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動物進化の系統樹(種の隆盛と衰亡)

 生物をどのように分類するのかは難しい問題です。生物の事がより詳しく解ってくるにつれて分類体系は改訂・改変をくりかえしてきた。しかし、今日では分子生物学的な遺伝子解析により進化の道筋を厳密に辿ることができるようになった。そのため科学的根拠を持って分類できるようになり、系統樹はより信頼できるものになりつつある。
 今日、生物は 原核生物の(原核生物界)、真核生物の(原生生物界、植物界、菌界、動物界) の5界に分けるのが一般的である。原核生物とは遺伝子が核膜に包まれていない原始的な細胞の生物である。真核生物とは遺伝子が核膜に包まれて高度に機能的に収納されており、細胞内には核以外にミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、葉緑体などの高度な膜構造の器官を持つ細胞でできている生物である。今日、かって植物界にいれられていた藻類や菌界の卵菌類・粘菌類は原生生物界に移され、原生生物界は多細胞生物も含むようになった。

 生物は 界→門→綱→目→科→属→種 の順番で次々に細分されている。これで足りないときは「」、「」、「」を付ける。例えば 上目→目→亜目→下目 の様に。

1.動物界

(1)動物界の分類基準

 動物界は従属栄養のために食物を必要とする。そのため食べ物を求めて動き回、食べ物を取り込み、消化する機能を持たねばならなかった。つまり動物界は体の作り方の改良で進化してきた
 (これは生殖法を改良する事で進化してきた植物界と大きく異なる。植物は光合成により、身近にある水と二酸化炭素から自らの体をつくり、生きる為のエネルギーを自分で生産することができた。植物は動く必要がなかったので、動く為の器官や消化・排泄や呼吸の為の器官を持たなくて良かったのである。そのため、植物は細胞をレンガを積むように接着させて作るだけの簡単な構造の体で事足りた。ところが、植物は遺伝子の多様性を実現するための他の固体との生殖に苦労する事になった。植物は動けない体で何とか多様な遺伝子を実現しようとして様々な生殖法を試み、その改良で進化してきた

 最初の動物は単細胞生物が単に寄り添い付着して塊まり状になって生活する群体動物で<無胚葉動物>といわれる。海綿動物がその代表。

 そのうち塊まり状の細胞に分業が生じて内側の消化を司るものと体表を構成するものに分かれて袋状の多細胞生物が生まれた。袋の口から獲物を取り入れ、そして消化した残りかすをそれから排出した。この段階ではまだ、口と肛門が共通なのだが、袋の外側と内側の二層の袋ができるので<二胚葉動物>といわれる。刺胞動物・有櫛動物などがある。

 次なる進化は袋が筒状になり、獲物を取り入れ、消化、吸収し、残りかすを排出することが流れ作業で順序よく能率的に行えるようにすることだった。筒にするには袋の口の反対側に穴を開けねばならないが、パイプの使い方で動物界は大きく二つに分かれた。すなわち、最初の口(原口)がそのまま口になり、そして貫通した穴が肛門になる旧口(先口)動物と、原口が肛門に、貫通して後からできた穴が口になる新口(後口)動物である。この段階になると消化器官や呼吸器官を構成する内胚葉、表皮や神経系を構成する外胚葉と、その間で筋肉や生殖器官、循環器官、排泄器官を構成する中胚葉の三部構成となり<三胚葉動物>といわれる。

 旧口(先口)動物は、最近のリボソームRNAの遺伝子解析からこれまでの真体腔動物・原体腔動物の分類は見せかけのもので、線形動物、節足動物脱皮動物グループ輪形動物、環形動物、軟体動物冠輪動物グループに分けるほうが適切である事が解ってきた。この中で節足動物門−昆虫綱は地球上で最も成功した動物の綱である。
 新口(後口)動物の原始的なグループが棘皮動物であるが、やがて体の中心に運動時の芯となる脊索が生じる。この段階を原索動物という。その脊索はさらに機能的な脊椎に置き換えられて最も優れた運動能力を持った脊椎動物が生まれる。このなかに魚類、両生類、爬虫類、鰐類、鳥類、哺乳類が含まれる。
 我々人類は一応 動物界→脊椎動物門→哺乳綱→霊長目(サル目)→真猿亜目→狭鼻下目→ヒト科→ホモ属→サピエンス種 となるが、状況により階梯の分け方は変わってくる。

(2)動物界の系統樹

 下図の旧口動物・新口動物の大分類群は、最近の分子生物学による遺伝子解析の結果でも強く支持されている。しかし細部については変更を迫る事実が次々と明らかになりつつある。そのため下図の系統樹は改訂が必要である。

