HOME .空洞輻射 2.物質の輻射 3.温室効果 4.地球の熱収支 5.地球温暖化    ミランコビッチ・サイクルの今日的な意義

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温室効果と地球温暖化 

1.空洞輻射とプランクの熱輻射公式

 温室効果を理解する鍵はプランクの熱輻射公式です。これはあらゆる物体はその温度に応じて光り(輻射)と平衡状態を実現するという物理法則の数式表現で、1900年プランクによって導かれた。周囲が放射を完全に透さない一定の温度に保たれた壁で囲まれた空洞を考える。空洞中の輻射(光)と壁を構成する原子との間でエネルギーのやり取りの平衡状態が実現される。キルヒホッフは壁と平衡関係にある空洞内の輻射は、空洞の壁の性質に無関係な波長と絶対温度の関数である事を熱力学的考察から示していたが、プランクは空洞内輻射の数学的表現を与えた。それは絶対温度Tの物体と平衡状態にある輻射(真空の中に満ちている光)のエネルギー密度(単位波長幅、単位体積当たり)を波長λと絶対温度Tの関数で与える。この公式は以下の点で驚くべき特徴を持っていた。

  1. 物質の振動している原子と電磁輻射の間の熱平衡の際に、ほとんど総てのエネルギーは振動している原子に集中されて、ただその僅かな部分だけがそれと平衡にある輻射に分配される。(朝永「量子力学T」みすず書房§3)
  2. エネルギー密度分布の波長依存性が特異的な形をしている。

 これは古典的な物理理論では理解しがたい事柄で、この公式の解釈からエネルギー量子が発見されます。その当たりは高校レベルを超えるのでここではやりませんが、別稿「プランクの熱輻射公式(1900年)」で説明しておりますので、興味のある方は御覧下さい。
 ここでは公式の結論だけを利用する。つまり絶対温度Tの物体と放射平衡にある電磁場(光)の単位波長幅、単位空間体積当たりの放射エネルギー密度ρλ

となる。ここで c=光速=3.0×108m/s、 h=プランク定数=6.63×10-34J・s、 kB=ボルツマン定数=1.38066×10-23J/K です。以下に絶対温度T=5800K(太陽の表面温度)、T=3000K、T=1200K、T=600K、T=288K(地球表面の平均温度)の場合の分布を示す。グラフの縦軸の目盛りはそれぞれ大きく異なっていることに注意。

 

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2.絶対温度Tの物体が放射する光

  前項1.の輻射で満たされた空洞の壁に,その空洞の大きさにくらべて非常に小さい孔をあける。この孔を外部から見たとき漏れ出てくる輻射は絶対温度Tの物質と平衡関係にある輻射です。この孔は単なる孔ですから外部から入射する光線は完全に透過させる。つまり放射を完全に吸収する。このように入射する総てのエネルギーを吸収するような物体を完全黒体という。前記の孔はまさに完全黒体です。
 空洞から漏れ出てくる輻射強度の波長依存性は空洞内部の輻射のエネルギー密度分布の形と同じです。なぜなら空洞内の単位体積当たりの輻射のエネルギーとはその場をあらゆる方向に通過していく光線のエネルギーを統合したものに過ぎないからです。故に[黒体表面が放射する光の単位波長幅、単位面積、単位時間当たりのエネルギー流量][プランクの輻射公式の単位波長幅、単位体積当たりのエネルギー密度]ある定数を乗じたものになる。
 一般の物体は完全黒体とは見なせないが、その物体が放射する輻射は同温度の完全黒体が輻射するエネルギー関数にその物体の吸収能(入射光エネルギーの内物体に吸収されるエネルギーの割合)を乗じたものになることが解っているので、普通の物体もプランクの輻射法則の形に従った輻射をしてるとして良い。

 絶対温度Tの普通の物体の放射するエネルギー流量の単位波長、単位面積、単位時間当たりの値はプランクの公式にある値を乗じたものになる。この公式には二つの重要な結論が含まれている。

