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惑星の衛星に働く潮汐力(月とイオの場合)

1.導入

 このページはある読者の方からの質問がきっかけでつくりました。それは「“”や“イオ(木星の衛星)”の地殻内部の発熱は“潮汐力”変化のために衛星が繰り返し変形する事によって生じるとされている。しかし、それらの衛星は自転と公転が同期していて、いつも同じ面を地球あるいは木星に向けています。何故そのような“潮汐力”の変化が生じるのですか?」と言うものです。

 これは確かに、興味深いご指摘で、考察してみる価値は有りそうです。
 シリーズ現代の天文学9「太陽系と惑星」日本評論社(2008年刊)のp116によると、“イオの火山活動の原因はイオの軌道が円軌道からわずかに歪んでいるためである。イオの公転軌道が木星に近いために、公転軌道半径の変化が大きな潮汐力の変動を生み出して発熱させる”と説明されています。
 イオの公転軌道離心率は0.0041ですから地球(離心率0.0167)などに比べると遙かに真円に近い軌道です。木星がいかに巨大だとしても、公転半径の変動のみで、それほどの潮汐力変化が起こるのだろうか?
 これは計算してみる必要がありそうです。

 丁度良い機会なので、別稿「潮汐力(起潮力)」を補足する意図も込めて、地球に働く月の潮汐力の説明から始めます。

 

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2.地球に働く月の潮汐力

 月が地球に及ぼす潮汐力の変化は地球の自転に伴って生じます

)地球表面上の潮汐力

.A点(月の反対側の赤道上)

 最初に別稿「潮汐力(起潮力)」4.(ロ)の図を取り上げます。

その稿で、A点における“潮汐力”赤矢印)が下記のようになる事を説明しました。

潮汐力がこの様に表される理由については別稿「潮汐力(起潮力)」の説明をお読みください。

.緯度θのB点

 ここでは、さらに一般的な任意の緯度θ(B点)における“潮汐力”赤矢印)を計算します。
 前項の図は地球の北極上空から見た図でしたが、下図は月の公転面に沿った位置から(つまり横から)見た図です。この場合も、月と地球の重心Gに対する地球回転の遠心力は、図の方向を向くことに注意してください。

 B点に存在する質量に働く潮汐力ΔFBは、その点の遠心力Aと月の引力Bとの合力となります。B点の質量mに働く遠心力は地球中心F点の質量mに働く月の引力と同じになる事は別稿「潮汐力(起潮力)」で説明しております。ここが潮汐力を求めるときに最も重要な考察ですから、是非そこの解説を復習されてください。

ここで、B点に於ける三角形に於いて下記の比例関係が成り立つ。

これを用いるとB点に於ける“潮汐力”ΔFB

となる。G、M、R、Δrに具体的な値を代入すると

となる。縦軸をΔFB/m、横軸を緯度θ(あるいは赤道からの距離)として描いたグラフを次項の最後に示す。そこのθ=0(赤道)での値は、確かに前項で求めた値に一致しています。

.潮汐の水平成分

 実際に海水の移動を引き起こす力として重要なのは水平方向の力です。そのため水平成分を取りだして図示すると

の様になる。実際の大洋の海水は自転する地球表面に張り付いています。そのため、地球の自転とともに月(太陽)との位置関係を変えていく。だから大洋の海水には潮汐周期(月12.42h、太陽12h)で大きさと方向が変わる水平方向の力が周期的に働くことになる。これが様々な潮汐現象を起こす。

 B点に於ける潮汐力の水平成分ΔFB水平は、前項の潮汐力ΔFBから次のようにして求まる。

この中のG、M、R、Δrに具体的な値を代入してΔFB水平/mを求めると

となる。これはB点での重力加速度ベクトルの“潮汐力による偏差加速度ベクトルの水平方向成分”を意味する。
 縦軸をΔFB/m、あるいはΔFB水平/mとし、横軸を緯度θ(あるいは赤道からの距離L)に取ったグラフを描いてみると下図の様になる。北緯90°L=1×107です。

 

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(2)地表の垂直方向隆起量

.潮汐力による地球(海水面)の変形

 簡単に議論するために、地球の自転による回転楕円体への変形やそれに伴う重力加速度ベクトルの偏向を無視する。そのとき、潮汐力の働かないときの地球表面での重力加速度ベクトルは地球中心に向かい、その大きさは高校物理で習うように

