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光と絵の具の三原色(色とは何か)

 光の三原色と色材(絵の具)の三原色が異なることは良く知られている。なぜ異なるのか、その違いの意味するところを説明します。
 また絵の具の三原色を誤って青と赤と黄色としている教科書がありますが、正しくはシアン(空色)とマゼンタ(赤紫)と黄色です。その理由も説明します。

1.光の三原色

(1)三原色

 光の三原色は赤(Red)緑(Green)青(Blue)です。そして赤(Red)と緑(Green)の光が混ざると黄(Yellow)、緑(Green)と青(Blue)が混ざると空色(Cyan)、青(Blue)と赤(Red)が混ざると赤紫(Magenta)、赤緑青すべてが混ざると白(White)になる。光は原色の色を混ぜるほど色が明くる区なり、三原色を加えると白くなる。下図は、光の三原色を混ぜたときの様子を示している。

 上図には示されていないが、光の場合には赤・緑・青の3つの色の強度を変えて混ぜ合わせると、ほぼすべての色が再現できる。上図には無いが、たとえば茶色は赤:緑:青=128:64:64 とすればよい。そのため、この3色を「光の三原色」と言う。カラーテレビやカラーディスプレイの発光体には、この3原色が使用されている。

(注意)マゼンタはイタリア北部の都市で、1859年戦争のあった所。赤紫のアニリン染料が発明されたのがちょうどこの頃で、イタリア軍の大勝を記念して、赤紫染料の名前にマゼンタが付けられた。(金子隆芳著「色彩の科学」岩波新書P176より)

 

(2)人間の目の構造

 三色で人間が感じ取る色のすべてが表現できるのは、人間の目の細胞の仕組みがそのようになっているからである。
 人間の目の網膜には、赤色波長(6.1×10-7m)近傍の光に共鳴してその光のエネルギーを吸収し興奮する細胞と、緑色波長(5.5×10-7m)近傍の光を共鳴吸収して興奮する細胞と、青色波長(4.5×10-7m)近傍の光を吸収共鳴して興奮する細胞がある。それらの細胞の先端は錐体状をしており、それぞれはL錐体(赤錐体)、M錐体(緑錐体)、S錐体(青錐体)と呼ばれる。
 つまり人間の目はこの三つの波長領域の光に別々に反応する視細胞があり、この三つの波長領域にしか反応しない。しかし、この三波長領域で地球上に存在する光の波長をほぼ覆い尽くすことができる。それは太陽が発する光のエネルギー分布は別項「温室効果と地球温暖化」で述べたように下図の様になるからである。しかも、この分布の短波長側は上空の酸素分子、オゾン分子により吸収され、長波長側は水蒸気や二酸化炭素により吸収されるため、地上で生物が利用できる波長領域は真ん中の部分が主となる。だから、この三波長領域が利用できれば十分である。

 我々生物は太陽の光の下で進化してきたから、この世に最も沢山あふれている波長の光を利用する目を進化させてきたのである。つまり、物が発する光を最も有効に感じ取る目をもっことができたから生存競争に勝ち残こることができた。
 その波長領域の光に反応する化学物質を目の細胞構造の中に旨く取り込むことで、そういった目を持つことができた。人間の場合三種類の化学物質(タンパク質オプシン)を利用しており、その三種類の吸収共鳴波長が上記の三波長近傍であると言うことである。そしてこの波長範囲の光を、我々が見ることができる光という意味で可視光線と呼んでいる。
 図2中の赤線分布は前記のL錐体(赤錐体)の様々な波長域の光に対する感度である。緑線の分布はM錐体(緑錐体)、青線の分布はS錐体(青錐体)の感度を表している。

 

(3)色は脳の神経細胞の興奮の様相

 我々が感じる色とは、上記三種類の錐体細胞が感じる興奮の程度により呼び起こされる神経回路の興奮の様相にすぎない。
 つまり、赤錐体が興奮したとき感じる感覚が赤色(Red)であり、緑錐体が興奮したとき感じる感覚が緑色(Green)red)であり、青錐体が興奮したとき感じる感覚が青色(Blue)である。
 そして、赤錐体と緑錐体が同程度に興奮したとき感じる感覚が黄色(Yellow)であり、緑錐体と青錐体が同程度に興奮したとき感じる感覚が空色(Cyan)であり、青錐体と赤錐体が同程度に興奮したとき感じる感覚が赤紫(Magenta)である。
 すべての錐体細胞が同程度に興奮したときに感じる感覚が白色(White)である。
 だから黄色や空色や赤紫色の光の波長が存在するのではなくて、三種類の視細胞の興奮の度合いの組み合わせに伴う脳神経回路の興奮の様相が色の感覚である

