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3.農業用黒マルチポリエチレンフィルムで作ったソーラーバルーン(1983、1999年)
 
 でかくないと度肝を抜けない。しかしデカイやつをどうやって膨らませるかが問題である。 作ってみようと思ったのは1983年に作ったソーラーバルーン2号機(写真3-1)が太陽熱で自動的に膨らんで自動的に浮き上がったことによる。
 このフィルムの性能からいくとある程度以上に大きくすると太陽熱で自動的に外気を吸い込んで膨らみ立ち上がり上昇していく。
 しかし、このことが気球をおろすことを困難にする。下の開口部から引っ張りたぐって引き下ろすのは球皮の強度から考えて不可能である。故に気球内部の暖かい空気を抜く機構が必要になる。気球を倒立させて暖気を抜く方法で解決した。
 
写真3-1 2号機

 
 
)浮力の原理、気球の大きさと諸量の関係
 気体の状態方程式はPV=nRTであるがPを外気圧に等しい(実際の気球内部には圧力差が生じる)として温度をあげればVが増大して密度が減少し浮かぶ。浮力の原因を、空気を詰めて水中に沈めた中空の角柱を例にして考える。
 
 
  以上は流体が縮まないとしての話である。実際は圧力により密度が変化するのでもうすこしややこしくなる。しかし熱気球の場合はP″≒P′ΔPだから以上の話で十分である。
 気球が浮上するためには
 
 でなければならない。以下簡単のために球形の気球で考える。
 
  温度差が大きいほど、また球皮面密度が小さいほど良く浮かぶ。ここで重要なことは球皮質量は半径の2乗に比例するが浮力は半径の3乗に比例して大きくなるので半径が大きくなるほど浮力に関しては有利になることである。
 
)球皮にかかる張力と形状
 球皮に働く圧力は下の開口部からの高さに比例して増大する。頂上部で最大値を取り(ρ−ρ′)ghとなる。しかし話を簡単にするために圧力差ΔPは一定とし、上半分は完全な球形と仮定して張力を求めてみる。
 
(イ)上半球の縦方向張力T
 
  ΔPが高さにより変化せず球形の場合、上半分に働く縦方向の単位幅あたりの張力は高さによらず一定である。
(ロ)上半球の横方向張力T
 
   頂上部では(縦方向の張力)=(横方向の張力)となる。実際の場合はΔPが高さに依存する効果と球皮自体が質量を持つ効果を考慮しなければならないが、気球の上半分に働く張力の大きさを見積もるには上の程度の近似でまにあう。いずれにしても気球上半部に働く張力の大きさはΔP×(最大半径)を何倍も上回ることはないであろう。
 ΔPとして頂上部の最大値(ρ−ρ′)ghを用い、我々が作ろうとする気球の値
h=15m、r=6.3mを代入すると内外空気の温度差10℃で
ΔP×r=(ρ−ρ′)ghr=0.04×9.8×15×6.3=37N/m≒37.8gw/cm
程度であることがわかる。これは球皮フィルムの1cm幅リボンが約38gの荷重に耐えれば良いことを意味する。黒マルチフィルムなら余裕で耐えることができる。
 
(ハ)下半分の部分に働く縦方向張力T
 気球の下半分では
1.ΔPの高さによる変化の影響が大きく、下端部では零になる。
2.吊り下げたバーナー、燃料などの重量や係留用のロープの張力の効果。
が生じる。このため上半分と同じような議論はできない。しかし、下半分では下にいくほど周囲の長さも短くなり、縦方向の張力は下端部で最大となる。そして吊り下げ物重量または、係留索の引っ張り力の効果で決まる。つまり
 
