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熱機関の効率(蒸気動力サイクル)

 ここでは作動流体が蒸発と凝縮を交互に繰り返す蒸気動力サイクルについて説明します。ガス動力サイクル冷凍サイクルについては、別稿「熱機関の効率(ガス動力サイクル)」2.「熱機関の効率(冷凍サイクル)」で説明しましたのでそちらを御覧下さい。絶対温度・エントロピー・熱効率について馴染みの無い方は、先に別稿「絶対温度とは何か(積分因子とは何か)」をお読み下さい。一般的な準備事項については別稿「熱機関の効率(ガス動力サイクル)」1.をお読み下さい。、

 熱効率は絶対温度K(ケルビン)が深く関係します。しかしここでは多くのグラフを工学の慣習に従って摂氏温度で表現していますので、計算するときに注意して下さい。
 またほとんどの結果は単位質量について計算したものです。それを明示するために示量性変数は小文字で記しています。大文字で表した示量性変数は装置全体についての量だと思って下さい。

3.蒸気サイクルのための準備

 ここでは、主に水が作動流体である水蒸気動力サイクルを説明します。そのため最初に、水の状態図について説明します。

)水の状態方程式

 熱力学確立の端緒となったのは、ニューコメンやワットの蒸気機関の発展です。これは実用においてとても大切な技術なので多くの人が、その改良に腐心した。カルノーの考察も蒸気機関の効率をよくするのはどうしたらよいかを模索した成果です。そして蒸気機関の理論解析の鍵は、水蒸気の性質や振る舞いについての正確な知識でした。ワットの死後、フランスのアンリ・ヴィクトル・ルニョー(Henri Victor Regnault1810〜1878)は水蒸気のいろいろな性質についての包括的な表を初めて作った。熱力学誕生に貢献したケルビン(W.トムソン)の「ルニョーの水蒸気についての実験から得られる数値的な結果についてのカルノーの熱の動力の理論」(1849年)という論文の題はこの当たりの事情を端的に表している。
 水蒸気は理想気体の法則に従わないので、その状態変化の正確な知識を得るには多くの努力と資金が必要でした。測定には精密な技術が必要であったが、今日それは詳しく調べられており、その表やグラフは理論的な解析には不可欠のものとなっている。

.理想気体の状態図

水の状態図を説明する前に、理想気体のそれを復習しておく。
[P-v-T状態図]

[P-v線図、T-v線図、P-T線図]

[sとP、v、Tに関する状態図とダイヤグラム]については別稿を参照されたし。

 

.水のP-v-T状態図

 理想気体の状態方程式は初等関数で表せたが、水のような実在の物質については簡単な関数で表すことはできない。実験式で表せるだけである。そのためここでの議論では蒸気表や蒸気状態図が重要になる。

 下左図は水の状態をP-v-T面で表したもので理想気体の状態方程式に相当する。理想気体と違って水分子は大きさを持ち分子間に引力が働くために、密度が大きくなると液体や固体に凝縮してしまう。そのため曲面の様子は密度が大きな部分では理想機体と大きく異なり、簡単な関数で表すことはできない。次節でのべるような実験による測定で決められる。
 そのとき更に、水の様に凝固するとき膨張する物質(下左図)は、凝縮で収縮する普通の物質(下右図)とは固体・液体共存面が異なる。

 実際の利用にはこの曲面をT=一定の平面で切った切り口の曲線をP-v平面に射影したもの(P-v線図)、P=一定の切り口曲線をT-v平面に射影したもの(T-v線図)、や2相の共存面をP-T平面に射影したもの(P-T線図)が用いられる。
 下図はP=一定の曲線群をT-v線図にしたものです。この図で水蒸気を理想気体と見なせる領域(灰色部分)とそうでない領域を示す。灰色部分は理想気体の状態方程式がほぼ使える部分です。しかし実際のサイクルの作動領域は図の左側部分なので、このことは何の慰めにもならない。

 

.T-s線図

 エントロピーを状態変数にしたT-s線図を説明する。
 20℃の単位質量の水(亜冷却水)をシンリンダーに入れ、自由に動くピストンの上に1気圧の圧力に相当する重りを載せて一定の圧力状態に置く(状態1)。一定圧力のもとで熱していくと温度もエントロピーも増大して経路1→2をたどり飽和水となる(状態2)。更に熱すると温度は100℃を保ったまま水は沸騰・蒸発して水と水蒸気が混じった混合物となる。経路2→3をたどりやがて飽和水蒸気となる(状態3)。この状態2から状態3に行くのに必要な熱量を蒸発の潜熱といい1気圧のもとでは2.26×106J/kg(539cal/g)である。続けて水蒸気を熱すると過熱水蒸気となり、温度とエントロピーは更に増大し続ける(状態4)
 同じ実験をピストンの重りを変えて6.8気圧で行うと、水の沸騰点は164℃となり、蒸発の潜熱は2.07×106J/kg(493cal/g)に減少する。さらに圧力を上げて同様な実験をすると沸騰点は上昇しつづける。やがて臨界点に達し蒸発の潜熱はゼロになる水の臨界点の温度は374℃(647K)で圧力は218.3気圧(2.21×107Pa=22.1MPa=221bar)です。もちろんこれよりも高い圧力で水蒸気を作ることはできるが、そのときは蒸発の潜熱もなく、液体から気体への相変化も見られなくなる。こういった圧力では水を高温に熱していったとき、液体と気体をはっきり区別できる点は存在しない。
 水についてもう一つ興味深い点は0℃という温度です。シリンダー内の水を0℃にして、圧力を0.007気圧(高度の真空)にすると、それは飽和水の状態になる。この温度、圧力で水は固体、液体、気体の三相が共存でき三重点と呼ばれる。
 それに熱を加えれば水が全部蒸発してしまうまで、0℃で沸騰する。他方この0℃の飽和水から熱を取り去るとそれは同じ温度で凍って固体(氷)になる。融解の潜熱3.34×105J/kg(79.7cal/g)だけ熱を取り去ると、水はすべて氷になり、それから温度は下がり始める。
 0℃以下では飽和水の線はなく水は氷りまたは水蒸気としてのみ存在できる。これが冬の寒い日に空気中の水蒸気が直接凍って雪や霜になる現象です。またその温度領域では、氷は直接蒸発(昇華)して水蒸気となる。

 T-s線図は基本的には上に述べた方法で描く。すなわち単位質量の水を圧力が調節できる可動ピストンのついたシリンダーに詰めて圧力を一定に保ちながら熱を加えていく。そのとき加えた熱量をそのときの絶対温度Tで割った量がそのシリンダー内の水のエントロピー増大量ds=d’q/Tです。微少なdsだけ増やしながら、新しい点の温度と圧力(あるいは体積)を測定して図上にプロットしてゆけばよい。そうして少しずつ熱を加えながら点を打って行くと圧力一定の曲線が得られる。ピストンに加える圧力を少し変えて同様な操作を繰り返せば下図のような曲線群が得られる。一般にはこれらの値を数表にした蒸気表が用いられる。[拡大図はこちら


 別稿で説明したように、T-s座標上に描かれた状態変化の経路図(ダイヤグラム)において、灰色部分の面積(下図)は1→2の過程でその作動物質に流入した熱量の合計値を表す。もちろん、このことが言える為には1と2が可逆な過程で結ばれた経路であることが必要です。このT-s線図上のエントロピーは熱機関の性能を論じる熱効率の議論には特に重要な量です。

 このようなT-s線図には以下の特徴がある。

  1. 過熱蒸気領域では、一定容積線は一定圧力線よりも勾配が急である。気体に一定の熱(Tds)を加えるとき、一定圧力を保つためには外に対して膨張して仕事をする。そのとき失われるエネルギー分だけ一定体積のときよりも温度上昇量は少なくなる。
  2. 湿り蒸気領域において、一定圧力線は一定温度線と平行になる。
  3. 圧縮液領域において一定圧力線は飽和液線とほとんど重なる。つまり液体状態では断熱圧縮(s=一定)して圧力を大きく変えても、その温度も容積もほとんど変わらないと言うことです。

 

.h-s線図

次図はh-s線図上の曲線の意味を示す。

 h-s線図の描き方もT-s線図の場合と同じです。シリンダーに単位質量の水を詰めて、圧力一定の基で少しずつ熱を加えて行き、温度や体積の変化を追跡すればよい。そのときエントロピーの変化はds=d’q/Tだし、エンタルピーの変化は圧力一定の基での加熱だからdh=d’qとなる。そうしてsとhを少しずつ変化させながら温度と体積を記入してゆけば、下図の様な曲線群が得られる。[拡大図はこちら


 エンタルピー定常流れ装置第一法則(エネルギー保存則)解析で重要な状態量であり、エントロピー断熱過程における様々な不可逆性の計算に重要な状態量[別稿参照]です。
 例えば断熱タービンの入口1と出口2における状態がh-s図上で下左図の様になった場合Δh=[単位質量当たりのタービンの出力仕事量]であり、Δs=[その過程によって生じた不可逆性の尺度]になる。図の経路は不可逆性を伴っているので厳密に定めることはできない。そのため点線で仮の線が記してある。

 エンタルピーは上右図に示すように、両端が開いた領域に作動物質が流入、流出することで動力発生や冷凍過程が生じるような流れ系の解析においで重要です。そのとき、エンタルピーはただ単に単位質量の気体が持つ[内部エネルギーu]にその気体の[体積v]×[圧力P]を加えたものです。各成分は状態量であるから、その和であるエンタルピーhも状態量となる。このような量を考える意義はこちらこちらを参照されたし。
 h-s線図には次のような特徴がある。図中の等乾き度線については次で説明する。

