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原子核電荷と最接近距離

 簡単化して、質量mのα粒子が静止した質量Mの原子核に正面衝突する場合を考える。電気力に関するクーロンの法則の比例定数をk0、標的核の原子番号をZ、標的核から無限に離れた位置でのα粒子の運動エネルギーをEとする。
 α粒子が標的核に近づくとクーロン反発力のために標的核はα粒子の進行方向へ動き出す。両者が最も近づいたときには、両者の速さは同じになる。この速さをVとし、標的核から無限に離れた位置でのα粒子の速さをv(初速度)とすると、運動量保存則と運動エネルギーの表現式より

となる。(1)と(2)より、vを消去して

となる。高校物理Uで習うように、電荷+Qから距離r離れた点で電荷+qがもつ電気力による位置エネルギーUは、無限遠を基準値U=0として

と表される。今の場合の最接近距離をr0とすれば、α粒子のq=+2e、標的核のQ=+Zeだから、エネルギー保存則を用いると

となる。これに(3)式のVを代入してr0を求めると

となる。(5)式にk0=9.0×109Nm2/C2、e=1.6×10-19C、Eとしてラザフォードが用いたラジウム線源が放出する7.7MeVのα粒子とするとE=7.7MeV=1.23×10-12Jとなるので2k02/E=3.75×10-16mとなる。さらにMとして金原子核(A=197、Z=79)と窒素原子核(A=14、Z=7)を用いた場合、r0

となる。現在 原子核半径=1.25×10-15m×(質量数の立方根) 程度であることがわかっており、金原子核半径は約7.2×10-15m、窒素原子核半径は約3.0×10-15mである。上記の最接近距離r0と比較すると、窒素原子ならα粒子がぎりぎり原子核に到達できるが、それよりも重い金原子などでは無理であることが解る。
 ちなみに7.7MeVのα粒子(ヘリウム原子核)の速度は1.9×10m/s〜光速の1/16程度 であり非相対論的な近似計算でおおまかなところは評価できる。

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