 図1と図2を用いて白熱電球が発する光や太陽光をスリットとプリズムを用いて分光したとき見えるスペクトルの色(図3)を解釈すると、その色感が旨く説明できる。

 図3を見れば明らかなように赤色に感じるのは赤錐体の感度が最も良い5.8×10-7m付近ではなくて、緑錐体の感度が無くなる6.5〜7.0×10-7m当たりである。また緑色に感じる波長は緑錐体の感度が最も良い5.4×10-7m付近ではなくて、青錐体と赤錐体の感度が小さくなる5.1×10-7m付近である。青色は青錐体の感度が一番良い4.4×10-7m付近である。故に図1の光の三原色は

と言うことになる。だからカラーディスプレーの三種の発光体もこれらの波長の光を発する物質と言うことになる。

 そして、黄色(Yellow)に感じる波長は赤錐体と緑錐体の感度が同程度になる5.7×10-7m当たりである。図3を詳しく検討すれば解るように緑錐体と青錐体のみが強く興奮する波長領域は無い。4.8×10-7m付近はそれに近いが感度が悪いため暗く、しかも赤錐体の興奮が少し混じっている。そのため純粋な空色(Cyan)として感じる波長領域は存在しない。

 空色(Cyan)を強く感じるには4.4×10-7m付近の光と5.0〜5.2×10-7m付近の光が混ざったものを見ればよい。他も同様で黄色(Yellow)を最も強く感じるには5.1×10-7m付近の光と6.5×10-7m付近の光を同時に見るか、5.7×10-7m付近の光を見るとよい。赤紫色(Magenta)を強く感じるには4.4×10-7m付近の光と6.5〜7.0×10-7m付近の光を同時に見るとよい。

 

(4)三種類の錐体細胞を構成する三種類のオプシンタンパク質 [2013年10月追記]

 錐体細胞に存在して明所で色覚に関与するタンパク質(オプシン+レチナール)は、三種類あって前項の説明のようにそれぞれ異なる波長領域の光に感応する。感応する波長が異なるのはレチナールと結合するオプシンの分子構造の違いに由来する。それら三種の異なったオプシンタンパク質を発現する遺伝子は、染色体上の異なった場所にそれぞれコードされている。
 [赤オプシン][緑オプシン]をコードする遺伝子はX染色体上に、[青オプシン]をコードする遺伝子は常染色体上にある。三つの遺伝子の内の二つ(赤と緑のオプシンをコードするもの)が性染色体上に在るために、赤緑色盲(赤緑色弱)の障害が女性に較べて男性に多く現れます。
 一つの錐体細胞には三種類のオプシンの内の一種類しか発現しません。つまり、網膜上に分布する錐体細胞はアトランダムにその三種類のオプシンタンパク質のどれかを一つのみを発現しています。そして三種類の錐体細胞が網膜上にモザイク状に分布しています。
 細胞ごとに三種類の遺伝子の内の一種類のみがアトランダムに発現するのはとても不思議です。何がそうさせるのか現在そのメカニズムは良く解っていませんが、とにかくそうなります。
[人の光受容細胞1光受容細胞2光受容細胞3

 ところで最近、各オプシンが発現するメカニズムについてとても興味深い事実が解ってきました。それはX染色体の不活性化といわれるエピジェネテックに関係する現象です。
 生物の在りようは、DNA→mRNA→タンパク質のセントラルドクマ、に従って遺伝子が決めているのですが、各遺伝子をどの時期にどの場所でどの様に発現させるのかを調整するメカニズムが、DNAを取り巻く様々なタンパク質やRNAそしてDNA自身の中に、ある種の遺伝的な情報として存在・蓄積・継承されていると考えられています。これが細胞が分裂して様々な種類の細胞に分化していくときに遺伝子と同じように働き、細胞の分化を指令しているのではないかと考えられています。つまり、エピジェネテックとは遺伝子以外の物質による形質発現の調節機能を研究する学問領域です。
 上記の“X染色体の不活性化”もそういった現象の内の一つです。これは三種類の錐体細胞の発現に関係する興味深い話なので
  太田邦史著「エピゲノムと生命」講談社ブルーバックス(2013年刊)p166〜182
に説明されている内容をここに引用して紹介します

 

