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ある温度の気体状態の原子や分子の速度分布は、容器内で一定温度下の平衡状態にある気体を小さな穴から噴出させて下図の様な装置を用いて測定すればよい。標的に付着した原子層の厚さを測定する。
測定精度を高めるには、装置を下図の様に改良する。
このとき、原子線、分子線を得るために炉の壁面に開けた穴の大きさについて注意すべき事柄がある。正確な速度分布を得るためには、穴の大きさが平均自由行程よりも充分小さい状況(下図(a))が実現されねばならない。
(b)の様な状況のとき、穴の外では平衡状態の仮定が満足されていないのだから、穴の付近を通過するとき非平衡状態に遷移しながら原子、分子の互いの衝突が起こる。そのため原子線を供給する炉の中で達成されていた温度一定の平衡状態での速度分布とは異なった速度分布となった原子線がえられることになる。
この実験では、原子線を噴出する穴が充分小さく且つまた炉内の気体の圧力が充分低くて、気体の平均自由行程が穴の大きさよりも充分大きいことが必要である。
James Jeans 著,「An Introduction to the Kinetic Theory of Gases」,Cambridge
University Press (初版1940年)の第W章 Collisions and Maxwell's Law の中から引用。