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非同次波動方程式の一般解

 ここでは非同次波動方程式

の解を求めます。非同次の事を非斉次と書く場合もありますが同じことを意味します。ここではf(x,y,z,t)の項があるために非同次となっています。

1.同次波動方程式の解

 最初に、全空間において成り立つ同次波動方程式

の解を、与えられた初期条件の下で求める。
 同次(斉次)というのは、すべての項が未知関数uかその偏導関数(一階微分、二階微分、・・・)単独[つまり一次]なものであって、方程式がそれらの項の和[線型結合]で構成されていると言うことです。つまりどの項も、uやその偏導関数の積や高次[つまり二乗、三乗・・・]の項では無いと言うことです。

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(1)準備

 後の記法を便利にするために座標(x,y,z)を(x1,x2,x3)と書くことにする。ω(x1,x2,x3)を領域Dあるいは全空間領域で、その二階導関数まで連続な任意の関数とする。以下の考察はすべてこの領域で行う。関数の値を点(x1,x2,x3)を中心とする半径rの球面Cr(x1,x2,x3)上で考える。

この球面上の点の座標点の方向余弦を(α1,α2,α3)とすると、この球面上の座標(ξ1,ξ2,ξ3

となる。角θは0〜πまで、角φは0〜2πの間を変化する。
 このときd1σを単位球状の面積要素、drσを半径rの球面上の面積要素とすると

となる。
 ここで関数ωの値の球面Cr(x1,x2,x3)上での算術平均をv(x1,x2,x3,r)とすると以下の様に表される。

 これはω(x1,x2,x3)の球面上での積分値を球の表面積で割ったものですが、この関数v(x1,x2,x3,r)の値は明らかに中心(x1,x2,x3)の位置と球の半径rに依存する。この関数v(x1,x2,x3,r)に対して次の補助定理1成り立つ。

 

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(2)補助定理

[補助定理1]
 二階まで連続な偏導関数をもつ任意の関数ω(x1,x2,x3)を考える。このとき初期条件を

としたとき

で定義された関数v(x1,x2,x3,r)は偏微分方程式

を満たす解となる。

[証明]
 式v(x1,x2,x3,r)の積分は単位球面上で行われている。このときxiについて積分記号下で微分することができるから

及び

が成り立つ。このとき最後の積分は球面Cr(x1,x2,x3)上での積分を用いた形で表現することもできる。つまり

となる。これにガウスの定理を適用すれば面積分を体積積分に直すことができて

を得る。ここでDrは(x1,x2,x3)を中心とする半径rの球を表す。
 最後の式は(1/4πr2)とDについての積分との積である。また、球D上の三重積分(体積積分)の微分係数は、同じ被積分関数のこの球面C上での積分(面積分)に等しい。これを確かめるには、たとえばD上の積分を球座標で表してみればよい。いずれにしても、これらの事を用いると最後の式をもう一度rで微分したものは

となる。
 上に述べた導関数を表す式をすべて用いれば偏微分方程式が満足されていることがわかる。すなわち

となる。
 ここで、r→0とすればv(x1,x2,x3,r)→ω(x1,x2,x3)に近づく事はその定義式から解るので

となる。また

の中の三重積分の部分は平均値の定理によりr3のオーダーであるが、その前に掛かっている係数はr-2のオーダーなのでr→0ともに(∂v/∂r)→0となるので

が成り立つ。そのためv(x1,x2,x3,r)は確かに初期条件を満足していることが解る。
[証明終わり]

 

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(3)同次波動方程式

 前節の補助定理1を用いると以下の定理2が証明できる。

[定理2]
 初期条件

のとき、波動方程式

の解は

となる。

[証明]
 いま

となるが、このとき、以下の関係式が成り立つ。

 これらの式を用いると

と成るが、最後の式の( )内はr=atとすれば、前節の補助定理1の偏微分方程式の左辺に一致する。そのため補助定理1よりゼロとなる。故に u(x1,x2,x3,t)は波動方程式を満たしている。
 u(x1,x2,x3,t)が定理の初期条件を満たしていることは、v(x1,x2,x3,at)が補助定理1の初期条件を満たしていることからただちに導かれる。
[証明終わり]

