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ダイオードとトランジスターの話は高校物理の電気の所に少しだけ出てきますが、その作動原理が今ひとつ説明不足です。不足するところを高校レベルで説明します。
diodeとは「2本の端子を持つ回路素子」のことです。
P形半導体中の正孔(ホール)も、N形半導体中の結合に預からない電子も不純物原子に緩く拘束されていて勝手に逃げていくことはできない事に注意。だから普通の状態では陰イオン、陽イオンとなった不純物原子と正孔や電子が対になっていて半導体自身は中性の状態を保っている。
P形、N形の半導体を接合すると拡散効果により接合面に電位の障壁ができる。その当たりを次で説明する。
PN接合の半導体中の電荷分布、電界強度分布、電位の分布は下図のようになる。
上図の分布を理解する鍵は、平行板コンデンサーのつくる電界と電位である。
高校物理で習うように
となることから理解できる。
電荷の分布が空間的な広がりを持つ場合は下図のように平行板コンデンサーを重ねて分布させ、おのおのの平行板コンデンサーが作る電界を重ねあわせればよい。
PN結合のダイオードの両端に電圧をかけると何が起こるか見てみよう。
いま真性半導体を構成するSi元素は無視して不純物のインジウムIn、リンP原子から正孔や結合に預からない電子を取り除いたIn−、P+を丸の−や丸の+で表し正孔や余分な電子を+のシートや−のシートで表す。
以上をまとめるとPN接合ダイオードの電流電圧特性は下図のようになる。
トランジスター(transistor)とは transfer of signals through varistor からの造語で、varistor とは「加えた電圧により抵抗値の変わる回路素子」のことである。
動作機構には,多数キャリヤーと少数キャリヤーの両方が流れて増幅作用を生じるバイポーラートランジスター(bipolar
transistor)と,多数キャリヤーだけの流れで動作するユニポーラートランジスター(unipolar
transistor)とがある。前者を単にトランジスター,後者を電界効果トランジスターということが多い.
接合型バイポーラートランジスターは下図のようにPNPまたはNPN接合構造をもつ。P(positive)はキャリヤーが正孔,N(negative)はキャリヤーが電子である領域をいう。3つの領域に付いている3電極はエミッター,ベース,コレクターと呼ばれ emitter(放出するもの)、base(基礎)、collector(集めるもの)から来ている。
右側の図中の矢印はp→n、すなわちエミッター・ベース接合の順方向を表している。
ここでは基礎的な接合型バイポーラトランジスターのPNP型で説明する。PNP型を用いたのは正孔の流れる方向が電流の流れる方向と一致するので理解しやすいからだが、本質はNPN型でも同じである。
接合型バイポーラトランジスターはダイオードを2つ接合した形をしているが、根本的な違いはベースにおける拡散過程にある。そこで増幅作用が発生するのだが、その動作を可能にするのが以下の設定である。
ベース→エミッター間に順方向の電圧、ベース→コレクター間に逆方向電圧をかけると、ダイオードの場合と同様のメカニズムにより空乏層の幅が変化する。
常温ではP形中のホールの密度はアクセプター不純物(Ga、Inなど)とほぼ等しく、N形中の自由電子の密度はドナー不純物(P、Asなど)とほぼ等しい。こういった状態で上記の電圧をかけると
ベース領域には電界はかかっていないが、ベース幅がきわめて薄いことと注入される正孔の濃度が圧倒的多数であるため拡散効果により、ベースに流れ込んだホールは大多数がコレクター領域へ移動する。
N形のベースに注入されたホールはN形の自由電子と結合して消滅するが、ベースの不純物濃度が小さくしてその割合を小さくする。また同じ理由によりべースからエミッターに流れる電子電流は小さい。
そのため各端子を流れる電流比は例えば IE:IB:IC=50:1:49 のような値になる。これは任意のIEの値のときに成り立つので、もしIBを1mAから1.1mAに変化させるとIEは55mA、ICは53.9mAに変化することになる。つまりベース電流のΔIB=0.1mAの変化が約50倍に増幅されてΔIE=4.9mAの変化になるわけだ。これが電流が増幅されるメカニズムである。
エミッター−ベース間の抵抗は50Ω程度だが、コレクター−ベース間の抵抗は1MΩ=105Ω程度である。ΔIEはΔICとほぼ等しいので電圧の増幅率は2000倍になる。これが電圧が増幅されるメカニズムである。
今後利用するのでエミッター−コレクター間の電流増幅率αを定義しておく。
今の例ではα=0.98となる。
2.(2)で述べた接続の仕方をベース接地回路という。接地といってもアースにつなぐ意味ではなく入出力の共通電位として使う意味である。
トランジスターの特性によりエミッター電流とほぼ等しいコレクター電流が流れる。エミッター電流が0のときコレクター電流とコレクター電圧の特性曲線はコレクター側NP接続をダイオードと見なしたときの逆電圧での特性と同じ。コレクター電流はベース領域を拡散してくるエミッター電流のみに依存する。つまりVBEのみに依存してVBCに依らない。そしてエミッター電流をVBEを調整して増やしていくとコレクター電流も増えていくがそのときコレクター電流はVBCが変化してもほとんど変化しない。ベースに対するコレクター電圧を横軸に、コレクター電流(トランジスターに流れ込む方向を正)を縦軸に取ると下図の特性図が得られる。
トランジスターの使い方には前記「ベース接地回路」「エミッタ接地回路」以外に「コレクタ接地回路」というものがある。これは下図のようなものである。
ベース接地回路 | エミッタ接地回路 | コレクタ接地回路 | |
入力側から見たインピーダンス | 低い(数十Ω) | 中くらい(数kΩ) | 高い(数十kΩ) |
出力側から見たインピーダンス | 高い(数百kΩ) | 中くらい(数kΩ) | 低い(数百Ω) |
電流増幅率 | 1よりやや小さい | 大きい(数十倍) | 大きい(数十倍) |
電圧増幅率 | 大きい(数百倍) | 大きい(数百倍) | 1よりやや小さい |
電力増幅率 | 数百倍 | 数千倍 | 数十倍 |
入力と出力の位相 | 同相 | 反転 | 同相 |
周波数特性 | 良い | 良くない | 良い |