 従来、動物の体を作る体腔の形態は、動物の複雑化、大型化で重要な役割を演じたと考えられて、動物の系統分類の大きな拠り所となっていた。つまり、無体腔動物(外胚葉と内胚葉の間にきわだった隙間はない)→偽体腔動物(外胚葉と内胚葉の間に器官が含まれる空間(体腔)が生じる)→真体腔動物(中胚葉で内張りされた体腔が様々な器官を収納)と複雑化して進化してきたと考えられていた。そのため無体腔動物である扁形動物門(プラナリアなど)や偽体腔動物である線形動物門(センチュウなど)は、旧口・新口動物の分岐より前の進化の早い段階で分岐した原始的な動物と考えられていた。
 しかし最近のリボソームRNAの遺伝子解析(アグイナルドら)の結果は、その様な考え方が成り立たないことを示している。遺伝子解析から得られたそれらの動物の分岐年代は、旧口動物の真体腔動物が生じた後に起こった事を示している。そのため体腔の様式は、系統分類を決定づける本質的な形態的特徴とは言えなくなった。後から融通無碍にいかようにでも変化するもので、無体腔(扁形動物)や偽体腔(線形動物)も後から生じた退化的な形態かもしれない。

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2.羊膜類(動物界−脊椎動物門−胚竜綱)の系統樹

(1)頭骨の変化と顎の改良

 海から陸に上がって進化し始めた脊椎動物(羊膜類)は、今日側頭骨に開いた穴の状況で分類される。顎を閉じるときは頬の壁の下方にある側頭筋が収縮して外側に膨れる。そのとき膨れあがった筋肉を治める穴がある方がより大きく膨張する事ができる。そうすると逆に側頭筋が伸長したときは、より多くの伸長が可能になり口をより大きく開くことができる。そのため側頭部に開いた穴は顎の機能を飛躍的に改良したと考えられている。(アルフレッド・ローマー)

 側頭部に開いた穴のために、前頭部が後頭部とアーチ(弓)で繋がれ構造になった。そのためアーチのない無弓類、穴が頭骨の高い位置にあるためアーチの幅が広くなった広弓類、一つのアーチの単弓類、二つのアーチを持つ双弓類に分類される。

単弓類は獲物を重い歯と強力な顎筋でかみ砕く戦略を選択した。そのため重い頭部が必要になり四つ足歩行を続けた。これの子孫が今日の哺乳類

槽歯類(双弓類)は二本足の姿勢のため頭骨が軽くなくてはならなかったので砂のうが進化した。その中で食物は石によってすりつぶされドロドロになる。砂のうは槽歯類の体の重心に近い所に合ったので、大きな頭を持つ単弓類に比べてはるかに走りやすかった。槽歯類の頭部は獲物をかみ砕くよりも捕らえて殺すことに使われる器官だった。中生代にはいわゆる恐竜類として大繁殖したがそのほとんどが中生代末に絶滅してしまった。この系統で今日生き残っているのが爬虫類・鰐類・鳥類である。

(2)陸生脊椎動物の系統樹

 上図は従来の系統樹である。羊膜類の中で最初に他から分かれたのは単弓類(哺乳類)であり、このことは形態学的にも、分子系統学からも支持されている。しかし、残りの系統のなかで、次に分岐した最も古い系統と考えられていた無弓類(カメ類)の位置について分子遺伝学から変更を迫られている。ミトコンドリアDNA(メイヤー&ザルドイナ、西田&熊沢)や核DNA(宮田)の解析から単弓類の分岐はヘビやトカゲの爬虫類よりも後で、双弓類のトリ、ワニに近い系統であることが解ってきた。そのため、無弓類は進化の過程で後から側頭穴を失ったグループであるかもしれない

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3.恐竜類(胚竜綱−双弓亜綱−鳥盤目/竜盤目)

(1)骨盤の形

 いわゆる恐竜類は骨盤の形で大きく二つに分類される。消化器官が恥骨の前にある竜盤類と恥骨の下にある鳥盤類である。

 二足歩行の肉食性恐竜(双弓亜綱−竜盤目−獣脚亜目)は比較的小さな消化器官が恥骨の上にあった。それは重心の前にあり二足歩行で敏捷な行動した。草食性恐竜(双弓亜綱−竜盤目−竜脚亜目)は巨大な消化器官を必要とした。その消化器官は重心の前に位置するため、その重量を前足で支えるために四足歩行となった。

鳥盤類(双弓亜綱−鳥盤目)では巨大な消化器官に圧迫されたことにより、恥骨を後方に移動させる方策をとった。そのため巨大な消化器官を骨盤の下の重心位置に収納することが可能になり、二足歩行を維持するものと四足歩行のものが進化した。

(2)恐竜の系統樹

 恐竜の王様ティラノサウルスは従来、アロサウルスと同じカルノサウルス類に属しているとされていたが、最近の研究によると、コエルロサウルス類に属するもので、より現代の鳥類に近い系統の肉食恐竜であることが解ってきた。

