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2.農業用黒マルチポリエチレンフィルムで作ったゴジラ(1998年)
 
)制作過程
 
 型紙の準備が難題ですが公文の紙模型恐竜の型紙をOHPセルにコピーし、オーバーヘッドプロジェクタを利用して拡大することで解決。簡単な予備実験からこのフィルムと扇風機の組合せで充分可能であるとの見通しが立ったので取りかかった。
 
 
 ゴジラの型紙として公文出版の子供向けの画用紙を切り抜いて造る恐竜シリーズ「くもんのペーパークラフト・ティラノサウルス」を利用。内圧によりうまく形状が保てるように頭部と手足の先は改良した。本の図をコピー機でOHP用の透明シートにコピーする。このシート上の図をオーバーヘッドプロジェクターで15倍に拡大して、壁に垂らしたポリエチレンシート(農業用の黒マルチ0.03mm厚2.10m×100m)に映しだす。型図を白のペイントマーカーで写し取り、ハサミで切り出す。
 切り出したパーツを幅広のセロテープ(今までの経験から粘着性と柔軟性においてセロテープが最もすぐている)で張り合わせて行く。両足と胴体頭部は二つに分割し独立した袋状にする。脚下部と尾の先端部に取り付けた2台の家庭用扇風機で空気を吹き込む。扇風機の風圧(約2mmHg)で膨らまし立ち上がらせる。送風を開始して2〜3分程度で膨らみ立ち上がる。完成時の大きさは全長13.5m、全高6mである。
 文化祭のオープニングセレモニーでは、ステージ横の暗闇の中からスポットライトを浴びて、ゴジラが音楽と紹介のナレーションとともに空気を吹き込まれて徐々に立ち上がってくるようにしました。ゴジラが全校生徒の前に姿をあらわしたときは、予想外の評判を得ることができました。作った生徒達はとても誇らしい気持ちになったようです。
 
以下製作の様子を写真で紹介する。
 
写真2-1 予備実験の様子          

  
写真2-2 型の写し取り

 
写真2-3 部品の切り出し

 
写真2-4 完成した胴体部

 
写真2-5 しっぽの先と足のかかとから送風する

 
写真2-6 扇風機で作った送風機

 
写真2-7 徐々に膨らんで立ち上がっているところ

 
写真2-8 前から

 
写真2-9 全景

 
写真2-10 頭部

 
写真2-11 完成したゴジラとクラスの仲間

 

 ビデオ映像をご覧になりたい方は以下をクリックして下さい。
   ゴジラの誕生(7.30MB 3分6秒)
 上記の動画が見られない場合は編集方針をご覧いただくか、下記のリンクを試してください。これはWindows標準のWMV8コーディックのファイルです。解像度を上げているのでブロードバンドでないと少し厳しいです。
   ゴジラの誕生(48.16MB 3分6秒)

 
 
)理論的考察

 文化祭終了後、扇風機の送風による内部圧の上昇量をアネロイド気圧計で測定してみた。一番強い回転で2.0〜2.5mmHg程度の圧力差を生じた。
 内外の内圧差で膨らんだ円筒状の袋を、その一端で支えるとき、どの程度の大きさまで支えることができるか考察する。
 まず重力がはたらかない場合は円筒は内圧により膨らみ円筒部の縦横の張力を生み出す。簡単な計算から
 
 
 軸方向に沿った張力=ΔP×r/2[N/m]・・・・(A) 円周方向に沿った張力=ΔP×r[N/m]となる。


 一方図の様な壁から突き出た円筒は重力によりたわんで折れ曲がろうとする。ある中立面より上側が引っ張り力を受けて伸び、下側が圧縮力を受けて縮もうとする。伸びも縮みもしない中立な面か゛存在し、この面は断面のほぼ中央に近いと予想される。(正確には中立面は断面の“重心”を通る)材質のひずみは中立面からの距離に比例するとして良いであろう。このひずみが円筒の縦軸に沿った方向の張力と縮みの力σを生む。任意の横断面について中立面の上と下とでは逆向きに、しかも中立面からの距離に比例した力σが働く。
 
  これらの力は加え合わされて中立線のまわりの右回りの“曲げのモーメント”Mを生じる。
 

 
  当然このモーメントは壁への付着部で最大である。壁の付着部でのこのモーメントは重力で円筒が垂れ下がろうとする左回りモーメントM'
 
 
とつり合っている。このつり合い関係から円筒の断面にはたらくひずみの力を計算できる。
 
 
 
  この中で重要なのは円筒を押し縮めようとする力の最大値σmax(当然円筒の一番下側の部分にはたらく)であるが、この値が前述の風圧に生じる張力(A)の値よりも小さければ、フィルムで作った円筒は座屈することなく水平の状態を保つ。
 
  つまりΔPr−2πρLr−2πρLr>0を満足するrやLならば良い。以下
f(r)=ΔPr−2πρLr−2πρLrのグラフを様々なΔP、ρ、Lで描いてみる。グラフから前記のゴジラが製作可能であることが読みとれる。

)ま と め
 
f(r)=ΔPr−2πρLr−2πρLrのグラフからΔP=2mmHg、ρ=26g/m2でr=0.5m以上の場合L=20mまでささえることが解る。しかしゴジラの胴体主要部の半径は0.5〜1mであり、頭部は何重にもフイルムが張り込まれているのでかなり重くなるので、実際に支えることができるのはL<10mだろう。だから座屈耐性の面でそんなに余裕はないと思われる。実際扇風機の風圧を下げると頭が下がってくる。
 
 またこのゴジラでは軸方向に沿った張力=ΔP×r/2[N/m]や円周方向に沿った張力=ΔP×r[N/m]の制約もきいてくる。ΔP=2mmHgと胴体部の半径r=1.0mを用いると張ΔP×r=266N/m=2.7N/cmで、このフィルムの伸張強度5N/cmの半分程度となりこちらも余裕がなくなってくる。
 
 伸張力はセロテープ接着部に影響し、胴体部のように太い部分では接着部が裂けやすくなる。特に太い部分の縦方向の接着部が何度か裂けた(円周方向の力の大きさが軸方向の倍)。また胴体と大腿部の接合部もセロテープの粘着力ぎりぎりの力がかかる。裏と表から接着してあるが、裂けやすい部分である。
 
 ゴジラの足のスネ部の太さは半径r=0.35cmだからスネの垂直な円筒部で支えることのできる荷重はΔP×πr=102.6N≒10kgw。足首部ではr=0.20cmでΔP×πr=33.5N=3.4kgwとなる。膝やかかとが屈曲して接合されていることを考えるとゴジラの体重4kg(推定値)を支えるのは難しい。そのためお腹の下に箱をおいて支える形式になった。
 
 以上の値から解るようにこのゴジラは[座屈]、[膨張圧に対するフィルム強度]、[セロテープの接着強度]、[扇風機の送風能力]の四項がバランス良く絶妙に組み合わされたぎりぎりの大きさだった。 

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