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2.補色

補色(余色ともいう)の定義は「二つの光を適当な割合で加法混色したものの色刺激が白色の色刺激と等しくなるときに、はじめの二つの光の色は互いに補色であるという」

光の三原色の意味がわかれば、補色の意味も明瞭になる。そのとき基礎になるのは図3です。

 図3の青色=4.5×10-7m付近の光を取り除くと緑色=5.0〜5.2×10-7m付近の光赤色=6.5〜7.0×10-7m付近の光が残る。もともとこの3色を混合したものは白色だったから[青色=4.5×10-7m付近の光]緑色=5.0〜5.2×10-7m付近の光と赤色=6.5〜7.0×10-7m付近の光を混合した光すなわち黄色(Yellow)]は補色の関係にある。

 同様に図3の緑色=5.0〜5.2×10-7m付近の光を取り除くと青色=4.5×10-7m付近の光赤色=6.5〜7.0×10-7m付近の光が残る。もともとこの3色を混合したものは白色だったから[緑色=5.0〜5.2×10-7m付近の光]青色=4.5×10-7m付近の光赤色=6.5〜7.0×10-7m付近の光を混合した光すなわち赤紫色(Magenta)]は補色の関係にある。

 同様に図3の赤色=6.5〜7.0×10-7m付近の光緑色=5.0〜5.2×10-7m付近の光を取り除くと青色=4.5×10-7m付近の光緑色=5.0〜5.2×10-7m付近の光が残る。もともとこの3色を混合したものは白色だったから[赤色=6.5〜7.0×10-7m付近の光]青色=4.5×10-7m付近の光緑色=5.0〜5.2×10-7m付近の光を混合した光すなわち空色(Cyan)]は補色の関係にある。

 

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3.色材(絵の具)の三原色

 絵の具の三原色は黄色(Yellow)と赤紫色(Magenta)と空色(Cyan)です。教科書によっては赤色(Red)と黄色(Yellow)と青色(Blue)を絵の具の三原色と説明しているものがありますが、それは間違っています。なぜなら光の三原色の成り立ちと、色材(絵の具)の色とは何かを考えてみれば明らかです。

 白色光が色材(絵の具)に当たり、その内の一部が吸収されて、残りの光が反射または透過される。色材(絵の具)の色とは、その反射または透過された光の色のことです。だから

 空色(Cyan)、赤紫色(Magenta)、黄色(Yellow)の色材が反射した光には二つの原色を感じさせる波長の光が含まれている。だから、それらの色材(絵の具)の二つを混ぜ合わせたても、混合絵の具から反射してくる光がまだ残る。
 たとえば空色(Cyan)の絵の具と赤紫色(Magenta)の絵の具を混ぜ合わせると赤色と緑色の光が吸収されてしまい青色のみが反射されてくる。
 同様に赤紫色(Magenta)と黄(Yellow)の絵の具を混ぜ合わせると緑色と青色の光が吸収されてしまい赤色のみが反射されてくる。
 さらに黄(Yellow)の絵の具と空色(Cyan)の絵の具を混ぜ合わせると青色と赤色の光が吸収されてしまい緑色のみが反射されてくる。
 当然のことであるが空色(Cyan)、赤紫色(Magenta)、黄色(Yellow)の絵の具をすべて混ぜ合わせると赤色、緑色、青色の光がすべて吸収されてしまい光のエネルギーが減少して反射してくる光がなくなるために黒色になる。

 下の図5はその当たりを示している。図5の成り立ちを理解すれば、光の三原色(図1)と色材の三原色(図5)は表裏一体の関係であることが解る。

 インクジェット式のカラープリンターに装着するインクが空色(Cyan)、赤紫色(Magenta)、黄色(Yellow)の三色であるのは上記の理由による。
 以上は絵の具の話であるが、空色(Cyan)、赤紫色(Magenta)、黄色(Yellow)のセロファン紙の場合も同様である。それらのセロファン紙を重ね合わせて白色光を見ると上記の事情が再現される。
 カラー写真も極めて薄い三層のカラー・フィルムを重ねて色を出す。

 

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4.興味ある例

)pH指示薬

 別稿「pH指示薬」においてH+イオンの解離の程度により可視光の吸収波長が変化する色素化合物について説明した。そのとき発色する色は、それらの色素化合物が吸収する色の補色の関係にある色である。
 たとえばフェノールフタレインの場合pH8.5以下では可視光線の領域にはほとんど吸収が無いためすべての可視光線を透過させて無色である。しかしpH9.0以上になると5.6×10-7m〜黄緑色光付近をピークとする強い吸収が現れる。そのためその補色の赤紫色(Magenta)に見える。

