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宇宙飛行士の言葉

 私たちが青春だったころ人類は月に行っていた。人類が月に降り立った時代(1969〜1972年)があることなど忘れてしまいそうだが、宇宙に行った飛行士たちの言葉を紹介したい。以下の言葉はケヴィン・W・ケリー編集「地球/母なる星」から引用した。

 「・・・・・・打ちあげの朝、車を走らせながら自分の人生を振り返り、いろいろなことを考えた。自分の人生はあれでよかったのか、きょうはどこへ自分は行こうとしているのか。本当はどこへ行きたいのか。やがて、あたりが明るくなった。太陽が昇る。空には打ちあげをさまたげるような雲は見あたらない。小鳥のさえずりが聞こえてきそうだが、車のなかは物音一つしなかった。ふたりとも口をきかなかった。ただ、いよいよだなという思いを込めて見つめ合ってほほえんだ。あまりにも多くの思いが、頭の中を駆け巡った。でも、語る言葉はなかった。ロケット発射台に着く。エレベーターに向かう。あの朝はいつもよりゆっくり歩いたように思う。ふたりはあたりを見回した。これが地上の見納めになるかもしれないとも思った。なに一つ見逃したくなかった。ロケットは朝日を浴びて白く輝いていた。そのサタン5型ロケットのはるかてっぺんに、われわれの乗る小さなモジュールが見えた。ロケットがきょうは身近なものに見える。うまく動いてくれるだろうか。本当に月まで連れて行って、また地球に連れ帰ってくれるのだろうか。そんなことを考えていた。・・・・・・・」 ジェームズ・アーウィン

 「・・・・・・・・発射直前、移動式発射整備塔が離れてしまう。アトラス・ロケットのてっぺんに乗り込んでいると、それがどんなに不気味な代物であるかがわかる。下の方で、液体酸素がタンクにながれこむときのヒューン、ヒューンというパイプのうなる音が聞こえ、タンクが液体酸素で過冷却されるときのシュッ、シュッという振動音も聞こえる。アトラス・ロケットは非常に背が高いうえにしなうので、突風にあうと少々揺れる。そして信じ難いことだが、座席で前後に身を揺すると、宇宙船全体がわずかだがぐらつくのだ。窓からは果てしなく広がる青い空が見えた。窓の近くに固定してある鏡には、ブロックハウスが映り、ケープの景色も映っていた。ペリスコープを使って、私は東のほう、射程に沿って広がる大西洋をながめた。・・・・・・・」 ジョン・グレン・ジュニア

 「・・・・・・・私は無重力のなかを10日間旅をした。美しい地球の周りを回り、1万7000マイル下の景観がたえず姿を変えていくのをこの目で見た。この強烈な体験のおかげで、私は地球との新たな関係に目覚めた。・・・・・・・・それは地球の圧倒的な美しさである。明るい鮮やかな色合いに満ちた地球と、無限に広がる漆黒の闇。その鮮やかな対比を見ているうちに、突然悟った。生きとし生けるものはすべて、この地球という母なる星と切っても切れない関係にある。そして、さけることのできなこの繋がりを思い、畏敬の念にみたされた。
 高い山の頂に登ると、遠くに丘や谷の広がりが見える。宇宙から地球をながめるのはそれに似ている。経験としてはもっとドラマチックだ。それはただの景色ではない。山道を歩くと、道すがら、踏みしだいた松の葉の香りがする。リスがもみの木の上から闖入者をとがめるように、ひょいと顔を出す。真夜中に暖かい寝袋から見上げる満天の星空がある。やっと山の頂に到達する。そして、はるか下にその木々を見下ろすとそれは、もはやただの木ではない。なにか深い繋がりがあるような思いに心が満たされる。私がかかわりを持ったすべての生命あるものと、目で抱擁し合う思いがする。宇宙の経験もそうだ。宇宙から地球を見たとき、私は地球と抱擁し、地球上の生命あるすべてのものと抱擁したのである。そして、リスや松の木と同じように、地球もまた、私をやさしく抱きとめてくれた。・・・・・・・」 ラッセル・L・シュワイカート

 「・・・・・・・宇宙に行った人はだれでも知っている。行く前は、地球を離れた世界はどんなだろうとあこがれる。しかし、行ってみると、その魅力はすぐに消え失せる。宇宙の深淵は、退屈になるほど一様な暗黒だ。私たちの注意を引きつけるのは、その暗黒ではない。暗黒のなかで青い光輝に包まれて浮かぶ地球なのだ。不意に私たちは、今まで経験したことのない気持ちで胸がいっぱいになる。私は地球の住人なのだ。・・・・・・・」 マリョーグ・マカロフ