  1.  公式を全波長領域にわたって積分すると物体の単位面積が単位時間に放出するエネルギー流S(W/m)になるがこれは絶対温度Tの4乗に比例する。

     これは下記図1のグラフで囲まれる部分の面積が絶対温度の4乗に比例して増えることに関係しているのですが、この[グラフの面積=輻射のエネルギー密度][黒体表面の単位面積から半球状立体角に向けて単位時間に放射されるエネルギー流S]の関係は非常に解りにくいところです。その当たりを別稿「シュテファン・ポルツマンの法則」2.(4)で解りやすく説明しておりますので是非御覧下さい。
     この公式はすでにシュテファンが実験的(1879年)に見出し、ボルツマンが熱力学の理論から導いていた(1884年)のでシュテファン・ボルツマンの法則と言われる。比例定数σをシュテファン・ボルツマン定数という。プランクの放射法則を元にしてσの値を計算すると黒体輻射の場合σ=8π5B4/60c23すなわち5.67×10-8W/m2・K4となる。
    〔前節の5つのグラフを同一座標に描くと以下のようになる〕
  2.  下記図2で放射のエネルギー密度が最大になる波長λmaxと絶対温度Tの間の関係を調べてみると、λmaxは、Tに反比例し

    という式で表わされる。これはすでにウィーンが熱力学的考察から導びいていた(1893年)のでウィーンの変位則と言われる。比例定数はb=ch/βkB=2.8978×10-3m・Kです。つまり物体は温度が上がるほどより波長の短い光を出して輝くようになる。また低い温度の物体もそれなりの波長の光を放射している。
    〔前記図1を縦軸指数表示で描くと以下のようになる〕

これらはプランクの輻射法則の結論であることに注意。

 

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3.温室効果

以上で温室効果を理解する準備が整った。温室効果を理解する鍵は以下の3点です。

)シュテファン・ボルツマンの法則

 物体が単位時間、単位面積当たりに放射するエネルギー量は物体の絶対温度の4乗に比例する。このことから、一定の輻射を受けている物体はどんどん暖まって温度が上昇していくが、それに伴って放射するエネルギーも増えていく。やがて入射するエネルギーと同じだけのエネルギーを放射する温度になったときつり合う。つまり受け取る放射のエネルギーに応じてつり合う温度が決まってくる。

釣り合い状態では単位時間に受け取るエネルギーと放射するエネルギーは等しくなっていることに注意。
 この当たりの具体的な見積もり計算はこちらをご覧ください。

 

)ウィーンの変位則

 物体の放射する光の波長は物体の温度が高ければ短くなり、温度が低くなれば長くなる。そのとき太陽(T=5800K)が出す光はλmax=0.5μmの可視光であり、地球(平均温度T=288K)が放射する光はλmax=10μmの赤外線です。つまり地球表面は可視光で暖められ、赤外線を放出して冷える。

 

)地球大気は可視光に対してほとんど透明だが赤外線は良く吸収する。

 酸素や窒素の吸収波長は紫外線やX線の領域にあり、可視光や赤外線に対してほとんど透明です。しかし大気中にごく僅か含まれる水H(0.3%)と二酸化炭素CO(0.03%)や亜酸化窒素N2(原始地球に存在したと考えられている)は、その分子振動の共鳴振動数が赤外線の振動数領域にある。そのため可視光に対しては透明であるが、赤外線を良く吸収する。吸収された赤外線エネルギーは分子振動を経て熱エネルギーとなる。そして酸素や窒素と衝突することにより他の分子に広がっていき、結局大気全体を加熱することになる。

 メタンフロンの様な構造の分子も赤外領域に吸収波長を持ち温室効果ガスになる。これらの温室効果ガスの特異な性質を発見したのは英国の科学者ティンダル(1859年)です。その業績紹介の引用はこちら
  ところで、赤外線を発見したのはドイツのハノーファー出身のイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェル(1800年)です。また紫外線を発見したのはドイツのヨハン・リッター(1801年)です。これらの事についてはPais(p79〜80)の説明を参照。

 いずれにしても大気中にごく微量しか存在しないこれらのガスが地球放射の大部分を吸収してしまう。そのため大気全体が暖められて、大気はその温度に応じた光を放射し始める。その波長はウィーンの変位則により赤外の領域になる。そのとき大気は宇宙空間の方向と同時に地球表面の方向へも熱線を放射する。そのため地球は再び暖められて温度が上がる。シュテファン・ボルツマンの法則により、その上がった分だけ余分な放射をしないと温度がつり合わない。その余分な放射が再び大気に吸収され大気を暖める。大気はさらに赤外線を上下に放射する。以下この繰り返しで地球と大気が互いに暖めあう。これが温室効果です。
 温室効果と呼ばれる理由は温室のガラス大気と同じ働きをして、これと同じメカニズムで温室内の温度を上げるからです。