  1. 湿り蒸気領域では一定圧力線、一定温度線ともにほぼ直線になる。
  2. 過熱蒸気領域(特に低圧部)では、一定温度線はほとんど水平になる。蒸気は飽和領域から遠ざかるにつれて理想気体に近づき、理想気体のエンタルピーは温度のみの関数(Δh=cpΔT)になるからです。


 

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(2)湿り蒸気と乾き度

 状態図の湿り蒸気領域では、飽和蒸気と飽和液が共存する。本来別々に分かれて存在するのだが、理論解析では液相が微少な液滴となって気相中に均等に分散している飽和液・蒸気混合物として取り扱う。

その際、以下で定義される乾き度が状態変数として用いられる。

 乾き度は湿り蒸気に対してのみ定義できる。飽和溶液の乾き度は0(0%)であり、飽和蒸気では1(100%)になる。飽和液で占められた容積をVf、飽和蒸気のそれをVg、全容積をVとすると

となる。これは乾き度xをP-v線図、T-v線図の横方向の座標と関係づける。
 上記の関係は、示量性状態変数である内部エネルギー、エントロピー、エンタルピーに対しても同様に成り立つ。

 

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4.蒸気動力サイクル

 技術者は長年の経験から熱機関は流れのある過程を用いて別々の場所で各過程を実施させた方が効率が良いことを知った。サベリーやワットの蒸気機関もそうなっている。まず一番目の装置であるボイラーで水蒸気が作られ管を通ってシリンダーに入る。第二の装置はシリンダー、ピストン、弾み車等からなる動力を生み出す部分です。ワットはこの動力部に続いて第三の分離した装置として凝縮器を付け加えた。彼はこうした方がシリンダーの中で水蒸気を凝縮させるよりもずっと効果的であることを見抜いていた。この凝縮した蒸気は凝縮器から最後の四番目の装置である凝縮液ポンプに入りボイラーに戻る。
 こういったサイクルは、今日でも蒸気機関の基礎をなしており、“ランキンサイクル”と呼ばれている。ランキン(William John Macquorn Rankine、1820〜1872年)はイギリスの物理学・工学技術者です。
 ランキンの著書“A Manual of the Steam Engine and Other Prime Movers (1859)”はネットからダウンロードできます。

)ランキンサイクル(Rankine cycle)

 以下、工学の慣習に従ってT-s線図のT軸は摂氏温度の0℃から取ってある。そのとき、qinやqoutをT-s線図の面積から計算するには絶対零度0Kから測った絶対温度Tにdsを乗じたTdsをs関して積分したものであることを忘れないこと。

.ダイヤグラム

ここでも別稿で説明した理想化の仮定が成り立つものとしている。理想的なランキンサイクルは内的には不可逆性を含まない四つの過程からなる。

1→2:ポンプ内の等エントロピー(断熱)圧縮
 水は状態1で飽和液としてポンプに入り、ボイラーの運転圧力まで加圧される。水は僅かに縮み、いくらか温かくなるが、T-s図の1→2の距離はかなり誇張されている
 
2→3:ボイラー内の定圧加熱(P=一定)
 様々な熱源により加熱される。大半は水と共存する等圧の過程であるが、蒸気になった後にも更に加熱される。上図の[面積a23b]がそのとき伝達される熱量を表す。
 
3→4:タービン内の等エントロピー(断熱)膨張
 水蒸気は断熱膨張しながら仕事をして温度が下がっていく。4で復水器に入る時には、通常高い乾き度の湿り蒸気の状態である。上図の[面積1234]がサイクルで生産される正味の仕事です。
 
4→1:復水器内の等圧放熱(P=一定)
 復水器は河川水や大気により冷却されたパイプの中を通りながら、一定圧力の基で熱を捨てながら凝縮する。最終的に飽和液となってポンプに送り込まれる。上図[面積a14b]が復水器から捨てられる熱量を表す。

 ボイラー内の蒸発器、過熱器、再熱器の配管は、燃焼ガス温度と作動物質温度の差ができるだけ少なくなるように、燃焼ガスの温度変化に対応して巧妙に配置されている。もちろんパーナーにおける燃料燃焼用の空気も最終段階の排気ガス熱によりあらかじめ余熱される。その様にして燃焼熱をできるだけ利用して低い温度で排出したほうがよいのだが、排ガス温度が100℃以下になると排ガス中の二酸化硫黄や三酸化イオウ(無水硫酸)が水滴と化合して亜硫酸や硫酸となり、鋼管や伝熱エレメントを腐食させる。そのため最終的な排気ガスの温度は100℃程度以上になるように調整されている。
 最後に燃焼排ガスは機械式集塵機・静電気式集塵機により塵を取り除き、脱硫装置でイオウ分を取り除いた後に大気中に放出される。静電気式集塵機は、高電圧放電で塵をイオン化させた後に電圧をかけた極板に付着させて取り除くものです。脱硫装置は活性炭などの吸着剤で亜硫酸ガスを吸着した後、活性炭を洗浄して希硫酸として回収する。活性炭は排煙保有熱で乾燥させた後に何度も吸着工程で使用される。(静電気式集塵機を発明したのはFrederick G. Cottrellで1907年の事であったようです。C.H.タウンズ著「レーザーはこうして生まれた」p160より)

 作動流体である水は、塵を完全に取り除くのはもちろんですが、溶解している正・負イオンや溶存している酸素や窒素などの気体成分も完全に取り除かれる。また、管壁を保護する酸化被膜の形成及びその安定化のために水のpHは厳密に管理される。水は、運転に伴い定常的に少しずつ漏れ出て失われていくので、絶えず補給する必要がある。石炭利用発電所概念図 火力発電所配置図 抽気発電プラント配管図

ちなみ、別ファイルで火力発電用大型タービンの配置例復水器の構造その例を示す。

 

.熱効率

 ランキンサイクルは別稿で述べた定常流れ過程として解析できる。そのとき成り立つ式において、水蒸気の運動エネルギーと位置エネルギーの変化量は、仕事と熱の伝達量に比べて小さいので無視できる。

 理想的な場合、ボイラーと復水器は仕事をせず、ポンプとタービンは等エントピー的(熱のやり取りをしない)としているので

となる。そのため正味仕事、熱効率、逆仕事比は

となる。ここでh2がh1とほぼ等しいとおけることは次節の[例1](1)の逆仕事比rbwを参照。

 

.数値例

 蒸気動力サイクルでは、ガス動力サイクルと違って状態方程式が簡単な数式で表せない。そのため、詳細な議論には蒸気表が必須です。3.(1)3状態図からも大体の値は読み取れますが、蒸気表を準備していますので、別ウインドウで開き参照しながら説明をお読み下さい。

[例1]
 ボイラー圧力3MPa(約30気圧)、タービン入口蒸気温度350℃、復水器内圧力75kPa(約0.75気圧)の理想ランキンサイクルを考察する。

蒸気表を用いて
 (1)状態1〜3におけるエンタルピー値
 (2)状態4における乾き度xとエンタルピー値
 (3)サイクルの熱効率
 (4)逆仕事比rbw

を求めよ。

(1)

2とh1の差は3kJ/kgで、他の部分の変化量に比べて小さいことに注意。また(4)の逆仕事比rbwも参照されたし。

(2)

(3)
(1)、(2)で求めたエンタルピー値を用いると

となる。あるいは

の関係式を考慮して

となる。これはあくまで理想的な場合で、実際には様々な不可逆過程により、これより低くなる。

(4)
 逆仕事比rbwは、その定義より

となる。

 

.ランキンサイクルの特徴

 ランキンサイクル逆仕事比rbw1%以下極めて小さいことは注目に値する。別稿で説明したブレイトンサイクルでは40〜80%であったことと対照的です。これは作動圧力まで圧縮するための仕事が高密度の液体の状態で行えるからで、蒸気動力サイクルの一番の特徴です。これが、蒸気動力サイクルが一番最初に実用化できた理由かもしれない。
 
 上記のランキンサイクルで湿り蒸気を発生するボイラーの温度は、蒸気表の圧力P=3.0MPaの欄から読み取ると、233.90℃(507K)です。実際のサイクルでは湿り蒸気を発生する蒸気発生器と、350℃まで過熱する過熱器はボイラー内の異なった温度状況の場所に設置されて連結されている別の装置です。一般にその両装置において水蒸気と熱源(燃料の燃焼炎の温度)との間には大きな温度差があり、不可逆的に熱が伝達されます。それにも係わらず、ここでの議論はすべて内的に可逆な過程として論じられていることに注意してください。内的可逆性の意味は別稿を参照されて下さい。そこで説明したように、ここで得た熱効率も理想的な可逆サイクルとして議論して得た熱効率で、別稿で説明したAの場合です。そこのBの場合ではありません。その意味で熱効率は悪くなっています。
 さらに実際に燃料の燃焼で発生する熱量はもっと多く、その内の一部は利用されることなく燃焼室からそのまま煙突を通して大気中に捨てられてしまいます。この捨てられた熱も考慮して、熱効率定義式の分母を熱機関が取り入れた熱量ではなく発生した熱量で定義すると熱効率はさらに悪くなります。しかし、普通工学でいう熱効率の定義は、これらの点は考慮していません。あくまで内的に可逆である熱機関の中に取り入れられた熱量に対する正味仕事の割合であることを忘れないで下さい。内燃機関ではこの差はあまり問題になりませんが、外燃機関ではこの定義の意味は重要です。
 
