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光行差観測による特殊相対性理論の検証

 本稿は別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」3.(2)3.[補足説明3]の内容を更に解りやすく説明するものです。

1.絶対静止の空間が存在し、光はその空間を光速度cで伝播する場合

 話を解りやすくする為に地球の公転軌道面に垂直な方向に32.6光年離れた恒星の光行差を考察する。そして更に話しを簡単にする為、観測する恒星と地球公転軌道の運動方向および運動速度を恒星と地球公転軌道を結ぶ線分に垂直な方向とし、その移動速度を地球の公転速度vと等しいとする。
 このとき、恒星は32.6光年離れていますから年周視差pは下記の計算式により、p=0.1”となります。

(1)絶対静止空間に対して恒星は速度vで移動し、地球の公転軌道は静止している場合

 以下の状況で地球で観測する光行差現象を導く。

 地球Aの位置で観測する恒星は地球の進行方向に20”傾いた方向に観測される。地球Bの位置で観測する恒星は、地球の進行方向に20”+0.314”傾いた位置に観測される。このとき付け加わっている0.314”は、地球がAの位置からBの位置まで公転する間に恒星は地球公転軌道半径rのπ倍の距離に移動しています。その移動のためにに年周視差0.1”の3.14倍の角度だけ進行方向への傾き角が加わるからです。このとき、地球で観測する光線は3.26年前に恒星を発した光ですが、その時間的ズレを検出する事は困難ですから、光行差の見え方については大局的には変わりません。
 結局、地球から観測する恒星は半径20”の光行差円を描いて動いている様に見えます。その光行差円は1年経つごとに、図の恒星の移動方向に0.314×2=0.628”角ずつスライドしていくことになります。

 

(2)絶対静止空間に対して恒星は静止しており、地球の公転軌道が速度vでスライドしている場合


 図から明らかな様に、地球Aの位置で観測する恒星は地球の進行方向に40”傾いた方向に観測される。地球Bの位置で観測する恒星は、地球の進行方向に0”傾いた位置(つまり傾いていない)に観測される。
 結局、地球から観測する恒星は半径20”の光行差円を描いて動いている様に見えるのですが、その光行差円は地球の公転軌道面に対して全体的に、地球のスライド方向に20”分傾いている。そして、この光行差円は1年経つごとに、0.314×2=0.628”角ずつやはり図の地球公転軌道スライド方向とは逆の方向にスライドしていくことになります。

 

(3)絶対静止空間に対して光は速度cで伝播するという古典論による結論

 上記(1)と(2)を比較すれば解るように、絶対静止空間に対して恒星が移動する場合と、地球の公転軌道がスライドする場合では光行差の見え方が異なります。その見え方の違いから、絶対静止空間の存在を知ることができ、その絶対静止空間に対して恒星が動いているのか、地球軌道がスライドしているのかの違いを判別することができます。
 上記の(1)と(2)の図の地球から見た時の光行差円の見え方の違いが、別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」3.(2)3.[補足説明3]で導いた


の違いに相当します。

 

2.特殊相対性理論による光行差の説明

 特殊相対性理論によると、前章1.(1)の場合と1.(2)の場合の違いを判別することはできません。つまりどちらも同じ様に観測されます。その当たりを以下で確認しておきます。
 相対性理論の教える所は、恒星と地球の相対的運動のみに関係したように現象は現れると言うことです。つまり絶対静止の空間に対しての動きの違いは検知できません。そのため1.(1)の場合と1.(2)の場合の両方で同じ様に現れます。
 そのとき、恒星と地球の相対的な運動の効果は現れますから、光行差円は1年当たり0.628”の割合でスライドして行くことは観測できます。
 
 それは丁度、別稿「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」3.(2)3.[補足説明2]で導いた



の関係に相当します。
 つまり、光行差の現象は完全に“相対的”で、光行差の現象からは絶対静止空間(そこをエーテルは満たす)を検出することはできないのです。これが別稿「マイケルソン・モーリーの実験」1.(2)で述べた“レーナルトの批判”に対する答えです。すなわち、Maxwell方程式、およびそれから導かれる波動方程式はローレンツ変換に対して不変だから、光行差の現象が絶対静止空間(そこをエーテルが満たしており、光速度はそのエーテル中を一定速度で伝わる)を見つける方法を与えることは無いということです。
 別稿「マイケルソン・モーリーの実験(1887年)」1.(2)[補足説明1]で引用したSommerfeldの説明を今一度ご覧になることを勧めます。

 

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