で見積もれば良いことになる。
 
(二)下半分の部分に働く横方向張力T
この力がΔPの外向きの合力より小さくなって初めて横方向の張力が生じる。下半分の部分ではΔPが小さく縦方向の張力Tが大きいので横方向の張力は問題になるほど大きくなることはない。
 むしろ下半部の曲率を下にいくほど小さくしていかないと横方向の張力が負になり縦皺がよってしまう。だから下半部に横方向の張力を出し球皮に張りを生じさせるためには、曲率零の円錐形を採用しても良いくらいである。
 以上の議論から明らかなように上半部はΔPが大きいため適当に選んだ形状でも圧力差だけで、その形状が保てるから体積一定のもとで面積が最小になる形にすればよい。



 


この部分の体積を一定としたとき



この水平部分の面積を除いた
球皮の上半部の面積が最小に
なるように上半部の形状を選べ
ばよい。




下半部は下にいくほど曲率の
小さなカーブにして横方向の
張力が負にならないようにする。

 
 
)ソーラーバルーン設計値の見積もり
 太陽熱で気球を上げるには太陽光を良く吸収する黒色の球皮でなければならないのはもちろんであるが、その面密度がきわめて軽くないといけない。普通の軽い布(たとえば絹のネッカチーフ)の面密度はだいたい100g/m程度であるが、ここまで重いと温度差10℃程度ではとても浮かばないことが、一寸した計算をしてみれば解る。
 現在手近に利用できる材料は農業用の黒マルチのポリエチレンフィルム(厚さ0.03mm、面密度26g/m)しかない。この農業用の黒のマルチというポリエチレンフィルムは素材としては大したもので、その薄さと軽さの割に驚くほど強い。事実その伸張強度は静的力の場合500gw/cmを超える。さらにとても安い(2.1m×100mで2150円)。またセロテープで張り合わせるだけで色々なものが簡単に作れる。フィルム自体の強度を鑑みるとセロテープによる張り合わせで強度的に十分である。
 この素材を利用して色々な半径の球体を作ったとして各状態を見積もった(表3-1参照)。

表3−1 拡大版はここをクリック。マウスで右クリックするとダウンロードできます。htmlファイルに変換していますが、もともとExcelファイルですから、Excelで読み込み再編集できます。もちろんxls形式で再保存するとExcelファイルにもどります。

 実際に作ったのは半径6.3m、高さ14.95m、表面積は526m、体積1122m、質量15kgである。この大きさにしたのは以下の事情による
 
1.表3−1から気球内温度と外気温との温度差を6〜8℃程度で浮かばそうと思ったら少なくとも半径2m以上必要で、半径が大きくなればなるほど有利になる。これは気球重量は球皮の半径の二乗に比例し、浮力は半径の三乗に比例する事による。
 
2.天頂圧力が26gw/mを越えれば天頂部を支えることができるが、球体の形状を安定して保つにはある程度の圧力差が必要。天頂圧は200〜400gw/m程度以上欲しい。
 
3.天頂圧が上記範囲を超えてくるとフィルムにかかる張力が50gw/cmを超えてくるのでそちらの面から厳しくなる。このフィルムは1cmあたり500gw程度の静的な引っ張り力に耐えるが、風に煽られたり、上げ下げの操作時にかかる負荷を考えると静的な状態での引っ張り力はフィルム強度の10分の1以下に押さえたい。
 
 以上[浮力]と[内外圧力差]と[球皮にかかる張力]の三量を考慮し、ソーラーバルーンで実現できる温度差が6〜8℃(この値の見積もりについては(5)節を参照)と仮定すると半径4m〜8mの範囲となる。この中でどの大きさを選ぶかは、[作る手間]と[材料費]と[操作性](特に風に対する操作性と上げるときとおろすときの操作性)から決まってくる。
 小さいほど安上がりで作りやすく取り扱いが簡単であるが、できるだけデカイものを作りたい。半径が4mを超えると風に弱い特性と取り扱いの難しさはどの大きさでも同じ様なものだろうと見きって上記の値(表3-2図3-1参照)にした。
表3−2   拡大図はここをクリック。
 実際の型紙計算に使ったExcelファイルは下のタイプのタグをマウス左クリックして開く。そしてIEの場合[ファイル]−[名前を付けて保存]でダウンロードできます。タイプ5タイプ7-0.6タイプ7-0.7とがありますが、実際に造ったのはタイプ7-0.7です。
 このときマウスを右クリックしてダウンロード保存すると画像ファイルが旨くダウンロードできませんので前述の方法を用いてください。
 htmlファイルに変換していますが、もともとExcelファイルですから、Excelで読み込み再編集できます。もちろんxls形式で再保存するとExcelファイルにもどります
図3−1   拡大図はここをクリック
)製作と飛翔実験
以下写真で紹介する。
写真3-2 表3-2に基づき型紙の製作