 定理2を用いると、さらに以下の定理3が証明できる。

[定理3]

は初期条件

のときの同次波動方程式

の解である。

[証明]
 この波動方程式は定数係数の同次線型微分方程式ですから、両辺をtで偏微分すると

もまた波動方程式の解と成る。
 そのときt=0のときの初期値は、前出の定理2の初期条件を考慮すれば

を得る。
 従って上記の定理2の初期条件を満たす波動方程式の解のtに関する偏動関数 u1(x1,x2,x3,t) も、この同次波動方程式の解であって、初期条件

を満足する。
[証明終わり]

 

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(4)ポアソンの公式

 前節の結論をもちいると以下の定理4ポアソンの公式)が証明できる。ただし、ここからは、座標(x1,x2,x3)から元の座標(x,y,z)に帰ることにする。

[定理4]
 初期条件

のとき、波動方程式

の解は

となる。

[証明]
 定理2の初期条件における関数ω(x,y,z)を関数φ1(x,y,z)とすれば、定理2により

は、初期条件

における波動方程式

の解となる。
 同様に、定理3の初期条件における関数ω(x,y,z)を関数φ(x,y,z)とすれば、定理3により

は、初期条件

における波動方程式

の解となる。
 この波動方程式は同次線型の微分方程式だから、二つの解の和 u1+u2 も解となる。また、初期条件は解u1の初期条件と解u2の初期条件を加え合わせたものになる。それ故に

は初期条件

における同次波動方程式の解となる。
[証明終わり]

[補足説明]
 今初期攪乱が閉曲面[σ]を境界とする有限領域[v]上に集中したとしよう。すなわちφ(x,y,z)とφ1(x,y,z)とは[v]の外では0とする。さらにu(x,y,z,t)を求める点M(x,y,z)は[v]の外部にあるとする。
 点Mから閉曲面[σ]までの最短距離をdとすればt<(d/a)のときMを中心とする半径atの球面[Sat]は初期攪乱領域[v]の外部にある。従って、このときポアソンの公式内の二つの関数φとφ1は球面[Sat]上では0に等しく、ポアソンの公式よりu(x,y,z,t)=0、すなわち点Mでは静止の状態になっている。
 時刻t=(d/a)では閉曲面[σ]は球面[Sat]と接し、波面の最前面は点Mを通過する。
 点Mから閉曲面[σ]までの最大距離をDと書けば、t>(D/a)のとき有限領域[v]の全領域が球面[Sat]の内部にあることになるので、球面[Sat]は再び[v]の外側にある。従ってポアソンの公式により再びu(x,y,z,t)=0を得る。
 時刻t=(D/a)は波面の最後面が点Mを通過する時刻である従ってこの時刻にu(x,y,z,t)は再び0となる。

 与えられた時刻tにおける前方の波面境界は、まだ静止している点とすでに振動した点とを分離する曲面であるがが、この曲面上のすべての点の閉曲面[σ]からの最短距離はatに等しい。またこの曲面は、閉曲面[σ]上に中心を持つ半径atの球面族の包絡面となっている。そして常数aは波面の伝播速度である。

 

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2.非同次波動方程式の解

(1)非同次波動方程式の特別解

 無限に広い空間において非同次波動方程式

を考え、この方程式の解で次の同次の初期条件を満足するものを求めよう。

 この問題を解くために、同次波動次方程式

の解で、初期条件

を満足するものを考える。ただし初期時刻を t=0 ではなく、τをあるパラメーターとして t=τ ととる。
 関数w(x,y,z,t)はポアソンの公式で表されるが、初期時刻が t=0 ではなくて t=τ であるから、この場合 t を t−τ で置き換えねばならない。したがって

を得る。関数w(x,y,z,t)は通常の独立変数(x,y,z,t)の他にパラメーターτにも依存していることに注意しよう。

[定理5]
 関数u(x,y,z,t)を

によって定義すると、uは非同次微分方程式

の解であって同次の初期条件

を満足する。

[証明]
 まず次式が成り立つ。

積分の外にある項は同次の初期条件の第一式により 0 に等しい。これをもう一度tで微分すれば

を得るが、ここで積分の外にある項は、同次の初期条件の第二式により f(x,y,z,t) に等しい。
 一方 u(x,y,z,t) を座標で偏微分するには、被積分関数 w(x,y,z,t) を微分すればよいので

