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回転系の上で運動する物体は進行方向に対して直角横向きの力(コリオリ力という)を受ける。そして物体は回転系の上で円運動をする。そのときコリオリ力の方向が進行方向に対して左方向か右方向かは回転系の回転方向に依存し、その大きさは物体の運動速度と回転系の角速度の積に比例する。この不思議な力コリオリ力のメカニズムを考察する。
まず最初にビー玉を転がすのではなくて、そっと足下に置いた場合を見てみる。円盤に静止している人から見るとそっと置いたビー玉は円盤の外側に向かって段々早くなりながら転がって行きやがて円盤から振り落とされてしまう。
回転運動する円盤に乗っている人がビー玉を見ると、ビー玉は円盤の外に向かって加速度運動をしているように見える。そのときの加速度は回転が大きなほど大である。これがいわゆる遠心力である。遠心力が存在するために、東西方向の運動で生じるコリオリ力を見るためには上記の円盤モデルでは単純すぎてよくわからない。
(注意1)前記(1)の場合にも遠心力の効果はあったのだがコリオリ力と直角の方向の為に無視できた
(注意2)足下にそっと置いた場合も円盤の上に静止している人から見て外向きに転がり始めて速度を持つので、その速度によるコリオリ力が上記の図にも現れている。
遠心力の効果を打ち消すために遠心力効果で周囲の盛り上がった凹面状の円盤を利用する。これはちょうど円筒状の容器に液体をいれて容器とともに回転させて、遠心力のため液体が周囲に押しやられて周囲が高くなって釣り合った曲面である。実は地球も同じことをしており、それが回転楕円体のジオイド曲面である。
容器に満たされた液体が容器と一緒に回転するときの曲面。(下左図)
この曲面は遠心力と重力の合力に対していつも垂直になるような面を持った曲面で、この面上でそっと足下に置いたビー玉は転がらずにいつまでも静止している。
実は地球も同じ事をしている。それが“地球回転楕円体面”である。(下右図)
右上図の力のつり合い関係を下図で説明する。
今上記の曲面がすり鉢のような固定した曲面でつくられ静止しているとする。そして、その上で真東の方向に色々な速度でビー玉を転がす場合を考えてみる。ちょうどすり鉢斜面の等高線の方向に様々な速度でビー玉を転がす場合を考えて下さい。
次ぎに曲面を前記1の場合のビー玉と同じ速度で回転させる。そして曲面は摩擦がないとする。人はこの動いている曲面に対して静止しているとする。
このあたりの転がり方は3.補正曲面の形と曲面上での運動の項を参照。
円盤に乗っている人から見たビー玉の運動は下図のようになる。 左方向への速度が第一近似では等しいとみなせると上方向への偏向量は1:4:9と増加する。
これは図の上下を逆さにして見ると左方向へ初速vrで投げ出した物体が重力のもとで下へ落下していく問題(下図)と同じである。高校物理で習う水平投射の公式と比較して、コリオリ力の加速度を求めてみる。
こんどは見積もりを簡単にするために前記1.(3)の時とは方針を変えて曲面による補正をしない円盤上でころがす。そしてそのとき生じる見かけの加速度から遠心力による部分を差し引いて求める。
円盤に乗っている人が真東に速度vでビー玉を転がすと、ビー玉は静止系からみて下左図上で真上の方向へ速度v+vθで転がって行く。ただしvθは人が立っている所での円盤の回転速度である。
ここで前記1.(3)の議論を参考にすると、遠心力の効果を取り除くには下左図ビー玉の変異を1、2、3から1’、2’、3’へ変化させて、その変異を回転円盤から見ればよい。そうすると円盤に乗っている人から見たコリオリ力が働く場合のビー玉の見かけの運動は下右図のようになる。この図は上記(1)の場合とまったく同じように解釈できるのでこの場合も質量mのビー玉に働くコリオリ力は f=2mvωとなる。