 「・・・・・・・宇宙を飛行していると、飛行士のものの考え方や感じ方はすっかり変わってしまう。宇宙から太陽や星や地球をながめていると、生命の不思議にうたれる。そして、いっそう生命をいとおしみ、他人に対してはより優しく忍耐強くなる。・・・・・・・」 ボリス・ヴォリノフ

 「・・・・・・・遠ざかるにつれ、地球は小さくなって、とうとうビー玉ほどに縮んでしまった。想像できないほど美しいビー玉である。美しく、暖かく、そして生きている。それは非常に脆くてこわれやすく、指を触れたら粉々に砕け散ってしまいそうだった。・・・・・・・」月へ向かう軌道上で ジェームス・アーウィン

 「いきなり、月の縁の背後からきらきら輝く青と白の宝石が現れる。たとえようもなく荘厳な瞬間が、スローモーションのように長く続く。ゆるやかに渦巻く白いベールをまとった、明るい、微妙なスカイブルーの玉が暗黒の神秘の深い海の中を、小さな真珠のたまのように、しだいに昇っていく。これが地球・・・・・・・」月軌道上で テドガー・ミッチェル

 「私がもっとも鮮明に覚えていることの一つは、月面に立って地球を振り返ったときのことだ。なんと遠いのかと思った。そのはるかなへだたりに、私は感銘をうけた。月の上に自分が立っていることが、現実ではないようにおもわれた。何度も私は月の表面で独り言をいった。これは月で、あれが地球だ。・・・・・・・」 アラン・ビーン

 「・・・・・・私たちはコンサートやポピュラー音楽など、さまざまな種類の録音テープを船内に持ち込んだ。飛行中一番よく聞いたのはロシア民謡だった。私たちはまた、雷鳴や、雨や小鳥のさえずりといった、自然の音の録音テープも持っていった。テープをかけた回数はそれらがもっとも多く、決して聞きあきることはなかった。それを聞いていると、まるで地球に戻ったような気がした。・・・・・・・」 アナトリー・ベレゾヴォイ

 「私たちの菜園に若芽が出た。菜園にはカブと大根とキュウリなどをうえていた。豆の芽がみずみずしい茎に固くまいた葉をつけて、土のなかから顔を出していた。元気よく芽ぶいた小麦の若芽を手のひらでさわるのが好きだった。くすぐったい感じが、なんともいえなかった。」 ヴァレンチン・レベジェフ

 「飛行中に、私たちは地球上の四季の移り変わりをつぶさに観察することができた。打ち上げのときは春だった。夏が過ぎ、秋がさり、そして冬になった。春のころは、白がどんどん緑に道を譲り、続いて野山や森が黄金に覆われた。そのあと、また白がやってきた。だが今度は春とは反対の方向に、白が緑を追いかけている。」 アナトリー・ベレゾヴォイ

 「・・・・・・・・宇宙旅行がおわりに近づくころ、なにかうまくいかないことがあると、私はよくベッドのわきの窓に顔をおしつけて外を見た。すると、それまで感じたこともないような気持ちになった。地球が眼下をすべっていくのを見てこう考えた。宇宙はなんと永遠なのだろう。私が死に、子供や孫たちが死んだあとも、地球はなおあの正確で悠揚せまらぬペースで、無窮の宇宙をすべっていくのだろう、と・・・・・・・」 ウラジミール・ソロヴィヨフ

 「着陸モジュールが着地し、ちょっと揺れて静かに静止したとき、不思議な充実感がこみ上げてきた。天気はかなり悪かった。しかし、地球のにおいがした。たとえようもない甘美でうっとりとするようなにおいだった。そして、風。宇宙に長く滞在したあとに肌で感じる地球の風は、本当に心はずむ思いがした。・・・・・・・」 アンドリアン・ニコラーエフ

 「ふたたび私は地上に立った。なんだか少々足もとがおぼつかなかった。見渡すかぎり、灰色をした秋の草原が広がっている。・・・・・・大地を見て、私はむしょうにうれしくなった。ふわふわした初雪が、大地をかすかにおおっていた。思わず、私は、大地の上に転がって、大地を抱きしめ、頬を押しつけたくなった。」  ゲオルギ・ショーニン

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