が成り立つ。最後の二つの式と、w(x,y,z,t)が同次波動方程式を満足することから

となるので u が非同次波動方程式を満たしていることが解る。このとき同次の初期条件が満足されていることは

より直ちに了解できる。
[証明終わり]

 ここで求めた解 u をさらに別の形に変形しよう。τ の代わりに新しい積分変数 r=a(t−τ) を導入する。この置換を実行すれば

を得る。ここで

だから、球座標での体積要素の表示を想起すれば、最後の式の三重積分は、(x,y,z)を中心とした半径 at の球 Dat 上での体積積分を意味する。ここで動点

であることを考慮すれば、 u を表す式は次の形に書かれる。ここで r≦at は上述の球状領域 Dat を定義する。

 最後の表示式の被積分関数に関しては、次のような特徴がある。すなわち関数 u(x,y,z,t) を計算するのに、関数 f(ξ,η,ζ,t−r/a) の値をtに先行する時刻 t−r/a で考えていることである。時刻の差 (r/a) は点(ξ,η,ζ) から点(x,y,z) への速度aで進行するのに要する時間を与える。そのため u(x,y,z,t) は遅延ポテンシャルと言われる。
 このときuの解の形から、非同次波動方程式の解で同次の初期条件を満足するものは、ある種の力積 w(x,y,z,t;τ)dτ の和であると言える。この力積は自由項 f(x,y,z,t) の存在に起因し

によって定められる。

 

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(2)非同次波動方程式の一般解

[定理6]
 無限に広い空間において成り立つ非同次波動方程式

の、任意の初期条件

を満足する一般解は、これまでの議論から明らかなように、初期条件

[ただし、φ1(x,y,z)は二階までの連続偏動関数を、φ(x,y,z)は三階までの連続偏動関数を持つとする。]を満足する同次波動方程式

の解

に、同次の初期条件

を満足する非同次波動方程式

の特別解

を加えたものになる。

 

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3.別の説明

 これまでの考察をもう少し別な観点から眺めてみよう。

(1)ポアソンの方程式

 ここで考察している非同次波動方程式

に於いて a→∞とすると、これは

の形の方程式となる。これはPoissonの方程式と言われる数理物理学でおなじみのもので、この方程式の解は別稿「カルマンの渦列(動的安定性解析)」2.(3)1.ですでに求めた。そこで求めた解の湧き出し分布m(x,y,z)を f(x,y,z)/a2 に置き換えれば直ちに、上記の方程式の解として

が求まる。
 これは点(ξ,η,ζ)にある攪乱要素 f(ξ,η,ζ)/a2 から発した力線が無限大の速さ(a→∞としている)で点(x,y,z)影響を及ぼしていると解釈されるものです。

 

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(2)同次波動方程式

 ところで、別稿「波動方程式と一般解」3.(1)で一次元の波動方程式の解を論じた。そこの記号をここの議論に合わせた文字に書き換えると、そこの議論から

となる。
 この第1項は t=0 に於いて f(−x/a) なる形を持つ波が時間とともにその形を変えずにx軸の正方向に一定の速度aで進行していく平面波を表し、第2項は t=0 で g(x/a) なる形を持つ波がx軸の負方向に速度aで進行していく平面波を表している。そして時刻tにおける解 u(x,t) はその両方の波形を重ね合わせた形をしていることを示している。

 これを三次元に拡張して、三次元波動方程式の解として原点からの距離rと時間tのみに依存する波動関数を求めてみる。このとき球座標表示でのラプラス演算子Δに於いてuが原点からの距離rのみに依存するu(r,t)であることを考慮すると

となる。球座標表示のラプラス演算子は適当な参考書を御覧ください。uがrとtのみの関数で、θとφに関係しないことが最初から判っている場合にはここで説明するように簡単に導けます。
 結局r・u(r,t)は一次波動方程式を満足することになる。よってu(r,t)の一般解は