南極向き、西向き、任意の方向の場合も同様に議論できる。一例として南東の方向へ速度vで転がした場合の図を下に記す。1’、2’、3’は1、2、3から遠心力の効果を取り除いたもの。右下図は観測者から見たビー玉の運動である。つまり観測系座標面はビー玉を投げ出した地点で自転しているのだ。
ビー玉を投げ出した観測者の加速度の方向は常には円盤の中心に向かい、その大きさは(vθ2/r)である。だからビー玉に働く遠心力(慣性力の一種)は常に円盤の中心から外側を向く方向で、その大きさはm(vθ2/r)である。コリオリ力(これも慣性力の一種)はこの力を取り除いた後に残る部分である。それはビー玉を投げ出した観測系座標面がその位置で回転運動をすることにより見える見かけの力である。
これは遠心力を生じる加速度運動とは異なる加速度運動である。遠心力を生じる観測者の加速度運動はビー玉に対しては等加速度直線運動をする様なものである。回転はしているがその回転の効果よりも円盤の中心方向へ移動していく並進運動の加速度が問題なのだ。ところがコリオリ力はビー玉を投げ出した観測者が、そのビー玉を投げ出した地点で回転運動(自転運動というべきかもしれない)をすることにより現れる観測系座標面の加速度にともなう力なのだ。上図の右の図はその当たりを示している。
そのためにコリオリ力の方向はビー玉の進行方向に対して横向きになり、その大きさはビー玉の速度に比例する。その当たりは前項2.(1)ですでに述べたところである。この当たりのもう少し詳しい説明は別稿「慣性力」を参照されたし。
(注意)ひるがえって考えると(1)の場合も遠心力の効果が入っているので厳密に取り扱うにははその点も考慮しなければならない。
遠心力を打ち消すための補正曲面は以下の形にすればよい。
ωが一定の場合、遠心力は中心からの距離に比例するので、補正曲面上の物体に働く力は中心からの距離に比例する向心力となるようにしなければらならい。。中心からの距離に比例する引力を受けて運動する物体の軌跡については別稿「質点の二次元運動(放物運動、楕円運動)」の第2項を参照してください。以下(4)〜(7)の図はそこでの図と全く同じです。
上記の遠心力の効果が打ち消された曲面上で、任意のへ方向へ転がしたビー玉はコリオリの力を向心力とする円運動をする。その円運動の周期は円盤の回転周期の半分である。なぜなら
次ページ以降のいくつかの例を見れば解るように、回転系の上で任意の方向に転がしたビー玉か゜コリオリ力により円運動(回転系から見て)をするということは上記ポテンシャル面上で楕円運動(静止系から見て)をすることに他ならない。
一例としてビー玉を、中心から半径rの地点で、その地点の円盤の回転速度vθ=rωで転がした場合を考える。そのときビー玉の描く円運動の回転半径r’は転がした方向によらず常に
となる。転がす速度がこれより大きくなれば大きな半径に、小さくなれば小さな半径になる。
地球物理学では、地球表面上でピー玉を転がすとコリオリ力のために回転運動(例えば北半球では右回り)をして元の位置に戻ってくると教えられます。私は、このことを初めて習ったときとても不思議に思いました。そして、何故そうなるのかとても悩みました。このことを説明したくてこのページを作ったのですが、3章の図を検討されればこの不思議な運動のメカニズムが理解できると思います。
コリオリの力が引き起こす驚異の現象については別稿「大気大循環」、「海洋大循環」、「動力学的潮汐理論におけるケルビン波」、「回転地球に固定された座標系におけるニール(Neil)の放物線とフーコー(Foucault)の振り子」等々をご覧下さい。
コリオリの元論文はこちらで見ることができます。
1832年の論文
http://empslocal.ex.ac.uk/people/staff/gv219/classics.d/Coriolis-1831.pdf
1835年の論文
http://empslocal.ex.ac.uk/people/staff/gv219/classics.d/Coriolis-1835.pdf