 
写真3-3 型紙をフィルムに写し取って切断

 
写真3-4 セロテープによる張り合わせ

 
写真3-5 気球を倒立させるための天頂部への索取り付けの様子

 
写真3-6 下部の係留索取り付け部の製作

 

ビデオ映像をご覧になりたい方は下記のリンクをクリックしてください。
   製作過程ビデオ(55.54MB 3分33秒)
   飛行実験ビデオ(59.93MB 3分52秒)
これらはWindows標準のWMV8コーデックのファイルです。

写真3-7 飛行準備

 
写真3-8 自動的に外気を吸い込み膨張

 
写真3-9 膨張が終わり立ち上がったところ
 

 
 
 試験飛行は9月初旬の晴れた日の午後4時頃である。外気温は27℃程度であった。午後の日差しを受けて外気を自動的に吸い込み、5分程度で一杯に膨らみスルスルと見る間に上昇をした。2号機の経験から成功の確信は有ったが、予想以上に軽快に上昇した。
 
写真3-10 上昇を開始したバルーン

 
写真3-11 係留部の様子

 
 
 上昇高度(写真3-12)は索の長さ一杯の高度150m程度である。係留索の長さに余裕があればいくらでも上がると思われる。浮力により係留索が引かれる力は15kgw程度であった。
 
 
写真3-13 飛行中の状態

 
写真3-12 飛行中

 
 
 10分間程度飛行の後収納に取りかかった。まず索を引き高度を下げる。そして頂上部に取り付けたバルーンを倒立させる別な索を引き倒立させて暖気を抜く。(写真3-15)
 
写真3-15 天頂部を引っ張りバルーンを倒立させているところ

 
写真3-14 天頂部から絞ってたぐりながら段ボール箱に収納しているところ

 
写真3-16 収納の最終段階

 
 
 
)ソーラーバルーンの温度平衡
 
 この議論が最も困難である。以下色々考察をしてみても、結局のところ最も頼りになるのは黒色ポリエチレン袋を太陽熱にかざしたとき内部の温度がどの程度になるかという経験事実である。だからこういった問題では@[理論]とA[経験や簡単な予備実験]とB[他の類似の制作実施例]の3方向から攻めていくことが肝要である。
 [内部熱源]を持たないソーラーバルーンで平衡温度を決めるのは[太陽光輻射・大気輻射との輻射平衡]と[球皮表面からの大気中への熱伝導・対流による冷却効果]である。
 
 [太陽光と大気輻射との輻射平衡]の議論の元になる物理法則は黒体からの放射を記述するプランクの輻射法則と一般の物質について成り立つキルヒホッフの法則である。
 黒体とはどんな波長の電磁波でも、入射してきた電磁波はすべて完全に吸収してしまうもので、黒体は与えられた温度で最大のエネルギーを放出する仮想的な物体である。
 
 プランクの法則は黒体が放射する電磁波(光もその一種)の強度を黒体の絶対温度と放射電磁波の波長の関数として与える。プランクの法則は、単位波長あたりの放射強度I*λが最大となる波長λMAXは、温度が低くなるのに比例して大きくなっていくことことを示す。これをウィーンの変位則といい下式で表される。
   λMAX(μm)=2897/T(K)
 
