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回転系を静止して見せるロトスコープの製作(1994年)

1.はじめに

 物理学では回転系の上で生じる特異な現象を論じる事がよくあります。遠心力、コリオリ力、ジオイドの変形、ハドレー循環からロスビー循環への遷移、etc.....それらの現象は回転系の上に乗ってみてはじめて感知できる。しかし高校の実験で利用できるターンテーブルは小さなものですから、それらの現象を回転系の上から見るのはなかなか難しく工夫のいるところです。

 ここで述べるロトスコープは回転系を静止させて見せてくれる装置です。もともとこれを作って見ようと思ったのは地学の大気大循環のところで出てくる有名な実験(対流現象が、回転系の上ではハドレー循環ではなくロスビー循環になる事を示す実験)をこの目で見てみたいと思ったからです。色々考えている内に、我々でも少し工夫すればできそうだったので暇を見つけて少しづつ改良を重ねて作りました。

 

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2.ロトスコープの原理

 ロトスコープは図1の様なプリズムを利用する。光軸のまわりを対象物の回転数の半分の回転数で回転させながらプリズムを通して対象物を見ると像が静止してみえる。静止して見えるのは図1から解る様にプリズムを通して見ると上下は逆さになるのに左右はそのままだからです。

図1 Abbe型プリズム

 詳細を図2で説明する。 いま観測対象物であるの矢印が0→1→2と回転するときプリズムの上下軸がその半分の回転角で0→a→bと回転するとする。矢印1をプリズムの上下方向の1xとプリズムの左右方向の1yに分解する。プリズムを通過すると1x→1x′、1y→1y′となり、合成したものは1′となる。同様に矢印2の像も2x→2x′、2y→2y′となり、合成したものは2′となる。故に矢印対象物が0→1→2と回転してもプリズムを通して見る像はすべて同じ位置0′に静止して見える。

図2 ロトスコープの原理図

 

 ロトスコープは上記のような特殊なプリズムを用いるが、我々にはなかなか手に入らないし、たとえ手には入ったとしても高価なものだろうから、鏡で代用した。

 

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3.製作過程

○材料

  水道用エンビパイプ 外径112mm 内径106mm
  エンビパイプの継手
  ベニヤ板 9mm厚、15mm厚
  Oリング(日本バルカー(株)から購入)
  ギヤドモーター(コピー機の廃物利用、ジャンク屋で購入)
  小型キャスター 4個
  プーリー
  DC電源装置 15000円
  DC電源装置を除いた総費用は約6000円

○構造拡大図はここをクリック)

 

○調整

 この安上がりなロトスコープで最も大切なところは光軸の調整です。プリズムと違って鏡の組み合わせでは、どうしても反射面が正確な角度にならない。そのため映し出される像が視野の中でグルグルと動き回ってしまう。だから鏡の面の傾きの調整機構が絶対に必要です。最初はすべての鏡の取り付け板に傾き調整用のビスを設置する方法で作ろうと思ったが、工作が面倒な上に、組立時に鏡の取り付け角を精度良く測定する方法も思いつかないのでやめました。
 実際に採用した方法は、回転筒に鏡の台箱を取り付けた後にスコープを回転させながら試行錯誤で調整しやすい以下のものです。

 

 像のαβ方向のぶれを図のA〜D、A′〜D′のビスを用いて台箱を図の方向に回転させることにより調整し、像のγδ方向のぶれを図のE〜Hのビスで底面の鏡の付いている板の傾きを変化させることにより調整する。

写真1 ロトスコープ全体図

写真2 ロトスコープ後ろから見たところ

写真3 ロスビー循環の実験(左下の回転台を鏡で反射させて観察)

 ビデオ映像をご覧になりたい方は以下をクリックして下さい。
 ロトスコープの製作(6.83MB 2分56秒)
 ロスビー循環の実験(14.07MB 6分5秒)
 上記の動画が見られない場合は編集方針をご覧いただくか、下記のリンクを試してください。これはWindows標準のWMV8コーデックのファイルです。解像度を上げているのでブロードバンドでないと少し厳しいです。
 ロトスコープの製作(45.52MB 2分56秒)
 ロスビー循環の実験(93.91MB 6分5秒)

 

.おわりに

 安価に我々でも作れる形にするには鏡を使うしか方法はない。そのとき最も苦労するところは鏡の傾きの調整機構をどうするかです。試行錯誤を繰り返し前記の形に落ち着きました。
 これを利用してロスビー循環の観察実験をさっそく試みたのですが、ロスビー波動が見えたときは本当に感激しました。

参考文献  木村竜治著 「流れの科学」 東海大学出版会 P174参照

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