 温室効果ガスが無くて大気が赤外線に対して透明な場合は地球は−40℃で輻射平衡になると言われている。二酸化炭素と水蒸気の温室効果ガスのために現在の地球は+15℃で輻射平衡になっている。上記のフィードバック増幅効果の為に温室効果ガスのごく微量の存在で平均気温が−40℃から+15℃に増大したのです。今日フロンやメタン、そして二酸化炭素の大気中濃度の増大に重大な関心が持たれている理由です。

補足説明1
 上図左側の温室効果が無い場合の地球大気系の放射平衡温度は“太陽定数”(地球標線に到達する太陽放射の強さ、太陽光に直角におけれた単位面積当たり1.37kW/m2と、“シュテファン・ボルツマン定数”(黒体輻射の場合σ=8π5B4/60c23すなわち5.67×10-8W/m2・K4と、地球の“平均反射率(アルベード)”(現在の地球の値はa=0.3程度)が解れば、放射平衡式から平衡温度は求めることができる。

 もちろん平衡温度が0℃以下になると地球表面のかなりの部分は凍り付いてしまうので平均反射率(アルベード)はa=0.3より大きくなる。その為上で計算した平衡温度255K=-18℃よりも更に低い温度で平衡となる。前述の−40℃にはその当たりを含めた意味での平衡温度(かなり昔の見積値)です。
 この値(仮に平衡温度を−40℃とする)を逆に用いると温室効果が無くなった時の地球表面のアルベードの昔の見積値が計算できます。
 温室効果が無いと仮定できる状況で実際に寒冷化した場合の地球のアルベード値がどのくらいで落ち着くのかはなんとも言えない所ですが、全地球凍結が生じた場合の今日のアルベードの予想値はa=0.84程度です。その値を用いると平衡温度は−100℃近くになる。
 
 参考までに金星、地球、火星の状況を比較すると下図のようになる。

放射平衡温度と平均表面温度の違いから解る様に、金星での温室効果は極めて大きく、地球はそれなりで、火星ではほとんど無いことが解る。

補足説明2
 [補足説明1]中の記述に付いての注意ですが、スノボールアース(凍結地球)状態になったときに、大気中の二酸化炭素が無くなるわけではありません。スノボールアースを生じる為には二酸化炭素濃度の減少が必要ですが、スノボールアース状態が一旦生じれば、その高いアルベード値により、そのスノボールアース状態は何百万年も続きます。そして、その間は地球の火山活動による二酸化炭素濃度の増大が続きます。
 キャスティングとカルデイラの計算によると、大気中の二酸化炭素分圧が0.12気圧(現在の二酸化炭素分圧の400倍)程度になれば、その温室効果により(原生代後期の)全地球凍結から脱出できるだろうと言うことです。だから、全地球が凍結状態でもその大部分の期間の二酸化炭素濃度はかなり高い状態にあるという事です。
 もちろん、原生代前期に生じた全地球凍結から抜け出るには、当時の弱い太陽光度を考慮すると上記の見積値0.12気圧より高くなる必要がある。
 だからその温室効果のために、a=0.84という高アルベード値の状態でも平均気温が−100℃まで下がることは無いでしょう。全地球が凍結した初期には−50℃程度には下がるかも知れませんが、徐々に二酸化炭素濃度増大による温室効果の為に0℃近くまで何百万年もかけて上昇していくはずです。
 そして、スノボールアース状態を抜け出た直後は、その高い二酸化炭素濃度故にホットハウスアース状態がしばらく続きます。しかしホットハウス故の激しい気象状況による大陸の浸食・風化により、二酸化炭素濃度は下がっていくと考えられています。
 この当たりは別稿1.(2)を参照されたし。

 

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4.地球のエネルギー収支

 地球に入射したエネルギーは結局、最後にはすべて宇宙空間に逃げていく。地球の大気圏外で太陽光線に垂直な単位面積に単位時間に入射する太陽エネルギーは、放射(電磁波)を全ての波長にわたって積分すると約1360W/mです。
 ところで地球は球形で回転している。地球断面(πr)と地球表面積(4πr)の比が1:4であるので地球表面全体にわたって空間的・時間的に平均を取ると、地球表面の単位面積に入射するエネルギーは上記の1/4の340W/mになる。
 さらに反射や大気の吸収により、実際に地面に届くのはさらに半分になる。結局1360W/mの約1/8の170W/mが可視光の形で地表面に届く。