 その様に全体的不可逆性があり、燃焼熱も無駄に捨てられてはいますが、ガス動力サイクルと違って、大半が定圧のもとでの沸騰というほぼ等温での熱移動が実施できることはランキンサイクルの大きな特徴です。

 参考までに、同じ温度範囲で運転されるカルノーサイクルの熱効率を計算すると

となります。もちろん高温熱源の温度が350℃、低熱源の温度が91.78℃で無限小温度差のもとで熱移動するとしているカルノーサイクルの熱効率ですから、この値と上記の値を単純に比較してもあまり意味はありません。

 

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(2)ランキンサイクルの熱効率改善

 今日、全世界の電力生産のほとんどを蒸気動力サイクルが担っています。そのため、その熱効率の改善は現実世界の課題として極めて重要です。ほんの僅かな改善で莫大な量の資源を節約できるのですから。
 以下で説明する内容は経験的にはよく知られていた事柄ですが、熱力学がその理由を明快に説明してくれます。これは熱力学の大きな成果の一つです。

.復水器の温度(圧力)を下げる

 復水器内の水蒸気は、復水器の温度における飽和湿り蒸気として存在する。復水器の温度を下げることは水蒸気の圧力を下げることです。大半の蒸気動力システムは冷却に水を利用します。そのため発電プラントは河川や湖・海の近くに設置されることが多い。例えば15℃の水が冷却に使えるとすると、有効な熱伝達を達成するために必要な温度勾配も考慮すると復水器内の蒸気温度は25℃程度となる。25℃の飽和圧力は3.2kPa(0.032気圧)となり、この圧力は真空と言っても良い程の低気圧になります。そのため復水器内に外気が侵入することを防ぐ対策が重要です。そのような対策がしっかりできて復水器の温度を100℃から25℃に下げることができれば下図の灰色部分の面積だけ熱効率は改善されることになります。

 ただし、タービン入口温度(状態3)が同じで復水器温度を下げるとタービンの最終段階における蒸気の湿り度が増える[図の状態4→4’]。そのため水蒸気中に多量の水滴が発生してきて、タービンブレードを腐食する弊害が出てくる。この対策については、次節と4.(3)で説明する。
 凝縮圧力及び状態3における圧力・温度と効率の関係を蒸気表を用いた数値計算結果で示すと下図の様になる。

 ところで、復水器(凝縮器)の温度が100℃の場合、飽和水蒸気圧が1気圧になるため、上記の空気漏れに対するシールがやりやすくなる。またこの場合は復水器が省略できて、水蒸気を大気中に直接放出することも可能になる。
 かって大活躍した蒸気機関車Steam Locomotive 詳細説明はその様にしてかさばる復水器を省略していた。ちなみに昭和の時代に活躍した標準的な蒸気機関車のボイラー圧力は10〜17気圧程度で、最大出力1600馬力、最大牽引力10〜15tw程度で1km走行するために10〜20kgの石炭を消費した。また淡水はその7倍程度消費した。当時連結していた標準的な炭水車の石炭積載量は10t程度、淡水は10〜20t程度であるため、石炭を満載すれば400〜600km程度走行できたが、水は60〜100km毎に給水しなければならなかった。そのため炭水車の停車位置に給水装置を設置した駅が一定間隔でもうけられており短時間で給水できるようになっていた。実際にシリンダーの大きさと往復回転数を顧慮して水蒸気消費量を計算してみると、開放型の蒸気機関車はとにかく大量の淡水を消費する事が解る。
 
 船舶用蒸気機関では、陸上の蒸気機関車と違って、早くから復水器を用いて缶水を閉鎖系で用いる技術が発達した。船舶の動力として蒸気機関が使われ始めたのは1800年代の始め頃である。初期のボイラーは海水を養缶水として用いた開放形であったが、塩が析出するために定期的にそれを取り除かねばらなずメンテナンスが大変だった。その様な状況で、イギリスの技術者サミュエル・ホール(1781〜1863年)は1834年に細いパイプを沢山並べてその中に冷却水(海水)を流して蒸気を凝縮させる復水器を発明して完全な閉鎖系とした。この装置を積んだシリウス号(700トン)は蒸気船として初めて太平洋を横断(1838年)する事ができた。当初復水器は複雑・高価で故障が多かったが、1860年頃には改良が進んで、以後広く用いられるようになった。
 復水器が船舶において早くから普及したのは、おそらく
  1.船では陸上と違い真水が貴重品なので、蒸気機関用の缶水として野放図に消費できなかった。
  2.船は蒸気機関車と違い復水器を設置する場所の余裕がある。
  3.冷却水には海水を用いれば良いので復水器の冷却媒体に事欠かない。
等の理由であろう。

[蒸気タービンについて重要な補足説明]
 
 初期の蒸気動力機関は、いずれも蒸気機関車に用いられていたのと同様の往復式ピストンから動力を取り出すものであった。そのとき往復式動力機関では断熱膨張で仕事を取り出すとき冷却水で造られる最低温度の圧力まで膨張させることは機構的に不可能です。シリンダー容積が膨大なものとなるからである。そのため、往復式蒸気動力機関の時代には、蒸気を高温・高圧のまま大気中に捨てざるを得ず、復水器は必要無かったのである。そのために熱効率も悪い。
 もちろん往復式においてもピストン口径の違うシリンダーを組み合わせて多段階に膨張させるメカニズムが工夫された。このアイディアはかなり古くからあったようですが、実用に耐えるものを完成して船舶に応用したのはイギリス人技術者ジョン・エルダーが最初のようです。彼は1853年に二段膨張式の往復蒸気機関の特許をとり、翌年に、これを装備した蒸気船を走らせ、シングルシリンダーのものより効率が良い事を証明した。その後三連、四連成機関も制作されて発展したが、多段になるほど摩擦が増え機構が複雑化して、その性能は結局蒸気タービンにかなわなかった。
 ただし、過渡期には高圧蒸気でまず往復動蒸気機関を動かし、やや圧力の下がったその排気をタービンに入れて回転させるという組み合わせ蒸気機関もつくられた。これには熱効率を改善し、逆転が容易というレシプロエンジンの特性(タービンは逆回転はできない)が使えるメリットがあった。1912年の処女航海で遭難した有名なタイタニック号もこのタイプの蒸気エンジンを積んでいました。
 
 ところが今日用いられている蒸気タービンでは冷却水温度でつくられる最低圧力まで膨張させることができ、蒸気の持つエネルギーを最大限に有効仕事として取り出すことができます。それ故に、今日の発電所では、熱効率を上げるために蒸気を水の冷却温度・圧力まで膨張させるのが必然となっている。そのため閉鎖系で作動物質を循環させる復水器は必須の装置です
 
 産業革命当時隆盛を誇った往復式蒸気動力機関ではあったが、その後の内燃機関の発展とともに一時衰退の兆しがあった。しかし1880年代にチャールズ・アルジャーノン・パーソンズ(1854〜1931年)によって発明された蒸気タービンカール・グスタフ・パトリック・ド・ラヴァル(1845〜1913年)の拡張ノズルの発明が蒸気動力機関の効率を飛躍的に改善した。
 まさに蒸気タービンは蒸気動力機関に取って起死回生の大発明だったのだ。そのため、蒸気動力サイクルは、熱源は石炭・石油・天然ガス・原子力と多様化したが、今日の電力供給の動力のほとんどを生み出している
 
 パーソンがどの様にして蒸気タービンの構想に行き着いたかについて、後にバーミンガム協会での会長講演「原動力について」(1922年)で彼自身が語っている。非常に興味深い内容なので次に引用する。
 「・・・・1884年に蒸気タービンの仕事を始めたとき、圧力差が小さければオリフィスを通る蒸気の流れの法則は水の流れの法則と密接に対応していることがわかり、水カタービンの効率が70パーセントから80パーセントであるという事実を考慮した上で、蒸気タービンの設計の基礎として水カタービンを取り上げることが、進むべき最も安全な道だとはっきり見えてきた。言い換えれば、私には次のように考えることが合理的であると思えた。すなわち、もし蒸気タービンの中における全体の圧力降下が多数の小さな段に分割され、そして水カタービンのような単位タービンを各段に置けば(それらは、それら各々に関する限り、事実上非圧縮性流体中におけるように作動するであろう)、直列につないだそれぞれの独立したタービンは、水カタービンと同じような効率をもつに違いなく、したがってそれを総合した全タービンも高い効率を得ることになるであろうし、さらに、最高の効率に達するために必要な回転速度もそれほど高くないであろう、と。・・・・」
 これはまさに素晴らしい考えであった。これを実現するために、羽根車からなる一連のタービンを軸車に取りつけ、それを、回転羽根と互い違いに入る内向きの羽根列をもつシリンダーの中に入れた。軸車とシリンダーの間を軸に平行に流れる蒸気は、まず最初のタービンに送られ、その排気が第二段に送られるというように次々に各段を通り、圧力はこのように分割されて軸車の羽根列を駆動するのに使われる。タービン各段における圧力降下は小さく、速度も軸速度の実用限界の範囲に収まる。蒸気の圧力が下がるのにつれて体積は増加するが、これに対応して、羽根列のピッチと長さは排気側に向けて大きくなっている。
 軸端の推力を相殺するため、一方は右、他方は左流れのタービンで一セットとなっていて、ボイラーからの蒸気はそれらの中央から供給される。これだけではない。往復動機関では回転速度が数百であるのに対して、こちらは数千にも達するので、高速度にともなう機械的な諸問題があった。遠心力、軸受とその潤滑、速度調整−これらの問題はすべて考慮され、対策がとられていた。
 これが、パーソンズの有名な1884年4月23日の特許「弾性流体によって駆動され、ポンプにも応用可能な回転原動機の改良について」(番号6735)で示された構造だった。この特許は重要性において、1769年のワットの分離凝縮器のそれに匹敵するものであった。
 このタービンは最初から、新しく導入された発電機[すでに述べたとおり毎分約1200回転の速度が必要とされる]を直接駆動する機関として構想されていた。往復動機関には大きすぎるこの速度も、速度がその10倍もあるタービンには小さすぎた。この事実に気づいたパーソンズは新しい発電機を設計しなければならなかった。その発電機について、彼はタービンと同時に特許を取った。すなわち、1884年4月23日の「発電機ならびにその流体圧力による駆動についての改良」(番号6374)である。
 パーソンズのこの分野での業績を知るには、生涯の協力者であり友人であったジェラルド・G・ストー二ー博士がこれらの黎明期について語っている言葉(1937年)を引用するのが最も相応しいと思われる。「電気についての知識がきわめて乏しかった53年前に、彼が初めて設計したタービン発電機の各部分が、私の知るかぎりでは、今日までほとんど改良されず、またその機関がつくられてから四半世紀以上も手をつける必要がなかったという事実にもまして、パーソンズの直感力を例示するものはまずないであろう。」

