無視されて、成績係数の分母は外部熱源から伝達される熱エネルギーのみと考えることができる。そのためこのシステムは外部熱源からの熱伝達のみで駆動される熱ポンプと考えて良い。

[短所]
 このシステムは大きくて複雑になる。そのため高価になる。
 このシステムの成績係数はあまり高くできない。そのため無駄に捨てられる熱源があるときのみ有効であるという制約がある。

 

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6.熱電発電と熱電冷凍システム

 これまで議論した冷凍システムは、多くの可動部品と重くて複雑な要素から成っていた。しかしながら、電気エネルギーを直接冷却に用いるシステムも存在する。

)ゼーベック効果

 1821年トーマス・ゼーベック(Thomas Seebeck)は、2本の異種金属(銅とビスマスまたはアンチモン)から作られた回路において、その接合点の一方を熱し、他方を冷やすと回路に電流が流れる事を発見した。

今日これはゼーベック効果(Seebeck effect)と呼ばれている。ゼーベック効果は温度の測定と発電に用いることができる。

.熱電対温度計

 熱電回路を下図の様に切り離すと電流が流れなくなるが、切り口に電位差(電圧)が発生する。

 そのとき、熱起電力の大きさは、導体の材質がそれぞれ均質であれば、金属線の種類と両接点の温度差ΔTだけによって定まり、導体の長さや太さ,両接点以外の部分の温度などには無関係である

 例えば銅とコンスタンタンの金属線からなる熱電対では1℃の温度差当たり約40μVの電圧発生する。一方の接点の温度を一定に保つとき、熱起電力は他方の接点の温度の関数となる。そのため、熱電対を温度計測に用いることができる。

 

.熱電発電機

 ゼーベック効果では高温熱源から高温接点にQHの熱が伝えられ、、低温接点から低温熱源にQLの熱が捨てられる。これら二つの熱量の差が生み出される正味の電気仕事 We=QH−QL である。電子を作動流体とすれば、通常の熱機関のサイクルと同じで、THとTLの熱源間で作動する熱発電機の熱効率は、同じ温度差の熱源間で作動するカルノーサイクルの効率以下である。金属線内部にジュール熱の様な不可逆的損失がなければ熱発電機の効率はカルノーサイクルと同じになる(下左図)。

 熱発電機の欠点は効率が悪く大きな電力を得ることが難しいことである。実用化されている熱発電機は、余分な電子を生み出すために不純物が添加されたn型半導体と、電子を不足させるために不純物が添加されたp型半導体を上右図の様に直列につないで効率アップを図っている。

 

)ペルティエ効果

 1834年ジャン・シャルル・ペルティエ(jean Charles Athanase Peltier)は、異種の導体の接点に電流を通すとき,接点でジュール熱以外に熱の発生または吸収がおこる現象を発見した。電流の方向を逆にすれば熱の発生と吸収は反対になる。この現象をペルティエ効果(Peltier effect)と言う。これは自由電子がはこぶ熱流と電流の比が導体の種類により異なるためにおこる現象と解釈されている。

 ペルティエ効果はゼーベック効果の逆で、ゼーベック効果の熱電流はいつも高温接点を冷却し、低温接点を熱する方向に流れる。熱電対全体が一定温度に保たれていれば、二接点の一方から他方へ運ばれる熱量Qは電流Iに比例する

 次図は半導体を用いた熱電冷凍回路の概念図である。冷凍空間からQLの熱が吸収されて、より暖かい環境にQHの熱が捨てられる。これら二つの熱量の差が、供給しなければならない正味の電気仕事 We=QH−QL である。

 その効率が悪いことから蒸汽圧縮冷凍システムにはかなわないが、小型で単純なこと、さらに靜かで信頼性が高いことから特定の分野では好んで使われている。

 

(3)トムソンの式

 W.トムソン(ケルビン)は、熱力学的考察によって熱電能eABペルティエ係数ΠABの間には

の関係が成り立つ事を予想した。実際に測定してみると確かにこの関係が成り立つことが解った。

[証明]
 ゼーペック効果により発生する電流をIとすると、毎秒なされる電気的仕事は

となる。このとき熱電対を高温接点からQの熱が熱電対に流れ込み、低温接点からQ’の熱が流れ出る一種の熱機関と考えれば熱力学第一法則(エネルギー保存則)より

また、熱力学第二法則(カルノーの原理)より

となる。これは高温側接点からΔS=Q/Tのエントロピーが熱電対に流れ込み、低温側接点から同じだけのエントロピーΔS=Q’/T’が流れ出る事を意味する。よって

となる。この式と前述のW=IeABΔTを組み合わせると

となる。

 一方ペルティエ効果において、二接点の温度が同一のTに保たれているとき電流が流れることにより一方の接点から他方の接点へ移動する熱量をQとすると、この場合に輸送されるエントロピーは

となる。
 このときエントロピーを運ぶものはおそらく電流(電子)であろう。そのとき同じ電流が流れれば同一のエントロピーが運ばれるものと考えても良いであろう。そのため(A)=(B)と置くと

が得られる。
[証明終わり]

[補足説明]
 ここで用いた議論は、熱伝導やジュール熱を含む本来非平衡な現象を切り離して、定常状態にある熱電対をカルノー機関と見なして導いたものです。上記の結論が実験によって裏付けられるとしても、このように非可逆的な効果と可逆的な効果をわけて議論することについて、理論的な裏付けがあるわけではないので、トムソン自身も疑念を表明している。
 実際の所、金属電子論によってこの関係式を厳密に導いたのは、ゾンマーフェルト(1928年)のようです。詳しくはSommerfeld著「熱力学および統計力学」§21.C.を参照されたし。

 

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7.参考文献

 冷凍サイクル蒸気動力サイクルと表裏一体の関係にあり、実在気体の熱的性質すなわち原子・分子間力ファン・デル・ワースル状態方程式ジュール=トムソン効果と深く結びついています。また、冷凍サイクルは気体の液化技術やそれから派生した極低温物理学(超伝導、超流動)、熱力学第三法則、等々・・・・の興味ある話題に関係しており、動力サイクルとは違った面白さがあります。
 このHPの内容は下記の文献に全面的に依存しています。図や表もそれらから引用しました。感謝!

  1. ジョン・F・サンドフォード著 現代の科学20「熱機関」河出書房新社(1980年刊)
     古い本ですが図書館にはきっとあると思います。
  2. Yunus A.Cengel、Michael A.Boles共著「図説基礎熱力学」「図説応用熱力学」オーム社(1997年刊)
     分厚い本ですが、とても解りやすい。冷凍サイクルについては他に適当な本を持っていないので、ほとんどこの本から引用しています。できるだけ解りやすくなるように努力しました。

 熱機関の効率に関するページを作ってみて強く感じる事は、これらの科学・工学の成果は人類に取って極めて重要な位置を占めており不可欠の技術ですが、常に熱力学原理の制約を受けており決して夢のような機関は存在しないということです。かって原子力発電が(永久機関の様に無尽蔵に熱が発生できるので)その夢の機関だと考えられた時代がありました。しかし、その放射能汚染の弊害を考えると楽観できる状況ではありません。
 今日、我々は莫大なエネルギーを消費しないと我々が必要とする動力も熱の移動も生み出せません。我々は今後ますます省エネルギー技術に関心を持った生き方をしなければならないだろう。とくに化石燃料を消費して大量に二酸化炭素を放出する現在の生活形態は早急に見直さなければならない。

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