 地球大気圏上層に届く太陽光の内の50%が地表に届く。それが地表を暖める。暖まった地球は赤外線を放射する。そのうち6%が大気を透過してそのまま宇宙空間へ逃げ去る。残りの44%分と、太陽光が直接大気を暖める部分(20%)の合計64%が大気を加熱する。暖まった大気もまた、その温度に応じた赤外線を放射する。それは地表面に向かうものと宇宙に逃げるものになるが、地球に向かう成分は、地球を再び暖める。そしてさらに暖められた地球は赤外線を放射し、それは大気に吸収される。以下同様のフィードバック機構が等比級数的に働く。簡単に言えば
(20+44)+64×a+64×a+64×a+64×a+・・・・・・=64/(1−a)=20+44+103
のようなメカニズムになる。この簡単なモデルでは1−a=64/167だからa=0.616になる。
 大気の厚さを何層にも分割して考えると、各層において同様な平衡関係が成り立っている。温室効果ガス濃度が増えれば、より下層の部分で赤外線が吸収しつくされてしまう。そうなると大気から地表面に帰る割合が増大するであろう。そのために温室効果ガスの僅かな変動は輻射の地表への帰還率103%を大きく変動させる。

 今仮に大気中の水蒸気や二酸化炭素が現在より少なくて赤外線を吸収しなかったら、上図の大気から地球に帰ってくる赤外輻射のエネルギーは103%よりずっと少なくなる。例えば15%だったとする。そうすると地表面(大気上層面ではない)が放射するエネルギーは50+15=65%となる。これと現在の地表面が放射するエネルギー50+103=153%を比較する。つまり153が65に減ると地表の平衡状態の絶対温度はT=288KからT’=T−ΔT=288−ΔTとなる。
 シュテファン・ボルツマンの法則を適用するとσT:σ(T−ΔT)=153:65が成り立つ。T=288Kを代入して、この比例式を解くとΔT=55Kとなる。つまり現在の気温288K=15℃より55℃低い233K=−40℃になる。こうなると地球は総て凍り付いてしまう
 上記の15%の値を様々変えてΔTの値を計算してみて欲しい。地球表面温度は微妙なバランスの上に成立しているのが解る。そこに温室効果が重大な働きをしている。
 
[注意]
 もちろん、平衡温度が下がれば地表面の氷河・氷床の面積は増えます。そのため、いまa=0.3(図の30%)としている反射率(アルベード)はより大きくなりますので、実際の平衡温度はもっと下がるはずです(3.(3)[補足説明]参照)。

 

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5.地球温暖化

[2004年9月19日記載]
 気象庁は「気候変動監視レポート」を毎年発表している。それによると大気中の二酸化炭素濃度は前年比2.7〜2.8ppmで増加を続けており、産業革命以前の値と比較すると33%増大した。また地球温暖化に伴う海水面上昇も続いており、現在はこの100年間で最も高い水準にある。
 以下のデータは気象庁ホームページ
平成13年度の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第3次評価報告書 第1作業部会報告書 (2001年3月)」
http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/tar/TARWGISPMJP.pdf
から引用した。それによると

  1. 過去50年間に観測された温暖化の大部分は、温室効果ガス濃度の増加による可能性が高い。
  2. 2100年には、世界の平均気温は1.4〜5.8度(1990年との比較)上昇する見通しである。
  3. 2100年に世界の海面水位は9〜88センチメートル(1990年との比較)上昇する見通しである。

[2007年4月追記]
2007年2月2日に
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書 第1作業部会報告書(自然科学的根拠) 」
http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/ar4/index.html
が発表された。
 それによると温暖化の進行は、さらに深刻度を増しているようだ。

[2009年3月追記]
 私は、以前海岸線に広がる沖積平野に隣接した小高い丘の上に建つアパートに住んでいました。20数年前にその小高い丘の中腹を貫くバイパス道路工事が始まったのですが、そのとき縄文時代の遺跡が沢山出てきました。ちょうど沖積平野の裏山の中腹の辺りです。日本全国の縄文時代の貝塚遺跡は現在の海面より5〜6m高い内陸部に分布していることが知られています。おそらく6000年前の縄文時代にはその山のふもと(現在の海抜は6m程度)が海岸線で、遺跡は海に面した小高い丘の中腹にあったと思われる。最終間氷期のもっとも温暖であった時期(10000年前〜6000年前)のグリーンランドの氷河は半分程度が溶けていた様です。
 現在は約10万年の周期で氷河期と間氷期が繰り返す氷河時代です。海面もその周期で100m以上上下動します。現在は約6000年前の最も暖かくて海面が高かった時期を経て氷河期に向かう時期だったのですが、人類の排出するCOによる温暖化のために大陸氷河が溶け出して海面上昇が始まっています。私が生まれて以後海面は約10cm上昇しました。