[H.W.ディキンソン著磯田浩訳「蒸気動力の歴史」平凡社(1994年刊)P221〜224より引用]
 また、パーソンズは船舶用蒸気タービンの開発者としても有名です。

 

.水蒸気を高温まで加熱する。

 蒸発器を出た水蒸気をボイラー内の過熱器でさらに高温まで加熱すると、ボイラーの圧力を高くすることなくタービン入口の水蒸気温度を上げることができる。下図の灰色部分の面積が正味仕事の増加分を示している。またダイヤグラム3→3’の下の全面積は供給熱量の増加分を示している。

 正味仕事と供給熱量は共に増加するが、加熱時の平均温度が上がるので熱効率は良くなる。また、蒸気温度を上げることは、タービン出口の水蒸気の乾き度を高める(状態4→4’)ためにタービンブレード腐食の害を減らすことができる。
 しかしながら、蒸気を過熱できる最高温度にはタービン容器やブレードの耐熱性からくる冶金学的な制限がある。現在、タービン入口において許容できる現在の最高蒸気温度は620℃程度であり、ここはさらに高温に耐える材質の開発にかかっている。
 ガスタービンの場合、最高圧力は低く(20気圧以下)空気冷却技術が使えたために、限界温度はもっと高く(現在は1200〜1500℃程度)設定できた。しかし、ランキンサイクルの作動圧力ははるかに高く(150気圧以上)、また空気の混入は重大な不都合を生じるので、そのテクニックが使えない。

 

.ボイラーの圧力(温度)を上げる

 ボイラーの運転圧力を高めると沸騰温度が上昇する。これは蒸気に加えられる熱の平均温度を最も効果的に上げるので、ランキンサイクルの熱効率を上げる最も有効な方法です。
 ただしタービンブレードの熱耐性に伴うタービン入口温度の制限から、最高温度を同じにしたままでボイラー圧力を上げようとすると、サイクルの等エントロピー過程は左に移動し、タービン出口の蒸気の湿り度が増える。[下左図(状態4’→4)]この望ましくない影響は、次節で述べる蒸気の再熱で修正できる。

 初期のボイラーは、この高圧化が原因で爆発事故をたびたび起こした。今日でもこの高圧力に対する安全対策はボイラー運転上の最も重要な課題です。
 ボイラーの運転圧力は1922年頃は約2.7MPa(約27気圧)であったが、今日では30MPa(300気圧)を越える超高圧で運転される。これは水蒸気の臨界圧力22.09MPa(約218気圧、374℃)よりもさらに高く超臨界圧運転といわれ、最近では熱効率40%以上を達成できるようになった。[上右図]
 状態3における圧力・温度と効率の関係を蒸気表を使って数値計算すると、大体下図のようになる。

 

.数値例

[例2]
 下図(a)〜(c)の三種類の理想ランキンサイクルの乾き度熱効率を比較する。

(a)4.(1)3.[例1]の復水器圧力を75kPa→10kPa(約0.1気圧)に下げた場合。
   ただし、ボイラー圧力3MPa(約30気圧)、タービン入口蒸気温度350℃は[例1]同じとする。
(b)(a)と同じ圧力で蒸気温度をを350℃→600℃に上げた場合。
(c)(b)と蒸気のタービン入口温度を同じにして、ボイラー圧力を3MPa→15MPa(約150気圧)に上げた場合。

(a)

となるので

 これは4(1)3.[例1]の復水器の圧力を75kPa→10kPaに下げた場合です。このことにより熱効率は26.0%→33.5%に増加している。ところが、同時に蒸気の乾き度が0.886→0.812に減少する。つまり湿り度が11.4%→18.8%へ増大する。

(b)
 状態1と2は(a)と変わらない。状態3(3MPa、600℃)のエンタルピー、状態4(10kPaでs4=s3)のエンタルピーと乾き度は同様な方法で求まる。

蒸気温度を350℃→600℃に高めることで熱効率は33.5%→37.3%へ増大する。また蒸気の乾き度は0.812→0.914へ増大(湿り度は18.8%→8.6%へ減少)する。

(c)
 状態1以外は変化する。状態2(15MPaでs2=s1)、状態3(15MPa、600℃)、状態4(10kPaでs4=s3)のエンタルピーと状態4の乾き度は同様な方法で求まる。


タービン入口の蒸気温度を600℃に制限したままで、ボイラー圧力を3MPa→15MPaに上げると、熱効率は37.3%→43.0%に増大する。同時に蒸気の乾き度は0.914→0.804へ減少する。つまり蒸気の湿り度は8.6%→19.6%へ増える

 

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(3)再熱ランキンサイクル

 ガス動力サイクルと同様に再熱により熱効率を良くできますが、蒸気動力サイクルでは乾き度の改善というもっと重要な働きがあります。

.ダイヤグラムと熱効率

 前節でボイラーの圧力を上げるとランキンサイクルの熱効率は良くなるが、蒸気の乾き度が減少(湿り度が増大)するためタービンが腐食する不都合が生じることを説明した。そのことを避けるには、タービンを高圧タービンと低圧タービンの二段階にわけて、その間で蒸気を再熱(reheat)してやればよい。下図は理想的再熱ランキンサイクルのT-s線図です。

 この場合、蒸気は第一段階の高圧タービンで等エントロピー(断熱)的に中間圧力(状態3)まで膨張した後にボイラーにもどされる。そして最初のタービン入口温度まで、圧力一定(当然圧力は低くなっている)のもとで再熱される。次に蒸気は第二段階の低圧タービンで復水器圧力まで等エントロピー(断熱)的に膨張する。
 再熱サイクルに対する全供給熱量とタービンの全出力仕事は、別稿で説明した式を用いると以下の様になる。

 再熱を一回するとサイクルの熱効率は4〜5%程度改善されるが、それは蒸気に熱が供給されるときの平均温度が上昇するからです。再熱の段数が増えるに従い再熱中に加えられる熱の平均温度も上昇する。再熱はタービンブレードの耐熱性から制限のあるタービン入口温度の上昇を抑えながら、熱効率の改善と共に湿り度の上昇を押さえることができる(状態6’→6)ので非常に有力な方法です。[下図参照]

 このとき次の事柄に注意すべきである。運転圧力が低いプラント(P3”)で再熱を実施すると、最終的な低圧タービンの等エントロピー(断熱)膨張過程のエントロピー値が高エントロピー側(右側)へスライドするために、タービン出口の蒸気が過熱蒸気のままで排気(状態6”)されて復水器に入ることになる。排出時の蒸気は、乾き度がなるべく1に近い状態が理想的ですが、このように過熱水蒸気の状態でタービンを出ると、放熱時の平均温度を上昇させ、サイクルの効率を悪くする。そのため、再熱の効果を上げるためにはタービン入口圧力が十分高い(P3)ことが必要です。
 再熱の考え方は1920年代に導入されたが、当初はボイラーの運転圧力が低いためにその効果を上げることができなかった。ボイラー圧力が高まるに連れて、1940年代には単段再熱が、1950年代になって二段再熱が有効に働くようになった。
 再熱サイクルの最大の意義は、蒸気の最高温度を押さえながら膨張過程最終段における蒸気の湿り度を減少させることです。もし、我々が高温にも十分耐えられる材料を手にすることができれば、もはや再熱サイクルは必要でなくなる。

 

.数値例

[例3]
 下図は4.(2)4.[例2]のサイクルに再熱を追加したものです。

4.(2)4.[例2]と同じボイラー圧力15MPa、タービン入口温度600℃、復水器内圧力10kPaとする。そのとき低圧タービン出口の蒸気の乾き度が0.896以上(湿り度が10.4%以下)にしたい。蒸気は再熱により600℃まで加熱されるとして以下の問に答えよ。
 (1)再熱するときの蒸気圧力
 (2)状態1〜4のエンタルピー値
 (3)再熱サイクルの熱効率