 ステファン・ボルツマンの法則はプランクの法則の各波長領域のエネルギー放射量を全波長領域にわたって足し合わせたものである。黒体の単位面積からの放射エネルギー流量は黒体の温度Tが低くなるにつれて減少し、それは黒体の絶対温度の四乗に比例する。
   I* =σT4   (輻射強度I* の*は黒体輻射であること示す)
           比例定数 σ=5.67×10-8W/m
 つまり太陽の様な高温(6000K)の物体は可視光の領域の光を出し、また室温(300K)程度の物体は赤外線領域の光を出して輝きステファンボルツマンの法則したがって冷却していく。
 
 黒体放射は与えられた温度の物体が放射できる最大のものであり、普通はそれよりも少なくなる。実際の放射強度Iλと同温の黒体の放射強度I*λの比を放射率ελという。ελは一般に波長に依存する。
   ελ=Iλ/I*λ
同様にして、物体に入射してきたエネルギーと吸収されたエネルギー比を吸収率aλという。aλも波長に依存するが黒体の吸収率はすべての波長にわたって1である。キルヒフォッフの法則とは任意の物体の任意の波長の光について放射率と吸収率は常に等しい事を述べたもので
   ελ=aλ
を意味する。
 
 以上で必要な法則はそろったので熱的なつり合いを考える。
 
  
 ソーラーバルーンの場合は内部熱源は無いので、[太陽光と大気輻射との輻射平衡]と[球皮表面からの大気中への熱伝導・対流による冷却効果]のつり合いを考えればよい。
 
 太陽光の入射     大気の輻射     球皮の放射冷却  熱伝導・対流冷却
λ太陽光×A×πr + aλ赤外×B×4πr = ελ赤外×C×4πr + D×4πr
 
 A=太陽からの直達日射量
 B=大気の輻射強度
 C=球皮の輻射強度(球皮温度は球体内部の空気温度と等しいと考える)
 D=冷却熱流量≒熱伝導率×温度勾配
 
 この式は両辺のrが消去できるので平衡温度は球皮の大きさに依存しないことを示している。これは特筆すべきことである。
 ここでキルヒフオッフの法則よりaλ赤外=ελ赤外 となる。また黒マルチの球体はおそらく黒体と見なして良いだろうからaλ太陽光≒1、aλ赤外=ελ赤外≒1とできるだろう。
 今回作成したソーラーバルーンの実際の表面積は526m、体積1122mであるが、以下の計算では表面積がその値に近くなる半径6.4mの球体として計算する。その時、球の断面積πr=129m、表面積4πr=515m、体積1098mとなる。
 
 左辺の見積もりに以下の気象庁発表の8月の観測値を用いる。(気象庁月報CD-ROMはインターネットで注文して宅配便で入手できる。)
 
  1. [直達日射量]
    太陽面から直接入射する日射量で、入射光線に垂直な面でうけたもの。8月の晴れた日の正午で800W/m程度、午後4時頃でも700W/m程度ある。当然日没と同時に0となる。
  2. [水平面直達日射量]
    水平な面で受けた直達日射量で、当然太陽高度に関係し、正午ごろは直達日射量に近い720W/m程度であるが午後4時頃になると400〜450W/m程度減少する。
  3. [天空散乱日射量]
    天空の全方向(太陽面を除く)から大気や雲で散乱されて入射する日射量を,水平な面で受けたもの。快晴の日は140W/m程度と少なく、雲量が増えると共に増大し晴れて薄曇りの日には420〜470W/m程度まで増える。しかし完全な曇天では300W/m以下に減少する。晴れた日の午後4時ごろで80〜110W/m程度である。当然日暮れとともに0になり夜間は0である。
  4. [全天日射量]=[水平面直達日射量]+[天空散乱日射量]
    直達日射を含む天空の全方向から入射する日射量を,水平な面で受けたもので晴れた日の正午で830〜890W/m程度、午後4時頃で470〜530W/m程度である。夜間は0である。
  5. [下向き長波放射量]
    大気や雲から天空の全方向に射出される長波放射量を水平な面で受けたもの。一日の夜昼を通して余り変化せず8月の大気で390〜440W/m程度である。
  6. [地表反射日射量]
    地表面で反射したすべての日射量を水平な面でうけたもの。晴れた日の正午頃で140W/m前後、午後4時ごろで100W/mくらいであり、太陽高度に関係する。夜間は当然0である。
  7. [上向き長波放射量]
    地表面から天空の全方向の大気中に射出される長波放射量を水平な面で受けたもので夜間はほとんど変わらず440W/m程度である。晴れた日は午後2時頃に最高の610W/m(曇りの日で500W/m)程度まで増大する。その後徐々に減少し午後4時で540W/m、日没時に470W/m程度になる。これは地面温度に応じた黒体放射と見なせる。
 
