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R.A.Millikan, “電気素量および光電効果の研究”
ノーベル賞講演 1924年5月23日

 「ノーベル賞講演 物理学 第4巻」講談社(1979年刊)より引用
1-introduce



2-lecture

R.A.Millikanの 記念講演








 (原注)にあるMillikan著「The Electron」(1924年刊)は別稿で引用しています。

 3-photoelectric_effect
 以下は光電効果によるプランク定数の測定についての説明です。



 光源は、水銀灯が発する色々な波長光を石英プリズムで分光抽出して用いられた。ちなみに、水銀灯が発する光の波長分布は下図の様なものです。[拡大版]

 次の第4図は受光金属が Na の場合の測定値ですが、これから解るようにアルカリ金属の様に反応性の高い金属の場合、赤外領域に近い光でも光電効果が生じます。実際のところ、Naの場合可視光線の中でも赤外線に近い領域の振動数ν=43.9×1013Hz/s(波長に直すと683nm=6830Å)の光まで光電効果が生じます。
 電極素材としてより周波数が低い領域の光でも光電効果が起こる金属を用いた方が、プランク定数hをより正確に求める為には有理です。だからMillikanもアルカリ金属であるNaを用いたのです。
 ただし、より低い振動数でも光電効果が起こる金属は反応性が高いため、その表面が酸化されやすく汚れてしまいます。その為綺麗な表面状態で実験を行うには様々な工夫が必要だったでしょう。

 図中の ν=43.9×1013 の意味については[補足説明1]をご覧下さい。

[補足説明1]
 上記の第4図は、別稿「光電子と光子」4-1.3.で説明した

第35図に相当します。
 その時、第35図の縦軸Eは、特定の振動数νの光を金属に当てたとき光電子が放出されるのですが、その飛び出てくる光電子が持つ最大エネルギー値を意味しました。
 本稿の第4図の縦軸が、その最大エネルギー値に相当することに注意して下さい。第4図の縦軸の電圧は、光電子が放出される電極に対して逆向きにかけている電圧値そのものです。
 その逆向き電圧が小さい時には、光電子の電流が流れるのですが、逆向き電圧を大きくしていくと光電子電流は段々減少していきます。逆向き電圧は飛び出てくる光電子を押し戻す働きをするからです。逆向き電圧を強くして遂に光電子電流が流れなくなったときが丁度飛び出る電子がすべて押し返されるときです。だからその時の電圧にeを乗じたものが、飛び出てくる光電子の最大運動エネルギーに相当する訳です。
 ただし、注意して欲しいのですが、電子は負の電荷を持っていますので、放出電極に対面する電極に負の電圧をかけるのですが、グラフの縦軸を光電子が持つ最大運動エネルギーにする為に便宜的に電圧の符号が逆にしてあります。だから電圧の絶対値では無く座標上での電位差のみに着目して下さい。第3図の電圧もその様に読み替えて下さい。
 
 
 さらに補足しますと、金属には必ず“接触電位差”があります。そのため、実際の実験に於ける電位がゼロの横軸 と 光電子電流-使用光振動数のグラフ直線 の交点が臨界振動数νになるわけではありません。
 受光金属であるNaの接触電位を考慮した臨界振動数νの値は第4図中に点線の直線で示されている様に、ν=43.9×1013Hz/s となります。
 ですから、Na金属の接触電位差は第4図の直線を左下方向に延長して、ν=43.9×1013Hz/sとなった時の電位値に相当します。つまり、Naの接触電位差は−2.45V程度になります。
 だから第4図の縦軸の電位の0点は、その事を考慮して上方にずらしてあります。つまり、飽和していた光電子電流が減少を始める点を0とする。
 ここで述べている光電効果の実験から、逆に接触電位を求める事ができるのです。その事に付いては別稿「光電子と光子」4-1.3.[補足説明4]あるいは、シュポルスキー文献§118.等々をご覧下さい。
 このことの意味は解り難いと思いますので、より詳しい説明は別稿で引用している文献をご覧下さい。ただし、私自身この文献の詳細がよく理解できているわけではありません。
 
 
 次に第4図の下に記されている計算式

について補足します。

 Millkanは受光金属を色々変えて、同様な方法で以下の値を得ています。

用いられている電子電荷eの値は当時得られていたものですから、今日の値と少し違いますが、それにしても誤差1%程度の極めて正確なプランク定数の値が得られている。
 Millikan1914年論文と、1916年論文は別稿で引用していますので、詳細はそちらでご確認下さい。 





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