(1)
 再熱時の圧力は状態5と6のエントロピーが同じであるという条件から求められる。

600℃まで再熱した後の状態6における乾き度が0.896以上にするには、再熱する際の蒸気圧力は4MPa以下で実施しなければならない

(2)

(3)
 上でもとめた各状態のエントロピー値を用いて

 熱効率は、同じボイラー圧力15MPa、タービン入口温度600℃、復水器内圧力10kPaで再熱をしない4.(2)4.[例2](c)の場合の43.0%から45.0%へと良くなっている。一方で蒸気の乾き度は0.804→0.896へ増大している。湿り度は19.6%→10.4%へ減少

 

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(4)再生ランキンサイクル

 再生(regeneration)という操作についてはすでに説明した[別稿「ガス動力サイクル」(4)〜(6)参照]。そこでの要点は動力タービン(断熱膨張タービン)を出た排気ガス温度が、圧縮タービンの出口温度よりも高いので、その排気ガスの余熱を用いて燃焼室に入る前のガスを加熱して燃料を節約しようとするするものでした。この時は、タービン排気ガスとコンプレッサー圧縮ガスに温度差があるので非常にわかりやすかった。
 ランキンサイクルの再生も考え方は同じなのですが、少し解りにくい。復水器で冷却水に持ち去られる熱が非常に多いため、タービンから膨張途中の蒸気を抽出して、給水加熱器で復水器からの給水を加熱して水にもどし、復水器での熱損失量を減らそうというものです。それというのも断熱膨張時の蒸気比熱よりも、凝縮熱の方が極めて大きいために、少々抽出しても、そちらのほうが熱効率は良くなるのです。

.開放型給水加熱再生

 開放型給水加熱再生プラントは下図の様なものです。開放型給水加熱器(open feedwater heater)とはタービンから抽出された蒸気が、復水した水と直接混合されて給水の温度を上げるものです。

 蒸気はボイラー圧力(状態5)でタービンに入り、中間圧力(状態6)まで等エントロピー的に膨張する。この状態でいくらかの蒸気が給水加熱器(FWH)へ送られる。抽出した蒸気は中間圧力で状態6→3まで給水加熱器内で冷却される。冷却後はポンプUに入る(状態3)。
 一方、残りの蒸気は復水器圧力(状態7)まで等エントロピー的に膨張を続ける。この蒸気は復水器内で凝縮し復水器圧力(状態1)でポンプTに入る。このポンプで給水加熱器圧力(状態2)まで加圧されて給水加熱器に入る。そこでタービンから抽出された蒸気と混合されて加熱される。つまりポンプTをへて給水加熱器に入った水は状態2→3まで抽出蒸気による再生によって加熱される。再生による加熱後にポンプUに入る(状態3)。
 ここで、抽出蒸気は冷却され、給水は加熱された結果ちょうど両者が飽和液の状態3になるようにするのが理想的であることに注意。この条件が抽出蒸気の量を決める。
 ポンプUは給水をボイラーの運転圧力(状態4)まで加圧する。ボイラー内で圧力一定のもとで状態4→5まで加熱されてタービンに入りサイクルが完了する。

 当然のことですが、状態6で蒸気を抽出するために状態6→7で取り出される仕事量は減少する。また状態2→3の加熱は再生により行われるので、それだけボイラーが加える熱量は少なくてすむ。また、復水器からの放熱量も減少する
 仕事の減少量と熱量の節約分のどちらの効果が熱効率に効いてくるかということです。ここがなかなか解りにくい所なのでもう少し説明する。
 このHPではすべて単位質量の蒸気について考えている。状態6で抽出される比率をとし、ボイラーを流れる質量流量(ある断面を単位時間に通過する質量)を・(ドット)を付けたもので表す。定常状態で運転されているので

ここで、当然のことながら

が成り立つ。再生ランキンサイクルの熱効率は

となる。ところで再生の無いランキンサイクルの熱効率は前図中の同じ記号を用いると

となる。再生により熱効率が改善されるためには、両者を比較して

が成り立てばよい。状態方程式が実験式なので、この不等式を数学的に証明するというわけには行かないが、一般にこの不等式は成り立つ
 4.(1)2.で注意したようにランキンサイクルの逆仕事比

は1%程度以下です。つまり、(h2−h1)、(h4−h3)の変化量は他の変化量(h5−h4)、(h7−h1)、(h5−h6)、(h6−h7)等に比較して微少です。そのため多くの議論でwpump,inは無視できます。

 

.再生ランキンサイクルの数値例

[例4]
 次図に示したダイヤグラムのサイクルを考える。蒸気は15MPa、600℃でタービンに入る(状態5)。タービン途中の圧力が1.2MPaのところで蒸気の一部が抽出され開放型給水加熱器に送られる(状態6)。蒸気は10kPaの圧力で復水器に入り凝縮する。抽出蒸気と復水器の供給水は開放型給水加熱器で混合されたのちポンプUによりボイラー圧力15MPaまで加圧されてボイラーに入る。その後ボイラーで600℃まで加熱されるとする。

 サイクルは理想的で、タービンとポンプは等エントロピー的で、ボイラー・給水器・復水器内で圧力損失効果は無いとする。また、蒸気は給水器と復水器を飽和液として出て行くとする。そのとき
 (1)各状態のエントロピーと状態7の乾き度
 (2)タービンから抽出される水蒸気の割合y
 (3)サイクルの熱効率ηregeneration
 (4)逆仕事比rbw

を求めよ。

(1)

(2)
 給水加熱器を理想的な混合器とし、加熱器境界面からの熱の出入りや仕事の出入りは無く、作動流体の運動エネルギーや位置エネルギーの変化は無いとする。給水加熱器は定常的な状態にあるので、エネルギー保存則より

が成り立つ。
 ここで、再生により状態2の給水を飽和液状態3まで過熱し、抽出蒸気も飽和液状態3になるという条件を課すと、抽出する蒸気の割合yは、抽出圧力P2=P3=P6を決めれば、加熱器におけるエネルギー保存則より必然的に定まることに注意。

(3)
 上で求めた値を用いると

となる。同じ圧力と温度範囲で、再生を伴わない場合は4.(2)4.[例2](c)ですでに解いている。そのときの熱効率は43.0%だったから、再生によって熱効率が46.3%へ増加していることが解る。
 詳細を比較すると、正味の出力仕事は171kJ/kgだけ減少するが、受熱量も607kJ/kg減少し、そのことによって熱効率の正味の増加がもたらされたのである。

(4)
 逆仕事比の定義より

となる。

数値だけでは解りにくいので、計算結果を図示する。


 

.密閉形給水加熱再生

 給水加熱器には抽出した蒸気が給水と混じり合うことなく熱を伝える密閉型給水加熱器がある。

 この型では管壁で隔てられた熱伝達をするために、二つの流れが混合されない。そのため、異なった圧力の抽出蒸気と給水の間で熱伝達できる
 給水に熱を与えて冷却された抽出蒸気は普通はトラップによって減圧・液化されて、より低い圧力の給水と一緒にされる(下図参照)トラップとは液体をより低い圧力に減圧しながら蒸気を捕らえる(trap)装置で、ジュール・トムソン効果の細孔栓のような働きをする。ジュール・トムソン効果で説明したように、この過程では蒸気のエンタルピーは変化しない
 理想的な場合、給水は抽出蒸気の抽出圧力における凝縮温度まで加熱された加圧圧縮水(状態9)として加熱器を出る。しかし現実には有効な熱伝達のために温度差が必要なのでそこまでは達しない。抽出蒸気は抽出圧力における飽和液としてポンプUに入り、ボイラー圧力まで加圧され混合室に入る(状態4)。混合室で状態9の給水と混合するため状態5まで温度が下がる。状態5→6がボイラーによる加熱である。

 ほとんどの蒸気プラントは下図の様に開放型密閉型の加熱器を組み合わせて多段階に抽出して再生する。抽気の段数が多いほど熱効率は上昇するが、次第に上昇の度合いは緩やかになる。そのため設備費の増加と、それぞれの段階での不可逆性の増加を考慮して一般に7〜9段程度で抽気される。

 無限段数再生サイクルとは、タービン内の蒸気膨張過程中に蒸気の一部を次々に抽出して3→4の変化を3→3’→5→6の変化に変更することを意味する[下左図]。そのときさらに、2’→2のボイラー圧力を上げて超臨界圧に持って行く[下右図]と取り出せる正味仕事が7→8→3→4のカルノーサイクルの場合に近づく。

開放型と密閉型の特徴を箇条書きすると

[開放型給水加熱器]

  1. 構造が簡単で安価。
  2. 直接混合のために熱伝導性がよい。
  3. 抽出割合を調節すれば給水を飽和液状態まで過熱できる。
  4. 給水の圧力を抽出蒸気の圧力に一致させねばならないので加熱器ごとに給水用ポンプが必要になる。

[密閉型給水加熱器]

  1. 内部に管路網を設置して熱交換しないといけないので複雑になる。その分高価になる。
  2. 管壁に隔てられての熱伝達なので効率が悪い。
  3. 抽出蒸気と給水の圧力が異なっていても良いので、給水の圧力調節用のポンプが不要。
  4. 抽出蒸気の圧力を下げるトラップが必要。しかし、トラップはポンプよりも簡単で安価。