で与えられる。
 潮汐力が働くときには、地球表面での重力加速度ベクトルの方向は、前節で求めた偏向加速度ベクトルの水平成分ΔFB水平/mだけ赤道方向に偏向する。もし地球表面に張り付いている海水面が、その潮汐力に直ちに対応するならば、海水面は、月に面した側と、その真反対側が盛り上がって、丁度ラグビーボールの様な形に変形します。
 そのときの海水面は、各地点での偏向後の重力加速度ベクトルの方向に垂直になるはずです。次図はその事情を説明している。

 潮汐力によって生じる重力加速度ベクトル地球の偏向角をΔλとしています。赤道のA点から極のC点へ移動していくとき、Δλは0[rad]から始まって中緯度で最大となり極で再び0[rad]となります。

 潮汐力が働いていない場合の地表面に対して、潮汐力平衡に達したときの地面がどれだけ傾いているかを表す量はtanΔλ[単位なし]となる。縦軸を勾配tanΔλ[単位なし]、横軸を赤道からの距離L[m]としたグラフを描いてみると下図の様になる。ここで Δλ≪1 の場合に成り立つ近似 tanΔλ≒Δλ を用いている。

.潮汐力による地球の変形隆起量

 前述の潮汐力により変形した後の地球のA点(赤道)C点(北極)との隆起量差Δhは、tanΔλA点(L=0m)からC点(L=2πΔr/4=1.0×107m)まで子午線に沿って積分した値となる。
 赤道から極までの子午線距離が1.0×107m=1万kmとなるのは偶然ではなくて、元々メートル法の1mは、赤道から極までの距離の1/107倍と決められたからです。

 この積分計算は、例えば高校数学で習う“シンプソン公式などの数値積分法”を用いれば簡単に実行できます。実際に計算してみるとΔh0.52m程度となるが、これは積分を実施しなくても面積図形の様子から推測できます。
 もちろん、月の公転半径の変化や太陽の潮汐力による変化がさらに付け加わりますから、地球に生じる実際の潮汐力変化にともなう隆起量はこれを中心にしてさらに数十cm程度は変化します。

[補足説明1]
 Δh0.5m程度になることは、別稿「潮汐力(起潮力)」5.ですでに説明しました。そのとき、地球の自転速度はかなり速いために海水面の隆起量Δhは地球自転速度に追従して地球表面を移動する事はできません。そのため現実に起こる潮汐現象を説明するためには、長波の理論に従った動力学的な考察が必要です。

[補足説明2]
 地球の潮汐変形が地球の自転速度に追従できないために、地球の自転速度の減少と月の公転速度の加速が生じます。このことについては、別稿「月の潮汐力が地球の自転を遅らせ月の公転を加速する」をご覧ください。

 

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3.イオに働く木星の潮汐力

 木星がイオに及ぼす潮汐力の変化はイオの公転半径が変化する事によって生じます。これは月が地球に及ぼす潮汐力の変化が地球自転に伴って生じるのとメカニズムが異なります。その点に注意されて以下の説明をお読みください。

)イオの公転軌道離心率と自転周期

.公転軌道

 木星の衛星イオの公転軌道離心率は0.0041程度です。これは地球の離心率0.0167よりも小さく真円に近い。イオの近日点距離Rminと遠日点距離Rmaxは下記の様な値です。

この程度の公転半径の変動で、イオ内部が発熱して火山活動が生じるほどの潮汐力が生じるとはにわかに信じられません。次節で公転半径の変化に伴う潮汐力の変動を計算してみます。

.自転周期

 恒星空間に対するイオの公転周期と自転周期は1.7691日=42時間27.6分程度です。つまり、イオの“公転周期”“自転周期”は同じです。これは“木星がイオに及ぼす潮汐力の働きによって、位置エネルギー的に安定な自転周期と公転周期の一致した状態になっているため”です[シリーズ現代の天文学9「太陽系と惑星」日本評論社(2008年刊)のp108]
 その辺の事情は月と同じですが、木星のガリレオ衛星(イオ、エウロパ、ガニメテ゜、カリスト)などを含めて、他のほとんどの衛星もそうなっている

 イオの公転運動について重要な事は、イオの自転周期は公転周期と同期しているために、イオはいつも同じ面を木星に向けているということです。衛星の惑星に面した半球を“表側”(near side)、その反対側の半球を“裏側”(far side)と呼びます。
 そのとき、もしイオと木星の距離に変動がなければ、木星の潮汐力に因ってイオに生じる地殻の変形は時間的に変化しません。イオに生じる激しい地殻変化はイオと木星間の公転半径の変動が原因と考えられています。次節でそれを確かめる計算をしてみます。