 今グリーンランド氷河は溶け出す速度を加速度的に早めています。グリーンランドの氷河が全て溶けると海面は約7m上昇すると見積もられています。そうなれば現在の海岸平野の大半は水没するでしょう。
 海面上昇は人類にとって最大の脅威ではないでしょうか。

2009年11月追記
 大河内直彦著「チェンジング・ブルー(気候変動の謎に迫る)」岩波書店(2008年刊) はとても面白い。興味ある高校生諸君は是非読まれることを薦めます。この中のp85p100〜102p106〜117p188〜219p258〜265p312〜329を別ページにて引用。

2012年1月追記
 田近英一著「大気の進化46億年」技術評論社(2011年刊) はとても面白い。授業で教えていたシアノバクテリアの出現年代が35億年前というのはどうも誤りだったこと、ストロマライトは酸素濃度増加時期の判定の決め手にはならないこと、生物の陸上進出に関してオゾン層の形成は関係ない(オゾン層は20億年前にはできていた)などの新しい知見は興味深い。
 全地球凍結がその直後に酸素濃度の大幅な増加をもたらしたメカニズムを含めて全地球凍結イベントに関してはほぼその意味がわかってきて統一的に説明できるようなった様ですね。
 二酸化炭素濃度と温暖化とは強い相関関係があることは確かなのだが、二酸化炭素濃度が高くなったから温暖化したのか、温暖化したから二酸化炭素濃度が高くなったのかの因果関係についてはまだハッキリ言えないといういうことは、まさにその通りかも知れません。
 授業で説明するときも難しい所でしたが、石炭紀・ベルム紀や、中生代の気候変動についての議論でこのメカニズムが本当なのかと思うところもありますが、全体的にはなるほどと思うことが多いとても刺激的な本でした。

太陽黒点減少とスベンスマルク効果は要チェック
 http://www.dsri.dk/~hsv/9700001.pdf
 http://www.dsri.dk/~hsv/prlresup2.pdf

[2013年11月追記]
 IPCC第5次評価報告書 第1作業部会報告書(自然科学的根拠)   気象庁翻訳版

[2014年6月追記]
 マイケル・E・マン著「地球温暖化論争−標的にされたホッケースティック曲線」化学同人社(2014年3月刊)
 これは最初に掲げた過去一千年の温度変化グラフに関するドキュメンタリーです。この本はできるだけ多くの人が読まれた方が良いように思います。
 先日NHKスペシャルでジャカルタの海岸地帯が満潮のたび水没するようになったことを放映していました。ここ100年の水面上昇は20cmと見積もられています。20cm上昇しただけで、この有様ですから今後が心配です。インドネシアは、温暖化の進行にもかかわらず、石炭火力発電所を次々と建設して増大する電力需要をまかなうつもりの様です。

[2015年5月12日追記]
 ディヴィド・ビアリング著「植物が出現し、気候を変えた」みすず書房(2015年刊)はとても面白い。参考文献表が充実しているのもありがたい。ただし、現在の温暖化の進行は、これらの本が発する警告に対して、ただ単に面白いと言う感想ではすまされ無い状況になりつつあります。
 先日も、この時期早くも台風7号が発生したと報道されていましたが、この時期から台風の被害に悩まされるとは!このページを作った2004年から11年経つのですが、この11年間の変化に今更ながら驚かされる。

[2015年11月27日追記]
 宮本ひろ子著「地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか−太陽活動から読み解く地球の過去・現在・未来−」化学同人(2014年刊)はとても面白い。気候変動に影響する太陽活動の変化と宇宙線の影響について最近の知見が紹介されています。地球科学も確実に新しい発見・発展が在るのですね。NHKのコスミックフロントなどで時々紹介されていましたが、この方面の知識に疎かったので読んで本当に有益でした。

[2016年7月23日追記]
 先日のニュースで、このたび新しく選出されたフィリピンの大統領が、「地球温暖化対策に対して、フィリピンは今から発展しなければならないので温暖化対策に関わり合うつもりはない。」と発言していることが報道されていました。以前インドの首相も同様な趣旨の発言を繰り返していました。
 インドは猛暑で、フィリピンは巨大台風で痛めつけられることになるのがまるで解っていないようです。中国、ロシヤ、ブラジルを含めて政治家の愚かな発言にはあきれます。日本の政治家も似たようなものですが。