 

.再熱・再生ランキンサイクルの数値例

 最近のほとんどの高温・高圧発電プラントは、再生・再熱による熱効率改善と、再熱によるタービンの摩耗損失の軽減という長所を備えた再熱・再生サイクルを採用している。

[例5]
 開放型給水加熱器、密閉型給水加熱器、再熱器をそれぞれ一つずつ有する理想的・再熱・再生・ランキンサイクルの蒸気動力プラントを考察する。

 蒸気圧力15MPa、600℃でタービンに入り、復水器圧力10kPaで凝縮するとする。
 高圧タービンから排気される4MPaの蒸気のいくらか抽出して密閉型給水加熱器に送り(状態4)、残りは同じ4MPaのもとで600℃まで再熱器で加熱された後にタービンに入る(状態11)。密閉型給水加熱器に入って冷却された抽出蒸気は加熱器内で完全に復水して抽出圧力での飽和液(状態6)となって密閉加熱器を出るように抽出量yは調整されているとする。この後ポンプVにより15MPaまで加圧(状態7)されて同じ圧力の給水(状態5)と混合される(状態8)。
 低圧タービンの途中圧力0.5MPaで抽出された蒸気(状態12)は開放型給水加熱器に送られる。そこでポンプTからの給水と混じり合い冷却される。その結果、混合液が0.5MPaの圧力における飽和水(状態3)になるように抽出量zは調節されているとする。残りの蒸気は圧力10kPaのもとで復水されポンプTに入る。
この運転条件下で
 (1)各状態(8以外)におけるエントロピー値
 (2)密閉型給水加熱器用抽出蒸気の割合y
 (3)開放型給水加熱器用抽出蒸気の割合z
 (4)状態8のエントロピー値
 (5)サイクルの熱効率

を求めよ。

(1)
 動力プラントは理想的な再熱・再生ランキンサイクルとしているので、タービン・ポンプは等エントロピー(断熱)的、ボイラー・再熱器・給水加熱器・復水器内での圧力降下はゼロです。また、蒸気は復水器と給水加熱器を飽和液として出て行くと仮定している。蒸気表を用いると各状態のエンタルピー値とポンプ仕事は

となる。

(2)
 抽出蒸気の割合は、給水加熱器に質量保存則・エネルギー保存則を適応して求める。

(3)

となる。

(4)
 状態8におけるエンタルピー値は、断熱されている混合室に質量保存則・エネルギー保存則を適用して求める。

(5)
 以上の結論を利用すると

 この問題は、同じ圧力・温度範囲で再熱を伴う過程として解いた4.(3)2.[例3]に、再生の過程が追加されたものである。そのときの熱効率45.0%が、再生により48.9%に増加していることが解る。

 

HOME 3.(1)状態体図 (2)乾き度 4.(1) ランキン (2)改良 (3)再熱 (4)再生 (5)コージェネ (6)二流体 (7)複合 (8)電気自動車 文献

(5)コージェネレーション(cogeneration)

 ここまで述べてきた過程は、熱の一部を、エネルギーの最も価値のある形である仕事(電力)に変えるのが目的であった。その際、熱力学の教えるところによると、熱の残りの部分は河川や湖、海洋あるいは大気に廃熱として捨てざるを得なかった。
 しかしながら、多くの産業(化学、パルプ・製紙、石油精製、製鉄、食品加工、製糸・織物)などではプロセス熱と呼ばれる、通常5〜7気圧、150℃〜200℃程度の蒸気によって供給される熱エネルギーを大量に必要とする。そのとき必要とされる蒸気の圧力・温度はかなり低い値であるが、復水器に排出される蒸気圧力や温度よりも高いことに注意。
 大量のプロセス熱を消費する産業は、また大量の仕事(電力)も消費する。そのため発電で排気される廃熱は、このプロセス熱の利用にまわされるべきである。このような同一のエネルギー源から二つ以上の有益なエネルギー形態を生み出すことをコージェネレーション(cogeneration)と言う。

.エネルギー有効利用率

 コージェネレーションプラントに対しては以下で定義するエネルギー有効利用率(utilization factor)でその効率を議論するのが良いであろう。

 このとき、プロセス熱として利用されるエネルギーの温度レベルがいくら低くいからといっても、発電プラントの廃熱温度(普通100〜150℃)よりも高い温度(普通150℃〜200℃以上)が要求される。また、発電プラントの廃熱をそのまま用いるのでは、発電用動力とプロセス熱の負荷が変動したときにシステムが対応できない
 そのため実用的なコージェネレーションプラントは次図の様に構成される。

[プロセス熱需要=0]
 プロセス熱の需要がない場合で、すべての蒸気はタービンを経て復水器に送られる。このプラントは通常の蒸気動力プラントとして働く。この場合タービン出力は最大だが、当然外部への廃熱も最大となる。
 
[プロセス熱需要=少(通常運転)]
 いくらかの蒸気があらかじめ設定されている中間圧力P6でタービンから抽出されプロセス熱として利用される。残りの蒸気は復水器圧力P7まで膨張し、一定圧力のもとで冷却される。これはプラントからの純粋な廃熱となる。
 
[プロセス熱需要=中(最高効率運転)]
 プロセス熱に対する需要が増えてきてすべての蒸気がプロセス加熱器に送られる場合で、復水器には送られない。したがって捨てられる廃熱は無い。取り出せる動力は減るが、エネルギー有効利用率100%となる。
 
[プロセス熱需要=多(タービン出力減少運転)]
 プロセス熱需要が更に高まった場合、膨張弁(減圧弁 pressure-reducing valve)により抽出圧力P6まで減圧され蒸気を直接プロセス加熱器に送る。プロセス熱の需要の増大に応じてその割合を増やす。そうなると当然タービン出力は減少していく。このとき膨張弁は、再生のときに説明したトラップと同様に等エンタルピー的に働く
 
[プロセス熱需要=最多]
 すべての蒸気が膨張弁(減圧弁)を通ってプロセス加熱器に送られ、最大のプロセス加熱が達成される。この場合当然のことながらタービン出力はゼロとなる。

 実際は、プロセス熱と動力の負荷変動に応じて上記の状態間を遷移しながら運転される。そのとき、当然のことながらコージェネレーションプラントは、最高効率運転の時間が最も長くなるように設計されるべきである

 

.数値例

[例6]
図に示すコージェネレーションプラントを考える。システムは理想的で、パイプ内の圧力損失、熱損失は無いものとする。またタービンとポンプは等エントロピー(断熱)的に、膨張弁は等エンタルピー的に働くものとする。

 ボイラーから単位時間に流れ出る蒸気の質量流量は15kg/sであるとする。
 蒸気はタービンに7MPa、500℃で入る。いくらかの蒸気がプロセス加熱のために500kPaでタービンから抽出される。残りの蒸気はタービン内で膨張を続け圧力5kPaの復水器内で復水する。その後ポンプTでボイラー圧力7MPaまで加圧されて混合室に入り、最後にボイラーへ帰る。
 プロセス熱に対する需要が増えてくると、ボイラーを出た蒸気は膨張弁で500kPaまで減圧されてプロセス加熱器に直接送られる。そのとき抽出される割合は、蒸気が冷却された結果プロセス加熱器をちょうど飽和液(状態7)として出るように調整されているものとする。この飽和液はポンプUにより7MPaまで加圧されて、混合室をへてボイラーにもどる。
このとき
 (a)各状態(11以外)におけるエンタルピー値
 (b)単位時間当たりに供給できる最大のプロセス熱と有効利用率εu
 (c)プロセス熱が供給されないときに生産される動力と有効利用率εu
 (d)プロセス加熱のために膨張弁で10%、タービン途中の500kPaで70%が抽出されるとき、単位時間当たりに供給されるプロセス熱、生産される動力、有効利用率εu

を求めよ。

(a)
 蒸気表を参照しつつ、今までと同様な方法により

(b)
 ボイラーを出る蒸気のすべてが膨張弁(減圧弁)を通過するので

となる。よってプロセス熱と有効利用率は

となる。有効利用率が100%を超えているのは、プロセス熱の中に仕事pumpU,in=15×7.10=106.5kWが加わっているからです。この場合ポンプUを働かせるために、タービンの仕事は利用できないので、外からそれだけ余分のエネルギーを加えているからです。その当たりを無視すれば有効利用率は100%と言うことになります。

(c)
 プロセス熱が供給されないとき、ボイラーを出る蒸気のすべてはタービンを通過し、5kPaの復水器圧力まで膨張する。そのため

となる。この運転モードでは生み出される動力が最大になる。

この値と、プロセス熱がゼロであることから

となる。この場合、エネルギー有効利用率は熱効率と同じになる

(d)
運動エネルギーと位置エネルギーの変化が無視できるとすると、プロセス加熱器における質量保存則・エネルギー保存則より

となる。このとき生み出される動力は

となる。また状態11のエンタルピー値h11は、混合室に質量保存則・エネルギー保存則を適用して求める。

となるので、ボイラーへの単位時間当たりの吸熱量は

となる。以上の結果からエネルギー有効利用率

となる。

 

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(6)二流体サイクル

.理想的作動流体

 技術者たちはワットの時代から、蒸気機関に水以外の流体は使えないかという考えを持っていた。カルノーもこの可能性について述べているが、「自然が適当な物質を与えてくれることはありそうにない」と結論している。事実こういう流体を発見し開発する研究は、あまり実りあるものではなかった。逆に言えば、それだけ水は蒸気サイクルに最も適した優れた流体であったと言うことです。
 ここで今までの考察を振り返ると、理想的な流体はどの様な性質を持てば良いのか解る。それは