 

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(2)イオ表面上の潮汐力

.イオの裏側A点での潮汐力

 木星によってイオ表面に存在する質量mに生じる潮汐力は2.(1)1.で説明した地球の場合と全く同様に計算できる。そこの図をイオと木星に置き換えて、A点に生じる潮汐力を計算してみる。

地球の場合と全く同様に考えて、イオの“裏側”(far side)A点における“潮汐力”赤矢印)を求める。

であるから、イオが木星に最も近づいた時の“潮汐力”ΔFARmin

イオが木星から最も遠ざかったときの“潮汐力”ΔFARmax

となる。
 イオの地殻を周期的に歪ませる潮汐力の変化は、これらの潮汐力の公転運動に伴う差だから、ΔFARminΔFARmaxΔ’FAを見積もればよい

となる。これは、月に因って地球の“裏側”(far side)A点に生じる“潮汐力”が地球自転によって変化する量m×1.1×10-6Nの137倍程度です。公転軌道半径の変化でこれほどの変化が生じるとは驚きです。
 イオ地表面に於ける重力加速度は

だから、潮汐力による重力加速度のA点に於ける変動比は

となる。イオの重力加速度は地球の1/5程度だから、変動比では地球の750培程度となります。そのため、イオの地殻は公転とともにかなり変形する事が予想される。このあたりをもう少し調べてみる。

.緯度θのB点

 イオの地表面の変形を計算するために、任意の緯度θに於けるる“潮汐力”の公転に伴う変化量を求めておく。その求め方は前章の地球の場合と全く同じですから、ここではいきなり“潮汐力水平成分の変動量”を求めます。
 今の場合下記の状況が成り立つ。
 2.(1)3.の議論を参考にすると、イオが木星に最も近づいたときの“潮汐力水平成分”の加速度偏分は

イオが木星から最も遠ざかったときの“潮汐力水平成分”の加速度偏分は

となる。
 イオの地殻を周期的に歪ませる加速度の変動量は、これらの偏分の公転運動に伴う差だから(ΔFA水平Rmin/m)(ΔFA水平Rmax/m)Δ’FA水平/mを見積もればよい。
 縦軸をΔ’FA水平/m、横軸を緯度θ(あるいは赤道からの距離)に取ったグラフを描いてみると下図の様になる。


2.(1)3.のグラフと比較してみられたし。縦軸の値が地球の場合の137倍程度になっている事が読み取れます。

 

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(3)イオ地表面の垂直方向隆起量

.潮汐力によるイオ表面の変形

 公転に伴って生じる潮汐力の変動によってイオがどの程度変形するか見積もってみよう。Δ’FA水平/mをイオの重力加速度イオで割ってtanを取ると、緯度θ(赤道からの距離L)の地点での地表傾度の変化量のグラフが得られる。


2.(2)2.のグラフと比較してみれば解るように勾配変化の最大値は地球の場合の750倍程度となる。

.潮汐力変動によるイオの変形隆起量

 前述の潮汐力により変形した後の地球のA点(赤道)C点(北極)との隆起量差Δhは、tanΔλA点(L=0m)からC点(L=2πΔr/4=2.86×106m)まで子午線に沿って積分した値となる。

 積分を数値計算するのは面倒だから、グラフの様子からその面積を計算して隆起量差Δhのおよその値を見積もってみる。図形の様子からその値は、0.00004×2.86×106m〜100m程度となる。
 イオは固体であるから、42時間の周期で変動する重力加速度ベクトルの変化を完全に追従して、平衡状態の形状を実現しているとは考えられないが、かなりの変形が生じることは確かです。
 42時間周期で繰り返し生じる地殻変動の発熱で内部にマグマが発生して火山噴火が生じるのも頷ける。

[補足説明]
 岩崎恭輔著「アストラルシリーズ第6巻 惑星U−惑星探査機がみた世界−」恒星社厚生閣(1988年刊)のp144〜147に、イオの火山活動と、離心率の変動について興味深い記述がありますので引用しておきます。
 [イオの噴火の写真はこちら

 

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4.月に生じる潮汐力の公転半径の変動に伴なう変化

 月もイオと同じように自転周期と公転周期が同期していて、いつも同じ面を地球に向けています。その為地球が月に及ぼす潮汐力の変化は月の公転半径の違いによるものが主となる。その変化量を月についても見積もってみます。

