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大気大循環

1.ハドレー循環とロスビー循環

 大気の大循環は赤道地方と極地方の温度差によって生じる水平対流で、浮力が原因である。赤道と極の温度差は太陽光線が地表面に入射する角度の違いによって生じる。もし地球が自転していなかったら、対流は図1のようになるはずである。これをハドレー循環(1735年)という。

 しかし地球は回転しており、その上で動く物体(空気)にはコリオリ力が働く。そのため実際の大気の流れはハドレーのモデルとはまったく違ったものになる。どの様なものななるかを知るために図2の実験をしてみる。この実験については別項「ロトスコープの制作」とその中のビデオ映像「ロスビー循環の実験」をご覧下さい。これは1947年当時シカゴ大学にいたロスビーの助言により、大学院生のデイブ・フルツ(Dave Fultz)が初めて行った有名な実験です。[John D.Cox著「嵐の正体にせまった科学者たち」丸善(2013年刊)p293]

 容器の回転数が遅い場合はハドレー循環をしているが、回転が速くなると、流れは円周に沿って蛇行しながら流れるようになる。蛇行する流れの両側に時計回りと反時計回りの渦巻きが並ぶ。このような流れをロスビー循環(1938年)という。蛇行の回数(渦巻きの個数)は中心と外側(南北)の温度差と容器(地球)の回転数によって変化する。なぜこのような流れが生じるのだろうか?
 回転系の上で運動する物体には進行方向に対して直角の方向に見かけの力が働く。これをコリオリ力といい北半球では右方向へ、南半球では左方向を向く。 回転が速くなるとコリオリの力が強くなり、北半球では右向きの偏向力のために流れの右側に水がつもり(高圧部)、左側がへこむ(低圧部)流れになる。このとき圧力傾度とコリオリ力がつり合った流れになっており、このような流れを地衡風という。
 しかしハドレー循環では水面近くの水はすべて容器の縁(赤道)から中心(極)に向かうので、流れの右側ほど水位が高くなければならない。しかしそれでは容器を一週すれば水位にくい違いが生じてしまう。つまりバドレー循環ではだめである。
 水位にくい違いを生じないためには東西方向の流れになればよいのだが、それでは外周(赤道)で与えられた熱を対流で内周(極)に運ぶことができない。その矛盾を解決するのが南北に蛇行するロスビー循環である。ロスビー循環は必然的に、その循環の北側に反時計回り(北半球)の低気圧、南側に時計回り(北半球)の高気圧の渦巻きを伴う。

 コリオリの力と圧力傾度と熱の移動をすべて満足すためには図3(A)の型の対流から(B)の型の対流にならねばならない。(B)の型の対流に西から東へ向かう風を重ねれば上記の蛇行した流れになる。(A)の型の対流の原動力が温度差に伴う浮力であることは直ちにわかるが、(B)の型の対流の原動力も温度差による浮力である。その当たりは後で説明する。
 

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2.コリオリ力の緯度による変化

 コリオリ力は高緯度になるほど大きくなる。これがハドレー循環をロスビー循環に遷移させる。コリオリ力そのものについては別稿「コリオリ力とは」を参照

(1)北極上

この場合は地球の自転角速度をω、物体の質量をm、物体の速度をvとするとコリオリ力F=2mvωとなる。コリオリ力は極地方で最大。

(2)北緯θ度上

 緯度θの地点での物体の運動を考える。それは下図のように考えると見かけ上


で回転する円盤上での運動と同じになる。そのためコリオリ力は極での値のsinθ倍に減少する。高緯度になるほどコリオリ力は大きくなる。

(3)赤道上

 同様に考えると赤道上での運動は無限にゆっくり回転する無限長半径の円盤上での運動とおなじになる。そのため赤道地方ではコリオリ力は弱くなる。

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3.大気大循環

 大気大循環は高度12km以下の対流圏のみを考えればよい。地球大気の厚さは10km程度でそれより高空にはほとんど存在しないとしてよい。また高度12km以上になるとオゾン層の加熱により高度とともに温度が上昇して熱的に安定な層状構造(成層圏)になる。そのため熱対流が起こらない。対流圏で撹拌された空気塊が成層圏に上昇することはまず無い。このあたりの事情は別稿「気象学の乾燥断熱減率と湿潤断熱減率、温位と相当温位」で説明。大気圏の温度分布とそうなる理由は「大気圏の温度分布」参照。

