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個体発生は系統発生を反復する(E.ヘッケル1866年)

 これはドイツの動物学者 E. ヘッケルが、著書「有機体の一般形態学」(1866年)の中で主張した学説。ヘッケルはC.ダーウィンが「種の起原」(1859)で述べた自然淘汰説に賛同し、生物進化の一つの例証としてこの説を提唱した。
 彼は「個体発生の初段階において、短時間にわれわれの眼前に起こる諸変化は、その生物の祖先が、その古生物学的発展の間に長い年月をかけてゆっくりと経過した諸変化の短いくり返しにほかならない。」と述べている。

これは下図に示す有名な図とともに教科書の進化の項目で必ず紹介される説である。
3つの発生段階にある6種の哺乳類の胚
(単孔類ハリモグラ、有袋類コアラ、有胎盤類シカ・ネコ・マカック・ヒト)
Ernst Haeckel 著Natu¨rliche Scho¨pfungs-Geschichte(1898)より引用

 この説は発表された当初から様々な批判を浴びてきた。特に初期の杯が全く異なっている事を理由に批判する人もいる。

 しかし、元々魚類→両生類→爬虫類→鳥類・哺乳類と進化・分岐してきた系統において、水中に産み落とされる小型の卵から陸上で生き残るための卵黄と殻を備えた大型の卵に進化し、卵割の様式も変化してきた。さらに胎盤の発達により哺乳類の卵はさらに異なった形になったのだから、ごく初期の胚の形が違っていることを理由に、この説を攻撃するのは的が外れている。これらの卵と卵割の様式の変化は元々の卵の発生より前の段階に付随して後から進化してきたのだから最も初期の胚の状態が違っても当然である。ヘッケル自身も哺乳類の胎盤のように,祖先の動物にはない新しい構造が発生過程に現れる現象はちゃんと区別して論じている。
 だから、発生(体細胞分裂により細胞が分化して、様々な器官が形成される)のメカニズムが分子生物学的に明らかにされていない状況でこの説を批判してもあまり意味はない。発生のメカニズムが分子レベルで解明された暁には、あんがいこの説の正当性が証明されるかもしれない。

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