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蒸気ボイラー(Steam Boiler)

1.放射伝熱型水冷壁ボイラー

 最近の火力発電所のボイラーには高温・高圧・大容量のものが要求される。そのとき燃焼室温度が高温化すると、伝熱量が温度の4乗に比例して増大する放射熱が、接触熱伝達に勝ってくる。このため炉壁が高熱となり焼損し易くなる。これを防止すると同時に水の蒸発・過熱を円滑に行うために、燃焼室の周囲の壁のすべてに直径20〜100mmの水管を縦に並べて水管による炉壁をつくる形のボイラーが主流となった。この炉壁を水冷壁(water cooled wall)という。
 最近のボイラーの燃焼室は接触伝熱面を減らして放射伝熱面を多くするようにバーナーの燃焼形態も工夫されている。下図は燃焼室形状と燃焼の様子を示す。

下図は水冷壁の構造概念図である。

 

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2.自然循環型ボイラー

 今日の大容量ボイラーは放射伝熱面を広く取るため燃焼室内の水冷壁は巨大な塔状を成している。炉壁を構成する水管は一般に上部を固定した吊り下げ型で下端は自由端として大きな熱膨張に備えている。下図は自然循環ボイラーの具体例である。

下図は気水ドラム内部の構造の概念図である。

 このような自然循環ボイラーでは水の循環が円滑に行くように水頭を高く(40〜50m)し、ドラムからの降水母管を太くして、これが加熱されないように炉外に設置する形になっている。
 しかしながら、発生蒸気が高温・高圧になるにつれて、下図に示すように蒸気と水の密度差は減少してくる。

 そのため蒸気圧力が増加すると密度差による自然循環型ボイラー(下左図)では缶水の循環が円滑に行かなくなる。蒸気圧力の増大とともに、ボイラー水の循環経路に循環ポンプを設置して強制的に水を循環される強制循環型ボイラー(下中図)が発達してきた。
 さらに、蒸気圧力が臨界圧力を超えると液体と気体の区別が無くなる。そうなると途中の気水分離ドラムの意味はなくなる。そのため給水をボイラーにポンプで圧入した後は節炭器→蒸発管→過熱管を貫流する間に熱吸収を行って他端から順次過熱蒸気としてタービンに送る形式の貫流型ボイラー(下右図)となる。

 

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3.強制循環型ボイラー

強制循環ボイラーの特徴

  1. 缶水循環により、各部の温度を一定に保持できるので、自然循環ポイラーより急速始動が可能である。
  2. 自然循環型の様な密度差による循環ではないため、缶胴の高さを大きくする心要がなく全体を低くできる。また、床面積・ボイラ全容積も小さくできるので建設が容易になる。
  3. 水管の径を小さくできるので薄肉管を用いることができる。そのためボイラー応力も小さくなり全体重量も軽くなる。
  4. 適切な缶水循環が確保でき、しかも汽水分離が容易となる。そのため気水ドラムの径も小さくなる。
  5. ポソプ動力分だけ所内動力が増加する。
  6. ポソプの運転保守に特別の注意が必要になる。

 

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4.貫流型ボイラー

貫流ボイラーの特徴

  1. ドラムや大形管などが不要で小口径の水管を使用できる。そのため圧力部の重量が軽くなる。
  2. ボイラ保有水量が少なく、しかも構造的にも急速始動・停止を制約する要素がなくなる。そのため始動・停止時間を、循環式ボイラーに比べて1/5〜1/8程度に、短縮できる。
  3. 熱容量が小さいので、負荷変動に対する追従性が高い。
  4. 給水中の不純物がボイラーからタービソに運ばれやすいので、給水処理を十分にしなげれぼならない。
  5. ボイラー始動時など軽負荷時の蒸気バイバス装置が必要となる。
  6. 蒸気圧カに比して給水ポンプの水圧を相当大きくしなげればならず、給水ポンプの消費動力が増加する。
  7. 高精度のボイラ自動制御装置が必要。


 

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5.参考文献

このHPは以下の記述を参考にした。図もこれらの本から引用しました。

  1. 一色尚次、北山直方共著「新しい機械工学2 新蒸気動力工学」森北出版(1978年刊)
     とても解りやすく詳しく説明されており、別稿「蒸気動力サイクル」でもこの本から幾つか引用しています。
  2. 益山正人著「電気工学基礎シリーズ 火力・原子力発電」東京電機大学出版局(1981年刊)
  3. 八田桂三、山之上寛二共著「蒸気原動機」北森出版(1972年刊)
  4. 勝原哲治著「蒸気工学概論」山海堂(1971年刊)
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