現在の地球北半球の大気大循環の様子を図4(拡大版)に示す。注意点は以下のとおりである。

  1.  低緯度地方の風は、あくまでも子午面内の南北の対流(風速は1m/s程度)による熱の輸送である。赤道地方は常に暖められ軽くなった空気塊がいつも上昇している。赤道地方はいつも低気圧で、海面上を高緯度から赤道に向かって風が吹いている。
     それがコリオリの力(高緯度に比べて弱い)のため北半球では右に、南半球では左に偏向する。そのため海面付近ではいつも赤道に向かう北東風(北半球)と南東風(南半球)が吹いており、貿易風と呼ばれる。赤道地方に風が収束し常に上昇気流が生じ雲が発生し凝縮熱で暖められ低気圧になる。
     低緯度の上空では高緯度に向かう風(北半球では南西風、南半球では北西風)が吹いている。
  2.  中緯度地方ではコリオリの力が大きくなり、又南北の温度差が最も大きくなるので西風(偏西風という。高度10km付近の最も速い部分をジェット気流といい風速は毎秒数十メートルになる)が主体になる。その西風が南北に蛇行することにより熱を輸送する。子午面内の対流は緯線に沿って経度方向に平均した結果現れるもので本質ではない。
     中緯度におけるロスビー循環の波動は数千キロメートルを越え、1日当たり500〜800kmぐらいの速さで西から東へ進む。これが極前線や温帯低気圧を発生させる原因であり、中緯度地方の天候が3〜5日の周期で西から東に向かって変化する理由である。
     以上は海陸の分布を無視した話である。実際は海陸の分布と地形の影響からアジア大陸の東側と北米大陸の東側で偏西風は強まり、また海(暖流)からのエネルギーの供給を受けて温帯低気圧が良く発達する。
  3.  極地方は年間を通じて日射量が少なく低温で大気は密に積もっている。そのため地上付近は中緯度に比べていつも高気圧となり、冷たい空気が中緯度に向かって吹き出す。それがコリオリ力のため右向きに偏向して極偏東風となる。高気圧のため冬も夏も晴れており、寒いが積雪は少ない。
     極地方の高空はいつも低気圧で中緯度からの風が流れ込んみハドレー循環で熱の移動を実現している。

これらの様子は気象庁ホームページの気象全地球衛星画像(動画)
http://www.jma.go.jp/jp/gms/
でダイナミックな映像として見ることができる。各季節ごとに眺めてみると上記の違いが良く解る。

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4.循環メカニズム

大気大循環を理解する鍵は以下の事柄である。

○風(空気塊の移動)を起こすのは気圧差である。
○気圧差は各部分での空気塊の積もり方によって決まる。
○積もり方で重要なのは、体積中の空気密度である。
○密度はその体積中への空気の流入・流出(つまり風)と温度によって決まる。
○温度はその体積中への熱の流入・流出によってきまり、熱の流入・流出は太陽輻射と空気の流入・流出(つまり風や対流)によって決まる。

このように結果が、その結果の原因になるような現象の理解は難しい。その場合のやり方は次の二通りである。

  1. 現実に起こっている現象を認めて、その現象が物理法則と矛盾することなく存在できることを示すことで満足する。つまり解を物理方程式に代入して、その式を満足することを確認する。
  2. 適当な初期条件を与えて、微分方程式に従って出来事を少しづつ追跡していく。そして最終的に現実の現象に近づいていくことを確認する。

 ここでは1の方法で大気大循環を説明する。子午面内循環、及び東西方向の風向きを決めるのは気圧分布であるが、大気大循環を説明するには地表の気圧分布のみならず垂直方向の立体的分布が重要である。空気の積もり方の模式図5では、一つのブロック中の空気質量がすべて同にしてある。つまり箱が大きいところは空気が暖かくて膨張しており、小さいところは冷たくて収縮していると考えて欲しい。ある高度の気圧とはそれより上に積もっている空気の重さである。
 地上での気圧はその部分に積もっているブロックの数が多いほど高圧になる。ある高度での気圧は、その高度以上に積もっているブロックの数による。そのとき周囲の気圧とどういった関係にあるかによって風が吹く。一般に地上が高気圧の時は高層は低気圧であり、地上が低気圧の時には高層は高気圧である(例外は中緯度地方)。

高緯度地方(N60°〜90°)と低緯度地方(N0°〜30°)
 高緯度側では寒冷な気団が低く積もり、低緯度側では温暖な気団が高く積もっている。そのため高気圧と低気圧の配置が地上と高層では反対になっている。つまり地上では高緯度側が高気圧になり、寒冷な空気が低緯度に向かって吹き出される。そして低緯度側は低気圧で高緯度からの風が吹き込む。低緯度の空気は温暖であるが故に軽く上昇する。低緯度側の高層は暖かい空気が高く積もっているが故に高気圧だから、上昇した空気塊は低気圧の高緯度側に向かって吹き出る。
 一般に寒冷な気団は高気圧であると言われるが、それは地上での話で高層は必ず低気圧になっている。そうしないと高気圧から吹き出る空気を補給できない。一方温暖な気団は低気圧であると言われるが、高層は必ず高気圧になっていて上昇した空気が周囲へ吹き出されている。
 
中緯度地方(N30°〜N60°)