左辺第1項≒aλ太陽光×A×πr =1×700×129=90,300W
 
 上記1の値から直達日射量は午後4時頃でA≒700W/m程度として計算した。
 
左辺第2項≒aλ赤外×B×4πr =1×550×515=283,250W
 
 大気は黒体と見なせないのでB見積もりがやっかいである。ここでに効いてくるのは上記の3と5の上空大気からの放射と、6と7の地表面からの放射である。8月の晴れた日の午後4時頃に3と5の和も6と7の和も550W/m程度であると見なすとB≒550W/m程度である。これを用いて計算した。球皮温度より気温の方が低いのにこの値が右辺第1項より大きくなるのは、この項には散乱日射量が含まれるからだろう。左辺第1項の3倍程度になるが、これは驚くべき事である
 
右辺第1項=ελ赤外×C×4πr≒1×497×515=255,955W
 
 球皮温度(これは球体内の温度と一致すると考えて良いだろう)が何度になるか解らないので飛行実験で生じた浮力約15kgwから表3-1を用いて推測する。表より気球半径6.4mのとき浮力15kgwを生じる内外温度差は約6℃である。これは普段の経験にも一致する。
 外気温を27℃とし球皮温度を適当に31、33、35、37、39℃と置き、球皮が黒体輻射をするとしステファン・ボルツマンの法則を用いて計算して見ると、温度の見積もりが1度違う事による誤差は1%程度なので温度差6℃の値255,955Wを用いる。

球皮温度(℃) 内外温度差(℃) C(W/m) ελ赤外×C×4πr(W)
31 484 249,260
33 497 255,955
35 510 262,650
37 10 524 269,860
39 12 537 276,555
               C=σT4球皮(W/m)   ελ赤外≒1
右辺第2項
 右辺第2項の冷却熱流量Dの見積もりが最も困難である。冷却は熱伝導と対流によるが根本的には球体表面にできる境界層で生じる熱伝導であると考えられる。熱伝導は伝導層の温度勾配による。それは熱伝導の境界層の厚さ、つまり球体表面の温度が外気温度になるまでの厚さと言っても良い。ここで対流の効果は高温気体が如何にして球体表面から効果的に運び去られるかに関係してくるだろうから、境界層の厚さの度合いを見積もる中に含ませることができるだろう。
 実際にはかなり効率よく対流が起こり、かなり薄い境界層が実現されると考えられる。しかし、この境界層の厚さ(つまり球皮表面空気層の温度勾配)の見積もりが最も困難である。しかたがないので他の項の見積もり値を用いて右辺第2項のDを計算し、そのDの値から境界層の厚さを見積もることにする。前記の値を用いると
 
   右辺第2項=D×4πr=左辺第1項+左辺第2項−右辺第1項≒118,000W
   D=2.28×10W/m
 
空気の熱伝導率は300K付近で約2.6×10−2W/(m・K)であるから境界層の厚さをd、境界層をはさんでの温度差をΔtとすると
  
D=2.28×10[W/m]とΔt=6[K]を代入するとd=0.7[mm]となる。
これは滑らかなフィルム表面であるから対流によりごく表面近くの空気層まで効率よくはぎ取られて熱が奪いさられることを予測させる。ところでナイロンやポリエチレンの熱伝導率は空気の10倍程度で球皮厚<0.7mmだから球皮厚内の温度変化を無視したことが正当づけられる。

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