)月の公転軌道

 地球を回る月の軌道の離心率は0.0549程度です。これは地球の離心率0.0167よりも大きく、木星(0.0485)や土星(0.0555)に近い。月の近地点距離Rminと遠地点距離Rmaxは下記の様な値です。

 厳密に言うと、[遠地点距離]−[近地点距離]は約7ヶ月半の周期で増減している。

 

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(2)月表面上の潮汐力の変動

 月の公転軌道半径の変動による潮汐力の変動を見積もってみる。イオの数値を月の数値で置き換えて、イオと全く同様な考察をすればよい。

 3.(2)2.の議論に於いて、イオを月に、木星を地球に置き換えて考えれば良い。地球の質量は5.97×1024kgであるから、月が地球に最も近づいたときの“潮汐力水平成分”の加速度偏分は

月が地球から最も遠ざかったときの“潮汐力水平成分”の加速度偏分は

となる。
月の地殻を周期的にに歪ませる加速度の変動量は、これらの偏分の公転運動に伴う差だから(ΔFA水平Rmin/m)(ΔFA水平Rmax/m)Δ’FA水平/mを見積もってみればよい。
 公転周期は恒星に対して月が一週する時間である “1恒星月”=27.321662日=27日7時43分12.0秒 です。月の“自転周期”は、この恒星月に同期してることに注意してください。

補足説明1
 厳密な事を言うと、ここの公転周期は恒星月ではなくて、“近点月”を用いなければならない。それは、月がその公転軌道上の近地点から軌道を一週して再び近地点までの期間で、平均27.554 5505日(27日13時18分33.16秒)です。
 太陽の摂動による歳差の為に、月の近地点は地球に対して約8.85年で一周する。つまり、近地点は月が公転軌道を一周するごとに地球から見て東の方向へ(反時計回りに)約3°ずつ移動していく。このため近点月は恒星月より約5.5時間ほど長くなる。

 縦軸をΔ’FA水平/mとして、横軸を緯度θ(あるいは赤道からの距離)に取ったグラフを描いてみると下図の様になる。


 2.(1)3.3.(2)2.のグラフと比較してみられたし。縦軸の値が地球の場合の7.5倍程度イオの場合の1/18倍程度になっている事が読み取れます。

 

HOME   導入   2.地球)()   3.イオ)()()   4.)()(3)   5.後書き

(3)月地表面の垂直方向隆起量

 公転に伴って生じる潮汐力の変動によって月がどの程度変形するか見積もってみよう。Δ’FA水平/mを月の重力加速度で割ってtanを取ると、緯度θ(赤道からの距離L)の地点での地表傾度の変化量のグラフが得られる。

 前述の潮汐力により変形した後の地球のA点(赤道)C点(北極)との隆起量差Δhは、tanΔλをA点L=0[m]からC点L=2πΔr/4=2.73×106[m]まで子午線に沿って積分した値となる。

 積分を数値積分するのは面倒だから、グラフの様子からその面積を計算して隆起量差Δhのおよその値を見積もってみる。図形の様子からその値は、2.5×10-6×2.73×106m〜8m程度となる。
 月は固体であるから、約27.5日の周期で変動する重力加速度ベクトルの変化に追従して変形して平衡状態を実現するのは難しいようですが、上記の仮想平衡における変化量値は地球表面での値よりかなり大きな量であることは確かです。

補足説明1
 実際の隆起量測定が、30年前のアポロ月面着陸やロシヤのミッションで設置された反射板とレーザー光線を使った距離測定によって2002年頃NASAによって行われたようです。それによると振幅10cm、すなわち、Δh〜20cm程度のようです。
 http://www.jpl.nasa.gov/releases/2002/release_2002_37.html
最近の月周回人口衛星“かぐや”のミッションでも、変形の測定が行われたようですが、そのデータの詳細を知りたい所です。

補足説明2
 アポロ月着陸船により月に設置された複数の地震計は、何年にもわたって月の地震記録を地球に送ってきた。その結果解ったことは、月の地震は弱いが30分〜数時間も継続する(これは月震動が長時間減衰せずに反射され続ける為らしい)。また月振は深さが800〜1200kmのかなり深いところで発生している。月震の頻度は月公転軌道の近地点距離と遠地点距離の差の変動周期(約7ヶ月半)で増減している。等々・・・が解ってきた。これらから、月震は、月の深部の岩石が、地球の潮汐力によってひしめき合うのが原因と推定されている。
[中村士著「太陽系をさぐる」岩波書店(1984年刊)p94より]