  1. 高い臨界温度
     臨界温度が、冶金学的に許される最高温度(現在約620℃)を越えていれば、その最高温度で液+蒸気が共存する沸騰点で等温的に大半の熱量を蒸気に伝達することができる。ボイラー内の燃焼ガスの温度は、普通この温度よりも高いのでできるだけ高い温度でしかも等温的に熱伝達できることは熱効率を大きく改善する。
  2. 安全な最大圧力
     上記の最高温度における圧力が、材料強度の限界内の適度な圧力であることが望ましい。
  3. 低い三重点温度
     三重点温度が冷却媒体の温度よりも低いことが必要。そうでないと作動流体が凝固してしまう。普通冷却媒体は常温(25℃程度)の大気や水が用いられるのでこれよりも低いことが必要。
  4. 低すぎない復水器圧力
     冷却媒体の温度(復水器の温度)での飽和蒸気圧が大気圧よりも低いと、作動流体系に空気が侵入してくる不都合を生じやすい。
  5. 高い蒸発エンタルピー
  6. 化学的に安定で腐食性がなく無毒。入手が容易で安価。

などです。この中で3.5.6.について水はほぼ理想的です。1.2.に関して、技術者は水銀を用いれば改善できることに気付いた。これが二流体サイクル(binary vapor cycle)の着想です。

 

.二流体サイクル

  水銀は水に比べて高価で毒性がある。また単位質量当たりの蒸発エンタルピーが水の数分の一と小さいのですが、その臨界温度898℃は現在の冶金学的限界温度620℃よりも十分高い。また臨界圧力は水の22MPaよりも低く18MPaです。
 しかし、32℃における水銀の飽和蒸気圧は0.07Paでほとんど真空で、これを凝縮温度とすることはできない。水銀凝縮圧力を10kPa程度とすると水銀の飽和蒸温度は260℃程度になるが、これはサイクルの最低温度としては高すぎる。そのためこの温度で水の蒸気を作り、二種類の流体で二つのサイクルを構成する二流体サイクル(binary vapor cycle)が考えられた。

 このサイクルでは、水銀の二つの流体が使われ、それぞれが普通のランキンサイクルを行う。水銀の臨界温度は非常に高いので540℃における飽和圧力は12気圧に過ぎない。12気圧で水銀用タービンを回し260℃の高温で凝縮させる。このときの凝縮圧力は0.1気圧である。このとき発生する凝縮熱を水蒸気の発生に用いる。
 熱伝導に必要な温度差も考慮して、例えば255℃の沸騰水蒸気を得るとすると、そのときの水の飽和蒸気圧は43気圧である。この圧力はそんなに高くないので再熱は必要なくなる。実際、水の凝縮温度が35℃、復水器圧力5.6kPa(0.06気圧)とすると、そのときの飽和水液及び飽和水蒸気のエントロピーは蒸気表によると、それぞれs=0.5053kJ/kg・Kとsg=8.3531kJ/kg・Kとなる。水蒸気タービン出口での乾き度が0.87以上にするには、そこでのエントロピー値を7.3329kJ/kg・K以上にすればよい。これは43気圧の過熱蒸気の温度を、冶金学的限界温度以下の600℃程度まで加熱すれば達成できることを示しており、再熱は必要なくなる。
 このサイクルの熱力学的な利点は、燃焼ガスから540℃という高温で等温的に熱をもらえることです。また低温部も普通の水蒸気凝縮器の低い温度で等温的に放出できる。これはT-s線図がカルノーサイクルの長方形に近づくことを意味し、極めて効果的な熱効率の改善が可能となる
 事実1930年代には幾つかのプラントが実用化され、その後も建設された。しかし、その理論的な長所にもかかわらず、二流体サイクルは最初の建設費が高く減価償却が困難で、かつ実際の運転が難しいために大きく発展することは無かった。今日ではそれに変わるものとして、次節で述べるガス蒸気複合動力サイクルが主流となっている。

 

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(7)ガス蒸気複合動力サイクル

.複合サイクル

 蒸気動力サイクルの高温部にガス動力サイクルを用いる方法です。これはガス蒸気複合サイクル(combined gas-vapor cycle)と呼ばれ、今日熱効率を改善する有力な方法となっている。
 ガスタービンサイクルは空気冷却技術や耐熱材料の進歩により1200℃程度(最近は1500℃を越える)のタービン入口温度で運転できる。つまり加熱時の平均温度はランキンサイクルよりもはるかに高い。しかし、ガスタービンはその動作原理から明らかなように、ガスを大気圧まで膨張しても、その排気ガス温度は通常500℃以上である。そのめた、その高い平均加熱温度にもかかわらず熱効率はあまり良くない。この状況は再生を用いることによりいくらかは改善されるが、それでも熱効率は一般の蒸気動力プラントよりも低い。
 ガスタービンの高い温度の廃熱を蒸気動力サイクルのボイラーに導入して複合サイクルにし熱効率を改善する方法は、初期コストをそれほど増やすことなく実施でき、今日の動力プラントで数多く採用されている。現在その熱効率は優に40%を超え、最新鋭のものでは50%以上を達成している。
 現在、新しく建設される火力発電所のほとんどのものが、熱効率の高さから、ガス蒸気コンバインドサイクルを利用する形式になっている。[複合サイクル実例][複合サイクル発電所(川崎火力発電所)

 

.数値例

[例7]
 下図のようなガス蒸気複合動力サイクルを考える。

 上部サイクルは圧力比rp=8のガスタービンサイクルである。空気は300Kでコンプレッサーに入り、タービンには1300Kで入るとする。コンプレッサーの断熱効率は80%、ガスタービンのそれは85%とする。
 下部細工は、7MPaと5MPaの圧力範囲で動作する単純な理想ランキンサイクルとする。蒸気は熱交換機器内で排ガスにより500℃まで加熱される。また、排ガスは450℃で熱交換器を出るとする。
 (a)蒸気と排ガスの質量流量の比
 (b)複合サイクルの熱効率

(a)
 蒸気サイクルのみの場合は4.(5)2.[例6](c)で計算しました。そのとき求めたように熱効率は40.8%でした。またガスタービンサイクルについの詳細説明は省略しますが、単独の熱効率は26.6%です。断熱効率も考慮した詳しい議論は参考文献2を読まれて下さい。また、それによると

が言えます。
 ここで質量流量の比は熱交換器に対するエネルギー保存則から求まる

すなわち、排ガス1kgが853Kから450Kに冷えるときに、0.131kgの蒸気しか33℃から500℃まで加熱できない。それだけ水の蒸発エンタルピーは大きい。そのためガスタービンの排気ガス1kgあたりの正味の全出力仕事は

となります。プラント全体の出力動力[つまり発電ワット(W)数]はこの値にガスタービンサイクルの作動流体の質量流量[単位時間当たりに流れる質量(kg/s)]を乗じればよい。

(b)
 複合サイクルの熱効率は

となります。これは単独で運転した場合のガスタービンサイクルの熱効率26.6%や蒸気タービンサイクルの40.7%よりもかなり高い

[補足説明1]
 最近の報道(2013年6月)によるとLNGを燃料とする最新鋭複合サイクルの効率は60%を越える[三菱重工や東芝-ゼネラル・エレクトリック社製]ようです。ただし、これらの効率は4.(1)4.で述べた意味での熱効率であることを忘れないで下さい。

[補足説明2]
 従来は、ガスタービンを駆動するエネルギー源として石油やLNGが用いられてきたが、最近では石炭をガス化してガスタービンを駆動する石炭ガス化複合発電IGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle)が注目されています。
 大量に存在する石炭の利用が可能になると、複合発電がさらに重要な役割を担うようになりますね。2013年4月から勿来(ナコソ)発電所(福島県いわき市)が商用運転を開始して優れた熱効率とCO2排出の低減化を実現している。

 

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(8)電気自動車

.なぜ電気自動車なのか?