2017年3月24日追記
 最近の新聞記事によると、南極の海氷域面積が、今年は観測史上最小になったようだ。

 また、昨年2月に日本の研究者(横山祐典、他)により、南極のロス海棚氷が現在の間氷期に入って溶けた時期が、従来考えられていた1万5千年前ではなくて、5千年前に流出・融解したことが確認された。
 彼らは現在のロス海棚氷下の海底沈殿物中に含まれる生物由来(オキアミ)の有機物の炭素14同位体年代測定で確認したようです。
 5千年前と言えば日本では縄文時代の海進が生じた時期で、ロス海棚氷の流出・融解(推定では3mの海面上昇)がその原因の一部をなした可能性もある。

2017年8月5日追記
 今年、西日本では7月20日以来連日最低気温28℃以上、最高気温35℃以上、湿度70〜80%以上の高温・多湿の天候が続いています。8月に入ってから山口県でも最高気温37℃以上の日が続いています。私の記憶によれば、過去にここまで高温多湿が続いたことはなかったように思います。地球温暖化がいよいよ顕在化してきたのでしょう。
 今の状況は西太平洋の海面水温全体が表層のみならずかなりの深部まで上昇したために生じている事なので、来年以降も同じ状況だと推察される。
 
 また、高温海水面の北西太平洋から流入する高温多湿空の気塊により、局地的集中豪雨が今後多発すると予想される。
 冷たく乾いた空気の陥入・進行による斜面形成で生じる雷雲が、地球温暖化により下図のような多重セル(スーパーセル)形の巨大なものになる可能性が気象学者により早くから警告されていました

 今年の夏に多発する集中豪雨は、上記の[冷たく乾いた空気の陥入進行による斜面][地表に固定された山岳地形の斜面]に代わったものです。山岳斜面に向かって流れ込む高温・多湿の大気が山岳斜面で上昇し、水蒸気凝結の潜熱で加熱され積乱雲に発達する。それが山岳斜面上空に連続的に発生し続けるタイプです。山岳斜面は動きませんから、豪雨は同じ場所に集中します
 いままで経験したことのない雨量ですから、森林斜面が次々に崩落することは避けがたい。日本の森林の大半は花崗岩斜面が風化した土壌に生育したものです。表層の風化した地層が一定以上の雨水を包含すれば当然地滑りを起こします。
 
 現在建設が進んでいる国立競技場には冷房設備はないそうですから、2020年の真夏に開催される東京オリンピックは悲惨な事になるでしょう。真夏の東京で開催する愚かさを反省すべきです。
 
 この時期発生する台風は、昔と違ってほとんどが中国方面へ上陸するようになりました。永年にわたって地球温暖化に対して他人事みたいに勝手なことを言っていた中国は、この期に及んで地球温暖化の驚異をやっと切実に感じ始めたようです。それにも関わらず軍拡に血道を上げている中国指導部の愚かさは何なのだろうか。

[2017年9月16日追記]
 今年の夏の北極の極小海氷面積の報告です。2017年9月16日の朝日新聞より

[2018年3月18日追記]
 2018年の冬は異常に寒さが厳しかったのですが、その原因を説明する新聞記事(その1その2)の引用です。

 

2018年4月9日追記
 “大和”が徳山の海軍燃料廠で最後の給油をして沖縄へ向けて出港したのは昭和20年(1945年)4月6日です。その出撃前日の出来事として吉田満は「戦艦大和ノ最期」に乗組員が瀬戸内海地方の沿岸に咲く早咲きの桜を眺めて内地との別れを惜しんだことを書きしるしている。そこに記されている様に昭和20年ころソメイヨシノの満開は瀬戸内海地方では4月8日頃でした。
 今年は8日が日曜日だったので学校の春休み明けの始業式は9日でした。そして同日に入学式が行われた。振り返ってみると、私(現在69歳)が子供だった頃は4月8日の入学式は瀬戸内海地方では桜(ソメイヨシノ)が満開の頃に行われた。(実は私どもの小学校入学式当日に桜が満開だったかどうか記憶は定かでありません。そのため吉田氏の本から引用したのですが、当時の絵本や教科書の中の入学式の挿絵は必ず満開の桜をバックにしたものだったことは覚えています。2019年8月追記)
 それが、私が教職にあって私の子供が小学校に入学する頃(いまから30年前頃)には桜の花吹雪の季節にずれこんでいました。4月8日の始業式・入学式は私ども教員に取って印象深い行事ですから、それらが桜の開花とどの様に関係していたか良く覚えています。特に私が34歳〜42歳(今から27〜35年前)に勤務した高校にはたくさんのソメイヨシノが植えられてましたので入学式と桜吹雪の取り合わせは強く記憶に残っています。(私の娘が小学校に入学したのは1990年です。その年は3月末に桜は満開になったため、近くの桜が見える公園で娘にランドセルを背負わせて早めに記念写真を撮りました。その写真の日付は4月1日でその中の桜はすでに散り始めています。2019年8月追記)
 しかし、現在の4月8日には桜(ソメイヨシノ)はすべて葉桜となり新緑の若葉が芽生えています。60〜70年前には瀬戸内海地方のソメイヨシノの開花は現在よりも確実に2週間程度遅かったのです。