となる。しかし、原点では1/r→∞の特異性を持つから、厳密に言えばこの式は非同次波動方程式

の解を意味する。δ(r)はディラックのδ関数です。従ってu(r,t)が同次波動方程式の解であるためには

でなければならない。よって

となる。
 この第1項は原点から外へ向かって拡散する球面波を表し、第2項は原点に向かって収束する球面波を表す。r/aは原点とrの間を波が伝播するのに要する時間です。
 第1項は場所rで時刻tに観測する波の振幅は時刻τ=t−r/aに原点を出発した波の振幅に関係することを意味している。
 一方、第2項は場所rで時刻tに観測する波の振幅は時刻τ=t+r/aの未来の時間に原点に到達する波の振幅に関係することを意味している。
 その両者を重ね合わせたものが時刻tの場所rにおける振幅となる。そのとき原点での条件を満たすためには、時刻τ=t+r/aに原点を出発する拡散波の振幅と同じ時刻τに原点に到達する収束波の振幅は同じで符号が反対でなければならない。そうして初めて原点での合成波の振幅は常に打ち消し合ってゼロとなり、同次波動方程式の初期条件を満たす。

 

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(3)非同次波動方程式

 3.(1)節3.(2)節の考察を考慮すると、aが有限非同次波動方程式の解は次のようになることが予想される。
 つまり、非同次波動方程式

試行解として

の形が考えられる。
 第1項は遅延ポテンシャル(retarde potential)といわれるもので、その物理的な意味は点(ξ,η,ζ)の攪乱要素 f から時刻 τ に発した攪乱波が点(x,y,z)に到達する時刻が t=τ+r/a であると言うことです。このように到達時刻 t が出発時刻 τ より遅れるのは攪乱波の伝播速度が有限な速度aであるためです。
 一方、第2項は先進ポテンシャル(advanced potential)と言われる。これは点(ξ,η,ζ)の攪乱要素 g から時刻 τ に発した攪乱波が点(x,y,z)に到達する時刻 t=τ−r/a は τ よりも r/a だけ過去であると言っている。つまり、これは点(x,y,z)の時刻 t における振幅 u(x,y,z,t) は未来の時間 τ=t+r/a に於いて点(ξ,η,ζ)に攪乱要素 g(ξ,η,ζ,t+r/a) を生み出す原因であると言っているのと同じです。

 上記の試行解が確かに非同次波動方程式を満足することを確かめよう。とりあえず第1項が満足するのを証明する。u(x,y,z,t)を非同次波動方程式の左辺に代入して偏微分と積分を入れ替えると

となる。
 ここでf(ξ,η,ζ,t−r/a)は直接(x,y,z)に関係していないように見えるが、時間項のrの中で関係している事に注意して




が言える。
 最後の式の第二項のΔ(1/r)は(x,y,z,t)≠(ξ,η,ζ)の位置において常にゼロとなるが、(x,y,z,t)=(ξ,η,ζ)の場所で無限大となるような関数です。実際このことは(ξ,η,ζ)を仮の原点とした極座標表示でのラプラスの演算子用いれば直ちに了解できる。ここで、これが

のような関数だと考えることができればすべて旨くいくことが証明できる。δ(ξ,η,ζ)はDiracのデルタ関数

を満足するようなものである。
 これらの結果を用いれば前出の式は

と変形でき、最初に仮定した試行解の第1項が確かに非同次波動方程式を満足することが証明できた。全く同様にして第2項も非同次波動方程式を満足することが証明できる。
 実際の問題においては、未来の攪乱要素の分布が現在の現象に意味を持つことはないので、現実の問題については第1項だけで解を構成すればよい。

 

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4.参考文献

 このページは別稿で用いるために作りました。ここの内容は以下の文献に全面的に依存しています。

  1. スミルノフ著 「スミルノフ高等数学教程 第4巻(原本U巻第二分冊)」共立出版(1969年刊)第7章第17節
  2. クーラン、ヒルベルト著「数理物理学の方法 3」東京図書(1972年刊)第3章§6.4.
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