 いろいろなpH指示薬の吸収スペクトルは
http://www.st.hirosaki-u.ac.jp/~rmiya/monthly9911/mo9901/node11.html#fig:bpb-photo-spec
を参照されたし。

 

)薄膜コーティングによる反射防止

 メガネや写真機のレンズの表面には空気とガラスの屈折率のちょうど中間の屈折率を持つプラスチックをコーティングして入射する光線の反射を防いでいます。これは高校物理の問題で解くものです。
 たとえば屈折率1.5のガラスの表面に屈折率1.35の透明な薄膜を付けて、白色光を膜面に垂直に入射させたとき、波長5.4×10-7mの光(可視光の中心部)をできるだけ反射しないようにしたい。薄膜の厚さdをいくらにしたら良いか計算してみる。
 空気の屈折率を1.0とし、屈折率のより小さな媒質で光が反射する場合そのままの振動の状態で反射し、屈折率のより大きな媒質で光が反射する場合振動の状態が逆になって反射することに注意する。

 二つの反射光の道のりの差(経路差)は2dである。二つの反射光は、反射の際、ともに振動の状態が逆になるが、その分は相殺されるので、反射光が暗くなる条件は

となる。dを最も薄い膜厚にとると、m=0として

となる。ゆえに

とすれば良いことが解る。
 このとき図のC点で再び反射してガラス面に入射する光については、C点で振動状態の逆転は起こらないから透過光が明るくなる条件は上記の式と同じになる。この厚さで薄膜をコーティングしておけば波長5.4×10-7mの光(可視光の中心部)が最も良く透過することになる。

 ただしこのように最も強い可視光線の波長に薄膜の厚さを調節すると、その波長よりも短いあるいは長い波長の光に対しては上記の条件は満たされなくなる。そのため、どうしても波長5.4×10-7m(黄緑色)の光の両側の青色と赤色は少し反射してしまう。そのため緑色の補色のマゼンタ(Magenta)色にレンズやメガネの表面が色づいて見えることになる。

 

)恒星の色

 高校地学「天文」のところで星のスペクトルを習います。星のスペクトル型は、もともとバルマー線の強さをもとに分類が行われて、A、B、C・・・・の記号で表していたが、後にスペクトル型の違いが恒星大気温度の違いに対応する事が解った。スペクトル型を温度順に並べ直すと以下のようになる。(暗記法は Oh,be a fine girl,kiss me right now,Sweet!)

 さらに、各スペクトル型は表面温度の高い方から順に0から9まで十段階に細分されている。例えばA型はA0、A1、A2、・・・・A9の様に。上記のスペクトル型の下に記した数字は各スペクトル型の5段階目(例えばA5)の表面温度(8500K)を表している。また、その下は我々が見る星の色を表している。
 ここで面食らうのは、この中には緑色が無いことです。また緑色の代わりにA型のあたりが白色になることです。星の色がこのように見えるのは、我々の感じる色とは三種類の錐体細胞の興奮量が混じり合う割合の違いに伴って大脳細胞が織りなす感覚の様相であり、光の三原色のメカニズムに基づくからです。

 恒星の表面から放射される光の波長に対する強度分布曲線は、様々な事情で必ずしも黒体輻射の分布曲線にならないが、大体の所を論じるときには黒体輻射の分布曲線と見なして良い。各スペクトル型の放射強度分布の中で各錐体細胞の感じる光の強度の比率を検討すれば、上記の色に見える事が了解できる。

温度が低いスペクトル型の方を拡大すると

 

)金属の色

 金属結合を実現する電子は各原子に糊の様にまとわりつきながら隣り合った原子との間に共有結合の媒体として働く。それらの電子は金属内部をかなり自由に動き回ることができて、自由電子と呼ばれる。
 そんな金属に光(振動する電場)が侵入すると、自由電子は電場に感応して動き侵入する電場を打ちけすような電場を生み出す動きをする。そのため金属内部の電場は打ちけされて光は金属内部には侵入できない。そのとき自由電子が生み出す電場は外部の空間にも広がる。それはあたかも入射波に対する反射波として広がっていくことになる。これが磨かれた(酸化していない)金属表面は光に対して鏡の様に輝く(金属光沢)ゆえんである。

 そのとき金属ごとの自由電子の性質の微妙な違いにより、入射光の一部を吸収する金属もある。は可視光の中の青の波長域を吸収するためその補色の黄金色に輝く。は青〜緑の波長域を吸収するため赤みがかって見える。亜鉛カドミウムは橙〜赤の波長域を吸収するため青っぽく見える。

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