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質点の二次元運動を論じるときに必要な二次曲線の説明です。離心率eの変化に着目すると二次曲線を統一的に理解できる。
平面上の直交座標(x、y)を用いて、実数係数の二次方程式 Ax2+2Hxy+By2+2Gx+2Fy+C=0 で表される曲線を二次曲線という。係数A、B、・・・ の値により、方程式を満たす点がまったく存在しない(x2+y2+1=0)、ただ1点になる(x2+y2=0)、一つの直線を表す(x2+2xy+y2=0)、二つの直線を表す(x2−y2=0)こともあるが、以下ではこのようにならない二次曲線を考える。
二次曲線は AB−H2>0(楕円)、 AB−H2<0(双曲線)、 AB−H2=0(放物線)に応じて、適当な直交座標(x'、y')を用いることにより、(x'/a)2+(y'/b)2=1楕円、(x'/a)2−(y'/b)2=1双曲線、y'2=4px' 放物線となる。これらは、直円錐面をその頂点を通らない平面で切ったときの切口になり、円錐曲線と言われる。二次曲線は次の性質を持つ。
平面上で一つの定点(焦点)と定直線(準線)からの距離の比が一定な点の描く図形が二次曲線である。一定な比の値を離心率eという。焦点Fの位置を(f、0)=(10、0)、準線をx=0の直線として、離心率eを変えた図を下に示す。0<e<1(楕円)、e=1(放物線)、e>1(双曲線)。
この図において条件を満たす点を数式で求めるとxおよびyについての二次方程式になり、同一のyに対して二つのx、また同一のxに対して二つのyが解として存在する。次にyを一定と考えてxについての解を求めてみる。
これらの値を幾何学的に解釈すると図形はx=f/(1-e2)の直線に対して左右対称になることが解る。そのため、上で求めた解(x、y)を与える焦点と準線がもう一組存在する(放物線の場合は無限の彼方に)ことが解る。当然の事だが、それらは、元の焦点・準線の組と、x=f/(1-e2)の直線に対して対称な位置にある。二組の焦点(赤点●)・準線(青線)と対称線x=f/(1-e2)(緑線)を下図に示す。
下図は焦点・準線・対称線のx座標が離心率eでどのように変化するかを示したものである。この図において放物線の場合はもう一方の焦点・準線と対称線は無限の彼方にあると考えればよい。
離心率eによって焦点・準線・対称線の位置がどのように変化するかを検討すれば、二次曲線を統一的に理解する事ができる。
上で述べたように、二次曲線の図形は対称線 x=f/(1-e2) に対して左右対称になる。そのため座標の原点を(f/(1-e2),0)に移動して、新たにx’y’座標をとると、方程式をx’y’に関して対称的な形にすることができる。
これらは、高校数学で習う馴染みの式である。ここでc/a=eとなり、高校で習う離心率の定義に一致する。
e=1 の放物線の場合(1-e2)=0となるためa、b、cは無限大になり、この形の式は使えない。放物線のもう一方の焦点・準線と対称線は無限の彼方に行ってしまうからである。そのため、放物線の場合だけは、そのようにする必然性は特に無いのだが便宜的に座標原点を放物線とx軸との交点(f/2,0)に移動する。そうすると
これらの標準形が一番理解しやすいので、高校数学ではこの形から習う。しかし、このように表すことができるのも、二次曲線の図形は対称線 x=f/(1-e2) に対して左右対称になるからこそ出てきた性質で、本来の図形2.(1)から入った方が解りやすい。その方が物理で重要な次項(3.や4.)の性質の理解に適している。
離心率e=PF/PHを0←→1←→∞で変化させたときの、円←→楕円←→放物線←→双曲線の関係を幾つかの例で説明する。
これは2.(2)で述べたように、二組の焦点・準線が対称線に対して対称な位置にあることから出でくる性質である。図形を描くとき準線gg’は固定されているので、それらの間隔は常に一定である。そのために図形の点は以下の条件を満たす点だと言うことができる。