 ここで何故、電気自動車なのかというと蒸気動力システム(ランキンサイクル)を用いた発電の効率と深く関わっているからです。電気自動車は20年以上前から着目されていました。少し古い文献(昭和61年)ですが国立環境研究所の報告
環境調和型技術としての電気自動車の評価に関する基礎研究
にその本質の全てが述べられている。そのP66に載っている表

が全ての出発点です。今日では表中の発電効率、電動機効率、ガソリンエンジンの効率すべてが当時と比べて改善されて良くなっていますが、電気自動車とガソリンエンジン自動車の総合効率の差は変わっていないと思います。石油で発電機を動かして一度電気に変換する寄り道をしても、発電所の発電効率が高い故に動力として取り出せる割合は電気自動車の方が多いということです。
 [電気自動車]0.3817×0.939×0.70×0.80=0.20
 [ガソリン自動車]        0.916×0.15=0.137

ですから、電気自動車の方が断然優れているわけです。

 

.長所と短所

[長所]

  1. 動力を取り出すエネルギー効率が良い。
     前項で説明した、これこそが最大の長所です。
  2. 優れた動力特性の車ができる。
     自動車は走り出すときに一番大きなトルクを必要とし、定速運行時には小さなトルクで良くなります。
     ところが、ガソリン・ディーゼルエンジンなどの間歇燃焼サイクルでは低速回転ではシリンダー内の爆発の間隔が長くなりますので力が弱くなり、回転数が下がればトルクはほとんどゼロになってしまいます。そのため走り出す時の大きなトルクを生み出すためには、エンジンを有る回転数以上で回転させ、それを低回転に変換する変速機が必須になります。また、間歇燃焼サイクルは有る回転数以上になると、トルクはほとんど一定になります。そのため加速が終了して定速運行になり大きなトルクが必要無くなったときにも、変速機で回転比を変えて、大きすぎるトルクを制御してやる必要があります。

     それに対して、電動機は別稿「発電機とモータの理論」4.で説明した様に、モーターは加える電圧が一定の場合には、低回転数のとき大量の電流が流れて一番大きなトルクが発生します。そして速度が上がり、加速が必要なくなる高速回転の領域では自動的にトルクは減少していきます。電動機のこの特性は車や電車の動力としてはとても好ましいものです。
     さらに、現在ではインバータ回路を用いてバッテリーの直流電源から、任意電圧、任意周波数の正弦波を発生できるようになったので、きわめて優れた動力発生特性で電動機を運用できる。電圧を任意に変換できれば、永久磁石同期電動機を用いて、低速時から高速時まで望むトルクと仕事率(馬力)でモーターを動かせます。
  3. 排ガスを出さない。
     これは説明が必要です。電気を作り出すために発電所で排ガスを出すわけですが、ガソリン自動車の高圧・高温の下での燃焼(この場合必然的に公害物質である窒素酸化物ができる)と違い、発電所ボイラーでは最も有利な燃焼条件で完全燃焼させる事ができる。
     また燃料として石炭・石油・天然ガス・原子力と種類を選ばずガソリンよりもかなり粗悪な燃料でも使用できるし、発電所での集中的な排ガス処理によりイオウ酸化物や炭化物微粒子などを徹底的に回収して環境を汚染する物質を出さないようにすることができる。
  4. 自動車自体に多くの長所がある。
     安全性が高い(衝突してもガソリン車の様に火災が起こったりしない)。振動や騒音が少なく居住性に優れる。エンストなどは起こさないので運転がやりやすい。また構造が簡単にできるので保守・維持管理が簡単。また減速時に運動エネルギーを回収して蓄えるメカニズムを作りやすい。
     トランスミッションやドライブシャフトなどを必要としない新しい形での動力伝達装置の開発が可能。特にトランスミッションがなくても自在にトルクと回転数が変更可能なのは電動機の最大の長所です。またドライブシャフトを省略してホイールの中に電動機を取り付けたインホイールモーター車にすると車体デザインに全く新しい可能性が開けてくる。
  5. 信号待ちのアイドリング運転が必要ない。
     都市部ではガソリンエンジン車のこのことによるロスは馬鹿にならない。ガソリン車でもアイドリング運転無しで、しかもセルモータを用いない始動法が開発されているようですが、なかなか難しそうです。
  6. 電気の充電に電力需要が落ち込む夜間の電力を利用でき、既存の電力配布の送電線網が利用できる。これは直接の長所でないが産業インフラの整備にとっては重要なメリットです。別稿「発電機とモータの理論」2.[補足説明1]参照。

[短所]

  1. エネルギー蓄積量が少なく一充電での走行距離が短い。これは電気自動車の最大の短所です。
  2. エネルギー充填に時間がかかる。いくら急速充電してもガソリンをスタンドで給油するように短時間ではできない。
  3. 電池は充電・放電を繰り返すと必然的に劣化して蓄電容量が少なくなる。これも重大な短所ですが、車検などの定期点検時に電池を交換することで、その短所を回避できる。そして電池の電極物質を回収再生してリサイクルする産業モデルを構築すればこの短所は十分回避できる。
  4. 最高速度や加速性能が劣る。これは昔の話で現在ではインバータ回路を用いた交流同期モーターにより内燃機関よりも遙かに優れた動力特性が実現されている。
  5. 車内暖房や冷房のための電気エネルギー消費が厳しい。これは短所1.に由来する事柄ですので特に短所として取り上げるべきではないかもしれないが、これも厳しい制約です。
  6. 購入費用が高い(特に電池が高価)。電気自動車が普及するかどうかはひとえに、この低価格化に懸かっている。

 

.電気自動車の今後

 エネルギー効率において極めて有力な長所を持ちながら、エネルギー蓄積量が少なく、充填に時間がかかる致命的な短所によりなかなか実用段階に至らない。そのため限定的な使用に限られている。この短所は原理的に克服できないだろうからプラグインハイブリット車の様な形での普及が当分続くのだろう。
 電気自動車がいくら効率が良いといっても石油・天然ガス・石炭等の化石燃料を使うことには変わりなく、二酸化炭素の増大は続く。おそらく、究極の解決法は太陽エネルギーによって藻類の様な微生物を効率よく培養してそのセルロースをこれまた微生物で効率よく分解してエチルアルコールなどを生産する。それを燃料とした燃料電池をエネルギー源とする動力(真の意味での再生動力源)を開発するしかないのだろう。

[2011.1.6追記]
 福井康雄監修「宇宙史を物理学で読み解く」名古屋大学出版会(2010年刊)を読んでいたら、名古屋大学とトヨタ自動車の共同研究「人工光合成タンパク質をつくる」の紹介記事があった。自動車会社はすでにその当たりの研究を視野に入れているのですね。

 クレイグ・ベンダー著「ヒトゲノムを解読した男−クレイグ・ベンダー自伝」化学同人(2008年刊)の17章は、上記の工業的技術に関係して人工生物の可能性がすでに視野に入っていることを教えてくれる。
 この本はセンセーショナルな題名だが、内容はヒトゲノム解読の真相を赤裸々に開示している極めて真面目で興味深い本です。正直なところジェームズ・D・ワトソン著 『二重らせん ―DNAの構造を発見した科学者の記録―』タイム ライフ ブックス(1968年刊)より面白いかもしれない。

実教出版社のサイエンス・プラザ「人工光合成について」が興味深い
http://www.jikkyo.co.jp/download/detail/45/9992655880

[2011.7.25追記]
 最近読んだとても面白い本、畑村耕一著「博士のエンジン手帳」三栄書房(2011年刊)にハイブリット車とEV車の現状と将来予測が要領よくまとめてありました。専門家の畑村氏の予想も、色々なタイプの車が棲み分けながら ストロングハイブリット(内燃機関/電池と電動機・・・>プラグインハイブリット(電池と電動機/内燃機関・・・>シリーズハイブリット(電池と電動機/内燃機関は緊急時充電のみに使う)・・・>EV(電池と電動機) という流れでいくのだろうというものでした。
 畑村氏はEV車が内燃機関が100年を費やして実現できなかった動力性能曲線を実現していることを強調されています。確かにEV車ではその様な動力特性が可能なのだと目から鱗が落ちる思いでした。
 畑村氏はエンジン性能に関して思い入れが深い方ですが、我々一般人に取って車は生活に便利な移動手段以上のものではありません。これだけ人口が増大し地球温暖化の驚異が迫っている現代社会においてエネルギー消費事情の改善は人類最大の課題なのですから、省エネルギーが今後の車の進化を決める最大の要因だと思います。バンタイプの軽乗用車が普及している事やジェット旅客機のターボファンジェットの改良はまさにその路線なのですから。

 

(9)今日の電力エネルギー事情

 蒸気動力によってエネルギーを電気エネルギーに変換して利用するのが今日の主流ですが、そのエネルギー事情を把握することは今日の我々一人一人に科せられた責務です。
 電気事業連合会のHPの
http://www.fepc.or.jp/library/data/infobase/pdf/infobase2011.pdf
に基礎的な統計資料がありますので御覧下さい。ただし原子力発電を今後どのようにして行くのかは難しい問いですね。

 

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参考文献

 このHPの内容は下記の文献に全面的に依存しています。図・蒸気表もそれらから引用しました。感謝!
 ガス動力サイクルと違って、蒸気動力サイクルの状態方程式は簡単ではなく実験的にしか得られません。そのため本質を理解するには、蒸気表を使用した数値例の検討が必須です。数値例の説明が少しくどくなりましたが、興味を持たれた方は是非参考文献2.を買われて読まれて下さい。

  1. ジョン・F・サンドフォード著 現代の科学20「熱機関」河出書房新社(1980年刊)
     古い本ですが図書館にはきっとあると思います。
  2. Yunus A.Cengel、Michael A.Boles共著「図説基礎熱力学」「図説応用熱力学」オーム社(1997年刊)
     分厚い本ですが、とても解りやすい。蒸気動力サイクルについては他に適当な本を持っていないので、ほとんどこの本から引用しています。できるだけ解りやすくなるように努力しました。
  3. H.W.ディキンソン著磯田浩訳「蒸気動力の歴史」平凡社(1994年刊)
     直接このHPの内容と関係ないのですが、蒸気動力の歴史についてとても面白い本です。
  4. 田中航(紀之)著「蒸気船」毎日新聞社(1977年刊)
     この本から幾つか別稿で引用しましたが、これは技術史・社会史の本としてとても面白い。このHPを読まれた方に是非勧めます。著者は蒸気機関の事が本当に良く解っている方の様ですね。
  5. 一色尚次、北山直方共著「新しい機械工学2 新蒸気動力工学」森北出版(1978年刊)
     とても解りやすく詳しく説明されており、この本からも幾つか引用しています。
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