 

2019年3月24日追記
 私は瀬戸内海地方に住んでいるのですが、今年は一度も積雪が生じるような冷え込みはありませんでした。雪がチラチラした天候がほんの数日あっただけです。
 私が子供の頃には、私どもが住んでいる瀬戸内海地方でも一冬に10cm程度の積雪が何度かある冬は珍しくありませんでした。それが、私が30〜40歳のころには精々数pの積雪がたまにあるくらいになりました。そして今年の冬は私どもが住んでいる土地に積雪が生じるような気象状況は一度もありませんでした。以前は、冬期に車のタイヤをスタッドレスタイヤに交換していたのですが、積雪することが無くなったので数年前からそれもしなくなりました。ちなみに私どもが住んでいる所では、最近の4年間に、2016年1/25に2cm程度、2018年1/25に2cm、同じく2018年2/12に3〜5cm程度の積雪がありましたが、2017年と今年2019年の冬には積雪が生じる様な気象状況は無かったのです。
 子供の頃には冬期の道ばたや家の庭隅に霜柱をよく見かけたものですが、今日ではとんと見かけなくなりました。また溜池や用水桶に厚さ数cmの氷が張ることは珍しくありませんでしたが、現在ではその様な厚い氷が張ることは無くなりました。氷が張ること自体がほとんど無くなりました。
 私どもが子供の頃の夏は、昼間どんなに暑くなっても、日陰に入り団扇で扇げばしのげたものです。子供の頃は扇風機もクーラーも無くて、夏は蚊よけのかやと団扇が暑さ対策の主要なアイテムでしたが、昨今の夏の気温の高温化は耐えがたいものになりつつあります。そのため、夏の高温対策のためのクーラー使用を見越して、私どもも一昨年(2017年1月)にソーラーパネルを屋根に取り付けました。
 今から桜の開花の季節ですが、温度に敏感に反応して開花するソメイヨシノの開花・満開は私どもが子供の頃は4月8日頃でしたが、それが歳と共にだんだん早くなり、最近では3月末に満開を迎えるようになりました。ソメイヨシノの開花時期はこの70年間で確実に2週間程度早くなりました。
(ちなみに今年の東京のソメイヨシノの満開は3月27日頃でした。私の住んでいる所は昨日から咲き始めました。3/28追記
 産業革命以後のこの100年間に生じた急激な平均気温の上昇(約1℃です)とリンクできる原因としては、大気中の温暖化ガス(二酸化炭素やメタンガス)濃度の増大以外にはほとんどありません。これらのガスの急激な増大は100年のスパンですから、私ども70歳の人間の経験からくるこの間の平均気温変化の体験とも一致します。

 