すでに述べた焦点・準線からの距離による楕円(e<1)の定義より PF=ePH、PF’=ePH’である。これらを用いると、準線gg’の間隔は一定だから e(PH+PH’)=一定(gg’の間隔のe倍)=PF+PF’=2a となる。これは、まさに二つの焦点からの距離の和PF+PF’が一定値2aになることを意味する。
[別証]x'y'座標を用いるとF(-c,0)、F'(c,0)だから、PF+PF’=2a の条件式は {(x'+c)2+y'2}1/2+{(x'-c)2+y'2}1/2=2a となる。これを変形して {(x'+c)2+y'2}1/2=2a-{(x'-c)2+y'2}1/2 となる。これの両辺を二乗して整理すると {(x'-c)2+y'2}1/2=a-(c/a)x' となる。もう一度両辺を二乗して整理すると (a2-c2)x'2+a2y'2=a2(a2-c2) となる。ここで a2-c2=b2 の関係式を用いると (x'/a)2+(y'/b)2=1 となり、楕円の標準形が得られる。このことから確かに上記の性質が在ることが解る。
すでに述べたように放物線は楕円の特別な場合で、一棒の焦点・準線が無限の彼方へ移動したものであると考えることができる。そのとき、放物線(e=1)の定義は PF=PH、PF’=∞=PH’である。これらを用いると、準線gg’の間隔は無限大になるが、PH+PH’=PF+PF’ → PH=PF を意味する。
[別証]x'y'座標を用いるとF(p,0)だから、PH=PF の条件式は x'+p={(x'-p)2+y'2}1/2 となる。この両辺を二乗して整理すると 4px'=y'2 となり、放物線の標準形が得られる。このことから確かに上記の性質が在ることが解る。
双曲線の場合も、焦点・準線からの距離による双曲線(e>1)の定義より PF=ePH、PF’=ePH’である。これらと準線gg’の間隔は一定であることを用いると e(PH’−PH)=一定(gg’の間隔のe倍)=PF’−PF=2a となる。これは、まさに二つの焦点からの距離の差が一定値2aになることを意味する。
[別証]x'y'座標を用いるとF(c,0)、F'(-c,0)だから、PF’-PF=2a の条件式は {(x'+c)2+y'2}1/2-{(x'-c)2+y'2}1/2=2a となる。これを変形して {(x'+c)2+y'2}1/2=2a+{(x'-c)2+y'2}1/2 となる。これの両辺を二乗して整理すると {(x'-c)2+y'2}1/2=-a+(c/a)x' となる。もう一度両辺を二乗して整理すると (a2-c2)x'2+a2y'2=a2(a2-c2) となる。ここで c2-a2=b2 の関係式を用いると (x'/a)2-(y'/b)2=1 となり、双曲線の標準形が得られることから確かに上記の性質が在ることが解る。
二次曲面を鏡の面とすると、一方の焦点から出た光線が二次曲線により反射されて進む方向は、他方の焦点の方向(楕円)、無限の彼方の焦点の方向、つまり平行光線(放物線)、他方の焦点から出たと見なせる光線の進む方向(双曲線)の何れかになる。3.で説明した性質(二つの焦点から図形上の点までの距離の関係)から出てくる結論である。
物理で利用するとき便利な二次曲線の極座標表示の説明です。
焦点Fを極座標の原点、動径の方位角θをx軸を基準に測ると
となる。これはeの値に応じて楕円、放物線、双曲線を表す。
ここでさらに
となる。
[補足説明1]
天体の運動が楕円軌道(e<1)の場合、“公転周期“Tと軌道要素である“長軸半径”a、“離心率”eが解ると、楕円軌道方程式
で表される地点(r,φ)の“公転速度”v を a 、e 、φ 、T の関数として表せます。それは
となります。この式の証明は別稿「ブラックホール質量の決定法」2.(4)2.2.[補足説明1]をご覧下さい。