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確率分布関数のグラフ表示 1

 「統計力学」2.(2)2.で導いた確率分布関数式(2.10)のグラフ表示の説明です。

 これは人口 N人 が構成する社会に貨幣 M円 が流通するとき、その社会の一部分を構成する N1人 の小集団に貨幣 M1円 が集まる確率を表します。
 もちろんその小集団の人数N1を固定しても、状況に依りその小集団に属することになる貨幣の流通量 M1 は 0〜M まで変化可能ですから、この確率分布関数 pN1(M1) は変数M1によって変化する一つの分布関数を形成します。
 その確率分布関数 pN1(M1) のグラフ表示を考えようということです。

1.N=100人、M=500円 の場合

(1) N1=5人 の場合

 まず、最初に

のグラフを示す。この量を縦軸に取り、横軸は変数M1としたグラフです。

縦軸の座標値は極めて大きくなる事にされて下さい。
 実際、この階乗のグラフはMの増加と共に極めて急速に増大することは明らかです。

 次に、

のグラフを示す。このときN=100,M=500ですからm=M/N=5となります。

縦軸の座標値が極めて小さくなる事に注意されて下さい。
 また、これは典型的な指数関数のグラフであることに注意して下さい。このことに付いては「統計力学」2.(2)1.[補足説明1]も特に注意されて下さい。
 実際、次のグラフを見れば解る様に、この指数関数のMの増大に伴う微小化は、先ほどの階乗のグラフがMの増大に伴って増加するよりもより急激に小さくなります。そのため、確率分布関数pN1(M1) が極大を取る M1* が存在することになります。

 上記の二つの項の積が,式(2.10)

のグラフで下図の様になります。

 これは前記の二つのグラフの積ですが、最初の量の縦座標値が巨大で二番目の量の縦座標が微小なものの積ですから、あるM値(本文でMといっているもの)で極大値を取り、しかも適切な数値になっている事が了解できる。
 さらにこのグラフ曲線で囲まれる部分の面積は丁度 1 となることに注意して下さい。式(2.10)は規格化条件をみたしているからです。

 

(2) N1=10人 の場合

 同様にして,N1=10人の場合の式(2.10)のグラフを示す。

 このとき、確率分布関数 pN1(M1) のグラフは M1〜50 付近で極大値を取ることに注意して下さい。これは小集団N1の各個人が持つ金額M1が5であることが最も確率的に起こりやすいことを示しています。これは取りも直さず M/N=m=5 の値に他なりません。
 さらにグラフ曲線で囲まれる部分の面積は丁度 1 となるように、グラフ分布曲線の横への広がり(50程度)に応じて、極大値の値は小さく(0.02程度)なっていることに注意してください。

 

(3) N1=20人 の場合

 まったく同様にして,N1=20人の場合の式(2.10)のグラフを示す。

 このとき、確率分布関数 pN1(M1) のグラフは M1〜100 付近で極大値を取ることに注意して下さい。これは小集団N1の各個人が持つ金額M1が5であることが最も確率的に起こりやすいことを示しています。これは取りも直さず M/N=m=5 の値に他なりません。
 さらにグラフ曲線で囲まれる部分の面積は丁度 1 となるように式(2.10)は規格化されているのですが、グラフ分布曲線がさらに広がったのに応じて極大値の値はさらに小さくなっています。

 

(4) N1=30人 の場合

 さらに同様にして,N1=30人の場合の式(2.10)のグラフを示す。

 このとき、確率分布関数 pN1(M1) のグラフは M1〜150 付近で極大値を取ることに注意して下さい。これは小集団N1の各個人が持つ金額M1が5であることが最も確率的に起こりやすいことを示しています。これは取りも直さず M/N=m=5 の値に他なりません。
 グラフ曲線で囲まれる部分の面積は丁度 1 となるように式(2.10)は規格化されているので、グラフ分布曲線が平たくなるにつれて分極大値の値はさらに小さくなっています。

 

(5) N1=50人 の場合

 同様にして,N1=50人の場合の式(2.10)のグラフを示す。

 このとき、確率分布関数 pN1(M1) のグラフは M1〜250 付近で極大値を取ることに注意して下さい。これは小集団N1の各個人が持つ金額M1が5であることが最も確率的に起こりやすいことを示しています。これは取りも直さず M/N=m=5 の値に他なりません。
 グラフ曲線で囲まれる部分の面積は丁度 1 となるように式(2.10)は規格化されているので、グラフ分布曲線が今までで最も広がったこの場合の極値が、最も小さくなっていることに注意してください。

 

2. N1=50人を固定、M/N=m=5 を保って N と M を増加させてみる

(1) N=1000人、M=5000円 に増加した場合

 この場合、確率分布関数 pN1(M1) の変数M1は0〜5000まで取り得るのですが、横軸をそのままにしたグラフを描いてみる。つまりM1=500〜5000の部分は省略すると

となります。このようにN1を変えないでNとMを同じ比率で増大させても確率分布関数の形はほとんど変わりません。

 しかし、横軸の縮尺を変えて、M1が取り得る幅いっぱいのグラフを描くと下図の様になります。

 

(2) N=10000人、M=50000円 に増加した場合

 この場合、確率分布関数 pN1(M1) の変数M1は0〜50000まで取り得るのですが、横軸をそのままにしたグラフを描いてみる。つまりM1=500〜50000の部分は省略すると

となります。この場合も先ほどと同じ事情が言えます。

 横軸の縮尺を変えて、M1が取り得る幅いっぱいのグラフを描くと下図の様になります。

3. N=10000人、M=50000円 の場合で N1を変化させる

 今回はグラフの横軸の幅を M1=0〜20×N1 として表示したものと、グラフの横軸の幅を M1=50000 として表示したものを示す。今回の図に於いてもグラフ曲線が囲む部分の面積はいずれも規格化条件を満たしていて 1 となります。
 
 以下のグラフの横軸の幅を M1=0〜20×N1 として表示した三図を重ねて、しかもそれぞれの縦軸の目盛りを調整してピークが同じ高さに成る様に調整したものが、本文中の図2.2に対応します。
 
 また、グラフの横軸の幅を M1=50000 として表示したものを、別稿のグラフと比較てみてください。両者のグラフは同じになる事が解るでしょう。

(1) N1=10人 の場合


(2) N1=100人 の場合


(3) N1=1000人 の場合


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