補足説明3
 いずれにしても、27日周期で繰り返えされる地殻の変形によって発熱して、月の内部はかなり高温状態になっているかもしれない。この当たりについては下記の概説記事を参照されたし。
http://www.kaguya.jaxa.jp/ja/science/result_of_kaguya_j_info_201407.htm

 

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5.後書き

 惑星に生じる潮汐力変化とその衛星に生じる潮汐力変化は、そのメカニズムが違います。
 
 惑星は一般的に衛星の公転周期と異なった(より短い)周期で自転しています。一方、惑星を回る衛星の自転周期は大半の衛星で公転周期と同期しおり、いつも同じ面を惑星の方に向けています。
 
 そのため、衛星によって“惑星に生じる潮汐力”は惑星の自転に伴って変化します
 一方、大半の衛星では自転周期と公転周期が同期しているために、惑星によって“衛星に生じる潮汐力”は衛星の公転半径の変化に伴って生じます
 
 さらに、ここでは考察していませんが、同じ惑星を回る他の衛星や太陽からの潮汐力も存在します。
 特に太陽によって生じる潮汐力は無視できません。
 また木星の衛星イオ、エウロパ、ガニメデの公転周期は1:2:4の比になっており、それらの衛星は公転軌道上の同じ位置で、木星とそれらの衛星の複数が一直線上に並ぶ軌道共鳴が生じます。そのため他の衛星もイオの潮汐力の変動に影響してきます。これらの衛星のためにイオの軌道が真円からずれて離心率がゼロでなくなるからです。
 ただし、それらの衛星がイオに及ぼす潮汐力そのものは、木星とイオの間の公転半径の変動に伴うものに比べると1/100程度以下です。その程度以下だということは具体的な数値を代入すれば確かめられます。
 
 惑星と衛星の質量差、惑星と衛星との距離、その離心率、等々・・・は、それぞれの惑星−衛星系で異なります。そのため、惑星と衛星に生じる様々な潮汐力の変化を比較するには、実際に数値を当てはめて計算してみることが必要です。

ちなみに

 月によって、地球の“裏側”A点に生じる潮汐力は、2.(1)1.で求めたように
 
程度です。これは地球の自転に伴って生じる潮汐力の変化です。
 一方、月によって地球の“裏側”A点に生じる潮汐力は、地球−月間の距離の変動伴って変化します。その変化量は

程度になります。これは上記の自転による変化量の 1/3 培程度です。
[補足説明1]
 この効果のため、月が“近日点”にあるときの潮位は、その半恒星月前(13.66日≒約2週間前)あるいは半恒星月後の“遠日点”にあるときの潮位と比べて高くなります。したがって、二つの相継ぐ大潮において、両者ともが最高潮位差を記録することはなく、必ずいずれか一方の方が大きくなります。
[補足説明2]
 ここで説明した月の公転半径の変化に伴う潮汐力変化の周期は、すでに注意したように“近点月”の周期です。
[補足説明3]
 地球に生じる潮汐には太陽によるものもあります。それは別稿で説明したように月の半分程度の影響でした。そのとき、地球公転半径の変化に伴う太陽潮汐力の周期的な変化もあります。地球が太陽を回る公転軌道の近日点は、一年に付き約11秒=0.00305度ずつ、地球の公転軌道に沿って前へ進む。これは他の惑星の摂動のためで、約10万年で一周する。そのため“近点年”は恒星年(約365.25636日)より約4分半ほど長い365.2596日=365日6時13分53秒です。

 木星によってイオの“裏側”A点に生じる潮汐力は

程度です。もしイオの自転周期が公転周期と異なっていれば、この程度の潮汐力変化が自転周期に伴ってイオのA点に生じることになります。
 一方、イオの“裏側”A点に生じるイオの軌道半径の違いによる潮汐力の変化量は、3(2)1.で計算したように

程度になります。
 これは上記の仮想自転による変化量の 1/40 培程度です。

 地球によって月の“裏側”A点に生じる潮汐力は

程度です。もし月の自転周期が公転周期と異なっていれば、この程度の潮汐力変化が自転周期に伴って月表面に生じることになります。
 一方、月の“裏側”A点に生じる月の軌道半径の違いによる潮汐力の変化量は、3(2)1.のイオと同様に計算して

程度に成ります。これは上記の仮想自転による変化量の 1/3 培程度です。

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