2019年8月26日追記
 以前新聞記事で紹介した横山祐典氏が書かれた「地球46億年気候大変動」講談社ブルーバックス(2018年刊)はとても面白い。
 第4章、第5章、第6章で取り上げられている時代の二酸化炭素濃度増減のメカニズムが興味深いです。
 特に第6章で取り上げられている新生代に入ってからの二酸化炭素濃度の減少と寒冷化に付いてですが、教員をしていたとき地学の授業で新生代の寒冷化の原因として大陸移動が関係していると説明はしていたのですが、その大陸移動と寒冷化の関係については様々な説(レイモの説オーシャン・ゲートウェイ仮説もそういったものの一例)があって良く解らず適当にごまかしていたのです。
 この本を読んで、Raymo[レイモ]達が提唱(1988年、1992年)した「ヒマラヤ・チベット山地が形成され、岩石の風化による大気中の二酸化炭素の吸収がふえた。」という説以降に、Jagoutz [ヤゴウツ] が最近提出(2016年)した「海洋地殻起源のオフィオライトという岩石が地表に出て風化されことにより、二酸化炭素濃度が減少した。」という説が有ることを知ってなるほどと思いました。
 ここは授業で教えていたとき適当にごまかしていたとろで、当時忸怩たる思いがあったのですが、積年の疑問が解決したように感じました。新生代に入ってからの寒冷化を理解するのにヤゴウツ説は必須の知見かも知れません。
 その寒冷化の進展に伴って働き出したのがミランコビッチサイクルによる氷期と間氷期の繰り返しなのですが、その説明は第7章でなされています。そこては、ミランコビッチ説そのものではなく、それを検証する為の第四紀気温変化を解明する過程に重点が置かれて説明されています。その集大成がインブリー達によるミランコビッチ説の検証・復活です。
 第9章は氷河時代における気温変化と二酸化濃度変化の相関関係について説明されています。ここは寒冷化するから二酸化炭素濃度が下がるのか、二酸化炭素濃度が下がるから寒冷化するのかという一番難しい議論が関係するところです。この本の説明もなんとなく歯切れが悪い所ですが、熱塩循環の説明は解りやすいです。また、この分野にプレイクスルーが有るかも知れないと予告されています。
 最後の10章は、ミランコビッチサイクル解明以後明らかになった短期的な気候変動のメカニズムの説明で、最近の成果が紹介されておりこの文献の中で一番面白い所かも知れません。
 今後の地球気候の予想を記したエピローグを引用
 第2〜5章の古い時代の部分は2012年に紹介した「大気の進化46億年」と、第7〜10章の新生代氷河時代の部分は2009年に紹介した「チェンジング・ブルー」と比較しながらお読みになると、更に理解が深まると思います。
 本の中で紹介されている元文献を知るには岩波講座地球惑星科学11「気候変動論」岩波書店(1996年刊)を参照されて下さい。これは地学を教えている頃読んだのですが簡潔な説明しかありませんので私にはとても難しい本でした。引用文献を読むための手引き書の様な本です。

 ミランコビッチ説については何と言ってもJ・インブリー、K・P・インブリー共著「氷河時代の謎をとく」岩波書店(1982年刊)をご覧下さい。インブリー達がミランコピッチ説を検証・復活させた有名な論文を出したのは1976年ですが、この本の原本はそのすぐ後の1979年に書かれています。
 横山氏の本を読んだ機会に、倉庫からインブリーの本を探し出して久しぶりに読み直しました。第四紀氷河時代について知るには、最初にこの本を読まれるのが良いと改めて思いました。これはぜひ再版して欲しい本ですね。
 インブリー文献は古い本なので高校生諸君が読まれる機会はなかなか無いかもしれませんので、その一部(第5〜8章、16章、エピローグ)のみですが別稿で引用しておきます。ただし、インブリー文献で重要なのは第9〜15章です。そこはどうぞ図書館で借りて読まれて下さい。その部分を読まれるとき上記の「チェンジング・ブルー」「地球46億年気候大変動」第7章は良き道案内になってくれると思います。

 ミランコビッチ説で、我々素人が最も解らないのは、自転軸の歳差運動周期の変動や、自転軸傾斜角の変動、公転軌道離心率の変動がどのようなメカニズムで起こるのかと言うところです。これらの周期の変動は おそらく他の惑星(特に木星と土星)の影響なのでしょう。
 インブリー文献によると、この当たりの計算を最初に行ったのは、海王星の存在を予測したUrbain J.J.Le Verrier(1811〜1877)だそうです。その結果を利用してJames Croll(1821〜1890)は氷河期の天文学的原因説を展開するのですが、残念な事にルヴェリエの報告には離心率の変動周期や歳差運動周期の変動は計算されていたのですが、地軸傾き角の変化については、その変化幅だけ報告されていて、地軸傾き角の変動周期に関する計算は含まれていなかったようです。
 その当たりの計算も含めて、第四期地球の公転軌道離心率変化の周期、地軸傾斜角変化の周期、歳差運動周期などのすべての周期の変化過程を計算したのはドイツの数学者ルドヴィッヒ・ピルグリムのようです。その計算が完成したのは1904年で、ミランコビッチ (1879〜1958)はその計算結果を利用することができたようです。この当たりは、別稿で引用した一般相対性理論による水星近日点移動量偏差の解明などと共に天文学の一大成果でとても興味深い所です。

 

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