 高緯度側では地上も高層も低気圧である。一方低緯度側は高緯度側に比較して地上も高層も高気圧である。そのため大気の流れは西から東へ緯度線に沿って経度方向へ吹く。その西風に働くコリオリ力(北半球では進行方向に対して右向き(南向き))が南北の気圧差(北向き)とつり合っている。しかも図から明らかなように高層ほど南北の気圧差は大きくなり、高層ほど西風が強くなりジェット気流が生じることとになる。(地衡風)
 この大まかな気圧配置では中緯度における低気圧・高気圧の繰り返し配列や偏西風の蛇行までは説明できない。次項で、さらに微細な構造を論じる。

まとめると下図の様になる。

 これらの大気の運動のエネルギーはすべて冷気が暖気の下にもぐり込み、暖気が冷気の上に昇ることによって生じる位置エネルギーの減少分によってまかなわれる。それが低緯度の北東貿易風、中緯度の偏西風、高緯度の極偏東風のエネルギーを供給する。[図7の説明はこちら

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5.中緯度における循環(温帯低気圧とジェット気流)

 中緯度では図9の様に低気圧と高気圧が交互に発生する。そして低気圧・高気圧は南北の温度差により維持される。南北に温度差があれば南北の対流が起こるが、前項の図5で述べたような南北の圧力傾度が存在すればコリオリ力とマッチした西風が卓越するようになる。そのとき図10の様に地上と高層で低気圧(L)・高気圧(H)の分布が東西に少しずれると偏西風の蛇行と低気圧・高気圧の分布が見事に調和する。北半球ではコリオリ力のために低気圧には左回りで空気が流れ込み、高気圧からは右周りで空気が吹き出す。そのため図9の様に南側の暖かい空気が左周りに低気圧に沿って北東へ上昇し、北側の冷たい空気が右回りに高気圧に沿って南東へ流れ込む。そういった低層での流れを補う流れが高層の圧力分布で実現されている。(図10参照)それらの流れはいずれも高層の西風を加速する。低気圧・高気圧の渦の流れが偏西風ジェット気流に伝えられ西風を強める。その偏西風の蛇行は南北の温度差と低気圧・高気圧の配列を維持し強める。

温暖前線、寒冷前線については別稿で説明する予定。

 温帯低気圧には北から冷気が、南から暖気が流れ込むが、それが最も効率よく行われるのは大陸の東側である。だから温帯低気圧は大陸東側の海上に移動してから発達する。偏西風ジェット気流が最も強まるのも大陸の東側海上である。
 
 以上の話から解るように大陸の東側中緯度に位置する日本には素晴らしい四季がある。冬型の気圧配置の時の寒気の厳しさと積雪。春の訪れとともに芽吹く新緑、霞がかかり晴れと雨が繰り返す温暖な天候。梅雨時の湿気と緑の繁茂。夏のジリジリ照りつける太陽と入道雲、作物の成長。夏から秋にかけての台風の襲来。秋雨とともに訪れるもの悲しい秋。天高く抜けるような青空と冷たい空気。紅葉と実りの秋。そして枯葉散る晩秋を経て再び訪れる木枯らし吹く冬枯れの季節。我々は何とも素晴らしい場所に住み、四季の変化を味わい愛でる様々な文化を持っている。

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6.高層大気まで含めた大気大循環

高度10km〜80km(成層圏と中間圏)
○高層はオゾン層が紫外線により直接加熱されることにより暖まる。
○極地方は斜め入射のために高層の吸収は大。
○高層は空気密度が小さく熱容量が小さい。
○夏至の日は北極が、冬至の日には南極が日射量が一番多くなる。
 そのため夏至は北極が高温(高圧)・南極が低温(低圧)、冬至にはその逆になる。そして、地球全体を循環する大循環が実現される。つまり、高度40〜50km付近を第二の地上とし、高度80km付近のメゾポーズを第二のトロポポーズとする第二の対流圏が存在する事になり、第二の地上(高度40〜60km)付近を夏半球から冬半球に向かって風が吹く。
 それがコリオリ力の増大する中緯度地方でロスビー循環を形成する。そのときコリオリ力の方向が北半球と南半球では逆のため、夏至の時には北半球では東風、南半球では西風になる。冬至には圧力分布が逆になるため風向も逆になる。
 オゾン層の発見・成因・人類による破壊につしてはこちらを参照
 
高度12km以下(対流圏)
○対流圏の大気は大地の輻射熱(赤外線)により暖められる。
○大地の単位面積に降り注ぐエネルギー量は太陽光線に対する地面の傾斜が効いてくる。
○極付近は斜め入射のため年間を平均すると日射量は少。
○極地方は雪による反射が大のため地表が暖まらない。
○大地、海(70%)の熱容量は大きく季節変動を平均化する。
 そのため年間を通して赤道地方が高温(高圧)、極地方が低温(低圧)になる。南北の半球でそれぞれ独立の大循環が実現される。

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