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4.考察

 動物進化の過程で起こった三つの重要な遺伝的変異(1.旧口、新口の分岐、2.側頭骨に生じた穴の在る無し、3.骨盤の変化)を紹介した。これらの遺伝的変異は種内に固定され長く継承されてきたもので分類学上最も基本的な変異であると考えられている。しかし、それらの変異が適者生存の自然選択に対して有利かどうかは何とも言えない。分岐した別々の系統も次世代に伝えられて存続したのだから。
 上に述べた様に、分子遺伝学による最近の知見の教えるところによると、形態学的な機能変化は進化そのものにはほとんど影響しないようである。ここのところは以下のようにまとめられるように思う。

  1. <遺伝子レベル>
     遺伝子上に起こる変異は文字通りアトランダムに四六時中、定常的に、どの遺伝子にもほぼ同じような確率で起こる。遺伝子を傷つける放射線高エネルギー電磁波が遺伝子を選り好みする事はないであろう。また化学物質ウイルスはDNAを構成する塩基種を選り好みするかもしれないが遺伝子全体で見ればアトランダムな影響だろう。つまり、どの遺伝子に変異が生じるかどうかはまさに確率論の原理(1)で決まる。そういった意味で、形態学的な機能変化は、その方向への変化の選択圧にはなっていない。
  2. <個体レベル>
     上記の変異が個体内で生き残れるかどうかは、その遺伝子が作り出すタンパク質の生体内での重要度に大きく依存している。生体内でより重要な働きに関係するタンパク質を生み出す遺伝子ほど遺伝的変異に関しては保守的である。それは遺伝子に生じる遺伝的変異の大多数が有害なもので、それらが生じた変異固体は死滅して、その変異が種内に広まることは無いからである。だから遺伝子の中でも、重要な部分の分子的な変化速度は遅い。ただし、遅くてもそういった部分の変化は生じている。その変化が生存に致命的な影響を及ばさない状況に於いてのみ。つまり、変異の生じた固体が生き残っていけるかどうか適者生存ではなくて不適応者消滅の原理(2)で決まる。この段階では、形態学的な機能変化は、その方向への変化の選択圧にはなっていない。
     この原理は洞窟に生息する昆虫が視力を失ったり、寄生生物が寄生により必要なくなった機能を失ったり、捕食動物のいない孤島の鳥が飛ぶ能力を失うなどの負の進化をうまく説明する。その機能が生きていくことに不可欠で無くなったら、その機能を生み出す遺伝子にも定常的に変異が起こり蓄積していく。変異は大多数が有害なものだから、やがてその機能が働かなくなる。本来ならば不適格者消滅の原理でそういった遺伝子固体は取り除かれるのだが、上記の状況ではそれが働かずに固体レベルに残り、それがやがて統計的ゆらぎにより種レベルに広まっていく。
  3. <種レベル>
     ある個体に起こった変異が種内に広まり、そこで生き残っていけるかどうか統計的なゆらぎ(ライト効果)の原理(3)で決まる。この原理で変異は種内に固定されて徐々に生物は変化していく。生物は偶然に支配されて、たまたま生じ、たまたま種内へ固定された様々な変異を否応なしに受け入れて、その状況をうまく取り込んで生き残って行ける変異体だけが、次なる変異を繰り返して種として存続して行く。マンモスの牙、アイルランドオオツノジカの角、アンモナイトの縫合線、上に述べた3つの変異も含めてほとんどの変異がその様にして変化してきた。だから、この段階でも形態学的な機能変化は、その方向への選択圧にはなっていない。だから生物はあらゆる方向に適応放散していく。
  4. <生物レベル>
     存続はしていけるが、その変異種が環境の中で生き残っていけるかについては、さらに別の原理が働いている。例えばオオシモフリエダシャク鎌状赤血球貧血症で説明した様に、他の生物との間、あるいは同じ種内の他形質の変異種との間の生存競争、生存闘争の中で淘汰される。
     食物連鎖の中で下位に属する種は莫大な数の固体が生み出されるが生殖年齢に達する前に、そのほとんどが補食されて淘汰されてしまう。そういった大多数の内のごくわずかが生き残るような淘汰では、ごくわずかの形態変化・機能変化が生存率に大きく影響するであろう。
     また食物連鎖の頂上に位置する生物種は生き残る割合は高いが、もともとの個体数は少ない場合が多い。そのことが、ちょっとした環境変化で衰退・絶滅する危険を生み出す。個体数が少ないことが、形態変化・機能変化の環境適応性に大きく影響するであろう。
     つまり、変異の生じた種がいきのこっていけるかどうかは、まさしくダーウインが唱えた適者生存の自然選択の原理(4)による。だから生物は環境に応じた適応収斂を示す。

結局のところ、生物は上に述べた4つの段階4つの原理に従って進化して来たように見える。

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